【救急医療の基本と救急車の利用法】医師が解説

救急医療の基本と救急車の利用法
最終更新日: 2026-04-08
📋 この記事のポイント
  • ✓ 救急医療は緊急性の高い疾患や外傷に対応する医療システムです。
  • ✓ 救急車利用の判断は、意識障害や呼吸困難など重篤な症状の有無が重要です。
  • ✓ 救急車は無料で利用できますが、緊急性の低い場合は他の受診方法も検討しましょう。
※ 本記事は医療に関する情報提供を目的としています。個別の症状については、かかりつけの医療機関にご相談ください。

救急医療の基礎知識

救急医療の基礎知識を学ぶ医師と看護師が連携する様子
連携する医療従事者

救急医療とは、突発的な病気や怪我、災害などによって生命の危機に瀕している患者さんに対し、迅速かつ集中的に診断・治療を行う医療システムです。このシステムは、救急現場での応急処置から病院での専門治療まで、一連の流れで構成されています。

臨床の現場では、救急搬送されてくる患者さんの状態は多岐にわたり、一刻を争う状況も少なくありません。特に、心肺停止や重症外傷の患者さんには、迅速な初期対応が予後を大きく左右すると実感しています。

救急医療の役割とは?

救急医療の主な役割は、患者さんの生命を救い、後遺症を最小限に抑えることです。これには、以下の3つの段階があります。

  1. 病院前救護(Prehospital Care): 救急隊員が現場に到着し、応急処置を行いながら病院へ搬送する段階です。心肺蘇生や止血、気道確保などが行われます。
  2. 病院内救急処置(Emergency Department Care): 病院の救急外来で、医師や看護師が初期診断を行い、必要な検査や処置、専門科への振り分けを行います。
  3. 集中治療(Intensive Care): 重症患者さんに対して、集中治療室(ICU)などで高度な医療を提供し、全身管理を行います。

これらの連携により、患者さんは適切な医療を迅速に受けられるようになっています。特に高齢者における救急医療の利用は、その予後を大きく左右する要因となることが報告されています[1]

救急医療のレベル分類

日本の救急医療体制は、患者さんの重症度に応じて以下の3段階に分類されています。

一次救急
比較的軽症の患者さんに対応し、入院の必要がない外来診療を行う医療機関です。休日診療所や地域の診療所などがこれに該当します。
二次救急
入院や手術が必要となる中等症から重症の患者さんに対応します。地域の基幹病院が担うことが多く、複数の診療科が連携して診療にあたります。
三次救急
生命の危機に瀕する重篤な患者さんに対応する、高度な医療を提供する施設です。救命救急センターや高度救命救急センターがこれにあたり、24時間体制で専門的な治療を行います。

これらの分類を理解することは、適切な医療機関を選択し、救急医療システムを効率的に利用するために重要です。

救急車を呼ぶべきかどうかの判断基準

救急車を呼ぶべきかどうかの判断は、患者さんや周囲の方々にとって非常に難しいものです。しかし、適切なタイミングで救急車を呼ぶことは、命を救う上で極めて重要となります。

初診時に「どの程度の症状で救急車を呼べばいいのか分からなかった」と相談される患者さんも少なくありません。迷った場合は、ためらわずに専門機関に相談することが大切です。

どのような症状で救急車を呼ぶべきか?

救急車を呼ぶべき症状は、生命に危険が及ぶ可能性のある状態や、重篤な後遺症につながる恐れのある状態です。具体的には、以下のような症状が挙げられます。

  • 意識がない、または意識が朦朧としている: 呼びかけに反応しない、刺激に反応しないなど。
  • 呼吸が苦しい、呼吸が止まっている: 息ができない、顔色が悪い、唇が紫色になっているなど。
  • 胸の激しい痛み: 締め付けられるような痛み、冷や汗を伴う痛みなど。心筋梗塞の可能性があります。
  • 突然の激しい頭痛: 「これまで経験したことのない」と表現されるような痛み。くも膜下出血などの可能性があります。
  • 手足の麻痺やしびれ、ろれつが回らない: 突然の片側の麻痺やしびれ、言葉が出にくいなど。脳卒中の可能性があります。
  • 大量出血: 止血が困難なほどの出血。
  • 広範囲のやけど: 全身の10%以上に及ぶやけどや、顔面・気道熱傷の可能性。
  • けいれんが止まらない: 特に小児の場合。

これらの症状は、緊急性の高い状態を示唆しています。特に小児の救急搬送は、外来受診から行われるケースも少なくないことが報告されています[4]

救急車を呼ぶべきか迷った時の対処法は?

「救急車を呼ぶべきか判断に迷う」という状況は少なくありません。そのような時は、以下の相談窓口を利用しましょう。

  • #7119(救急安心センター事業): 地域の消防本部などが運営しており、電話で症状を相談すると、救急車の必要性や適切な医療機関を教えてくれます。
  • かかりつけ医への相談: 症状が軽度であれば、まずはかかりつけ医に電話で相談するのも一つの方法です。

これらの相談窓口は、救急医療の適正利用を促進し、本当に救急車が必要な患者さんへ迅速な対応を可能にするために重要です。不必要な救急車の出動は、本当に必要な患者さんへの対応を遅らせる可能性があります。

⚠️ 注意点

迷った末に症状が悪化するケースも臨床ではよく経験します。判断に迷う場合は、自己判断せずに必ず専門機関に相談してください。

救急車の呼び方と伝えるべき情報

救急車を呼ぶ際に落ち着いて症状を伝える女性と救急隊員
救急隊員に症状を説明

救急車を呼ぶ際は、冷静かつ的確に状況を伝えることが重要です。適切な情報を伝えることで、救急隊が迅速に現場に到着し、適切な処置を開始できます。

実臨床では、救急搬送された患者さんのご家族から「何を伝えれば良いか分からず焦ってしまった」という声を多く聞きます。事前に知っておくことで、いざという時に役立ちます。

119番通報の手順とポイント

119番通報は、以下の手順で行いましょう。

  1. 電話をかける: 携帯電話、固定電話どちらからでも「119」をダイヤルします。
  2. 「救急です」と伝える: 火事と間違えられないよう、最初に「救急です」と明確に伝えましょう。
  3. 場所を伝える: 住所(番地、マンション名、部屋番号まで)、目印となる建物などを具体的に伝えます。携帯電話からの場合、GPS情報が利用されることもありますが、口頭でも伝えることが重要です。
  4. 患者さんの状態を伝える: 誰が(性別、年齢)、どうしたか(意識の有無、呼吸の状態、具体的な症状、怪我の種類など)を簡潔に伝えます。持病や服用中の薬があればそれも伝えましょう。
  5. 通報者の氏名と連絡先を伝える: 救急隊が到着するまでに、追加で確認が必要になる場合があります。
  6. 指示に従う: 指令員からの質問に答え、指示があるまで電話を切らないようにしましょう。

救急隊に伝えるべき重要な情報とは?

救急隊が現場に到着した際に、スムーズな処置のために伝えるべき情報は以下の通りです。

  • 患者さんの氏名、年齢、性別
  • 症状の発生時間と具体的な経過: 「いつから」「どのように」「何が起きたか」を時系列で。
  • 持病やアレルギーの有無: 糖尿病、高血圧、心臓病などの既往歴、薬物アレルギーなど。
  • 服用中の薬: お薬手帳や薬の現物を見せられるように準備しておくと良いでしょう。
  • かかりつけ医の情報: 病院名や医師の名前など。

これらの情報は、救急隊が患者さんの状態を正確に把握し、適切な応急処置や搬送先の病院選定を行う上で不可欠です。小児の救急搬送においても、保護者からの詳細な情報提供が重要となります[3]

また、救急隊が到着しやすいように、玄関の鍵を開けておく、明かりをつけておく、ペットを繋いでおくなどの準備も忘れずに行いましょう。

救急搬送と費用

救急車による搬送は、緊急時に命を救うための重要な手段ですが、その利用には費用がかかるのか、どのような仕組みになっているのか疑問に思う方もいるでしょう。

実際の診療では、救急搬送後の費用について不安を感じる患者さんやご家族もいらっしゃいます。費用に関する正しい知識を持つことは、安心して救急医療を利用するために重要なポイントになります。

救急車の利用は無料?有料?

日本の救急車(消防機関が運用する救急車)の利用は、原則として無料です。これは、国民の生命と安全を守るための公共サービスとして提供されているためです。しかし、無料であるからといって、緊急性の低い症状で安易に利用することは避けるべきです。

救急車の不適切な利用が増加すると、本当に緊急性の高い患者さんへの対応が遅れる可能性があります。総務省消防庁のデータによると、軽症者の搬送割合は全体の半数近くを占めており、救急車の適正利用が課題となっています。

搬送後の医療費はどのようにかかる?

救急車による搬送自体は無料ですが、搬送先の医療機関で受ける診察や治療には、通常の医療費がかかります。これは、健康保険が適用されるため、自己負担割合に応じた費用が発生します。

例えば、3割負担の場合、診察料や検査費用、処置費用、入院費用などが自己負担となります。高額な医療費がかかる場合は、高額療養費制度などの公的支援制度も利用できます。

項目消防救急車民間救急車・ヘリコプター
利用料金無料有料(事業者による)
利用目的緊急性の高い傷病者の搬送転院、通院、イベント待機など緊急性の低い搬送
医療行為救急救命士による処置事業者による(医療資格者が同乗する場合あり)

また、ドクターヘリなどのヘリコプター緊急医療サービス(HEMS)の利用も、救命に特化した重要な手段であり、その利用は特定の重症ケースに限られますが、医療費は通常の保険診療が適用されます[2]

緊急性の低い搬送や、病院間の転院などには、民間救急車や介護タクシーなどの有料サービスを利用することも可能です。これらは、医療行為は行いませんが、患者さんの状態に応じた適切な移送サービスを提供します。

最新コラム・症例報告

最新の医療コラムを読み、症例報告を議論する医療従事者
最新コラムと症例報告

救急医療の現場は常に進化しており、新しい治療法や対応プロトコルが導入されています。ここでは、救急医療に関する最新の知見や、実際の症例から学ぶべきポイントについてご紹介します。

日常診療では、定期的に救急医療に関するカンファレンスを実施し、最新の知見を共有しています。特に、高齢者や小児の救急搬送に関する研究は、日々の診療に役立つ情報が多いと実感しています。

高齢者の救急医療利用の実態と課題

高齢化社会の進展に伴い、高齢者の救急医療利用が増加しています。高齢者は複数の基礎疾患を持つことが多く、症状が非典型的であるため、診断が難しい場合があります。また、転倒による骨折や頭部外傷なども多く、迅速な対応が求められます。

  • 多疾患併存: 複数の持病が複雑に絡み合い、症状の判断を困難にすることがあります。
  • 非典型的な症状: 若年者とは異なる症状の現れ方をすることがあり、見過ごされやすいケースもあります。
  • 社会的要因: 一人暮らしの高齢者では、異変に気づくのが遅れることもあります。

高齢者の救急医療利用に関する包括的なレビューでは、その利用決定要因が多岐にわたることが示されており、医療従事者だけでなく、地域社会全体でのサポート体制の構築が重要であると指摘されています[1]

小児の救急医療利用の傾向と注意点

小児の救急医療利用も重要なテーマです。小児は症状の変化が早く、重症化しやすい特徴があります。特に乳幼児の場合、言葉で症状を伝えられないため、保護者の観察が非常に重要になります。

  • 急速な病状変化: 発熱や脱水症状などが急速に悪化することがあります。
  • 症状の非特異性: ぐったりしている、機嫌が悪いなど、具体的な症状に乏しい場合があります。
  • 保護者の不安: 小児の症状は保護者の不安を強く掻き立てるため、過剰な救急利用につながることもあります。

小児の救急医療利用に関する研究では、外来診療所や緊急ケアセンターからの救急搬送も一定数存在することが示されており、軽症と判断されがちな症状でも、注意深い観察と適切な判断が求められます[4]。また、小児の救急医療利用は、年齢や症状によって異なる傾向があることも報告されています[3]

まとめ

救急医療は、生命の危機に瀕した患者さんを救うための重要な医療システムです。適切なタイミングで救急車を呼び、必要な情報を正確に伝えることが、患者さんの命を救い、後遺症を最小限に抑える上で不可欠となります。救急車の利用は無料ですが、搬送後の医療費は発生します。緊急性の低い症状での利用は避け、#7119などの相談窓口を活用し、救急医療の適正利用にご協力ください。高齢者や小児の救急医療には、それぞれの特性を理解した上で対応することが求められます。

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よくある質問(FAQ)

救急車を呼ぶか迷ったらどうすればいいですか?
判断に迷う場合は、全国共通の緊急度判定支援システム「#7119(救急安心センター事業)」に電話で相談してください。症状に応じて、救急車の必要性や適切な医療機関を案内してくれます。
救急車で搬送された場合、医療費はかかりますか?
救急車による搬送自体は無料ですが、搬送先の医療機関で受ける診察や治療には、通常の健康保険が適用され、自己負担分の医療費が発生します。
小児の症状で救急車を呼ぶ目安はありますか?
小児は病状が急変しやすいため、意識障害、呼吸困難、けいれんが止まらない、顔色が著しく悪い、ぐったりしているなどの症状が見られる場合は、迷わず救急車を呼ぶことを検討してください。#7119への相談も有効です。
救急車を呼ぶ際に、どのような情報を伝えれば良いですか?
119番通報時には、場所(住所、目印)、患者さんの症状(意識の有無、呼吸の状態、具体的な症状)、性別、年齢、持病やアレルギー、服用中の薬などを簡潔かつ正確に伝えてください。
この記事の監修医
💼
井上祐希
救急科医