- ✓ 多汗と冷えは、それぞれ独立した症状としてだけでなく、互いに関連し合って現れることがあります。
- ✓ 原因は多岐にわたり、生活習慣から基礎疾患まで様々です。適切な対処には原因の特定が重要となります。
- ✓ 市販薬や生活習慣の改善で対応できる場合もありますが、症状が重い場合は医療機関の受診を検討しましょう。
異常な汗(多汗)の原因とは?

異常な汗、いわゆる多汗症は、体温調節に必要な量を超えて過剰に汗をかく状態を指します。この症状は日常生活に大きな影響を与えることがあります。
多汗症は、大きく分けて「原発性多汗症」と「続発性多汗症」の二つに分類されます。原発性多汗症は、特定の原因疾患がなく、精神的な緊張やストレス、自律神経の乱れなどが関与していると考えられています。特に手のひら、足の裏、脇の下、顔面など、特定の部位に多く見られます。私自身の薬局での経験上、学生さんやビジネスパーソンの方から「会議中に手のひらに汗をかきすぎて困る」「プレゼンで顔から汗が止まらない」といった相談を受けることが多く、精神的な要因が大きく関わっているケースをよく見かけます。国際的な診断基準では、明らかな原因がない多汗が6ヶ月以上続き、かつ以下の項目のうち2つ以上を満たす場合に原発性多汗症と診断されます[1]。
- 左右対称性に発汗する
- 発汗によって日常生活に支障をきたす
- 週に1回以上の頻度で発汗エピソードがある
- 25歳未満で発症する
- 家族歴がある
- 睡眠中は発汗が止まる
一方、続発性多汗症は、何らかの病気や薬剤が原因で起こる多汗です。原因となる疾患には、以下のようなものが挙げられます。
続発性多汗症の主な原因疾患
- 内分泌疾患: 甲状腺機能亢進症、褐色細胞腫、糖尿病など。これらの疾患では、ホルモンバランスの異常が自律神経に影響を与え、発汗を促進することがあります[2]。
- 神経疾患: パーキンソン病、脊髄損傷、脳卒中など。神経系の異常が体温調節機能に影響を及ぼすことがあります。
- 感染症: 結核などの慢性感染症では、発熱に伴い寝汗をかくことがあります。
- 薬剤性: 抗うつ薬、解熱鎮痛薬、血糖降下薬など、一部の薬剤の副作用として多汗が現れることがあります。服薬指導の際に「この薬を飲み始めてから汗をかきやすくなった気がする」と質問される患者さんが多くいらっしゃいます。薬剤師としては、患者さんの服用している薬剤と多汗の関連性を常に考慮しています。
- その他: 悪性腫瘍、更年期障害など。
また、冷たい刺激によって多汗が生じる「寒冷誘発性多汗症」という特殊なケースも報告されており、アレルギー疾患との関連性も示唆されています[4]。
- 原発性多汗症
- 特定の原因疾患がなく、過剰な発汗が慢性的に続く状態。自律神経の過活動が関与していると考えられています。
- 続発性多汗症
- 何らかの基礎疾患(内分泌疾患、神経疾患、感染症など)や薬剤の副作用が原因で起こる多汗。
急な発汗量の増加や、全身性の多汗、発熱や体重減少などの他の症状を伴う場合は、自己判断せずに医療機関を受診し、原因疾患の有無を確認することが重要です。
異常な冷え(冷え性)の原因とは?
異常な冷え、いわゆる冷え性は、手足の先や体の特定の部位が常に冷たく感じる状態を指し、体温が低いわけではないのに冷えを感じるのが特徴です。
冷え性の原因は多岐にわたりますが、主に自律神経の乱れ、血行不良、筋肉量の低下、ホルモンバランスの乱れなどが挙げられます。特に女性に多く見られる症状で、月経周期や更年期に伴うホルモン変動が影響していると考えられています。薬局での患者さんとの会話で「冬はもちろん、夏でもクーラーで手足が冷えてつらい」といった訴えをよく聞きますが、これは自律神経の乱れによる血管収縮が関係していることが多いです。
冷え性の主な原因
- 自律神経の乱れ: ストレスや不規則な生活習慣により、体温調節を司る自律神経のバランスが崩れると、血管の収縮・拡張がうまくいかなくなり、血行不良を招きます。
- 血行不良: 長時間同じ姿勢での作業、運動不足、喫煙、きつい下着などにより、血流が悪くなると、体の末端まで温かい血液が届きにくくなります。
- 筋肉量の低下: 筋肉は熱を産生する重要な器官です。特に女性は男性に比べて筋肉量が少ない傾向にあるため、冷えを感じやすいとされています。
- ホルモンバランスの乱れ: 女性ホルモンは自律神経と密接に関わっており、月経前症候群(PMS)や更年期障害の時期に冷えが悪化することがあります[2]。
- 低血圧・貧血: 血液量が少ない、または酸素運搬能力が低いと、全身の細胞に十分な酸素や栄養が届かず、冷えを感じやすくなります。
- 基礎疾患: 甲状腺機能低下症、レイノー病、閉塞性動脈硬化症などの疾患が原因で冷えが生じることもあります。特にレイノー病では、寒冷刺激や精神的ストレスで指先が白く、次いで紫色になり、その後赤くなる特徴的な症状が見られます。
また、寒冷環境に長時間さらされることで、組織が損傷し冷えを感じる「非凍結性寒冷障害(塹壕足)」のような状態も存在します[3]。これは極端な例ですが、慢性的な冷えが体の組織に負担をかける可能性を示唆しています。
| 項目 | 原発性冷え性 | 続発性冷え性 |
|---|---|---|
| 原因 | 自律神経の乱れ、生活習慣、筋肉量、ホルモンバランス | 基礎疾患(甲状腺機能低下症、レイノー病など) |
| 特徴 | 体温は正常でも冷えを感じる、手足の末端に多い | 基礎疾患の症状の一つとして冷えが現れる |
| 対処 | 生活習慣改善、温活、市販薬、漢方 | 原因疾患の治療が最優先 |
多汗・冷えの対処法・市販薬・受診先は?

多汗と冷えは、日常生活の質を著しく低下させる症状ですが、適切な対処法や市販薬の選択、必要に応じた医療機関の受診によって改善が期待できます。
多汗への対処法と市販薬
多汗の対処法は、その原因が原発性か続発性かによって異なります。原発性多汗症の場合、まずは生活習慣の見直しやセルフケアから始めることが推奨されます。
- 生活習慣の改善: ストレス管理(リラックス法、十分な睡眠)、規則正しい生活、バランスの取れた食事などが重要です。カフェインや香辛料の過剰摂取は発汗を促すことがあるため、控えるのが望ましいでしょう。
- 制汗剤: 塩化アルミニウムを主成分とする制汗剤は、汗腺に作用して発汗を抑える効果が期待できます。市販されているものもありますが、医療機関でより高濃度のものを処方してもらうことも可能です。
- 漢方薬: 精神的な緊張からくる多汗には、柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)や補中益気湯(ほちゅうえっきとう)などが用いられることがあります。
市販薬としては、塩化アルミニウム配合の制汗剤や、漢方薬(例:ワキ汗・手汗用の「多汗症改善薬」として販売されているもの)があります。薬剤師として服薬指導を行う際、これらの市販薬を使用する患者さんには、用法・用量を守り、皮膚刺激などの副作用に注意するよう伝えています。特に塩化アルミニウムは皮膚刺激を起こすことがあるため、使用開始時は少量から試すのが一般的です。
冷えへの対処法と市販薬
冷え性の改善には、体を温める習慣と血行促進が鍵となります。
- 体を温める: 温かい飲み物や食事を摂る、湯船にゆっくり浸かる、重ね着をする、使い捨てカイロを利用するなど、体を内外から温める工夫をしましょう。特に首、手首、足首など「三首」を温めることが効果的とされています。
- 運動: 適度な運動は血行を促進し、筋肉量を増やすことで熱産生能力を高めます。ウォーキングやストレッチなど、無理なく続けられる運動を取り入れましょう。
- 食事: ショウガやトウガラシなど体を温める食材を積極的に摂り、バランスの取れた食事を心がけましょう。鉄分やビタミンEも血行促進に役立ちます。
- 市販薬・漢方薬: 血行促進作用のあるビタミンE製剤や、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)などの漢方薬が冷え性の改善に用いられることがあります。これらの漢方薬にはジェネリック医薬品も存在します。
薬局での経験上、冷え性で悩む患者さんには、まず生活習慣の改善を提案し、その上で市販の温活グッズや漢方薬を症状に合わせて紹介することが多いです。特に冷えと肩こり、生理痛などが併発している方には、漢方薬が有効な選択肢となることがあります。
医療機関の受診先
多汗や冷えの症状が日常生活に大きな支障をきたす場合や、セルフケアで改善が見られない場合は、医療機関を受診しましょう。
- 皮膚科: 原発性多汗症の診断と治療(塩化アルミニウム液の処方、ボツリヌス毒素注射[1]、内服薬など)を行います。
- 内科: 続発性多汗症や冷え性の原因となる基礎疾患(甲状腺機能亢進症・低下症、糖尿病、貧血など)の有無を調べ、治療を行います。
- 婦人科: ホルモンバランスの乱れによる冷えや多汗(更年期障害など)の場合に相談できます。
- 心療内科・精神科: ストレスや不安が原因で多汗や冷えが悪化している場合に、精神的なケアや薬物療法を検討します。
実際の処方パターンとして、重度の原発性多汗症では、皮膚科で塩化アルミニウム液の外用と、必要に応じて抗コリン薬の内服が併用されることが一般的です。内服薬には、発汗を抑える効果が期待できる一方で、口渇や便秘などの副作用が出ることがあるため、患者さんの状態をよく観察しながら調整されます。また、ボツリヌス毒素注射は、神経伝達物質のアセチルコリンの放出を阻害することで、汗の分泌を一時的に抑制します[1]。
症状の掛け合わせ(多汗・冷え+〇〇)とは?
多汗や冷えは単独で現れるだけでなく、他の症状と組み合わさることで、さらに複雑な体の不調として現れることがあります。これらの複合的な症状は、根本的な原因が共通している場合や、一方の症状がもう一方を悪化させる形で現れることがあります。
多汗と冷えが併発するケース
多汗と冷えは一見すると相反する症状に見えますが、同時に現れることがあります。これは、自律神経の乱れが深く関与しているケースが多いです。例えば、ストレスや緊張により交感神経が過剰に働き、手のひらや脇の下に多汗が生じる一方で、末梢血管が収縮して手足の冷えを感じる、といった状況です。このような状態は、体の体温調節機能がうまく働いていないことを示唆しています。薬局での服薬指導の際に「汗はかくのに、手足はいつも冷たい」と訴える患者さんがいらっしゃいますが、これはまさに自律神経のアンバランスが原因である可能性が高いです。
多汗と他の症状の掛け合わせ
- 多汗+動悸・息切れ: 甲状腺機能亢進症やパニック障害の可能性があります[2]。甲状腺ホルモンの過剰分泌は代謝を亢進させ、発汗や心拍数の増加を引き起こします。
- 多汗+体重減少: 甲状腺機能亢進症や糖尿病、悪性腫瘍などの可能性が考えられます。特に夜間の寝汗と体重減少が続く場合は、早急な医療機関受診が必要です。
- 多汗+めまい・ふらつき: 低血糖や起立性調節障害、自律神経失調症などが考えられます。
冷えと他の症状の掛け合わせ
- 冷え+肩こり・頭痛: 血行不良が原因で、首や肩の筋肉が緊張し、頭痛を引き起こすことがあります。温めることやストレッチが有効な場合が多いです。
- 冷え+むくみ: 冷えによる血行不良は、体内の水分代謝を悪化させ、むくみを引き起こすことがあります。特に足のむくみは、冷えと密接に関連していることが多いです。
- 冷え+生理不順・生理痛: 女性に多く見られる組み合わせで、冷えが骨盤内の血流を悪化させ、ホルモンバランスに影響を与えることで生理周期の乱れや痛みを増強させることがあります。
- 冷え+倦怠感・気分の落ち込み: 甲状腺機能低下症や貧血、自律神経失調症などの可能性が考えられます[2]。
これらの複合的な症状が見られる場合、単一の症状に対する対処だけでは不十分なことがあります。複数の症状が同時に現れる場合は、体のシステム全体に影響を及ぼしている可能性が高いため、専門医の診断を受けることが重要です。特に、冷えが原因で組織が損傷するような極端なケース(非凍結性寒冷障害)も存在するため、症状が改善しない場合は早めに医療機関を受診しましょう[3]。
まとめ

多汗と冷えは、多くの人が経験する一般的な症状ですが、その原因は多岐にわたり、生活習慣から基礎疾患まで様々です。原発性多汗症や冷え性の多くは、ストレスや自律神経の乱れ、生活習慣の偏りが関与していることが多く、セルフケアや市販薬での改善が期待できます。しかし、甲状腺機能亢進症や糖尿病、レイノー病などの基礎疾患が原因となっている「続発性」の多汗や冷えの場合は、原因疾患の治療が不可欠です。また、多汗と冷えが同時に現れたり、他の症状(動悸、体重減少、肩こり、むくみなど)と複合的に現れたりする場合は、より注意が必要です。症状が改善しない場合や、日常生活に支障をきたす場合は、皮膚科、内科、婦人科などの専門医を受診し、適切な診断と治療を受けることをお勧めします。薬剤師としては、患者さん一人ひとりの症状や生活背景に合わせたアドバイスを提供し、より良い健康状態へと導くサポートを心がけています。
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- Rita Patel, Monica Halem, Martin Zaiac. The combined use of forced cold air and topical anesthetic cream for analgesia during the treatment of palmar hyperhydrosis with botulinum toxin injections.. Journal of drugs in dermatology : JDD. 2009. PMID: 19852126
- Michael Lause, Alisha Kamboj, Esteban Fernandez Faith. Dermatologic manifestations of endocrine disorders.. Translational pediatrics. 2022. PMID: 29184811. DOI: 10.21037/tp.2017.09.08
- Ken Zafren. Nonfreezing Cold Injury (Trench Foot).. International journal of environmental research and public health. 2021. PMID: 34639782. DOI: 10.3390/ijerph181910482
- Takichi Munetsugu, Ken Igawa, Tomoko Fujimoto et al.. Cold-induced hyperhidrosis: possible association with hyper-IgE syndrome.. International journal of dermatology. 2017. PMID: 27778332. DOI: 10.1111/ijd.13357
- ボトックス(ボツリヌス毒素)添付文書(JAPIC)
- オビソート(アセチルコリン)添付文書(JAPIC)

