大動脈弁狭窄症の症状と受診目安
痛みの強さだけで判断せず、以前できた動作がつらくなっていないかと、救急性を確認します。
大動脈弁狭窄症では、階段や坂道での息切れ、胸の圧迫感、ふらつき・失神、疲れやすさが重要です。安静でも続く強い胸痛や息苦しさ、失神、意識がぼんやりする状態は119番を考えてください。症状は徐々に出るため、「年齢のせい」と思って活動を減らした変化も循環器内科へ伝えます。
- どの症状なら119番?
- 症状が軽くても受診する?
- 診察で何を伝える?
- 大動脈弁
- 心臓から全身へ血液を送り出す出口にある弁です。
- 狭窄(きょうさく)
- 弁が硬く狭くなり、血液が通りにくい状態です。
- 労作時
- 歩行、階段、家事など体を動かしているときのことです。
- 失神
- 一時的に意識を失うことです。立ちくらみとは区別して伝えます。
息切れ・胸の圧迫感・ふらつきは、動いたときに出やすい
狭くなった大動脈弁を通して血液を送り出すため、心臓には強い負担がかかります。進行すると運動時に必要な血流を保ちにくくなります。
症状が現れた重症大動脈弁狭窄症では、弁置換の必要性を速やかに検討します。[1][2]

安静時の強い症状、失神、意識変化では119番を考える
安静でも続く強い胸の圧迫感、呼吸が苦しく会話が難しい、失神、意識がぼんやりする、冷汗や顔色不良を伴う場合です。突然の胸・背中の激痛、片側の麻痺や言葉の異常も救急要請を考えてください。
大動脈弁狭窄症だけでなく、心筋梗塞、急性心不全、不整脈、大動脈解離、脳卒中などを区別する必要があります。一人で運転せず、救急隊へ弁膜症を指摘されていることと服薬内容を伝えます。[1][3]
受診前は、症状が出た動作と続いた時間を記録する
- 始まった時期
何日前・何週間前から変わったかを書きます。
- きっかけ
歩行、階段、食事、安静、入浴など、出た場面を記録します。
- 続いた時間
休むと何分で戻ったか、今も続くかを伝えます。
- 一緒に出た症状
胸痛、動悸、ふらつき、失神、むくみ、体重増加を確認します。
- 生活への影響
できなくなった動作と、家族が気づいた変化を伝えます。
日々の循環器内科診療では、「息切れはありますか」だけでなく、去年と同じ坂道を同じ速さで歩けるか、途中で休むようになったかを伺います。活動を避けて症状が隠れている場合があるためです。ただし生活の変化だけで重症度は決めず、心エコー所見と合わせます。
新しい労作時症状は、次回予約まで待たず相談する
当日中の対面評価を考える
- 初めて失神した、または失神しかけた
- 安静にしても胸痛や息苦しさが残る
- 短期間に息切れやむくみが悪化した
- 弁膜症があり、血圧低下や強い動悸を伴う
早めに循環器内科へ連絡する
- 歩行・階段で胸の圧迫感を繰り返す
- 活動量や歩く速さが落ちた
- 健診で心雑音や弁の異常を指摘された
- 定期検査の間に新しい症状が出た
無症状で軽症・中等症と評価されている場合も、決められた間隔で診察と心エコーを続けます。症状が変われば予定を前倒しします。[1][2]
症状だけでは、大動脈弁狭窄症の重症度を決められない
息切れや胸痛は、冠動脈疾患、心不全、不整脈、肺疾患、貧血などでも起こります。反対に、活動量が少ないと重症でも症状が目立たないことがあります。診断には聴診と心エコーを用い、血流速度、圧の差、弁口面積、心機能を総合します。[1][3]
この記事で救急性や手術時期を自己判定しないでください。新しい症状、悪化、失神があれば、次回予約を待たず医療機関へ連絡してください。
よくある質問
息切れがなければ重症ではありませんか?
いいえ。活動量を減らして症状が隠れる場合があり、心エコー所見や心機能と合わせて評価します。
胸痛が休むと治れば様子を見てよいですか?
運動で繰り返す胸の圧迫感は早めに相談してください。安静でも続く、冷汗や息苦しさを伴う場合は119番を考えます。
ふらつきと失神は同じですか?
失神は一時的に意識を失うことです。どちらも運動中に起きた場合や繰り返す場合は、発生時刻と状況を伝えて早めに評価します。
症状が出たら運動を続けてもよいですか?
その場で運動を中止して安全な場所で休みます。強い症状や失神があれば救急要請を考え、以後の運動量は医師に確認してください。
参考文献
- 日本循環器学会ほか:2020年改訂版 弁膜症治療のガイドライン
- Praz F, et al. 2025 ESC/EACTS Guidelines for the management of valvular heart disease. Eur Heart J. PMID: 40878295
- Otto CM, et al. 2020 ACC/AHA Guideline for the Management of Patients With Valvular Heart Disease. Circulation. PMID: 33332150
- Généreux P, et al. Transcatheter Aortic-Valve Replacement for Asymptomatic Severe Aortic Stenosis. N Engl J Med. PMID: 39466903
TOCグループ
医療法人御照会を中心に、対面診療・オンライン診療・医療情報・医療機関支援を行うグループです。

コメントを残す