萎縮性胃炎の検査・除菌と経過観察
検査結果に「萎縮」と書かれていても、すぐにがんと決まるわけではありません。感染歴と胃粘膜の状態を確認し、今後の検査を相談します。
萎縮性胃炎は、慢性的な炎症などにより胃の腺が減った状態で、胃がんそのものではありません。ただし胃がんのリスクを考える手がかりになるため、ピロリ菌の現在の感染と除菌歴、萎縮の範囲を確認します。除菌が成功しても危険はゼロにならず、胃カメラの間隔は所見や病歴に合わせて医師と決めます。
萎縮性胃炎は、胃の粘膜に起きた変化の名前
胃の粘膜には胃酸などを分泌する腺があります。萎縮性胃炎は、長く続く炎症などに伴ってその腺が減った状態です。胃全体が小さくなる、食べ物が入らなくなるという意味ではありません。ピロリ菌の長期感染が主な原因の一つで、自己免疫による変化もあります。[1][6]
- 慢性胃炎
- 長く続く炎症を表す言葉です。痛みがずっとあるという意味とは限りません。
- 萎縮性胃炎
- 腺が減る粘膜の変化を表します。程度や範囲を確認します。
- 腸上皮化生
- 胃の粘膜の一部が腸の粘膜に似た性質へ変わった状態です。これだけでがんと診断されるわけではありません。
胃カメラでは粘膜の色、ひだ、血管の見え方などから萎縮を評価し、必要に応じて生検で組織を調べます。結果用紙に「萎縮」や「腸上皮化生」とあっても、その言葉だけで現在のがんの有無や個人の発症確率は決まりません。どの範囲に変化があるか、ほかに調べる病変があるかを説明してもらいましょう。[1][7]
「ピロリ菌陰性」でも、過去の記録を確認する
萎縮を指摘されたら、現在のピロリ菌感染と過去の除菌歴を確認します。今も菌がいる状態、除菌後、過去に感染した可能性がある状態は同じではありません。内視鏡の見た目だけで感染の有無を確定せず、適切な検査を組み合わせます。[1][2]
- 検査名と時期を確認
血液の抗体検査か、呼気・便などの検査かを記録します。
- 薬と除菌歴を共有
胃酸を抑える薬、最近の抗菌薬、除菌した年と成功判定の結果を伝えます。
- 現在の感染を評価
過去の結果や検査条件も踏まえ、追加検査が必要か判断します。
- 陽性なら治療と判定へ
除菌治療を検討し、飲み終えた後の成功判定まで予定を確認します。
胃薬などの影響で検査結果の解釈が変わる場合があります。採血の抗体が陰性だったという一点だけで、未感染だったと自己判断しないでください。検査のための休薬は医師の指示に従います。ピロリ菌検査の違いと準備も参考になります。[2]
ピロリ菌だけでは説明しにくい胃の変化や、鉄・ビタミンB12不足がある場合は、自己免疫性胃炎を調べることもあります。原因不明の貧血も含めて相談してください。詳しくは自己免疫性胃炎と貧血の関係で整理しています。[6]
除菌でリスクは下がっても、ゼロにはならない
現在の感染が確認された場合は、除菌を検討します。2025年の系統的レビューでは、胃の腫瘍がない感染者を対象とする8件の無作為化比較試験をまとめると、除菌群の胃がん発生の相対リスクは0.64でした。これは比較対象に対する割合であり、「個人の発症率が64%」という意味ではありません。[3]
研究には対象、追跡期間、胃の状態などの違いがあります。除菌によってどれほど利益があるかを一人ひとりにそのまま予測することはできず、必ずがんを防ぐ保証でもありません。また、この結果はピロリ菌感染者への除菌の研究で、自己免疫性胃炎が同じ方法で治ることを示したものではありません。[3]
除菌後に炎症が軽くなっても、すでにある萎縮や腸上皮化生がすべて元に戻るとは限りません。菌の成功判定と胃粘膜の経過観察は別に考えます。除菌後の胃カメラの必要性はピロリ菌除菌後の検査と管理でも確認できます。[2]
萎縮の範囲や病歴から、次の検査を相談する
定期的な胃カメラを考える際は、萎縮の範囲、腸上皮化生、生検結果、胃がんの家族歴、過去の胃がん治療、感染の状態などを確認します。痛みがないから不要、萎縮があるから毎月必要、というように病名だけで間隔を決めるものではありません。[7][5]

日本ヘリコバクター学会の2024年改訂指針は、除菌後の長期の経過観察を勧め、萎縮・腸上皮化生・胃がん治療歴などから間隔を個別に決めるとしています。日本消化器内視鏡学会の一般向け解説では2〜3年間隔という例もありますが、全員に適用する予定表ではありません。胃がんの内視鏡治療後には、少なくとも年1回を勧めています。個別にもっと短い間隔を指示された場合は、その所見と理由を確認してください。[2][5]
欧州のMAPS III(2025年)も、萎縮の広がりなどで経過観察を分けています。ただし、海外の特定条件で示された間隔や「観察しない」という選択を、日本のすべての患者へ機械的に当てはめることはできません。検査の負担や持病も含め、主治医と必要性を共有します。[7]
萎縮を指摘された後の説明では、「次も胃カメラを受ける」という予定だけでなく、前回のどの所見を経過観察するのかを確認すると、検査の目的が分かりやすくなります。結果用紙と除菌の記録を一緒に残しておくと、通院先が変わったときにも引き継げます。症状がないことと、検査で確認すべき変化がないことは別です。
定期検査まで待たず、症状の変化を伝える
今すぐ119番へ
吐血、コーヒーかす状の嘔吐、突然の激しい腹痛。胸の強い痛み、息苦しさ、冷汗、意識が遠のくときも救急対応です。自分で運転しません。
当日中に連絡・受診
原因不明の黒くタール状の便、繰り返す嘔吐、水分が取れない場合。黒い便に冷汗・ふらつきなどを伴う場合は119番へ連絡します。
症状・検査結果を予約相談
症状がなく健診で萎縮を指摘された方は、結果用紙を持って消化器内科へ相談します。体重減少、貧血、食事量の低下があれば、予約日を待たず受診時期を相談してください。
定期検査は、状態が落ち着いているときの計画です。吐血や激痛が出た場合に、その予約日まで待つためのものではありません。新たな食欲低下、体重減少、貧血などがある場合も、いつからどのように変わったかを医療機関へ伝えて受診時期を相談します。[8][6]
貧血の検査が必要かは、症状、これまでの採血、胃粘膜の所見などから判断します。鉄不足やビタミンB12不足を調べる場合もありますが、貧血をすべて胃炎のせいにすることはできません。別の出血源や原因を調べる必要があるか、合わせて説明を受けましょう。[6]
結果用紙に、原因・次回検査・連絡先を残す
- 記録すること
- 萎縮の範囲、生検の結果、ピロリ菌検査名・除菌成功の記録、次回の検査時期。
- 診察で聞くこと
- 今の症状への薬か、感染への治療か、今後の胃の状態を見る検査か、それぞれの目的。
- 費用を聞くこと
- 経過観察としての診療か健診か、生検や鎮静など追加する内容と保険・自己負担の扱い。
禁煙は胃の健康を考えるうえでも相談できる対策です。ただし生活習慣を整えることと、感染を治療することや必要な胃カメラを受けることは置き換えられません。胃がんが心配でも、予防目的でアスピリンなどを自己追加しないでください。薬の利益と出血などの危険を個別に検討する必要があります。[7]
検査の準備や鎮静の使用、付き添いの要否は施設の指示を確認します。鎮静薬を使った日は自動車・バイク・自転車を運転できないため、帰宅方法も先に相談します。血液を固まりにくくする薬などを使っている場合は予約時に申告し、自分で中止しないでください。費用は実施内容で変わるため、検査前に何が予定され、追加される可能性があるかを聞いておくと安心です。[4]
転院する場合は、「慢性胃炎」とだけ伝えるより、結果用紙や生検報告、除菌の記録を共有すると確認すべき点を引き継ぎやすくなります。次の検査が必要な理由が分からないときは、予約を取り消す前に説明を求めてください。
よくある質問
結果のC型・O型は何を意味しますか?
内視鏡で見た萎縮の広がりを表す分類に使われます。記号だけでがんの有無や次の検査日が決まるわけではないため、画像やほかの所見と合わせて説明を受けてください。
ペプシノゲンの採血だけで胃カメラを省けますか?
採血は胃粘膜の状態を考える手がかりになりますが、胃の病変を直接確認する検査ではありません。すでに所見を指摘された方は、予定された内視鏡を置き換えられるか主治医へ確認してください。
生検の結果がまだ出ていなくても、次の予約は必要ですか?
胃カメラ当日の所見だけでは説明が完了していない場合があります。生検の結果説明を受ける日時や方法を確認し、連絡がないことだけで異常なしと判断しないでください。
他院で除菌しましたが、結果が見つかりません。受診できますか?
受診できます。治療した年、医療機関、覚えている検査を伝えてください。必要な記録の取り寄せや追加の確認を相談できます。
参考文献
- 日本消化器内視鏡学会.ピロリ菌感染は内視鏡検査でわかりますか? 2024年12月19日更新.
- Isomoto H, Shimoyama T, Ito M, et al. Guidelines for the management of Helicobacter pylori infection in Japan: 2024 revised edition. Journal of gastroenterology. 2026. PMID: 41902905. 日本ヘリコバクター学会2024年改訂版・英語版全文
- Ford AC, Yuan Y, Park JY, et al. Eradication Therapy to Prevent Gastric Cancer in Helicobacterpylori-Positive Individuals: Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials and Observational Studies. Gastroenterology. 2025. PMID: 39824392.
- 日本消化器内視鏡学会.胃内視鏡検査の受け方について.
- 日本消化器内視鏡学会.胃内視鏡検査は何年に1回受ければいいですか? 2023年2月7日更新.
- Shah SC, Piazuelo MB, Kuipers EJ, et al. AGA Clinical Practice Update on the Diagnosis and Management of Atrophic Gastritis: Expert Review. Gastroenterology. 2021. PMID: 34454714.
- Dinis-Ribeiro M, Libânio D, Uchima H, et al. Management of epithelial precancerous conditions and early neoplasia of the stomach (MAPS III): European Society of Gastrointestinal Endoscopy (ESGE), European Helicobacter and Microbiota Study Group (EHMSG) and European Society of Pathology (ESP) Guideline update 2025. Endoscopy. 2025. PMID: 40112834. ESGE公式ガイドライン原本
- 消防庁.救急車を上手に使いましょう.2025年12月発行.
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