- ✓ 白内障は加齢や疾患、外傷などにより目の水晶体が濁る病気です。
- ✓ 視力低下、かすみ目、まぶしさなどが主な症状で、進行すると日常生活に支障をきたします。
- ✓ 根本的な治療は手術であり、適切な時期に専門医と相談することが重要です。
白内障は、目のレンズの役割を果たす「水晶体」が濁ることで、視力低下を引き起こす病気です。世界的に見ても失明原因の上位を占め、特に高齢者に多く見られます[1]。
白内障の原因とメカニズム

白内障は、目の水晶体が濁ることで光の透過性が低下し、視力障害を引き起こす疾患です。その原因は多岐にわたり、それぞれ異なるメカニズムで水晶体の透明性が失われます。
白内障の最も一般的な原因は加齢であり、これを「加齢性白内障」と呼びます。加齢に伴い、水晶体を構成するタンパク質が変性し、凝集することで濁りが生じます[1]。このプロセスは、紫外線への曝露、活性酸素による酸化ストレス、栄養状態の変化などが複合的に関与していると考えられています。臨床の現場では、40代後半から水晶体のわずかな濁りが見られる患者さんも少なくありませんが、多くの方が自覚症状を感じ始めるのは60歳前後からです。
加齢性白内障
加齢性白内障は、その名の通り年齢とともに進行する白内障で、最も多く見られるタイプです。水晶体のタンパク質は、一度形成されると新陳代謝がほとんどなく、生涯にわたって使用されます。そのため、長年の間に紫外線や活性酸素などの影響を受け、徐々に変性し、濁りを生じさせます。この濁りは、水晶体の中心部から硬くなる「核白内障」、皮質部分に濁りが生じる「皮質白内障」、水晶体の後嚢(こうのう)直下に濁りが生じる「後嚢下白内障」の3つのタイプに分類され、それぞれ症状の出方や進行速度が異なります。
続発性白内障
続発性白内障は、他の目の病気や全身疾患、薬剤の使用などが原因で発生する白内障です。代表的なものとしては、糖尿病性白内障、アトピー性皮膚炎に伴う白内障、ブドウ膜炎などの眼内炎症による白内障、ステロイド薬の長期使用による白内障などがあります。特に糖尿病患者さんの場合、血糖コントロールが不良であると、水晶体内の糖代謝異常がタンパク質の変性を促進し、白内障の進行が早まることが知られています[2]。実臨床では、糖尿病をお持ちの患者さんには定期的な眼科検診を強くお勧めしており、早期発見・早期対応が重要だと考えています。
外傷性白内障
外傷性白内障は、目に強い衝撃や外傷を受けた際に水晶体が損傷し、濁りを生じるものです。打撲や貫通性の外傷、熱傷などが原因となります。外傷の程度や部位によって、濁りの広がり方や進行速度は異なりますが、若い年齢でも発症することがあります。
先天性白内障
先天性白内障は、生まれつき水晶体に濁りがある状態です。遺伝的要因や、妊娠中の母親の感染症(風疹など)、代謝異常などが原因となることがあります。乳幼児期に発見された場合は、視覚発達に影響を及ぼす可能性があるため、早期の治療が検討されます。
- 水晶体(すいしょうたい)
- 眼球の中にある透明なレンズで、光を屈折させて網膜に像を結ぶ役割を担っています。厚みを調節することでピント合わせを行います。
白内障の症状とセルフチェック
白内障の症状は、水晶体の濁りの種類や進行度合いによって異なりますが、多くの場合、視界の質の低下から始まります。初期段階では自覚症状が少ないこともありますが、進行するにつれて日常生活に支障をきたすようになります。
白内障の主な症状は、視力低下、かすみ目、まぶしさ、物が二重に見える、色の変化などです。初診時に「最近、車の運転中に標識が見えにくくなった」「テレビの画面がぼやけて見える」と相談される患者さんも少なくありません。特に夜間の運転や薄暗い場所での作業に不便を感じる方が多い印象です。
主な白内障の症状とは?
- 視力低下:最も一般的な症状で、眼鏡やコンタクトレンズを調整しても視力が改善しないことがあります。遠くの文字が読みにくい、顔の表情がぼやけて見えるなど、徐々に視力が低下します。
- かすみ目・霧視:視界全体が霧がかかったようにぼやけて見えます。特に明るい場所で症状が強くなることがあります。
- まぶしさ(羞明):太陽光や車のヘッドライト、蛍光灯などの光が異常にまぶしく感じられます。光が散乱することで、光の周りにハロー(光の輪)やグレア(ぎらつき)が見えることもあります。これは、濁った水晶体が光を不規則に散乱させるために起こります。
- 物が二重・三重に見える(多視症):片目で見ても物が二重や三重に見えることがあります。これは、水晶体の一部分が濁り、光が不均一に屈折するために起こります。
- 色の変化:色が全体的に黄ばんで見えたり、彩度が低く感じられたりすることがあります。特に青色が認識しにくくなる傾向があります。
- 近視化:核白内障の場合、水晶体の中心が硬くなり屈折率が変化することで、一時的に近視が進むことがあります。老眼が進んでいた方が、眼鏡なしで近くが見えるようになる「セカンドサイト」と呼ばれる現象が起こることもありますが、これは白内障の進行を示すサインです。
白内障のセルフチェック項目
以下の項目に当てはまる場合、白内障の可能性が考えられます。気になる症状があれば、眼科医の診察を受けることをお勧めします。
- 以前より物がかすんで見えるようになった。
- 明るい場所で特にまぶしく感じる、光がぎらつく。
- 夜間の車の運転がしにくくなった(対向車のライトがまぶしい)。
- 物が二重、三重に見えることがある。
- 色の区別がつきにくくなった、全体的に黄みがかって見える。
- 眼鏡やコンタクトレンズを新しくしても、視力が改善しない。
白内障の症状はゆっくりと進行することが多いため、自覚症状がないまま進行しているケースも少なくありません。定期的な眼科検診が早期発見には不可欠です。
白内障の検査と診断

白内障の診断は、自覚症状の問診に加え、複数の専門的な眼科検査によって総合的に行われます。これらの検査を通じて、水晶体の濁りの有無、種類、程度、そして視機能への影響を正確に評価します。
白内障の診断では、視力検査だけでなく、眼底検査や細隙灯顕微鏡検査が非常に重要です。臨床の現場では、患者さんの訴える「見えにくさ」が、単なる老眼なのか、それとも白内障によるものなのかを鑑別するために、これらの検査を丁寧に行うことを心がけています。特に、細隙灯顕微鏡検査では、水晶体の濁りの位置や形状を詳細に観察でき、白内障の種類や進行度を判断する上で欠かせません。
どのような検査が行われるのか?
- 視力検査:遠方視力、近方視力を測定し、視機能の低下の程度を評価します。白内障による視力低下は、眼鏡などで矯正しても改善しにくいのが特徴です。
- 細隙灯顕微鏡検査(さいげきとうけんびきょうけんさ):最も重要な検査の一つです。細い光を眼球に当て、医師が顕微鏡で水晶体の状態を詳細に観察します。水晶体の濁りの位置(核、皮質、後嚢下など)、濁りの程度、種類などを確認し、白内障の診断と進行度を評価します。
- 眼圧検査:眼球の圧力を測定します。白内障と緑内障は併発することもあり、眼圧の確認は重要です。
- 眼底検査:瞳孔を開く目薬を点眼し、眼底(網膜や視神経など)の状態を詳しく観察します。白内障以外に視力低下の原因となる病気(例えば、加齢黄斑変性症や糖尿病網膜症など)がないかを確認します。
- 角膜内皮細胞検査:手術を検討する際に、角膜の一番内側にある細胞の数を測定します。この細胞は再生しないため、手術による影響を評価し、安全性を確認するために行われます。
- 光干渉断層計(OCT):網膜の断面画像を撮影し、網膜疾患の有無を確認します。白内障手術後の視力回復に影響を与える可能性のある疾患を事前に把握するために行われることがあります。
- 眼軸長測定・角膜曲率半径測定:手術で挿入する眼内レンズの度数を決定するために、眼球の長さ(眼軸長)や角膜のカーブ(角膜曲率半径)を測定します。
診断基準と進行度
白内障の診断は、これらの検査結果を総合的に判断して行われます。特に細隙灯顕微鏡検査で確認される水晶体の濁りの種類や程度が重要です。白内障の進行度は、患者さんの自覚症状や視力、濁りの状態によって「初期」「中期」「後期」などに分けられることがあります。どの段階で手術を検討するかは、患者さんの日常生活への影響や希望によって異なりますが、一般的には視力が0.7以下になり、日常生活に不便を感じ始めたら手術が検討されることが多いです。
| 検査項目 | 目的 | 得られる情報 |
|---|---|---|
| 視力検査 | 視機能の評価 | 遠方・近方視力、矯正視力 |
| 細隙灯顕微鏡検査 | 水晶体・前眼部の詳細観察 | 白内障の種類、濁りの程度、位置 |
| 眼底検査 | 網膜・視神経の評価 | 他の眼疾患の有無 |
| 眼軸長測定 | 眼内レンズ度数決定 | 眼球の前後方向の長さ |
白内障の治療(手術)
白内障の根本的な治療法は、濁った水晶体を取り除き、人工の眼内レンズを挿入する手術です。点眼薬は白内障の進行を遅らせる効果が期待されるものもありますが、一度濁った水晶体を透明に戻すことはできません。
白内障手術は、眼科手術の中でも最も一般的に行われる手術の一つであり、その安全性と有効性は確立されています。日常診療では、患者さん一人ひとりの目の状態やライフスタイル、希望に応じて最適な眼内レンズの選択や手術計画を立てることを重視しています。多くの患者さんが手術を始めて数ヶ月ほどで「以前よりも世界が明るく、鮮やかに見えるようになった」とおっしゃる方が多いです。
白内障手術のタイミングはいつが適切か?
白内障手術の適切なタイミングは、患者さんの視力や日常生活への影響、希望によって異なります。以前は白内障がかなり進行してから手術を行うことが多かったですが、現在は手術技術の進歩により、比較的早期でも安全に手術を行うことが可能です。一般的には、視力が0.7以下になり、読書や車の運転、仕事など、日常生活に不便を感じ始めたら手術を検討する時期と言えるでしょう。医師と十分に相談し、ご自身のライフスタイルやニーズに合ったタイミングで手術を受けることが重要です。
白内障手術の主な方法
現在、白内障手術の主流は「超音波乳化吸引術(ちょうおんぱにゅうかきゅういんじゅつ)」です。この手術では、角膜の縁に数ミリの小さな切開口を作り、そこから超音波の振動で濁った水晶体を細かく砕き、吸引除去します。その後、透明な人工の眼内レンズを挿入します。この眼内レンズは、一度挿入すると半永久的に使用できるものです。
- 超音波乳化吸引術:局所麻酔下で行われ、手術時間は通常10〜20分程度です。小さな切開口で行われるため、術後の回復が早く、合併症のリスクも比較的低いとされています。
- フェムトセカンドレーザー白内障手術:近年導入された新しい技術で、レーザーを用いて水晶体を前もって柔らかくしたり、切開を行ったりするものです。より精密な手術が可能とされていますが、保険適用外となる場合が多いです。
眼内レンズの種類
眼内レンズには、単焦点眼内レンズと多焦点眼内レンズがあります。
- 単焦点眼内レンズ:ピントが合う距離が1ヶ所(遠方、中間、近方のいずれか)に固定されるレンズです。遠方にピントを合わせれば、近くを見る際には老眼鏡が必要になります。保険適用です。
- 多焦点眼内レンズ:遠方と近方、または遠方から中間までなど、複数の距離にピントが合うように設計されたレンズです。眼鏡なしで生活できる可能性が高まりますが、単焦点レンズに比べてまぶしさやハロー・グレアを感じやすい場合があります。また、保険適用外のものが多く、費用が高額になる傾向があります。
眼内レンズの選択は、患者さんのライフスタイル、職業、趣味、そして目の状態を考慮して慎重に行う必要があります。実際の診療では、患者さんのニーズを丁寧にヒアリングし、メリット・デメリットを十分に説明した上で、最適なレンズを一緒に選ぶことが重要なポイントになります。
手術後の合併症と注意点
白内障手術は安全性の高い手術ですが、ごく稀に合併症が起こる可能性もあります。主な合併症としては、後発白内障、眼内炎、網膜剥離、黄斑浮腫などがあります[3]。特に後発白内障は、手術後に挿入した眼内レンズの周りの袋(後嚢)が濁ってくるもので、数ヶ月から数年後に発症することがあります。これはレーザー治療で比較的簡単に治すことが可能です。手術後は、医師の指示に従って点眼薬を使用し、定期的な検診を受けることが大切です。
白内障の予後と生活

白内障手術は、視力回復に非常に効果的な治療法であり、多くの患者さんが手術後にQOL(生活の質)の向上を実感されます。しかし、手術後の目の状態を良好に保ち、長期的な視機能を維持するためには、適切な術後ケアと生活上の注意点が重要です。
白内障手術後の視力は、一般的に良好に回復しますが、術前の目の状態(例えば、緑内障や網膜疾患の有無など)によって回復度合いは異なります。実際の診療では、手術後の患者さんが「以前は見えなかった景色が鮮明に見えるようになった」「趣味の読書が再び楽しめるようになった」と喜ばれる姿をよく経験します。しかし、手術が成功しても、他の目の病気が進行する可能性もあるため、定期的な眼科検診は欠かせません。
手術後の視力回復と生活の変化
白内障手術後、多くの患者さんは視力の大幅な改善を経験します。特に、濁りが強かった方ほど、視界が明るく鮮やかになったと感じることが多いです。遠方視力に焦点を合わせた単焦点レンズを選択した場合、遠くはよく見えるようになりますが、近くを見る際には老眼鏡が必要になります。多焦点レンズを選択した場合は、眼鏡なしで遠近両方がある程度見えるようになることが期待されますが、見え方の質には個人差があります。
- 運転:夜間の運転時のまぶしさや視界のぼやけが改善され、安全に運転できる方が増えます。
- 読書・趣味:文字がはっきり見えるようになり、読書や手芸などの趣味を再び楽しめるようになります。
- 日常生活:階段の昇り降りや段差の認識がしやすくなり、転倒のリスクが減少するなど、日常生活の安全性が向上します。
術後のケアと注意点
手術後は、感染症予防や炎症を抑えるために、医師から指示された点眼薬を正しく使用することが非常に重要です。また、目をこすったり、強い衝撃を与えたりすることは避ける必要があります。術後数週間は、入浴や洗顔、洗髪に制限がある場合がありますので、医師の指示に従ってください。定期的な術後検診も、目の状態を確認し、合併症の早期発見・早期治療のために不可欠です。
白内障の再発はある?後発白内障について
白内障手術で挿入した眼内レンズ自体が濁ることはありません。しかし、手術後に「後発白内障」と呼ばれる状態になることがあります。これは、眼内レンズを支えている水晶体の後嚢(こうのう)という薄い膜が濁ってくる現象で、再び視力低下やかすみ目、まぶしさなどの症状が現れます。後発白内障は、白内障手術を受けた患者さんの約10〜20%に発生すると報告されており[3]、比較的頻繁に見られます。しかし、これはレーザー(YAGレーザー)を使って濁った後嚢に穴を開けることで、比較的短時間で視力を回復させることが可能です。このレーザー治療は外来で受けることができ、痛みもほとんどありません。
また、ごく稀に、白内障手術後に他の眼疾患(例えば、網膜剥離や緑内障など)が発症・進行することもあります。特に、過去に網膜剥離の既往がある場合や、強度近視の患者さんは、術後も網膜の状態に注意が必要です[4]。そのため、白内障手術後も定期的な眼科検診を継続し、目の健康状態をチェックすることが、長期的な視機能維持のために非常に大切です。
まとめ
白内障は、目の水晶体が濁ることで視力低下を引き起こす病気であり、加齢が主な原因ですが、他の疾患や外傷、薬剤によっても発症します。視界のかすみ、まぶしさ、視力低下などが主な症状で、進行すると日常生活に大きな支障をきたします。診断は、視力検査や細隙灯顕微鏡検査などの眼科検査によって行われ、水晶体の濁りの種類や程度を評価します。根本的な治療は、濁った水晶体を人工の眼内レンズに置き換える手術であり、その安全性と有効性は確立されています。手術後の視力回復は良好な場合が多く、QOLの向上が期待できますが、術後の適切なケアと定期的な検診が長期的な視機能維持には不可欠です。
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- Penny A Asbell, Ivo Dualan, Joel Mindel et al.. Age-related cataract.. Lancet (London, England). 2005. PMID: 15708105. DOI: 10.1016/S0140-6736(05)17911-2
- Deepak Mishra, Anurag Kashyap, Tanmay Srivastav et al.. Enzymatic and biochemical properties of lens in age-related cataract versus diabetic cataract: A narrative review.. Indian journal of ophthalmology. 2023. PMID: 37322647. DOI: 10.4103/ijo.IJO_1784_22
- Diana V Do, Stephen Gichuhi, Satyanarayana S Vedula et al.. Surgery for postvitrectomy cataract.. The Cochrane database of systematic reviews. 2018. PMID: 29364503. DOI: 10.1002/14651858.CD006366.pub4
- Rajendran Janani, Pandurangan Sneha. Cataract surgery following penetrating keratoplasty in children.. Indian journal of ophthalmology. 2023. PMID: 37602632. DOI: 10.4103/IJO.IJO_3124_22

