子どものアデノウイルス感染症
症状・治療・登園目安
「プール熱」と呼ばれる咽頭結膜熱だけでなく、さまざまな症状を起こすアデノウイルスを、受診と集団生活の判断に沿って整理します。
アデノウイルスは、発熱、のどの痛み、結膜炎、せき、下痢など多様な症状を起こします。俗に「プール熱」と呼ばれるのは、発熱・咽頭炎・結膜炎を伴う咽頭結膜熱で、アデノウイルス感染の一部です。治療は水分補給と症状を和らげる対応が中心です。咽頭結膜熱の登園・登校は、原則として主要症状が消えた後2日を経過してからですが、診断名と施設規定を確認します。[1][2]
まず30秒で受診の緊急度を確認
病名が分からなくても、呼吸・顔色・反応・水分で優先度を判断できます。
唇が青紫、呼吸が止まる・明らかに苦しい、強い胸のへこみ、呼びかけへの反応が乏しい、けいれん。
生後3か月未満、安静時も呼吸が速い・音がする、水分や尿が減る、症状が悪化または再悪化している。
呼吸が楽で顔色と反応が普段どおり、水分と尿が保たれ、症状が全体として改善方向にある。
- 胸のへこみ(陥没呼吸)
- 息を吸うたびに、肋骨の間やみぞおちが内側へへこむ状態。
- 鼻翼呼吸
- 息をするたびに、小鼻が大きく開いたり閉じたりする状態。
- 安静時の呼吸音
- 泣いていない時にもゼーゼー・ヒューヒュー・高い音が聞こえる状態。
受診時に伝えるメモ:発症日、安静時の呼吸動画、直近に飲めた量、最後の尿、使った薬と時刻。緊急時は記録より受診を優先します。迷う場合は子ども医療電話相談 #8000も利用できます。
アデノウイルス感染症とは
アデノウイルスには多くの型があり、呼吸器、目、消化管、尿路などで異なる病気を起こします。季節を問わずみられ、飛沫、接触、便を介して広がります。
「アデノウイルス陽性」という検査結果だけで、必ず咽頭結膜熱と診断されるわけではありません。発熱・咽頭炎・結膜炎の組み合わせや流行状況を診察して判断します。[1][3]
症状の組み合わせで考える
38〜39℃前後の発熱、のどの痛み、結膜炎が中心。俗称がプール熱です。
鼻水、せき、咽頭炎、気管支炎、肺炎。型や年齢で症状が異なります。
目の充血、涙、目やに。強い痛みやまぶしさ、見えにくさは眼科評価が必要です。
下痢、嘔吐、腹痛。乳幼児では脱水に注意します。
咽頭結膜熱では高熱が上下しながら4〜5日ほど続くことがあります。熱の高さだけでなく、水分が取れるか、尿が出るか、呼吸や反応が保たれているかを確認します。[1]
受診を急ぐサイン
当日中に相談したい状態
- 高熱が続き水分が進まない
- 尿が減り、口が乾いている
- 目の痛み、まぶしさ、見えにくさ
- 強い腹痛や血便
重症化に注意する条件
- 乳児
- 免疫機能が低下している
- 慢性の心臓・呼吸器疾患がある
- 呼吸が速い、胸がへこむ
呼吸が苦しい、唇が青紫、反応が乏しい、けいれん、ほとんど飲めない、ぐったりして尿が出ない場合は受診を急ぎます。[3]
「アデノは熱が長い」と分かっていても、すべてを経過の範囲と決めつけません。診察では、熱の推移、飲水と尿、呼吸、目の所見、腹部症状を分けて確認し、肺炎、脱水、角膜障害などの合併を見逃さないようにします。
検査と治療
迅速抗原検査や核酸検査がありますが、検体部位、発症時期、症状との一致を考えて解釈します。軽症では検査をしても治療が変わらない場合があります。[4]
- 基本治療
- 少量ずつの水分、休息、年齢・体重に合う解熱鎮痛薬など、症状を支える対応です。
- 目の症状
- 強い痛み、まぶしさ、視力低下があれば眼科的な評価が必要です。
- 抗菌薬
- アデノウイルスそのものには効きません。細菌感染の合併が確認された場合に別に判断します。
- 抗ウイルス薬
- 健康な子どもの一般的な感染に承認された特異的治療はなく、重症免疫不全など特殊な状況は専門管理です。
小児を対象とした系統的レビューでは、健康な子どもの一般的なアデノウイルス感染に確立した特異的治療は乏しい一方、肺炎が重い場合は長期の喘鳴や低酸素などを含め慎重な経過観察が必要とされています。高熱の日数だけで重症度を判断せず、呼吸と全身状態を優先します。[6][7]
咽頭結膜熱の登園・登校目安
保育所のガイドラインでは、咽頭結膜熱は「発熱、咽頭炎、結膜炎などの主要症状が消失した後2日を経過してから」が登園の目安です。学校でも同様の出席停止基準があります。[2]
咽頭結膜熱、流行性角結膜炎、胃腸炎など診断名で扱いが異なります。症状がなくなってもウイルス排出が続くことがあるため、登園後も手洗いを続けます。園・学校の書類や独自規定も確認してください。
家庭内で広げないために
- せっけんと流水で手を洗う
目を触った後、鼻をかんだ後、おむつ交換後、食事前に行います。
- タオルと洗面具を分ける
顔や目に触れるタオル、枕カバー、点眼容器を共用しません。
- よく触る場所を清掃する
ドアノブ、蛇口、玩具、便座などを施設や製品の方法に沿って清掃・消毒します。
- プールだけを原因と考えない
主な感染経路は日常の飛沫・接触です。症状がある間は無理な集団生活を避けます。
よくある質問
アデノウイルス陽性なら必ずプール熱ですか?
いいえ。プール熱は咽頭結膜熱の俗称で、発熱・咽頭炎・結膜炎などの臨床像で診断します。アデノウイルスは胃腸炎や呼吸器感染なども起こします。
熱は何日続きますか?
咽頭結膜熱では高熱が上下しながら4〜5日ほど続くことがあります。ただし、飲めない、尿が減る、呼吸が苦しい、反応が悪い場合は日数を待たず受診してください。
家族のタオルを一緒に洗ってもよいですか?
洗濯前の共用を避け、目や鼻を拭いた後は手を洗います。通常の洗剤で洗濯し十分に乾燥させ、施設で流行がある場合はその指示も確認してください。
登園許可書は必要ですか?
必要書類は自治体や施設で異なります。咽頭結膜熱では主要症状消失後2日が目安ですが、診断名、症状の経過、園・学校の規定を確認してください。
参考文献
- 厚生労働省:咽頭結膜熱
- こども家庭庁:保育所における感染症対策ガイドライン(2023年10月一部修正)
- CDC: About Adenovirus
- 国立感染症研究所:咽頭結膜熱・流行性角結膜炎 病原体検出マニュアル
- CDC: Preventing Epidemic Keratoconjunctivitis
- Soler Wenglein J, et al. Nonimmunocompromised Children With Adenovirus Infection—Clinical Role and Therapeutic Interventions: A Systematic Review. Pediatr Infect Dis J. 2025. PMID: 40829128
- Yao MM, et al. Risk factors for bronchiolitis obliterans complicating adenovirus pneumonia in children: a meta-analysis. Front Pediatr. 2024. PMID: 39149537
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