子どものロタウイルス胃腸炎
症状・治療・ワクチン
乳幼児で脱水を起こしやすい経過、補水の方法、ワクチンの接種期限と接種後に急ぐ腹痛を整理します。
ロタウイルス胃腸炎は乳幼児に水様便、嘔吐、発熱を起こし、短時間で脱水が進むことがある感染症です。治療の中心は経口補水液を少量ずつ繰り返すことで、抗菌薬は効きません。ワクチンは重症胃腸炎と入院を減らしますが、初回接種の開始時期に上限があります。接種後に周期的な強い腹痛、嘔吐、血便、ぐったりがあれば腸重積を考えて受診を急ぎます。[1][4]
まず30秒で脱水と緊急度を確認
下痢や嘔吐の回数だけでなく、反応・飲める量・尿・顔色を先に確認します。
呼びかけに反応しにくい、けいれん、立てないほどぐったり、唇や顔色が悪い、吐物や便に多量の血、強い持続性腹痛、お腹が張って緑色の液を吐く。
乳児、嘔吐が続き少量の補水も保てない、尿が明らかに減る、口が乾き涙が出にくい、発熱や下痢が悪化する、ワクチン後に周期的な激しい腹痛や血便がある。
少量ずつ飲めて尿が出ており、起こせば普段に近い反応があり、腹痛が持続せず、全体として改善方向にある。
- 尿の減少
- 回数だけでなく、最後に尿が出た時刻と量を確認します。
- 反応の変化
- 遊ばない、目が合いにくい、起こしにくいなど普段との差を見ます。
- 飲める量
- 「飲めた」ではなく、1回量、回数、直後に吐いたかを記録します。
受診時に伝えるメモ:症状の開始時刻、嘔吐・下痢の回数と色、直近に飲めた量、最後の尿、体温、腹痛の場所、周囲の流行、使った薬。緊急時は記録より受診を優先します。
水様便・嘔吐・発熱から脱水に注意する
ロタウイルスは主に乳幼児の急性胃腸炎を起こします。突然の嘔吐に続いて水のような下痢や発熱がみられ、便が白っぽく見えることもありますが、便の色だけでは診断できません。
症状は他のウイルス性胃腸炎と重なります。検査名より、飲める量、尿、反応、腹痛の性質を優先します。ロタとノロを比較した系統的レビューでは、ロタの方が重い脱水を伴う傾向が示されていますが、個々の子どもの重症度は診察で判断します。[3]
日々の皮膚科診療でおむつ部皮膚炎を診る際も、便回数だけでなく口唇の乾燥、涙、手足の温度、最後の尿、飲水後の嘔吐を確認します。下痢による皮膚の赤みは脱水の程度とは一致しないため、皮膚所見だけで判断しません。
尿・反応・補水の可否で受診を判断する
自宅で観察しやすい状態
- 5mL程度ずつ飲んで保てる
- 尿が出ている
- 起こせば普段に近い反応
- 腹痛が持続しない
早めに相談したい状態
- 乳児または基礎疾患がある
- 飲むたびに吐く
- 尿が明らかに減る
- ぐったり、目や口が乾く
目のくぼみ、口の乾燥、涙、皮膚の戻りなどは参考になりますが、一つで脱水を否定できません。複数所見と体重変化を合わせる必要があります。[6]
治療は少量頻回の経口補水が中心
- 市販の経口補水液を準備
乳幼児用または医療用の表示がある製品を使い、スポーツ飲料やジュースで置き換えません。
- 5mL程度を1〜2分おきに
スプーンや小さなカップで与え、吐いたら5〜10分休んでさらに少量から再開します。
- 尿と反応を追う
最後の尿、飲めた合計量、嘔吐後に保てた量を記録します。
- 普段の食事へ戻す
母乳は続け、補水できたら年齢に合う食事を再開します。
低浸透圧経口補水液は小児の急性下痢で推奨され、適切な例では経口補水と点滴に臨床的な大差はありません。ただし、意識低下、ショック、腸閉塞の疑い、補水を全く保てない場合は医療機関で点滴や経管補水を検討します。[5][7]
ワクチンは初回接種の期限を守る
日本では2回接種の1価ワクチンと3回接種の5価ワクチンが定期接種に使われます。初回は生後2か月から出生14週6日後までが標準で、生後15週0日以降の初回接種は勧められていません。2回目以降は同じ製品で定められた間隔と完了期限を守ります。[1]
Cochraneレビューでは、使用中のロタウイルスワクチンが重症胃腸炎を減らすことが示されています。感染を完全に防ぐものではないため、接種後も下痢・嘔吐時は脱水を確認します。[4]
乳児健診やほかのワクチンと同時期に始まります。出生後早めに母子手帳を確認し、体調不良で延期した場合も自己判断せず接種医へ相談してください。
接種後の腸重積サインを知っておく
市販後研究のメタ解析では、ロタウイルスワクチン後、とくに初回接種後7日以内に腸重積の相対リスクが一時的に上がることが示されています。一方で絶対リスクは小さく、重症胃腸炎を防ぐ利益が大きいと評価されています。[2]
突然激しく泣く発作を繰り返す、顔色が悪くなる、嘔吐、血便、ぐったりする場合は腸重積の可能性があります。接種日を伝え、速やかに受診してください。
便とおむつを安全に処理し、回復してから登園する
おむつ交換後と食事前は石けんと流水で手を洗い、便が付いた衣類やリネンは分けて扱います。ロタウイルスは感染力が強く、症状後もしばらく便中へ排出されるため、回復後も手洗いを続けます。[8]
登園は嘔吐・下痢が治まり、普段の食事がとれ、全身状態が回復していることが目安です。施設の基準と診断した医師の指示を確認します。
よくある質問
ロタウイルスの便は必ず白くなりますか?
白っぽく見えることはありますが、必ずではなく、便色だけでロタウイルスとは診断できません。真っ白な便が続く、黄疸がある場合は別の病気も含め相談してください。
ワクチンを受けてもロタウイルスにかかりますか?
かかることはあります。ワクチンの主な目的は重症胃腸炎や入院を減らすことで、感染を完全に防ぐものではありません。
ワクチン後に下痢をしたら腸重積ですか?
一過性の下痢だけで腸重積とは限りません。周期的な激しい腹痛、繰り返す嘔吐、血便、顔色不良、ぐったりがあれば速やかに受診してください。
下痢止めを使ってよいですか?
大人用や残り薬を自己判断で使わないでください。年齢、脱水、原因によって不適切な場合があるため、必要性は医師や薬剤師に確認します。
参考文献
- 厚生労働省:ロタウイルスワクチン
- Koch J, et al. Risk of Intussusception After Rotavirus Vaccination: a systematic review and meta-analysis. Dtsch Arztebl Int. 2017. PMID: 28468712
- Riera-Montes M, et al. Norovirus and Rotavirus Disease Severity in Children: systematic review and meta-analysis. Pediatr Infect Dis J. 2018. PMID: 29135827
- Bergman H, et al. Vaccines for preventing rotavirus diarrhoea: vaccines in use. Cochrane Database Syst Rev. 2021. PMID: 34788488
- Zubairi MBA, et al. Low-osmolarity oral rehydration solution for childhood diarrhoea: systematic review and meta-analysis. J Glob Health. 2024. PMID: 39641334
- Steiner MJ, et al. Is this child dehydrated? Systematic review. JAMA. 2004. PMID: 15187057
- Bellemare S, et al. Oral versus intravenous rehydration for gastroenteritis in children: meta-analysis. BMC Med. 2004. PMID: 15086953
- こども家庭庁:保育所における感染症対策ガイドライン
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