機能性ディスペプシアの検査と、胃カメラが正常なとき
「何もなかった」で終わらず、検査で分かったこと、まだ分からないこと、次に確認することを整理します。
FDの診断は、症状の内容と経過を確認し、必要な検査で潰瘍やがんなどを評価して行います。胃カメラが正常でも胃の働きや感じ方の不調は残り得ますが、正常という理由だけでFDと確定もしません。年齢、体重減少、出血、家族歴、薬、治療反応を踏まえ、胃カメラやピロリ菌検査、追加検査の必要性を医師と判断します。
出血や急な悪化は、予定した検査日を待たず相談する
すぐに救急相談・119番
突然の強い腹痛や胸の圧迫感、冷汗・息苦しさ、吐血、黒い便にふらつきを伴う場合。意識が遠のく、動けないほどつらい場合は119番へ。
当日〜早めに対面受診
黒い便、飲み込みにくさ、繰り返す嘔吐、水分が取れない、意図しない体重減少、貧血、症状の進行。急速な悪化では救急受診を検討します。
予約して消化器内科へ
胃もたれやみぞおちの痛みを繰り返す、食事・仕事・睡眠に支障がある、市販薬が繰り返し必要な場合。
「以前の胃カメラが正常だった」「FDで通院している」という情報は大切ですが、新しい病気が起こらない保証ではありません。黒い便が鉄剤などで起こる場合もありますが、出血との区別を自己判断せず、服用薬と症状を医療機関へ伝えてください。[1][2]
症状の型だけでなく、発症・家族歴・薬を確認する
まず、胃もたれ、早い満腹感、みぞおちの痛み・灼熱感がどの程度続き、食事や生活を妨げているかを確認します。症状が突然始まったのか、徐々に増えたのか、食事や排便に伴って変わるのかも判断材料です。診断基準にある症状の持続期間は、受診せず待つ期間ではありません。[1][2]
- 背景
- 年齢、家族の胃がん歴、過去の胃・十二指腸の病気、ピロリ菌検査・除菌歴を共有します。
- 警告症状
- 体重減少、貧血、出血、つかえ、繰り返す嘔吐、診察時の異常所見を確認します。
- 薬
- 鎮痛薬など胃腸症状に影響する薬の開始・変更、市販薬・サプリメントを確認します。
- 生活への影響
- 何が食べられないか、脱水や栄養不足の心配、仕事・学校・睡眠への影響を確認します。
FDは、検査で説明できる病気がないことと症状の特徴を合わせて考えます。日本の診療ガイドラインでは、器質的な病気が疑われるかに応じて内視鏡を判断する流れが示されており、全員へ機械的に同じ検査を課す考え方ではありません。[1]
一方、使う薬によっては事前検査に関する注意があります。アコチアミドの電子添文には、胃カメラ等でがんを含む器質的な病気を除外する旨が記載されています。「FDを考える全員に内視鏡が必須ではない」という診断の流れと、個々の処方前に確認する条件は分けて考えます。[5]
胃カメラは粘膜を見る検査で、胃の働きを全て測るものではない
胃カメラでは、食道、胃、十二指腸の粘膜を観察し、潰瘍、がん、食道炎などの手がかりを確認します。必要に応じて一部の組織を採取し、病理検査や感染の評価を行います。どこまで確認したか、生検があったか、結果がいつ分かるかも聞いておきましょう。[1][2]

一方、通常の胃カメラが正常でも、食物を受け入れる働き、胃が広がる刺激への敏感さ、胃腸と脳の情報処理などをすべて否定したことにはなりません。正常な結果は重要な安心材料ですが、食べられない状態や症状の進行を放置する理由にはなりません。[3]
感染の有無と除菌後の経過は、FDの評価でも大切
ピロリ菌感染は、慢性胃炎、潰瘍などの評価と治療に関係します。感染を調べる方法には尿素呼気試験、便中抗原検査、抗体検査、内視鏡時の検査などがあり、目的と状況で選びます。「以前に陽性だった」「除菌した」場合は、いつ何の検査を受け、除菌判定を行ったかを共有します。[1][3]
胃酸を抑える薬や抗菌薬は、一部のピロリ菌検査の結果に影響します。検査前の休薬が必要な場合もありますが、必要性と期間は薬と検査法により異なります。自己判断で薬を止めず、予約時にお薬手帳を示して医療機関の指示を確認してください。[2]
感染が確認された場合は除菌の適否を相談し、その後の症状も見ます。除菌後に症状が改善し持続する場合の考え方と、症状が残るFDでは治療計画が異なります。感染の有無だけで現在の不快感すべてを説明できるわけではありません。[1][4]
追加検査は「まだつらい」だけでなく、新しい手がかりで選ぶ
症状が続くときは、まず過去の検査内容、薬の使い方、症状の変化を見直します。血液検査は貧血や炎症などの手がかりを、超音波・CTなどは胆道・膵臓などを調べる目的で検討します。胸やけや呑酸が中心なら逆流の評価、嘔吐が中心なら別の機能異常などを考える場合があります。[1][2]
胃排出能などの機能検査を全てのFD患者さんへ一律に行うわけではありません。新しい警告症状がなく検査済みなら、検査を反復する利益と負担を比較し、症状の治療や栄養支援へ重点を置くこともあります。検査を増やす前に「その結果で治療がどう変わるか」を確認してください。[2][4]
消化器内科の診察で「胃カメラは正常でした」と聞いた際には、検査した時期、検査後に変わった症状、食べられる量、体重推移を確認します。同じ検査を繰り返すか、別の検査や栄養・治療調整へ進むかを考える手がかりになるためです。
検査前後に確認することを、短いメモにしておく
- 予約時
薬、抗血栓薬、糖尿病の治療、アレルギー、妊娠可能性、鎮静の希望を伝えます。
- 前日・当日
食事・水分・薬について施設から示された指示を守ります。自己流の長い絶食や休薬をしないでください。
- 結果説明
観察した範囲、生検結果の有無、ピロリ菌の評価、今回の検査で否定できないことを確認します。
- 帰宅・次の受診
鎮静を使った場合の運転・帰宅方法、検査後の強い痛みや出血時の連絡先、症状が続く場合の再診日を確認します。
検査の費用は検査内容、生検や鎮静の有無、保険適用で変わります。予約先へ概算を確認してください。過去の検査結果を持参すると、同じ検査を不必要に繰り返さず、今回必要な評価を相談する助けになります。
よくある質問
胃カメラの写真が手元になくても受診できますか?
受診できます。検査した医療機関と時期、説明された内容を伝えてください。必要なら結果の取り寄せを相談します。
検査まで胃薬を止めた方がよいですか?
自己判断で止めないでください。検査法と薬の種類により結果への影響が異なるため、予約先へ薬名と服用状況を伝えて指示を確認します。
同じ病院で再診する利点はありますか?
症状や検査の経過を比較しやすい点があります。別の医療機関へ相談する場合も、過去の結果と薬の経過を共有すると重複検査を減らす助けになります。
検査が怖い場合はどう伝えればよいですか?
何が心配かを具体的に伝えてください。必要性、方法、苦痛を減らす選択肢とリスク、受けない場合の方針を相談できます。
参考文献
- Evidence-based clinical practice guidelines for functional dyspepsia 2021. Journal of gastroenterology. 2022. PMID: 35061057. 日本語版:機能性ディスペプシア診療ガイドライン2021
- British Society of Gastroenterology guidelines on the management of functional dyspepsia. Gut. 2022. PMID: 35798375.
- United European Gastroenterology (UEG) and European Society for Neurogastroenterology and Motility (ESNM) consensus on functional dyspepsia. United European gastroenterology journal. 2021. PMID: 33939891.
- Second Asian Consensus Report on Functional Dyspepsia (2025): Updated Recommendations. Journal of gastroenterology and hepatology. 2026. PMID: 41656163.
- PMDA.アコファイド錠100mg(アコチアミド)電子添文・医薬品情報.2026年9月5日確認.
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