Gastroenterology / Functional dyspepsia

機能性ディスペプシアの症状・検査・治療ガイド

「異常がないのにつらい」を出発点に、受診、検査、治療、生活の整え方を順に確認します。

最終更新 2026.09.05医学レビュー 2026.09.05
理解正常な検査でも症状は実在
安全新しい警告症状は再評価
目標食事と生活への支障を減らす
結論から

機能性ディスペプシア(FD)は、胃もたれ、少量で満腹になる感じ、みぞおちの痛み・焼ける感じが続き、症状を説明する明らかな病気が見つからない状態です。気のせいではありません。出血や体重減少などを先に確認し、必要な検査、薬、無理のない食事・生活調整を組み合わせて、症状と生活への影響を見直します。

知りたいことから選ぶ症状・検査・薬・食事の詳しい解説へ
01

胃の不調でも、出血や強い胸痛は先に対応する

すぐに救急相談・119番

突然の強い腹痛や胸の圧迫感、冷汗・息苦しさ、吐血、黒い便にふらつきを伴う場合。意識が遠のく、動けないほどつらい場合は119番へ。

当日〜早めに対面受診

黒い便、飲み込みにくさ、繰り返す嘔吐、水分が取れない、意図しない体重減少、貧血、症状の進行。急速な悪化では救急受診を検討します。

予約して消化器内科へ

胃もたれやみぞおちの痛みを繰り返す、食事・仕事・睡眠に支障がある、市販薬が繰り返し必要な場合。

FDは、危険な病気を症状だけで除外できる診断名ではありません。過去にFDと言われていても、新たな出血、体重減少、つかえ、繰り返す嘔吐があれば、以前と同じ症状として片づけず再評価します。緊急性があるときは食事記録や市販薬より受診を優先してください。[1][2]

02

胃の働きと感じ方の不調で、見た目とつらさは一致しない

FDは、胃が食物を受け入れて広がる働き、胃から先へ送る動き、刺激を感じる敏感さ、胃・十二指腸と脳の情報のやり取りなどが関わる病気です。すべての患者さんで同じ異常が起きているわけではなく、一つの検査で全ての仕組みを説明できるわけでもありません。[1][4]

消化器内科の診察で、女性がみぞおちの不快感を医師に伝えているイメージ
症状の場所だけでなく、食事量や生活への影響も伝えると、相談したい点を整理できます。画像は架空の診察場面です。

胃カメラは潰瘍やがんなどを探す大切な検査ですが、正常だから症状が存在しないという意味ではありません。反対に、胃もたれがあるという理由だけでFDとも断定できません。症状の経過、診察、必要な検査を合わせて判断します。[2]

診察室から

消化器内科の診察では、「胃がつらい」を、食べ終えた後の重さ、食べ始めてすぐの満腹感、みぞおちの痛みに分けて確認します。検査の写真と生活の困りごとは別に整理し、「昼食を食べ切れる」「仕事中に休む回数が減る」など本人に意味のある目標を相談します。

03

食後の症状とみぞおちの痛みを分け、重なりも確認する

食後愁訴症候群(PDS)
食後のつらいもたれ、通常量を食べ切れないほど早く満腹になる症状が中心です。
心窩部痛症候群(EPS)
みぞおちの痛みや焼ける感じが中心です。食事との関係は人によって異なります。
両方ある場合
二つの型が重なることがあります。型を決めただけで薬を自動的に選ぶものではありません。
別の症状が中心
胸やけ・酸っぱい液の逆流、下痢・便秘、強い嘔吐などは別の病気や併存症も評価します。

症状の型は相談の手がかりですが、原因を確定する検査ではありません。胸やけや呑酸が中心なら逆流性食道炎など、排便に伴う腹痛が中心なら過敏性腸症候群なども検討します。複数の病態が重なることもあります。[4][3]

FDの症状は日によって変動し、胃もたれが目立つ時期と痛みが気になる時期があるため、受診した一日の状態だけでなく、普段の経過も伝えます。「食べられた量」「食後に休む必要があったか」など、本人が比べやすい項目を一つか二つ選ぶと、治療前後を振り返りやすくなります。記録を細かく続ける負担が大きければ、診察で言葉にして伝える方法でも構いません。[2]

04

治療は一つに決めつけず、対象・根拠・注意点で選ぶ

薬

酸分泌抑制薬など

対象
症状と背景に応じて検討
根拠
国内ガイドライン・PPIの系統的レビュー
注意点
効果は限定的。製剤ごとの適応と副作用を確認。
薬の根拠・適応と注意点を確認
食後症状

アコチアミド・六君子湯など

対象
食後のもたれ・食事量の低下など
根拠
国内ガイドライン。アコチアミドは食後症状の比較試験
注意点
薬ごとに対象が異なる。漢方も副作用と成分の重複に注意。
食後症状に用いる薬を確認
食事・栄養

食べ方と栄養の調整

対象
量・速さで症状が変わる方など
根拠
一般的助言の根拠には限界。低FODMAP食に小規模試験
注意点
過剰な制限を避ける。食事量・体重減少時は栄養相談。
無理なく続ける食事調整を確認
支援

心理的な支援

対象
症状への不安や生活への影響が続く場合
根拠
系統的レビューは改善を示唆。研究の方法・質は不均一
注意点
気のせいという意味ではない。費用・利用できる施設も確認。
薬以外の治療と相談先を確認

国内ガイドラインは酸分泌抑制薬、アコチアミド、六君子湯を初期治療の選択肢としています。ただし、ガイドライン上の選択肢と、その製剤の国内承認効能・保険適用は同じ意味ではありません。薬剤ごとの適応、併存症、副作用、本人の希望を確認します。[1]

PPIには系統的レビュー、アコチアミドには食後症状を対象にしたランダム化比較試験があります。一方で、全員が改善するわけではなく、効かないことだけで胃酸がさらに多いと判断することもできません。心理的な支援も胃腸症状への対処を助ける可能性がありますが、研究には方法や質のばらつきがあります。[5][6][7]

05

危険な症状、検査、治療目標、再評価の順に進める

  1. 警告症状と背景を確認

    年齢、体重変化、家族歴、服用薬、症状の始まり方を確認します。

  2. 必要な検査を選ぶ

    胃カメラ、ピロリ菌検査、血液検査などを目的に応じて選びます。全員へ同じ検査一式を行うわけではありません。

  3. 生活への影響と目標を決める

    食べられる量、症状の頻度、欠勤・睡眠への影響を整理し、薬と続けられる生活調整を相談します。

  4. 効果と負担を同じ物差しで見直す

    再診の目安を決め、改善した症状と残る症状、副作用を確認します。悪化や警告症状が出れば予定を待たず相談します。

検査で大きな異常がないことを確認した後も、治療の反応を見ながら診断を見直す余地を残します。繰り返す検査が役立つ場合と、同じ検査より栄養支援や治療調整が役立つ場合を分けて考えます。[1][2]

治療開始前に聞いておくこと「何を目標にするか」「どのくらいで評価するか」「効かなかったら次に何を確認するか」「どんな変化で早めに連絡するか」を相談しておくと、通院中の迷いを減らせます。

初診で全ての原因や治療が決まらないこともあります。例えば胃カメラを受ける方と、症状や背景から直ちには行わず経過をみる方では、次の受診までに確認する内容が異なります。「今回は何を根拠に判断したか」「どの変化で検査を追加するか」を共有し、不安が残る場合は説明を求めてください。検査の正常という結果と、その後の相談先・再診の計画をセットにして確認することが大切です。[1][2]

06

症状・検査・薬・食事の詳しい解説へ進む

まだFDと診断されていない方は、症状と受診目安から確認してください。診断済みで治療に困っている方は、薬や生活のページから必要な情報を選べます。

食事の工夫は一律の禁止食リストではなく、症状との関係と栄養の確保を両立することが大切です。2026年の小規模試験では食後症状に低FODMAP食が有用な可能性が示されましたが、対象が限られ、全患者さんの標準食とする根拠ではありません。[8]

安全・費用の確認検査や処方は病状と保険適用により異なります。保険外の検査・治療を勧められた場合は、目的、根拠、費用、保険診療での代替を確認してください。市販薬の重ね飲み、食べられない状態での過剰な制限、処方薬の自己増量は避けます。
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よくある質問

受診前に症状が何か月も続くのを待つ必要がありますか?

必要ありません。診断基準の期間は受診を待つ指示ではありません。食事や生活に支障があれば早めに相談し、警告症状があれば期間に関係なく受診します。

診察では何を持参すると役立ちますか?

お薬手帳、過去の胃カメラやピロリ菌検査の結果、症状と食事の簡単なメモが役立ちます。記録を完成させるために受診を遅らせる必要はありません。

良い日と悪い日があっても相談してよいですか?

構いません。悪い日だけでなく、食べられた日や楽だった状況も伝えると、生活への影響と変動が分かりやすくなります。

診察に家族が同席してもよいですか?

本人が希望する場合は、医療機関へ確認して同席を相談できます。食事量や体重の変化を共有する助けになりますが、本人の困りごとと希望を中心に伝えましょう。

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参考文献

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