股関節の痛みの原因と受診目安
足の付け根、横側、お尻の痛み。場所だけで決めず、始まり方と生活で困る動作から、受診・検査・治療の順に考えます。
股関節の痛みは、変形性股関節症、周囲の筋肉や腱の問題、骨折、腰からの影響などで起こります。痛む場所だけでは区別できません。歩行や着替えへの影響を整形外科で伝えましょう。転倒後に立てない・歩けない、急な強い痛みや発熱がある場合は、通常の予約を待たず医療機関へ連絡してください。
転倒後に歩けない・急に強く痛むときは受診を急ぐ
転倒やぶつけた後の強い痛みでは、骨折などを調べる必要があります。無理に立たず、医療機関へすぐ連絡してください。強い痛みで安全に移動できない場合、意識の変化や息苦しさがある場合は119番へ。[2][8]
熱感や腫れ、発熱、全身のだるさが加わったときは通常の予約を待ちません。
歩く距離が短くなった、寝付きにくい、着替えに困るなど、日常への影響を伝えます。
脱臼や感染などを確認します。以前と同じ痛みだと決めず、手術歴を最初に伝えます。
急な痛みの原因は一つではありません。発熱がない、少し動かせるという理由だけで、安全とは判断できません。股関節が急に痛くなったときの対応に、連絡先の考え方と待つ間の注意をまとめています。
足の付け根・横側・お尻の痛みを分けて伝える
股関節は、骨盤側の受け皿と太ももの骨の丸い先端が組み合わさる関節です。体重を支えながら、立つ、歩く、脚を開くといった動作を担います。関節の問題では足の付け根が痛むことがありますが、太ももや膝のあたりに痛みを感じることもあります。[1]
横側の痛みには筋肉や腱など関節の周囲が関係する場合があり、お尻から脚に広がる痛みには腰の神経なども関わります。診察では、痛む場所だけでなく、腰痛やしびれがあるかも確認します。「付け根なら必ず股関節」「お尻なら必ず腰」という分け方はできません。[3]
痛む場所を指一本で示せないときは、手のひらで範囲を示して構いません。左右、前と横、表面と奥のどちらに近いか、動いたときか休んでいても痛むかを伝えます。確認のために無理に脚をひねる必要はありません。
本記事は成人の股関節の痛みを中心に扱います。子どもの足を引きずる症状、妊娠中の痛み、手術直後の変化には別の確認が必要です。成人向けの運動や様子の見方をそのまま当てはめず、年齢や状況を医療機関へ伝えてください。
変形性股関節症だけでなく、けがや周囲の問題も考える
変形性股関節症
- 対象
- 立ち上がりや歩き始めの痛み、動かしにくさがある人
- 根拠・役割
- 軟骨や関節全体に変化が生じ、進むと歩行・靴下の着脱などに影響します。骨盤の受け皿の形なども関係します。[1]
- 注意・限界
- 年齢や痛みの場所だけでは確定できません。画像の変化と生活への影響を合わせます。
骨折・外傷
- 対象
- 転倒や衝突の後、急に痛み始めた人
- 注意・限界
- 最初のX線では分かりにくい骨折もあります。痛みが続くときは再評価が必要です。
周囲の組織・腰など
- 対象
- 横側の圧痛、運動時の痛み、腰痛やしびれもある人
- 根拠・役割
- 診察で筋肉や腱、関節の内側、腰からの影響を区別し、必要な画像検査を選びます。[3]
- 注意・限界
- 複数の問題が重なることもあります。自己検査や一種類の体操だけで判定しません。
病名を知ることと、いま何に困っているかを知ることは、どちらも大切です。以前「変形がある」と言われていても、今回の急な悪化まで同じ原因とは限りません。症状の変わり方、転倒、発熱、新しいしびれなどは改めて相談します。
診察では歩行・着替え・睡眠への影響を確認する
- 始まり方を整理
いつから、転倒や運動の後か、徐々にかを伝えます。症状が毎日同じか、急に変化したかも材料になります。
- 生活の困りごとを共有
買い物、階段、靴下、入浴、睡眠のうち、一番困っていることを挙げます。
- 必要な範囲で診察
歩き方、動く範囲、押したときの痛み、腰や膝の状態などを確認します。
- 検査と治療の目的を確認
何を調べ、結果で方針がどう変わるか、いつ見直すかを相談します。
受診のために痛みを再現する動画を無理に撮ったり、限界まで歩いたりする必要はありません。普段の生活で気付いたことを短くメモしておけば十分です。「痛みは同じでも休まず歩ける距離が減った」という情報も役立ちます。
持病、骨粗しょう症、過去の骨折や手術、ステロイドを含む薬の使用も伝えてください。お薬手帳と以前の画像・検査結果があれば持参します。検査を受けた場所と時期が分かるだけでも、追加検査の必要性を相談しやすくなります。
整形外科の診察では、「股関節が痛い」という言葉を、何分歩くと休みたくなるか、靴下に手が届くか、寝返りで目が覚めるかに分けて伺います。同じ痛みでも、困る場面によって調べたいことや治療の目標が変わるためです。ただし、こうした動作だけで病名は決めず、けがの経緯や診察所見と合わせて判断します。

X線・MRIは「何を調べるか」で選ぶ
長く続く痛みで画像検査が必要な場合は、まずX線で骨の形や関節の隙間などを調べることが一般的です。典型的な変形性関節症では、症状と診察から方針を考え、画像を毎回撮らないこともあります。検査をしない理由も含め、診察で説明を受けます。[3][5]
MRIはX線では分かりにくい骨の内部や周囲の組織を調べるために使います。転倒後にX線で明らかな骨折がなくても、立てない・体重をかけられない状態が続けば、MRIやCTを追加することがあります。正常と言われた画像だけを根拠に、無理に歩かないでください。[4]
詳しく写る検査を受ければ、必ず原因が一つに決まるわけではありません。画像のどの変化が症状と合うか、追加検査で治療が変わるかを確認します。股関節のX線・MRI・CTの役割では、検査前の準備も説明しています。
運動・薬・手術は、原因と生活の目標に合わせる
生活調整・運動
- 対象
- 急ぐけがや病気が除かれ、変形性股関節症などの症状を管理したい人
- 注意・限界
- 痛みを我慢して量を増やさず、生活動作への効果を見直します。軟骨を元に戻すことは保証できません。
薬などで痛みを調整
- 対象
- 痛みで睡眠や日常生活が妨げられている人
- 根拠・役割
- 持病や服薬を確認し、症状を軽くする選択肢を検討します。[5]
- 注意・限界
- 痛みが軽くなっても、骨折などの原因を除外したことにはなりません。薬の追加・重複に注意します。
手術の相談
- 対象
- 症状と画像が合い、生活への支障が大きい人
- 根拠・役割
- 手術の適応がある重い変形性股関節症の比較試験では、人工股関節手術は筋力トレーニングより6か月後の痛み・機能の改善が大きい結果でした。[7]
- 注意・限界
- この結果はすべての股関節痛に当てはまりません。合併症や回復期の負担も含めて相談します。
手術をしない治療を選ぶことも、手術について情報を集めることも、相談の出発点になります。「どこまで悪くなるのを待つか」だけで考えず、現在の困りごと、続けたい活動、治療の負担を共有してください。治療の選択肢は変形性股関節症の治療で詳しく比較しています。
受診までの生活と、治療を見直す目安
- 痛みを増やす長時間の立ち仕事や歩行を一時的に分け、途中で休む
- 無理な開脚、深いしゃがみ込み、強いマッサージで原因を確かめない
- 転倒しやすい敷物や床の物を整理し、移動の安全を確保する
- 痛み止めを追加するときは、今の薬との重複や持病への影響を確認する
- 急な悪化があれば予定の再診日を待たず連絡する
運動を勧められた場合も、すべての人に同じ歩数や回数が適するわけではありません。行った後と翌日の痛み、歩き方、疲れを確かめ、量を調整します。生活の工夫は股関節の運動・リハビリと日常動作を参考に、担当者と相談してください。
費用や通院の負担も治療選びに関わります。検査、リハビリ、手術それぞれについて、見込む通院回数、仕事を調整する期間、自宅で必要な助けを聞きましょう。費用は保険の負担割合や治療内容で変わるため、医療機関で見積もりと利用できる制度を確認します。
今の疑問に合う解説へ進む
腰痛や脚のしびれがある場合は腰・脊椎の病気と受診の目安、膝の痛みが中心の場合は膝の痛みの原因と受診目安も確認できます。痛む場所を一つに絞らず、診察で合わせて伝えてください。
よくある質問
膝だけが痛くても股関節が原因のことはありますか?
股関節の問題で太ももや膝のあたりに痛みを感じることがあります。ただし膝そのものの病気もあるため、膝・股関節・腰の症状を合わせて伝え、診察で確認します。
股関節の痛みは何科へ行けばよいですか?
動作に伴う痛みやけがは整形外科が相談先です。転倒後に歩けない、急な強い痛みや発熱がある場合は通常の予約を待たず連絡を。意識の変化や息苦しさがある場合は119番へ連絡してください。
レントゲンで異常なしなら、歩いても大丈夫ですか?
画像だけでは判断できません。特に転倒後の強い痛みや体重をかけられない状態が続く場合は、見えにくい骨折などの追加評価が必要です。無理に歩いて確かめず、再度医療機関へ連絡してください。
痛みの説明が苦手でも受診できますか?
いつから、けががあったか、普段の何が難しくなったかを伝えれば十分です。痛みを再現するための運動は必要ありません。お薬手帳や過去の検査情報も役立ちます。
参考文献
- 日本整形外科学会.症状・病気をしらべる「変形性股関節症」.
日本の学会による患者向け資料 - 日本整形外科学会.症状・病気をしらべる「大腿骨頚部骨折」.
日本の学会による患者向け資料 - Expert Panel on Musculoskeletal Imaging, et al. ACR Appropriateness Criteria® Chronic Hip Pain: 2022 Update. J Am Coll Radiol. 2023. PMID: 37236751.
エビデンス評価を伴う画像検査の適正使用基準 - Expert Panel on Musculoskeletal Imaging, et al. ACR Appropriateness Criteria® Acute Hip Pain: 2024 Update. J Am Coll Radiol. 2025. PMID: 40409883.
エビデンス評価を伴う画像検査の適正使用基準 - NICE. Osteoarthritis in over 16s: diagnosis and management. NG226. 2022.
公的診療ガイドライン - Hall M, et al. Exercise for osteoarthritis of the hip. Cochrane Database Syst Rev. 2026. PMID: 42486497.
系統的レビュー・メタ解析(Cochrane、2026年更新) - Frydendal T, et al. Total Hip Replacement or Resistance Training for Severe Hip Osteoarthritis. N Engl J Med. 2024. PMID: 39476341.
無作為化比較試験 - NHS. Hip pain in adults. Reviewed 2025.
公的医療機関の受診案内
本記事は一般的な医療情報であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。症状、既往歴、服薬、妊娠などによって適切な対応は異なります。転倒後に立てない・歩けない、急に強い痛みや熱が出た場合は通常の予約を待たず医療機関へ連絡してください。意識の変化、息苦しさ、安全に移動できない状態では119番へ連絡してください。
TOCグループ
医療法人御照会を中心に、対面診療・オンライン診療・医療情報・医療機関支援を行うグループです。
