Gastroenterology / Peptic ulcer disease

痛み止めによる胃潰瘍の予防と、NSAIDs・アスピリンの相談

痛みを抑える治療と、胃を守る対策を両立します。潰瘍歴・出血歴・普段の薬を共有し、必要な予防を考えましょう。

最終更新 2026.09.18医学レビュー 2026.09.18
予防の前に薬の重複を確認
潰瘍歴は処方元へ必ず共有
血栓予防薬自己判断で止めない
結論から

NSAIDsなどの痛み止めを続ける場合は、潰瘍・出血の既往や併用薬を確認し、必要に応じて胃酸を抑える薬や鎮痛薬の見直しで予防します。胃薬を飲んでも出血の危険はゼロにならず、除菌だけで薬によるリスクはなくなりません。血栓予防のアスピリンは自己中止せず、処方医・消化器内科・薬剤師へ薬の情報を共有してください。

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出血が疑われるときは、予防薬の相談で待たない

このページは主に、症状が落ち着いているときの予防の相談を扱います。吐血、コーヒーかす状の嘔吐、突然の激しい腹痛はすぐ119番へ連絡してください。黒くタール状の便は当日中に受診相談し、冷汗・ふらつき・息苦しさ、意識の変化や動けないほどの症状があるときは119番へ。

すでに潰瘍がある場合は、まず現在の傷への治療を行い、その後も薬を続けるかを考えます。「予防の胃薬を追加したから、出血があっても様子を見られる」という意味ではありません。現在の潰瘍の診療は胃潰瘍・十二指腸潰瘍の治療で確認できます。[1]

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潰瘍歴・出血歴と、薬の組み合わせを確認する

NSAIDsは痛みや炎症を抑える一方、胃や十二指腸の粘膜を守る働きを弱めます。潰瘍や出血を経験した方、ほかの薬を併用する方、重い持病のある方では、使用の必要性と胃の対策を特に丁寧に検討します。症状がないことだけで、予防を考えなくてよいとは判断できません。[1]

潰瘍・出血歴
過去の胃潰瘍・十二指腸潰瘍、吐血、内視鏡の止血、入院などの記録を伝えます。
併用薬
低用量アスピリン、ほかの抗血小板薬、抗凝固薬、ステロイド、市販の鎮痛薬も確認します。
使い方・持病
薬の量と期間、頓服の頻度、心臓・脳・腎臓などの病気を共有します。
感染歴
ピロリ菌検査と除菌成功の記録があるかを確認します。

薬局や診療科が分かれていると、同じ系統の痛み止めが重なることがあります。お薬手帳だけでなく、市販薬の箱や現物、サプリメントの情報も持参してください。「痛み止めは必要なときだけ」という場合も、使う頻度が増えているなら処方元へ伝えます。必要以上の量や期間にならないよう相談します。

薬局で患者が持参した薬の袋を薬剤師と確認し、重複や飲み合わせを相談する生成イメージ
複数の医療機関の薬や市販薬をまとめて相談する場面の生成イメージです。実在の監修医・患者や、特定の製品を示した写真ではありません。
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予防の利益と限界を分けて理解する

予防では、NSAIDsを継続する必要があるか、別の鎮痛方法に変更できるかを検討します。潰瘍の再発予防にはPPIやボノプラザンを選ぶ場合があります。出血歴などのリスクによっては、COX-2選択的阻害薬と胃酸を抑える薬を組み合わせることもあります。具体的な選択は胃だけでなく持病や併用薬も考えて決めます。[1]

2025年のCochraneレビューでは、NSAIDsを4週間以上使う人を対象とした試験をまとめ、PPIは偽薬と比べて潰瘍の発生を減らすと評価されました。ただし出血などの潰瘍合併症に関する根拠は確実性が低く、長期の効果やほかの薬との比較にも不確実さが残ります。症状の改善と潰瘍予防は別の結果です。[2]

CONCERN試験は、出血歴がありアスピリンも必要な高リスク患者を対象に、いずれもPPIを併用してセレコキシブとナプロキセンを比較しました。前者で再出血は少なかったものの、ゼロではありません。特定の対象・薬・条件で得られた結果であり、すべての患者が同じ薬へ変更すべきという意味ではありません。[3]

胃薬が守る範囲には限界があります潰瘍予防の胃薬は、NSAIDsによる腎臓・心血管への影響や、すべての部位の出血をなくすものではありません。市販薬を重ねてよい保証にもなりません。薬全体の利益と危険を定期的に確認します。[2]
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出血予防と血栓予防を両立する

低用量アスピリンは、心筋梗塞や脳梗塞などを防ぐために必要な場合があります。潰瘍が心配でも自己判断で中止しません。出血の状態、処方の目的、ほかの抗血栓薬の有無を関係する診療科で共有し、胃酸を抑える薬の併用や、必要な中止・再開の時期を判断します。[1]

出血性潰瘍の止血後にアスピリンを継続するか調べた小規模の無作為化試験では、継続によって再出血が増える可能性がある一方、死亡を減らす可能性が示されました。この結果は、患者さんが出血中にも必ず飲み続けるための指示ではなく、中止による危険も含めて専門的に判断する必要性を示すものです。[4]

抗凝固薬や複数の抗血小板薬を使う場合も、すべてが同じ病状・同じ対応になるわけではありません。薬を変更する提案を受けたら、誰が全体を調整するか、処方元に連絡済みか、再開日があるかを確認します。出血が起きたときは薬の相談だけで待たず、救急診療を優先してください。[1]

診察室から

複数の診療科から薬を受け取る場合は、薬の名前だけでなく、痛みを抑えるためか、血栓を防ぐためかという目的も共有しましょう。潰瘍や出血の経験は、胃薬の予防とほかの薬の継続を考える重要な情報です。変更の提案を受けたら、処方元との連絡と、中止・再開を誰に確認するかを明確にしてください。胃薬を併用しても出血の危険がなくなるわけではありません。[1]

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除菌、潰瘍の予防、薬の適応を区別する

ピロリ菌陽性の場合は除菌を検討しますが、除菌に成功してもNSAIDsやアスピリンによる危険はなくなりません。潰瘍・出血歴と薬を踏まえて、胃薬による予防が必要かを別に判断します。過去に除菌した方は、薬を飲んだ記録だけでなく成功判定の結果も共有してください。[1][6]

2026年版ガイドラインには、潰瘍歴がない方へのPPIによる予防も推奨として記載されています。ただし国内の保険適用とは区別され、一律に保険で予防薬を受けられるわけではありません。潰瘍歴のない「初めての潰瘍を防ぐ」場合と、潰瘍歴がある「再発を防ぐ」場合を分けて説明を受けます。[1]

例えばボノプラザンの電子添文では、NSAIDsや低用量アスピリン投与時の胃・十二指腸潰瘍の再発抑制に際し、潰瘍の既往を確認することが求められています。薬ごとに適応や条件があるため、「胃が弱い」という感覚だけで自己購入・自己追加せず、病歴と処方目的を確認します。[5]

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薬の目的と、見直す時期を決める

  1. 薬を一つの一覧にする

    処方薬、市販薬、頓服、以前の残薬をまとめ、使用中かどうかも区別します。

  2. 潰瘍歴と処方目的を共有

    いつ何の病気で出血したか、痛み止めや抗血栓薬を何のために使うかを確認します。

  3. 継続と終了の条件を聞く

    胃薬の目的、飲み方、いつ必要性を見直すかを確認し、薬ごとの終了条件を混同しません。

  4. 変化を早めに連絡

    胃痛だけでなく、便の変化、ふらつき、食事量の低下、薬の副作用なども伝えます。

胃酸を抑える薬の長期使用について、胃の粘膜変化などとの関連が研究されていますが、観察研究の関連だけで薬ががんを引き起こすと断定することはできません。一方で、目的がなく漫然と続けてよいという意味でもありません。必要性と用量、経過確認を定期的に相談し、不安だけで急にやめないでください。[1]

ボノプラザンの2026年7月改訂の電子添文では、長期投与時の定期的な内視鏡などの観察に加え、血中マグネシウム濃度の定期測定が記されています。長く飲む方は、必要な採血や検査の予定も処方元へ確認してください。[5]

関節や腰の治療が終わったとき、抗血栓薬が変更されたとき、新しい市販薬を使い始めたいときは、胃薬の計画も確認する機会です。薬を減らせるかという相談と、今の処方を自己中止することは別です。潰瘍と薬の関係も参考に、処方医と薬剤師へ同じ情報を共有しましょう。

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よくある質問

胃薬を一緒に飲めば潰瘍は絶対に防げますか?

絶対ではありません。発症を減らす効果があっても出血の危険は残り、腎臓や心血管などへの影響をすべて防ぐこともできません。薬の必要性と重複を確認します。

除菌したので痛み止めを安心して続けられますか?

除菌成功後もNSAIDsなどによるリスクは残ります。潰瘍・出血歴と併用薬を踏まえ、別に予防を相談してください。

潰瘍の経験がなくても予防を相談してよいですか?

はい。使用する薬と持病などに応じて検討します。ただしガイドラインの推奨と国内の保険適用は異なる場合があり、処方の適応と費用を確認してください。

アスピリンを飲んでいて黒い便が出ました。

当日中に医療機関へ連絡してください。冷汗・ふらつき・意識の変化などを伴う場合は救急へ連絡し、重い症状は119番へ。薬の中止・再開は自己判断せず、出血の診療と併せて判断してもらいます。

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参考文献