Gastroenterology / Peptic ulcer disease

胃潰瘍・十二指腸潰瘍の原因・症状・検査と治療

胃が痛いとき、潰瘍を指摘されたとき、治療を終えるとき。緊急性・原因・治り方を分けて、次に確認することを整理します。

最終更新 2026.09.18医学レビュー 2026.09.18
痛みだけで重症度を判断しない
治療は薬と原因への対応
症状が消えても終了の判断は診察で
結論から

胃潰瘍・十二指腸潰瘍は、胃や十二指腸の粘膜が深く傷ついた状態です。主な原因はピロリ菌と一部の痛み止めで、胃カメラなどで状態を確認し、胃酸を抑える薬と原因への対応を行います。痛みの有無だけで重症度や治癒は分かりません。吐血、黒い便、突然の激しい腹痛は、通常の検査予約を待たず相談してください。

知りたいことから選ぶ原因・症状・検査・治療・予防の詳しい解説へ
01

吐血・黒い便・突然の激痛は先に受診する

今すぐ119番へ

吐血、コーヒーかす状の嘔吐、突然の激しい腹痛は119番へ。意識が遠のく、黒い便に冷汗・ふらつきが重なる場合も救急対応です。自分で運転しません。

当日中に医療機関へ連絡・受診

原因の分からない黒くタール状の便、嘔吐を繰り返す、水分を取れない場合。黒い便に冷汗やふらつきが重なるときは救急対応です。

続く症状は予約して相談

軽い胃痛が続く・繰り返す、潰瘍を指摘された、痛み止めを続ける予定がある場合は、消化器内科へ予約して相談します。体重減少、貧血、食事量の低下があれば予約日を待たず受診時期を相談してください。

潰瘍から出血すると、血を吐くほか、消化された血液が黒い便として出ることがあります。痛みが軽くても出血は否定できません。突然の強い腹痛には、胃や腸の壁に穴が開く穿孔など、急いで対応すべき病気も含まれます。症状の画像検索や市販薬での様子見より、医療機関への連絡を優先してください。[2]

吐血や突然の激しい腹痛は、消防庁がためらわず救急車を呼んでほしい症状として挙げています。迷って待たず119番へ連絡してください。[8]

救急の診療では全身状態を安定させ、出血源と必要な止血治療を判断します。出血性潰瘍には内視鏡での止血が中心となり、通常の外来で胃薬を処方する場合とは対応が異なります。受診時は薬の情報を伝えますが、情報をそろえるために救急要請を遅らせないでください。[3]

02

胃炎との違いと、二つの主な原因を知る

本ガイドは主に成人を対象としています。子どもの症状や治療は小児の診療として別に相談してください。

胃は食べ物を受け入れる袋状の臓器、十二指腸は胃のすぐ先に続く小腸の一部です。粘膜の傷が深くなったものが潰瘍で、表面の浅い傷であるびらんとは区別します。胃炎という言葉だけで潰瘍の深さや出血の有無を判断することはできません。胃の潰瘍と十二指腸の潰瘍は関連する病気ですが、できた場所や検査所見を確認して管理します。[1]

みぞおちの不快感について、診察室で患者が医師に相談する場面の生成イメージ
痛む場所や経過、飲んでいる薬を伝える診察場面の生成イメージです。実在の監修医・患者や、特定の製品を示した写真ではありません。
ピロリ菌
胃に持続して感染する細菌です。現在の感染が確認されれば、除菌治療を検討します。
痛み止めなどの薬
NSAIDsという種類の鎮痛薬や低用量アスピリンが関係します。市販薬も含めて薬名を確認します。
それ以外
菌や上記の薬が見当たらなくても潰瘍はあります。検査条件やほかの病気を確認して原因を考えます。

「ストレスが多いから」「辛い物が好きだから」と一つの理由で決めつけないことが大切です。ピロリ菌感染と薬の使用が重なっている場合もあります。原因に合う対応を選ぶため、以前の除菌歴、痛み止めの使用、過去の潰瘍・出血を伝えてください。[1][2]

胃痛、胃もたれ、吐き気などが出る一方で、症状が目立たない方もいます。食前に痛むか食後に痛むかだけで、胃潰瘍か十二指腸潰瘍かを決めることはできません。痛み方は診察に役立つ情報ですが、病名を確定する検査の代わりにはなりません。[2]

03

検査・治療・確認を別々の目的として考える

  1. 今の状態と薬を確認

    出血や脱水などの緊急性、痛む場所と経過、服用薬、潰瘍歴を確認します。

  2. 胃カメラなどで診断

    潰瘍の場所、出血、周囲の粘膜を調べます。必要に応じて小さな組織を採る生検も行います。

  3. 胃酸を抑え、原因へ対応

    薬で潰瘍の治癒を助け、ピロリ菌の除菌や原因薬の調整を相談します。

  4. 治癒と再発予防を確認

    症状の改善だけで終えず、検査結果と今後の薬・内視鏡の計画を確認します。

ピロリ菌の検査は、潰瘍そのものを見つける検査とは目的が異なります。呼気や便などの検査は現在の感染を調べるために使い、胃カメラは胃・十二指腸の病変を確認します。胃薬の影響で感染検査の結果が変わる場合もあるため、検査のために自己判断で潰瘍の薬を中止しないでください。[4]

除菌薬を飲み終えたことと除菌成功の確認、潰瘍の治癒確認は別の区切りです。治療後は「今回の結果は何を確認したものか」を聞いておくと、次に必要な受診が分かりやすくなります。胃カメラと生検の結果が別の日に説明される場合は、両方の確認予定を残しましょう。

診察室から

診察で整理したいのは、「急ぐ症状はないか」「原因は何か」「何を確認して治療を終えるか」の三つです。痛みの経過だけでなく、便の色、吐いた物、処方薬と市販薬を伝えてください。症状が楽になった時点と潰瘍の治癒を確認する時点を分けておくと、次の検査や服薬の目的が分かりやすくなります。症状だけで傷の深さや治り具合を判断することはできません。[1][2]

04

今の状態に合う解説から確認する

以下は治療法を自分で選ぶためのメニューではなく、診療で何を確認するかを整理する案内です。出血が疑われるときは情報を読み進めず受診を優先してください。症状が落ち着いている方は、原因・検査・治療・予防のうち、今最も知りたい内容から選べます。

出血・激痛がある

緊急性の確認を優先

対象
吐血、黒い便、突然の激しい腹痛がある方
根拠
出血診療のガイドラインに沿って評価。[3]
注意
記事を読むより受診を優先。重い症状は119番。
受診の緊急度を確認する
原因を知りたい

感染と薬を確認

対象
潰瘍を指摘された、再発している方
根拠
ピロリ菌・NSAIDsなどを評価。[1][4]
注意
感染と薬の影響が重なることもある。
原因と薬の確認点を読む
治療中・治療後

治り方と終了条件を確認

対象
胃薬や除菌治療を受けている方
根拠
製剤の用法と所見に合わせて判断。[5]
注意
痛みの改善だけで治癒や除菌成功とはしない。
治療期間と治癒確認を読む
痛み止めを継続

再発予防を相談

対象
NSAIDsやアスピリンを使用する方
根拠
病歴と薬に応じて予防を検討。[1][6]
注意
胃薬でも危険はゼロにならない。自己中止しない。
薬と予防の相談点を読む

原因を知る段階ではピロリ菌と薬、検査を受ける段階では生検と準備、服薬中は治療期間と連絡先が大切です。痛み止めを今後も必要とする方は、潰瘍が治った後の再発予防まで確認しましょう。自分の今の段階と違う薬の説明を、そのまま処方の変更に使わないでください。

05

胃酸を抑える治療と原因への対応を組み合わせる

薬物治療では、PPI(プロトンポンプ阻害薬)やP-CABのボノプラザンなど、胃酸の分泌を抑える薬を使います。2026年の日本消化器病学会ガイドライン英語版ではボノプラザンの位置づけが更新されていますが、出血後、原因薬、併存疾患などによって推奨は異なります。すべての状況で一種類の薬が最良という意味ではありません。[1]

治療期間の一例として、ボノプラザンの電子添文では通常、胃潰瘍は8週間まで、十二指腸潰瘍は6週間までとされています。これはその薬の通常の投与期間であり、その日に全員が必ず治るという約束ではありません。使う薬、出血の有無、潰瘍の状態に応じて、治療終了と再検査を相談します。[5]

アスピリンは「胃に悪いから」と自己中止しません心筋梗塞や脳梗塞を防ぐための低用量アスピリンは、中止による危険もあります。鎮痛目的のNSAIDsと一括りにせず、処方医と消化器内科が出血・血栓の両方を考えて調整します。出血がある場合はまず救急へ連絡してください。[1]

ピロリ菌陽性なら除菌が原因への対応になりますが、除菌だけで必要な胃薬や経過観察をすべて省けるわけではありません。NSAIDsを続ける方では再発予防を別に考えます。2025年のCochraneレビューは、PPIによる潰瘍発生の減少を支持する一方、重い合併症に対する効果の確実性には限界があるとしています。[6]

06

生活だけで治そうとせず、次の予定を具体的にする

潰瘍を治すために全員が特別な食事を続けたり、特定の食品を一律に禁止したりする根拠は十分ではありません。食べてつらくなるものは無理せず調整し、食べられる量と体重を確認します。食事を工夫していても除菌や薬の治療の代わりにはなりません。喫煙している方は禁煙の支援も相談してください。[7]

持参するもの
お薬手帳、処方薬・市販薬の現物や写真、胃カメラ・生検・ピロリ菌の検査結果。分からない薬は名前を調べ切れなくてもそのまま相談します。
診察で聞くこと
出血の有無、原因は確認できたか、いつまでどの薬を飲むか、結果説明と再検査の予定、悪化時の連絡先。
費用について
診察・胃カメラ・生検・感染検査・薬・再検査で変わります。自己負担割合や鎮静の有無も含め、医療機関へ見積もりの範囲を確認します。

ガイドラインで勧められる予防と、国内で承認・保険適用となる薬の使い方は一致しない場合があります。特に潰瘍歴がない方への予防と、潰瘍歴のある方への再発抑制は区別が必要です。この記事だけで保険診療の可否を決めず、病歴を踏まえて説明を受けてください。[1][5]

次回予約までに薬がなくなる、出張で結果説明を受けられない、検査の負担が心配といった事情も共有します。転院時は、潰瘍の部位と生検結果、原因の評価、除菌歴、現在の薬を引き継ぐと、重複する検査と確認漏れを減らす助けになります。

07

よくある質問

胃が痛くなければ潰瘍は治っていますか?

症状の改善だけでは潰瘍の治癒を判断できません。予定された診察や必要な内視鏡で経過を確認し、薬の終了は主治医と決めます。

胃潰瘍と十二指腸潰瘍は痛み方で区別できますか?

食事との関係や痛む時刻は参考になりますが、症状だけで場所を確定できません。胃カメラなどで確認します。

ストレスを減らせば薬はいりませんか?

休養は大切ですが、ピロリ菌や薬剤などの原因確認と潰瘍の治療を置き換えるものではありません。原因に合う対応を相談してください。

黒い便が一度だけでも受診しますか?

原因が分からない黒くタール状の便は、一度でも当日中に医療機関へ相談します。冷汗、ふらつき、息苦しさなどがあれば119番へ連絡してください。

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参考文献