PMS・PMDDの治療薬を比較する
PMS・PMDDで使う低用量ピル・LEP、SSRI、漢方薬を比較。症状に応じた選び方、効果の根拠と限界、副作用、国内の承認適応と保険・自費の違い、治療を見直すタイミングを整理します。
PMS・PMDDの薬は、気分と体のどの症状がつらいか、妊娠希望や持病、服薬歴を確認して選びます。SSRIや一部のピルには症状軽減の根拠がありますが、国内の承認適応や保険適用は別に確認が必要です。漢方薬にも副作用があり、薬の変更や飲み方は医師と相談して決めます。[1]
薬を選ぶ前に、症状の経過と希望を確認する
PMS・PMDDと診断されても、全員に同じ薬を使うわけではありません。月経後にも症状が残るか、落ち込み・怒り・不安といった精神症状が中心か、痛みやむくみが主な困りごとかを整理します。すでに別の病気の治療を受けている場合は、その担当医との連携が重要です。[1]
妊娠の可能性や希望時期、避妊の必要性、授乳、血栓症歴、片頭痛、喫煙、気分が極端に高まる時期、現在の薬とサプリを伝えます。過去に効かなかった薬や副作用の経験も、選び直す手がかりになります。
薬だけでなく、生活調整や心理療法を組み合わせる選択肢があります。治療の目標は症状の点数だけを下げることではなく、本人が困っている生活上の負担を減らすことです。どの症状を優先し、いつ効果を見直すかを共有します。[1]
SSRIは気分の症状に対する選択肢
SSRIは、脳内のセロトニンという情報伝達に関わる物質の働きを調整する薬です。うつ病などにも使われますが、PMS・PMDDに処方されるからといって、うつ病と診断されたという意味ではありません。気分の症状が強い場合に検討されます。[1]
2024年のコクランレビューは34件の無作為化比較試験を検討し、SSRIがPMS・PMDDの症状を軽減する可能性が高いと評価しました。連日服用と、月経周期の一部だけ服用する方法の両方が研究されています。研究全体では連日服用の効果が大きい可能性がありましたが、個人の服用方法をその結果だけで決めることはできません。[2]
吐き気、眠気・不眠、だるさ、性機能への影響などがあります。開始時や増量時には気分の変化にも注意し、強い焦り、興奮、自傷したい気持ちが出た場合は直ちに処方医へ連絡します。特に若年者では注意深い経過観察が必要です。[2][1]
例として、国内のセルトラリンの適応はうつ病・うつ状態、パニック障害、外傷後ストレス障害で、PMS・PMDDは承認適応に含まれていません。適応外で使う理由と代替案、費用を確認します。自己判断で飲む日を変えたり、急に中止したりしないでください。[3]
低用量ピル・LEPは排卵とホルモン変動を抑える
エストロゲンと黄体ホルモンを組み合わせた薬は、排卵を抑えることで月経前の不調を軽減する目的に使われます。日本では避妊目的のOCと、月経困難症などの治療目的のLEPという呼び方があります。製剤ごとに承認適応・飲み方が異なるため、「低用量ピルなら同じ」と考えず確認します。[1]
ドロスピレノンとエチニルエストラジオールを含む薬のコクランレビューでは、主にPMDDの人を対象とした5件の試験が検討され、全体の症状や生活への影響が改善する可能性が示されました。一方、副作用による中止は増え、長期の効果やほかのピルより優れているかは不明です。[4]
吐き気、不正出血、乳房の張りなどに加え、まれでも重要なリスクが血栓症です。血栓症の既往、前兆を伴う片頭痛、年齢と喫煙などによって使えない場合があります。服薬前に診察でリスクを確認します。[5]
急な息切れや胸痛、片脚の痛み・腫れ、激しい頭痛、急な視覚や言葉の異常があれば、エストロゲンを含むピルの服用を中止し、直ちに医療機関へ連絡・受診してください。重い症状は119を利用します。[5]
ヤーズ配合錠の国内承認適応は月経困難症です。PMS・PMDD目的の使用は、その適応とは別の適応外使用になります。妊娠を希望する人では排卵抑制との関係も含めて別の選択肢を相談し、妊娠が疑われる場合の連絡方法も確認してください。[5][1]
漢方薬と症状に対する薬にも限界とリスクがある
漢方薬では当帰芍薬散、加味逍遙散、桂枝茯苓丸などが用いられることがありますが、体質・症状に合わせた選択が必要です。PMS・PMDDに対する効果の研究は十分とはいえず、SSRIやドロスピレノン含有製剤と同じ確かさで効果を保証できません。[1]
漢方薬にも、低カリウム血症や血圧上昇などを起こす偽アルドステロン症、肝機能障害、間質性肺炎などの副作用があります。甘草を含む複数の薬・市販薬の重複にも注意が必要です。新しいむくみ、筋力低下、動悸、発熱・咳・息苦しさなどがあれば服用中の薬を伝えて医療機関へ相談します。[1]
頭痛や腹痛には鎮痛薬、むくみには利尿薬を検討することもありますが、対象となる症状や禁忌、腎機能・電解質などの確認が必要です。むくみを取るために自己判断で利尿薬を始めることは避けます。症状の一部を和らげる薬と、月経前の不調全体を扱う治療を区別します。[1]
保険・自費は、薬の名前だけでは決まらない
日本の指針では、一部の利尿薬を除き、PMS・PMDDそのものに対する薬物療法の多くは保険適用として認められていないことが示されています。同じ薬でも別の病気への承認適応があり、その診断・治療として保険診療になる場合とは区別します。[1]
適応外使用を提案されたら、対象となる症状、根拠、代替となる治療、主な副作用、保険・自費の扱いを確認してください。診察・検査・薬・再診の費用は医療機関や内容で異なるため、総額と継続費用を尋ねられます。処方が可能であることと、誰にでも勧められることは同じではありません。
海外でPMDDへの使用が認められている製剤でも、日本の適応とは一致しないことがあります。国内の添付文書と診療上の目的を合わせて確認し、治療への不安や希望を伝えて選びます。[4][5]

診察では、どの薬を希望するかに加えて、いちばん減らしたい症状と、避けたい副作用を確認します。妊娠希望や現在の薬、費用の負担も選択に関わります。開始前に見直す時期を決め、効き目が乏しいまま同じ処方を続けないよう経過を共有します。
効き目が乏しいときは診断と使い方を見直す
薬を始めた日と量、症状、副作用、月経日を記録します。次回は同じ項目で比較し、気分だけでなく欠勤・欠席、睡眠、人間関係などの変化も確認します。効果が十分でない場合は、飲み方、継続期間、月経との関係、別の病気の影響を見直してから変更を検討します。[1]
薬の評価まで何も相談できないわけではありません。副作用がつらい場合や症状が悪化した場合は、予定の再診日を待たず連絡してください。複数の薬を自己判断で追加したり、友人の処方薬を使ったりしないようにします。
診断や治療の全体像はPMS・PMDDの治療の選び方、記録する内容は月経日記のつけ方で確認できます。自分を傷つけそうなときは薬の調整を一人で考えるより、近くの人や救急医療につながり、安全を優先してください。
よくある質問
以前処方された薬を、症状が出た日だけ飲んでもよいですか?
自己判断で再開したり服用日を変更したりせず、処方医に相談してください。薬によって飲み方や中止方法が異なり、現在の体調や併用薬によって安全性も変わります。
妊娠を考えているときは、薬を全部やめるべきですか?
一律に急にやめることは勧められません。妊娠希望や妊娠の可能性を早めに伝え、薬の必要性、代替案、変更・中止の手順を相談します。PMS以外の病気の治療薬も含めて確認します。
副作用が心配なので、少量から自分で調整してよいですか?
錠剤を割ることや用量・回数の変更が適切とは限りません。心配な副作用を伝え、開始方法と連絡すべき症状を処方医・薬剤師に確認してください。
参考文献
- 日本産科婦人科学会.月経前症候群・月経前不快気分障害に対する診断・治療指針.CQ001・101〜107・201.
- Jespersen C, et al. Selective serotonin reuptake inhibitors for premenstrual syndrome and premenstrual dysphoric disorder. Cochrane Database Syst Rev. 2024. PMID: 39140320.
- PMDA.セルトラリン錠「JG」電子化された添付文書.2024年9月改訂.
- Ma S, Song SJ. Oral contraceptives containing drospirenone for premenstrual syndrome. Cochrane Database Syst Rev. 2023. PMID: 37365881.
- PMDA.ヤーズ配合錠 電子化された添付文書.効能又は効果、禁忌、警告.
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