【がん治療関連薬 完全ガイド】|専門医が種類と効果を解説

がん治療関連薬 完全ガイド
がん治療関連薬 完全ガイド|専門医が種類と効果を解説
最終更新日: 2026-05-12
📋 この記事のポイント
  • ✓ がん治療薬は、殺細胞性抗がん薬、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬、ホルモン療法薬など多岐にわたります。
  • ✓ 各薬剤には特有の作用機序と副作用があり、患者さんの状態やがんの種類に応じて最適な治療法が選択されます。
  • ✓ 副作用を軽減し、治療を継続するための支持療法薬も、がん治療において非常に重要な役割を担っています。
※ 本記事は医療に関する情報提供を目的としています。個別の症状については、かかりつけの医療機関にご相談ください。
がんは、現代医療において依然として大きな課題ですが、治療薬の進化は目覚ましく、患者さんの予後や生活の質を大きく改善しています。がん治療関連薬は、がん細胞を直接攻撃するだけでなく、がんの増殖を抑えたり、免疫力を高めたり、治療に伴う副作用を和らげたりと、様々な役割を担っています。この包括的なガイドでは、がん治療に用いられる主要な薬剤の種類とその作用機序、臨床での使われ方について、専門医の視点から詳しく解説します。

抗がん薬の基礎知識とは?

抗がん薬治療の基本原則と作用機序を解説する医療専門家の様子
抗がん薬の基礎知識
抗がん薬の基礎知識とは、がん治療に用いられる薬剤全般に関する基本的な概念、分類、作用機序、そして治療の原則を理解することです。がん治療薬は、がん細胞の増殖を阻害したり、死滅させたりすることを目的として開発されています。その種類は多岐にわたり、それぞれ異なるメカニズムで効果を発揮します。大きく分けると、細胞障害性抗がん薬(殺細胞性抗がん薬)、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬、ホルモン療法薬などがあります。これらの薬剤は、がんの種類、進行度、患者さんの全身状態、遺伝子変異の有無などを総合的に判断して選択されます。例えば、乳がんの術前化学療法では、複数の抗がん薬を組み合わせることで治療効果を高めることが推奨されています[1]。実臨床では、患者さんの病態や治療歴、合併症などを考慮し、個別の治療計画を立てることが不可欠です。日々の診療では、「この薬は私のがんに本当に効くのでしょうか?」と相談される方が少なくありませんが、最新のエビデンスと患者さんの状況に基づいた最適な選択肢を提示することが私たちの役割です。

がん治療薬の分類と作用機序

がん治療薬は、その作用機序によっていくつかの主要なカテゴリーに分類されます。
  • 殺細胞性抗がん薬(従来の化学療法薬): がん細胞のDNA合成や細胞分裂を阻害することで、がん細胞を直接死滅させます。正常細胞にも影響を与えるため、様々な副作用が生じやすいのが特徴です。
  • 分子標的薬: がん細胞に特異的な分子(タンパク質など)を標的とし、その働きを阻害することでがんの増殖を抑えます。正常細胞への影響が比較的少ないため、副作用も従来の抗がん薬とは異なる傾向があります。
  • 免疫チェックポイント阻害薬: 患者さん自身の免疫細胞ががん細胞を攻撃する力を回復させることで、がんを治療します。免疫系の活性化に伴う副作用(免疫関連有害事象)に注意が必要です。
  • ホルモン療法薬: ホルモン感受性のがん(乳がんや前立腺がんなど)に対し、ホルモンの作用を阻害したり、ホルモン産生を抑制したりすることでがんの増殖を抑えます。
これらの薬剤は単独で用いられることもあれば、複数の種類を組み合わせて使用されることもあります。例えば、アプタマーと薬物を結合させた「アプタマー-薬物複合体」は、特定の細胞に薬物を選択的に送達することで、治療効果を高め、副作用を軽減する可能性が示されています[4]。また、がん細胞の代謝経路、特に解糖系を標的とする治療法も研究が進められています[2]

治療計画の立て方と注意点

がん治療の計画は、患者さん一人ひとりの状況に合わせて個別化されます。がんの種類、病期(進行度)、組織型、遺伝子変異の有無、患者さんの年齢、全身状態、合併症、そして治療に対する希望などを総合的に考慮して決定されます。治療薬の選択にあたっては、有効性だけでなく、起こりうる副作用とその管理方法についても十分に検討されます。経口抗がん薬を使用する場合、手術前後の周術期管理においては、他剤との相互作用や休薬期間など、特に注意深い薬剤管理が求められます[3]。臨床現場では、治療開始前に患者さんとご家族に十分な情報を提供し、納得して治療に臨んでいただくためのインフォームド・コンセントを重視しています。副作用の早期発見と対処は、治療を安全に継続するために非常に重要であり、患者さん自身にも体調の変化を医療者に伝えるようお願いしています。

殺細胞性抗がん薬とは?

殺細胞性抗がん薬とは、細胞の増殖や分裂のプロセスを阻害することで、がん細胞を直接死滅させることを目的とした薬剤の総称です。これらの薬剤は、がん細胞だけでなく、正常な細胞、特に活発に分裂する細胞(骨髄細胞、毛根細胞、消化管粘膜細胞など)にも影響を与えるため、骨髄抑制、脱毛、吐き気などの副作用が比較的多く見られます。しかし、多くのがん種において長年にわたり有効性が確立されており、がん治療の基盤となる薬剤として広く用いられています。日常診療では、治療効果と副作用のバランスをいかに取るかが常に課題となります。例えば、ある患者さんで高度な吐き気や倦怠感が続いた場合、抗がん薬の減量や休薬、あるいは支持療法薬の強化を検討するなど、個別の状況に応じた柔軟な対応が求められます。

主な種類と作用機序

殺細胞性抗がん薬は、その作用機序によってさらに細かく分類されます。
  • アルキル化薬: DNAに直接結合し、その構造を変化させることで、DNAの複製や転写を阻害します。シクロホスファミド、シスプラチンなどが代表的です。
  • 代謝拮抗薬: DNAやRNAの合成に必要な物質(代謝物)と構造が似ているため、これらの物質の代わりにDNAやRNAに取り込まれたり、合成酵素を阻害したりすることで、細胞の増殖を妨げます。フルオロウラシル、メトトレキサートなどが含まれます。
  • トポイソメラーゼ阻害薬: DNAの複製や転写に必要な酵素であるトポイソメラーゼの働きを阻害し、DNAの損傷を引き起こしてがん細胞を死滅させます。イリノテカン、エトポシドなどが該当します。
  • 微小管阻害薬: 細胞分裂に不可欠な微小管の形成や分解を阻害することで、がん細胞の分裂を停止させます。パクリタキセル、ビンクリスチンなどが代表的です。
これらの薬剤は、単剤で用いられることもあれば、複数の薬剤を組み合わせた多剤併用療法として用いられることも多く、相乗効果を狙って治療効果の向上を図ります。

副作用とその対策

殺細胞性抗がん薬の副作用は多岐にわたりますが、主なものとしては以下の表にまとめることができます。
副作用の種類主な症状対策・支持療法
骨髄抑制白血球減少(感染症)、貧血(倦怠感)、血小板減少(出血傾向)G-CSF製剤(白血球を増やす薬)、輸血、感染予防策
消化器症状吐き気、嘔吐、食欲不振、口内炎、下痢制吐剤、整腸剤、口腔ケア、食事指導
脱毛頭髪、体毛の脱毛冷却キャップ、ウィッグ、精神的サポート
倦怠感全身の疲労感、だるさ休息、栄養管理、運動療法(軽度)
これらの副作用は、患者さんの生活の質(QOL)に大きく影響するため、適切な支持療法薬や生活指導を通じて、症状を軽減し、治療を完遂できるようにサポートすることが重要です。筆者の臨床経験では、吐き気や倦怠感は治療初期に強く出やすい傾向がありますが、適切な支持療法と患者さんへの情報提供で、多くの場合は乗り越えることができます。「副作用が心配で治療を続けられるか不安」という患者さんには、副作用の予防策や対処法を具体的に説明し、安心して治療に臨めるようサポートしています。

分子標的薬とは?

分子標的薬ががん細胞の特定部位に作用するメカニズムを示す図解
分子標的薬の作用機序
分子標的薬とは、がん細胞の増殖や生存に不可欠な特定の分子(タンパク質や遺伝子など)をピンポイントで標的とし、その機能を阻害することでがんの増殖を抑制する薬剤です。従来の殺細胞性抗がん薬が細胞全体に作用するのに対し、分子標的薬はがん細胞特有の性質を利用するため、正常細胞への影響が比較的少なく、副作用の種類や程度も異なります。このため、より効果的かつ選択的な治療が期待されています。外来診療では、「私の遺伝子タイプに合った薬があるって聞きましたが?」と質問される患者さんが増えています。これは、がんの遺伝子検査によって、特定の分子標的薬が有効ながん細胞の特性(ドライバー遺伝子変異など)が明らかになることが増えたためです。

作用機序と種類

分子標的薬は、その標的となる分子や作用機序によって多様な種類があります。
チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)
がん細胞の増殖シグナル伝達に関わるチロシンキナーゼという酵素の働きを阻害します。EGFR遺伝子変異陽性の肺がんやHER2陽性の乳がんなどで用いられます。
モノクローナル抗体
特定のタンパク質(受容体やリガンドなど)に特異的に結合し、その機能を阻害したり、免疫細胞による攻撃を誘導したりします。トラスツズマブ(HER2陽性乳がん)、ベバシズマブ(血管新生阻害)などが代表的です。
mTOR阻害薬
細胞の成長や増殖を制御するmTOR経路を阻害します。腎細胞がんや乳がんの一部で用いられます。
これらの薬剤は、がん細胞の特定の分子異常をターゲットとするため、治療前にがん組織の遺伝子検査を行い、適切な標的が存在するかどうかを確認することが一般的です。この個別化医療のアプローチにより、治療効果の向上と不要な副作用の回避が期待されます。

対象となるがん種と効果

分子標的薬は、特定のがん種の特定の遺伝子変異やタンパク質の発現に基づいて選択されます。例えば、乳がんにおけるHER2タンパクの過剰発現は、トラスツズマブなどの抗HER2薬の有効な標的となります[1]。肺がんではEGFR遺伝子変異やALK融合遺伝子などが見つかると、それぞれの変異に対応するチロシンキナーゼ阻害薬が選択されます。これらの薬剤は、従来の化学療法と比較して、高い奏効率(がんが縮小する割合)や無増悪生存期間の延長が報告されています。ただし、効果には個人差があり、また薬剤耐性の獲得によって効果が減弱することもあります。臨床現場では、治療開始後も定期的に効果判定を行い、必要に応じて治療薬の変更や追加を検討します。実際の診療では、治療開始数ヶ月で腫瘍の縮小を実感される患者さんが多く見られますが、同時に皮膚症状や消化器症状などの副作用のマネジメントも重要になります。
⚠️ 注意点

分子標的薬は、特定の分子を標的とするため、その分子を持たないがんには効果が期待できません。治療前に必ず遺伝子検査などによる適応確認が必要です。

免疫チェックポイント阻害薬とは?

免疫チェックポイント阻害薬とは、がん細胞が免疫細胞の攻撃から逃れるために利用する「免疫チェックポイント」と呼ばれる仕組みをブロックすることで、患者さん自身の免疫細胞(T細胞など)ががん細胞を攻撃する力を回復・強化させる薬剤です。これにより、がん細胞を排除する効果が期待されます。従来の治療法とは全く異なる作用機序を持つため、「がん免疫療法」の中心的薬剤として注目されています。日々の診療では、「自分の免疫でがんを治せるなんて、夢のようですね」と希望を語る患者さんが多くいらっしゃいます。しかし、全ての患者さんに効果があるわけではなく、また免疫系の過剰な活性化による特有の副作用(免疫関連有害事象)にも注意が必要です。

作用機序と種類

免疫チェックポイント阻害薬の主な作用機序は、T細胞の活性化を抑制するブレーキ役の分子(PD-1、CTLA-4など)とそのリガンド(PD-L1など)の結合を阻害することです。
  • 抗PD-1抗体: T細胞表面のPD-1分子に結合し、がん細胞がPD-L1を介してT細胞の働きを抑制するのを防ぎます。ニボルマブ、ペムブロリズマブなどが代表的です。
  • 抗PD-L1抗体: がん細胞表面のPD-L1分子に結合し、T細胞のPD-1との結合を阻害します。アテゾリズマブ、デュルバルマブなどが含まれます。
  • 抗CTLA-4抗体: T細胞の活性化初期段階でブレーキ役となるCTLA-4分子に結合し、免疫反応を増強させます。イピリムマブが代表的です。
これらの薬剤は、単独で使用されることもあれば、異なる種類の免疫チェックポイント阻害薬を併用したり、化学療法や分子標的薬と併用したりすることもあります。特に、抗PD-1抗体と抗CTLA-4抗体の併用療法は、より強力な免疫反応を引き出すことが期待されています。

免疫関連有害事象(irAE)とその管理

免疫チェックポイント阻害薬は、免疫系を活性化させるため、がん細胞だけでなく正常な臓器に対する免疫反応を引き起こすことがあります。これを「免疫関連有害事象(irAE)」と呼びます。irAEは、皮膚炎、大腸炎、甲状腺機能障害、肝機能障害、間質性肺炎など、様々な臓器に発生する可能性があります。症状は軽度なものから重篤なものまで幅広く、早期発見と適切な管理が重要です。臨床現場では、治療開始前から患者さんにirAEの可能性を十分に説明し、体調の変化(特に発熱、発疹、下痢、倦怠感など)があれば速やかに医療機関に連絡するよう指導しています。筆者の臨床経験では、irAEは治療開始数週間から数ヶ月後に発現することが多く、ステロイド剤の投与などで症状をコントロールできるケースがほとんどですが、稀に重篤化することもあるため、継続的なモニタリングが不可欠です。外来でのフォローアップでは、問診で全身症状の変化を詳細に確認し、血液検査で肝機能や甲状腺機能などを定期的にチェックしています。

がん支持療法薬とは?

がん患者の副作用軽減と生活の質向上を目的とした支持療法薬の概要
がん支持療法薬の役割
がん支持療法薬とは、がんそのものやがん治療に伴って生じる様々な症状や副作用を軽減し、患者さんの生活の質(QOL)を維持・向上させることを目的とした薬剤の総称です。がん治療は、がん細胞を攻撃する一方で、患者さんの身体に大きな負担をかけることがあります。吐き気、痛み、倦怠感、感染症など、多岐にわたる症状が治療の継続を困難にしたり、日常生活を著しく制限したりする可能性があります。がん支持療法は、これらの症状を積極的に管理することで、患者さんが治療を完遂し、より良い状態で日常生活を送れるよう支える重要な医療分野です。実臨床では、「抗がん剤の副作用がつらくて、もう治療を諦めたい」という患者さんに出会うことがあります。そのような時に、支持療法薬を適切に用いることで、症状が劇的に改善し、治療を継続する意欲を取り戻されるケースを多く経験します。

副作用軽減のための薬剤

がん治療に伴う主な副作用とその軽減に用いられる支持療法薬には、以下のようなものがあります。
  • 制吐剤: 化学療法による吐き気や嘔吐を予防・軽減するために使用されます。5-HT3受容体拮抗薬、NK1受容体拮抗薬、デキサメタゾンなどが組み合わせて用いられることが多いです。
  • 痛み止め(鎮痛薬): がんによる痛みや治療に伴う痛みを和らげます。非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、アセトアミノフェン、オピオイド鎮痛薬(モルヒネ、フェンタニルなど)が痛みの程度に応じて使い分けられます。
  • G-CSF製剤(顆粒球コロニー刺激因子製剤): 化学療法による骨髄抑制で白血球が減少した場合に、白血球の産生を促進し、感染症のリスクを低減します。
  • 貧血治療薬: 抗がん薬による貧血やがん性貧血に対して、鉄剤やエリスロポエチン製剤が用いられることがあります。
  • 骨吸収抑制薬: 骨転移による痛みや骨折のリスクを軽減するために、ビスホスホネート製剤やデノスマブなどが使用されます。
これらの薬剤を適切に用いることで、患者さんはより快適に治療を継続し、日常生活の質を保つことができます。特に、経口抗がん薬の周術期管理では、副作用の予防と早期介入が治療成功の鍵となります[3]

QOL向上と生活の質の維持

がん支持療法は、単に副作用を抑えるだけでなく、患者さんの生活の質全体を向上させることを目指します。これには、身体的な症状の管理だけでなく、精神的なサポート、栄養管理、リハビリテーションなども含まれます。例えば、食欲不振や体重減少に対しては、栄養士と連携して食事指導を行ったり、栄養補助食品を導入したりします。倦怠感に対しては、適切な休息と軽い運動を組み合わせたアドバイスを提供することもあります。臨床現場では、患者さんやご家族からの「食事がなかなかとれない」「夜眠れない」といった具体的な訴えに対し、薬物療法だけでなく、生活習慣のアドバイスや心理的なサポートも積極的に行っています。がん治療は長期にわたることが多いため、患者さんが心身ともに良好な状態で治療を継続できるよう、多職種連携による包括的なサポート体制が重要です。

ホルモン療法とは?

ホルモン療法とは、特定のホルモンががん細胞の増殖を促進するタイプのがん(ホルモン感受性のがん)に対して、そのホルモンの作用を阻害したり、ホルモンの産生を抑制したりすることで、がんの増殖を抑える治療法です。主に乳がんや前立腺がんの治療に用いられます。これらのがん治療関連薬は、がん細胞の特定の受容体(ホルモン受容体)に結合するホルモンの働きを妨げることで効果を発揮します。ホルモン療法は、比較的副作用が少なく、長期にわたって服用できるケースも多いため、多くのがん患者さんにとって重要な治療選択肢となっています。日常診療では、乳がんの患者さんから「女性ホルモンを抑える薬と聞きましたが、副作用はありますか?」といった質問をよく受けます。ホルモンバランスの変化に伴う特有の副作用があるため、十分な説明と管理が重要です。

ホルモン感受性のがんとは?

ホルモン感受性のがんとは、がん細胞の表面や内部に特定のホルモンを受け取る「ホルモン受容体」を持っており、そのホルモンが結合することでがん細胞が増殖するタイプのがんを指します。代表的なものに、女性ホルモン(エストロゲンやプロゲステロン)に反応する乳がんや、男性ホルモン(アンドロゲン)に反応する前立腺がんがあります。治療前には、がん組織の病理検査でホルモン受容体の有無を確認し、陽性であればホルモン療法が有効な選択肢となります。乳がんの術前化学療法において、ホルモン療法と併用することで治療効果を高める可能性も示されています[1]

主なホルモン療法薬の種類と作用

ホルモン療法薬は、その作用機序によっていくつかの種類に分けられます。
  • 抗エストロゲン薬(乳がん): エストロゲン受容体に結合して、エストロゲンががん細胞に作用するのをブロックします。タモキシフェンが代表的です。
  • アロマターゼ阻害薬(乳がん): エストロゲンを生成する酵素(アロマターゼ)の働きを阻害し、体内のエストロゲン量を減少させます。アナストロゾール、レトロゾールなどが閉経後の乳がん患者さんに用いられます。
  • GnRHアゴニスト/アンタゴニスト(乳がん、前立腺がん): 脳下垂体に作用し、性ホルモンの分泌を促すGnRH(ゴナドトロピン放出ホルモン)の働きを調節することで、卵巣や精巣からの性ホルモン産生を抑制します。リュープロレリン、ゴセレリンなどが用いられます。
  • 抗アンドロゲン薬(前立腺がん): アンドロゲン受容体に結合して、男性ホルモンが前立腺がん細胞に作用するのをブロックします。ビカルタミドなどが代表的です。
これらの薬剤は、がんの進行度や患者さんの閉経状態などに応じて選択され、単独または他の治療法と組み合わせて使用されます。筆者の臨床経験では、ホルモン療法は比較的忍容性が高く、長期にわたる治療で効果を維持できる患者さんが多い印象です。治療期間は数年間に及ぶこともあり、その間の生活の質を保つためのサポートも重要になります。

副作用と長期的な管理

ホルモン療法は、性ホルモンの作用を調節するため、特有の副作用が生じることがあります。乳がんのホルモン療法では、更年期症状(ほてり、発汗、関節痛、骨粗しょう症など)が、前立腺がんのホルモン療法では、性欲減退、勃起不全、骨量減少などが主な副作用として挙げられます。これらの副作用は、患者さんの生活の質に影響を与える可能性があるため、適切な管理が必要です。例えば、関節痛に対しては鎮痛薬や運動療法、骨粗しょう症に対しては骨吸収抑制薬やビタミンD・カルシウムの補充が検討されます。臨床現場では、患者さんから「関節の痛みが強くて、日常生活に支障が出ている」といった訴えがあった場合、症状の程度を評価し、適切な対処法を提案します。また、長期的な治療となるため、定期的な骨密度検査や脂質代謝のチェックなど、全身状態のモニタリングも欠かせません。患者さんが安心して治療を継続できるよう、副作用の早期発見と対処、そして生活習慣のアドバイスを通じて、きめ細やかなサポートを心がけています。

まとめ

がん治療関連薬は、殺細胞性抗がん薬、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬、ホルモン療法薬など多岐にわたり、それぞれ異なる作用機序でがんを攻撃します。これらの薬剤は、がんの種類、進行度、患者さんの特性に応じて適切に選択され、単独または組み合わせて使用されます。また、治療に伴う副作用を軽減し、患者さんの生活の質を維持するための支持療法薬も、がん治療において不可欠な要素です。医療の進歩により、がん治療薬は日々進化しており、より効果的で副作用の少ない治療法の開発が進められています。患者さん一人ひとりに最適な治療を提供するためには、これらの薬剤に関する深い知識と、患者さんの状態をきめ細かく観察し、寄り添う医療が重要です。

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よくある質問(FAQ)

がん治療薬はなぜ種類が多いのですか?
がんは単一の病気ではなく、発生する臓器やがん細胞の遺伝子変異によって非常に多様な性質を持つためです。それぞれのタイプのがんに対して、最も効果的で副作用が少ない治療法を提供するために、様々な作用機序を持つ薬剤が開発されています。
副作用が心配ですが、どうすれば良いですか?
がん治療薬には様々な副作用がありますが、多くの場合は支持療法薬や生活指導によって症状を軽減できます。治療開始前に医師や薬剤師から十分に説明を受け、体調の変化があれば速やかに医療者に相談することが重要です。自己判断で薬を中断せず、必ず医療機関と連携してください。
分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬は、全てのがんに効きますか?
いいえ、全てのがんに効くわけではありません。分子標的薬は特定の遺伝子変異やタンパク質の発現があるがんに、免疫チェックポイント阻害薬は特定の免疫環境を持つがんに有効性が期待されます。治療前に精密な検査を行い、薬剤の適応があるかどうかを確認することが不可欠です。
📖 参考文献
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  2. Shanmugasundaram Ganapathy-Kanniappan, Jean-Francois H Geschwind. Tumor glycolysis as a target for cancer therapy: progress and prospects.. Molecular cancer. 2014. PMID: 24298908. DOI: 10.1186/1476-4598-12-152
  3. Cristina Villanueva-Bueno, Vicente Escudero-Vilaplana, Roberto Collado-Borrell et al.. Medication guide for the perioperative management of oral antineoplastic agents in cancer patients.. Expert opinion on drug safety. 2022. PMID: 34357828. DOI: 10.1080/14740338.2021.1965990
  4. Guizhi Zhu, Gang Niu, Xiaoyuan Chen. Aptamer-Drug Conjugates.. Bioconjugate chemistry. 2016. PMID: 26083153. DOI: 10.1021/acs.bioconjchem.5b00291
  5. アナストロゾール(アナストロゾール)添付文書(JAPIC)
  6. フェマーラ(レトロゾール)添付文書(JAPIC)
  7. ウトロゲスタン(プロゲステロン)添付文書(JAPIC)
  8. ハーセプチン(トラスツズマブ)添付文書(JAPIC)
  9. アバスチン(ベバシズマブ)添付文書(JAPIC)
  10. オプジーボ(ニボルマブ)添付文書(JAPIC)
  11. キイトルーダ(ペムブロリズマブ)添付文書(JAPIC)
  12. イミフィンジ(デュルバルマブ)添付文書(JAPIC)
  13. デノスマブBS(デノスマブ)添付文書(JAPIC)
  14. アフタゾロン(デキサメタゾン)添付文書(JAPIC)
  15. アセトアミノフェン(アセトアミノフェン)添付文書(JAPIC)
  16. トリメブチンマレイン酸塩(モニタリン)添付文書(JAPIC)
この記事の監修医
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大城森生
管理薬剤師・旭薬局渋谷店
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小林瑛
管理薬剤師・旭薬局池袋店
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佐藤義朗
薬剤師・有限会社旭商事 代表取締役
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倉田照久
医療法人御照会 理事長・渋谷文化村通り皮膚科 院長
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