【前立腺の疾患とは?】症状・原因・治療法を解説

前立腺の疾患
最終更新日: 2026-04-08
📋 この記事のポイント
  • ✓ 前立腺の疾患には前立腺がん、前立腺肥大症、前立腺炎などがあり、それぞれ症状や治療法が異なります。
  • ✓ 早期発見と適切な診断が重要であり、定期的な検診や症状に応じた専門医への相談が推奨されます。
  • ✓ 最新の治療法や研究動向も進化しており、患者さん一人ひとりに合わせた個別化医療が進められています。
※ 本記事は医療に関する情報提供を目的としています。個別の症状については、かかりつけの医療機関にご相談ください。

前立腺は男性特有の臓器であり、膀胱のすぐ下に位置し、尿道を取り囲んでいます。この前立腺に異常が生じると、排尿に関する様々な症状や、時には生命に関わる重篤な疾患を引き起こすことがあります。前立腺の疾患は、年齢とともに発症リスクが高まる傾向にあり、早期発見と適切な治療が非常に重要です。

前立腺がんとは?その特徴と治療の選択肢

前立腺がんの進行度と治療法選択肢を医師と相談する様子
前立腺がんと治療の選択肢

前立腺がんは、前立腺の細胞が異常に増殖することで発生する悪性腫瘍です。男性に発生するがんの中で罹患率が高く、特に高齢になるほどリスクが増加します[2]

前立腺がんの症状は?

前立腺がんは初期段階では自覚症状がほとんどないことが特徴です。進行すると、以下のような症状が現れることがあります。

  • 排尿困難:尿の勢いが弱い、排尿に時間がかかる
  • 頻尿:特に夜間の頻尿
  • 血尿・血精液症:尿や精液に血が混じる
  • 骨転移による痛み:腰や股関節の痛み(進行がんの場合)

臨床の現場では、初診時に「最近、夜中に何度もトイレに起きるようになって困っている」と相談される患者さんも少なくありません。このような症状は前立腺肥大症でも見られますが、がんの可能性も考慮し、詳細な検査を提案しています。

前立腺がんの診断方法は?

前立腺がんの診断には、主に以下の方法が用いられます。

  • PSA検査 (Prostate Specific Antigen):血液中のPSA値を測定するスクリーニング検査です。PSAは前立腺特異抗原と呼ばれ、前立腺の病気で上昇することがあります。ただし、前立腺肥大症や前立腺炎でも上昇するため、PSA値が高いだけではがんとは断定できません[1]
  • 直腸診 (DRE: Digital Rectal Examination):医師が直腸から指を挿入し、前立腺の大きさや硬さ、表面の凹凸などを触診で確認します。
  • 生検 (Biopsy):PSA値や直腸診で異常が認められた場合、前立腺組織の一部を採取し、病理組織学的にがん細胞の有無を確認する確定診断です。
  • 画像診断:MRI、CT、骨シンチグラフィーなどを用いて、がんの進行度や転移の有無を評価します。

前立腺がんの治療選択肢には何がある?

前立腺がんの治療は、がんの進行度(病期)、悪性度(グリソンスコア)、患者さんの年齢や全身状態、合併症などを総合的に考慮して決定されます[3]。主な治療法は以下の通りです。

  • 監視療法 (Active Surveillance):低リスクのがんの場合、直ちに治療せず、定期的なPSA検査や生検で経過を観察します。がんの進行が認められた場合に治療を開始します。
  • 手術療法 (前立腺全摘除術):がんのある前立腺を完全に摘出する治療法です。ロボット支援手術が主流となり、より精密な手術が可能になっています。
  • 放射線療法:外部から放射線を照射する外照射療法や、前立腺内に放射線源を埋め込む小線源治療(ブラキセラピー)があります。
  • ホルモン療法:前立腺がんは男性ホルモンの影響を受けて増殖するため、男性ホルモンの分泌や作用を抑える薬を使用します。進行がんや転移がんに対して有効です。
  • 化学療法・新規薬剤:ホルモン療法が効かなくなった場合などに、抗がん剤や新しい分子標的薬、免疫療法などが検討されます。

実臨床では、患者さん一人ひとりの病状やライフスタイルに合わせた最適な治療計画を提案するため、泌尿器科専門医が詳細なカウンセリングを行っています。治療を始めて数ヶ月ほどで「PSA値が安定してきて安心した」とおっしゃる方が多いです。治療の選択肢は多岐にわたるため、十分な情報提供と患者さんとの対話が不可欠であると実感しています。

グリソンスコアとは
前立腺がんの悪性度を評価するための指標で、生検で採取された組織の顕微鏡像に基づいて決定されます。数字が高いほど悪性度が高いと判断され、治療方針の決定に重要な役割を果たします。

前立腺肥大症(BPH)とは?症状と治療法を解説

前立腺肥大症(Benign Prostatic Hyperplasia, BPH)は、加齢とともに前立腺が良性(がんではない)に肥大する疾患です。肥大した前立腺が尿道を圧迫することで、様々な排尿症状を引き起こします。

前立腺肥大症の主な症状は?

前立腺肥大症の症状は、主に「貯蓄症状」と「排尿症状」に分けられます。

  • 貯蓄症状(刺激症状)
    • 頻尿:日中や夜間に何度もトイレに行く
    • 尿意切迫感:急に強い尿意を感じ、我慢しにくい
    • 切迫性尿失禁:尿意切迫感の後に尿が漏れてしまう
  • 排尿症状(閉塞症状)
    • 尿勢低下:尿の勢いが弱い
    • 排尿遅延:排尿開始までに時間がかかる
    • 残尿感:排尿後も尿が残っている感じがする
    • 尿線途絶:排尿中に尿が途切れる

日常診療では、排尿日誌をつけていただくことで、患者さん自身の排尿パターンを客観的に把握し、適切な診断と治療方針の決定に役立てています。臨床の現場では、特に夜間頻尿で睡眠の質が低下し、QOL(生活の質)が著しく損なわれている患者さんが多くいらっしゃいます。

前立腺肥大症の診断プロセスは?

診断には、問診(国際前立腺症状スコア:IPSSなど)、直腸診、尿検査、血液検査(PSA値など)、超音波検査、尿流測定などが行われます。これらの検査を通じて、肥大の程度、尿道の圧迫状況、残尿量、腎機能への影響などを評価します[1]

前立腺肥大症の治療法にはどのようなものがある?

治療は症状の程度や患者さんの希望に応じて選択されます。

  • 薬物療法
    • α1遮断薬:前立腺や膀胱頸部の筋肉を弛緩させ、尿道の抵抗を減らします。比較的速やかに効果が期待できます。
    • 5α還元酵素阻害薬:前立腺を縮小させる効果があり、効果発現には時間がかかりますが、長期的な症状改善が期待されます。
    • PDE5阻害薬:勃起不全治療薬としても知られ、前立腺肥大症による下部尿路症状の改善にも効果が報告されています。
    • 漢方薬:症状緩和のために併用されることもあります。
  • 手術療法:薬物療法で効果が不十分な場合や、重度の症状(尿閉、腎機能障害など)がある場合に検討されます。
    • 経尿道的切除術 (TURP: Transurethral Resection of the Prostate):尿道から内視鏡を挿入し、肥大した前立腺組織を電気メスで切除する方法です。標準的な手術法として広く行われています。
    • レーザー治療:ホルミウムレーザーやグリーンライトレーザーなどを用いて、肥大組織を蒸散・切除します。出血が少なく、入院期間が短い傾向があります。
    • 前立腺動脈塞栓術 (PAE: Prostatic Artery Embolization):カテーテルを用いて前立腺に血液を供給する動脈を塞栓し、肥大組織を虚血壊死させることで縮小を促す低侵襲治療です。
⚠️ 注意点

前立腺肥大症の症状は、前立腺がんの症状と類似していることがあります。自己判断せずに、必ず専門医の診察を受け、適切な診断と治療を受けることが重要です。

前立腺炎とは?その種類と治療アプローチ

急性細菌性前立腺炎と慢性前立腺炎の症状を比較した図
様々な前立腺炎の種類と症状

前立腺炎は、前立腺に炎症が起こる疾患の総称です。比較的若い男性から高齢者まで幅広い年齢層で発症し、排尿時の痛みや不快感など、多様な症状を引き起こします。

前立腺炎の主な種類と原因は?

前立腺炎は、その原因や症状の経過によって大きく4つのタイプに分類されます[1]

  1. 急性細菌性前立腺炎 (Category I)
    • 原因:細菌感染(大腸菌など)
    • 症状:急な高熱、悪寒、全身倦怠感、排尿痛、頻尿、残尿感、会陰部痛、排便時痛など。重症化すると敗血症に至ることもあります。
  2. 慢性細菌性前立腺炎 (Category II)
    • 原因:細菌感染が持続するもの。急性前立腺炎が完全に治癒しなかった場合や、尿路感染症が繰り返される場合に発症しやすいです。
    • 症状:排尿痛、頻尿、残尿感、会陰部や下腹部の鈍痛などが慢性的に続きます。症状の軽快と増悪を繰り返すこともあります。
  3. 慢性非細菌性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群 (Category III)
    • 原因:細菌感染が証明されないにもかかわらず、慢性的な骨盤部の痛みや排尿症状が続く状態です。ストレス、神経障害、骨盤底筋の異常、免疫学的要因などが関与すると考えられています。炎症の有無によってさらに分類されます。
    • 症状:会陰部、陰嚢、下腹部、腰部などの慢性的な痛みや不快感、排尿痛、頻尿、射精時痛、性機能障害など、多岐にわたります。
  4. 無症状性炎症性前立腺炎 (Category IV)
    • 原因:特に症状はないが、他の検査(不妊検査やPSA検査など)で偶然、前立腺に炎症が見つかるタイプです。
    • 症状:自覚症状はありません。

診察の中で、特に慢性非細菌性前立腺炎の患者さんは、症状が長期にわたり、精神的な負担も大きいことを実感しています。そのため、症状の緩和だけでなく、患者さんの心理的サポートも重要なポイントになります。

前立腺炎の診断と治療アプローチは?

診断は、問診、直腸診、尿検査、尿培養検査、前立腺マッサージ後尿検査、精液検査などによって行われます。特に細菌性前立腺炎の診断には、尿や前立腺液からの細菌検出が重要です。

治療は前立腺炎の種類によって異なります。

  • 急性細菌性前立腺炎:抗菌薬の投与が中心となります。高熱や全身状態が悪い場合は入院での点滴治療が必要となることもあります。
  • 慢性細菌性前立腺炎:長期間にわたる抗菌薬の投与が基本です。症状に応じて、α1遮断薬や消炎鎮痛剤が併用されることもあります。
  • 慢性非細菌性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群:原因が特定しにくいため、治療も多角的になります。α1遮断薬、抗炎症薬、漢方薬、抗不安薬、筋弛緩薬などが用いられるほか、生活習慣の改善、温熱療法、骨盤底筋リハビリテーション、ストレス管理なども重要です。

治療を始めて数ヶ月ほどで「痛みが和らいで、日常生活が楽になった」とおっしゃる方が多いですが、慢性的な症状の場合、根気強い治療と生活習慣の見直しが求められます。

最新コラム:前立腺疾患研究の進展と未来の治療

前立腺疾患に関する研究は日々進展しており、診断技術の向上や新たな治療法の開発が期待されています。特に前立腺がんの分野では、個別化医療の実現に向けた動きが加速しています[4]

前立腺がんの診断における最新動向とは?

従来のPSA検査に加えて、より精密な診断を可能にする新しいバイオマーカーの研究が進められています。例えば、尿中や血液中の特定の遺伝子やタンパク質を検出することで、がんの有無だけでなく、その悪性度や進行リスクをより正確に予測しようとする試みです。また、MRIと生検を組み合わせた「MRI-US融合生検」は、がんの疑わしい部位をピンポイントで狙って組織を採取できるため、診断精度が向上しています。

日々の診療では、最新の画像診断技術を積極的に導入し、患者さんへの負担を最小限に抑えつつ、より正確な診断を目指しています。臨床の現場では、これらの技術が早期発見に繋がり、患者さんの予後改善に大きく貢献していることを実感しています。

前立腺疾患の治療法におけるイノベーションは?

前立腺疾患の治療法も、低侵襲化と個別化が進んでいます。

  • 前立腺がん
    • 局所療法:高密度焦点式超音波療法(HIFU)や凍結療法など、前立腺がんをピンポイントで治療する局所療法が注目されています。これにより、周囲の正常組織へのダメージを減らし、性機能や排尿機能の温存が期待されます。
    • 分子標的薬・免疫チェックポイント阻害薬:進行性前立腺がんに対して、がん細胞特有の分子を標的とする薬剤や、免疫の力を利用してがんを攻撃する薬剤の開発が進んでいます。これにより、従来のホルモン療法や化学療法で効果が得られにくくなった患者さんにも新たな治療の選択肢が提供されています。
  • 前立腺肥大症(BPH)
    • 水蒸気治療(Rezumシステム):肥大した前立腺組織に水蒸気を注入し、組織を壊死させることで縮小を促す新しい低侵襲治療です。比較的短時間で実施可能で、性機能への影響が少ないとされています。
    • 前立腺吊り上げ術(UroLiftシステム):肥大した前立腺組織を特殊なインプラントで持ち上げ、尿道の圧迫を解除する治療法です。性機能温存を重視する患者さんに適しています。

これらの新しい治療法は、患者さんのQOL向上に貢献すると期待されています。実際の診療では、患者さんの病状だけでなく、年齢、全身状態、そして何よりも「何を最も大切にしたいか」という価値観を丁寧に伺い、最適な治療法を一緒に見つけていくことが重要だと考えています。

前立腺疾患の予防と早期発見の重要性

前立腺疾患の多くは加齢とともにリスクが高まりますが、生活習慣の改善や定期的な検診によって、その発症リスクを低減したり、早期に発見して治療を開始したりすることが可能です。特に40歳以上の男性は、定期的なPSA検査や泌尿器科医による診察を検討することが推奨されます。早期発見は、治療の選択肢を広げ、より良い治療結果に繋がる可能性を高めます。

疾患名主な症状主な診断方法主な治療法
前立腺がん初期無症状、進行すると排尿困難、血尿、骨痛などPSA検査、直腸診、生検、MRI監視療法、手術、放射線療法、ホルモン療法、化学療法
前立腺肥大症頻尿、尿勢低下、残尿感、尿意切迫感など問診、直腸診、尿流測定、超音波検査薬物療法(α1遮断薬、5α還元酵素阻害薬)、手術(TURP、レーザー治療など)
前立腺炎排尿痛、頻尿、会陰部痛、発熱(急性期)など問診、尿検査、尿培養、前立腺マッサージ後尿検査抗菌薬、消炎鎮痛剤、α1遮断薬、生活習慣改善

まとめ

前立腺の健康維持と疾患予防の重要性を強調する医療従事者
前立腺疾患の予防と早期発見

前立腺の疾患は、男性の健康に大きく影響する重要な問題です。前立腺がん、前立腺肥大症、前立腺炎はそれぞれ異なる病態ですが、排尿に関する症状が共通していることも多く、正確な診断が不可欠です。早期発見と適切な治療は、症状の改善だけでなく、生活の質の維持、さらには生命予後の改善に繋がります。定期的な健康診断や、気になる症状がある場合は、ためらわずに泌尿器科専門医に相談することが大切です。最新の医療技術や治療法の進展により、患者さん一人ひとりに合わせた最適なアプローチが可能になっています。

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よくある質問(FAQ)

前立腺の疾患は、どのような年齢層で多く見られますか?
前立腺の疾患は、一般的に加齢とともに発症リスクが高まります。前立腺肥大症や前立腺がんは、特に50歳以上の男性に多く見られます。前立腺炎は比較的若い男性から高齢者まで幅広い年齢層で発症する可能性があります。
PSA検査は毎年受けるべきですか?
PSA検査は前立腺がんのスクリーニングに有用ですが、その受診頻度については専門家の間でも意見が分かれることがあります。一般的には、50歳以上の男性は定期的な受診が推奨されますが、個人のリスク因子や健康状態に応じて、医師と相談して適切な頻度を決定することが重要です。
前立腺の疾患を予防するために、日常生活でできることはありますか?
バランスの取れた食事、適度な運動、禁煙、節度ある飲酒、ストレスの管理など、健康的な生活習慣は前立腺疾患のリスク低減に役立つ可能性があります。特に、野菜や果物を多く摂取し、動物性脂肪の過剰摂取を控えることが推奨されることがあります。
🏛️ ガイドライン・公的資料
この記事の監修医
👨‍⚕️
高他大暉
泌尿器科医
👨‍⚕️
吉田春生
泌尿器科医