- ✓ 食道の疾患には逆流性食道炎、食道がん、食道アカラシアなど多岐にわたるものがあります。
- ✓ 各疾患は症状、原因、治療法が異なり、早期発見と適切な診断が重要です。
- ✓ 専門医による正確な診断と、患者さんの状態に合わせた治療計画が回復への鍵となります。
食道は、口から摂取した食物を胃へ送り込む役割を担う重要な臓器です。その食道に異常が生じると、嚥下困難(えんげこんなん:食べ物や飲み物を飲み込みにくい状態)や胸やけ、胸の痛みなど、日常生活に大きな影響を及ぼす様々な症状が現れることがあります。食道の疾患は多岐にわたり、軽度なものから生命に関わる重篤なものまで存在します。正確な診断と適切な治療が、症状の改善と生活の質の向上には不可欠です[1]。
- 食道とは
- 食道は、口から胃へと食物を運ぶ約25cmの管状の臓器です。蠕動運動(ぜんどううんどう:筋肉が波打つように収縮・弛緩を繰り返すことで内容物を移動させる運動)によって食物を効率よく胃に送ります。食道と胃の境界には下部食道括約筋(かぶしょくどうかつやくきん)があり、胃酸の逆流を防ぐ役割を担っています。
逆流性食道炎(GERD)とは?

逆流性食道炎(Gastroesophageal Reflux Disease: GERD)は、胃酸や胃の内容物が食道に逆流することで、食道の粘膜に炎症やびらん(ただれ)を引き起こし、胸やけや呑酸(どんさん:酸っぱいものが上がってくる感覚)などの症状を呈する疾患です。
この疾患は、食道と胃の境目にある下部食道括約筋(かぶしょくどうかつやくきん)の機能が低下したり、胃酸の分泌が過剰になったりすることで発生します。臨床の現場では、初診時に「胸が焼けるように熱い」「食べたものが喉まで上がってくる」と相談される患者さんが少なくありません。特に食後に症状が悪化する傾向が見られます。米国消化器病学会のガイドラインでは、GERDの診断基準として、胸やけや呑酸が週に2回以上認められる場合を挙げています。日本における有病率は、2000年代以降増加傾向にあり、成人のおよそ10~20%が罹患していると推計されています。
逆流性食道炎の主な症状は?
逆流性食道炎の症状は多岐にわたりますが、代表的なものとしては以下のものが挙げられます。
- 胸やけ(Heartburn):胸骨の裏側が焼けるように感じる不快感です。
- 呑酸(Acid regurgitation):胃酸が口の中や喉まで逆流し、酸っぱい味や苦い味を感じる症状です。
- 胸の痛み:心臓の病気と間違われることもある、胸部の不快感や痛みです。
- 嚥下困難(Dysphagia):食べ物がつかえるような感覚や、飲み込みにくいと感じる症状です。
- 慢性的な咳や喘息:胃酸の刺激により、喉や気管支に炎症が起こることで生じることがあります。
- 喉の違和感(咽喉頭異常感):喉に何かが引っかかっているような感覚や、声がかすれるなどの症状です。
逆流性食道炎の原因と治療法は?
逆流性食道炎の主な原因は、下部食道括約筋の機能低下、胃酸の過剰分泌、食道裂孔ヘルニア(しょくどうれっこうへるにあ:胃の一部が横隔膜の穴から胸腔に飛び出す状態)、肥満、喫煙、飲酒、特定の薬剤などが挙げられます。食生活では、脂肪分の多い食事、刺激物、カフェイン、アルコールなどが症状を悪化させることが知られています。
治療は、主に生活習慣の改善と薬物療法が中心となります。生活習慣の改善としては、以下のような対策が推奨されます。
- 食事内容の見直し(脂肪分の少ない食事、刺激物の制限)
- 食後すぐに横にならない
- 就寝前の食事を控える
- 肥満の解消
- 禁煙・節酒
薬物療法では、胃酸の分泌を抑えるプロトンポンプ阻害薬(PPI)やH2ブロッカー、食道の粘膜を保護する薬剤などが用いられます。これらの治療により、多くの患者さんで症状の改善が期待できます。実臨床では、患者さん一人ひとりの生活習慣や症状の程度を詳しく伺い、最適な治療プランをご提案しています。重症例や薬物療法で効果が得られない場合には、外科手術が検討されることもあります。
食道がんとは?そのリスクと治療法
食道がんは、食道の粘膜に発生する悪性腫瘍です。早期発見が難しく、進行すると周囲の臓器に浸潤したり、リンパ節や他臓器に転移したりする可能性のある、予後の厳しい疾患の一つです。
食道がんには、食道の扁平上皮細胞から発生する扁平上皮がんが約90%を占めますが、近年では胃酸の逆流によって食道下部の粘膜が変化するバレット食道を背景に発生する腺がんも増加傾向にあります。実際の診療では、飲酒や喫煙歴のある患者さんに食道がんが見つかるケースが多く、特にアルコールを飲むと顔が赤くなる体質の方は注意が必要です。これらの因子が食道粘膜に慢性的な炎症を引き起こし、がん化を促進すると考えられています。
食道がんの主な症状と進行度は?
食道がんは、早期の段階では自覚症状がほとんどないことが特徴です。そのため、健康診断や他の疾患の検査で偶然発見されることも少なくありません。進行すると、以下のような症状が現れることがあります。
- 嚥下困難:食べ物がつかえる、飲み込みにくいといった症状が最も一般的です。進行すると、柔らかいものや液体でも困難になることがあります。
- 胸の違和感や痛み:食べ物が食道を通る際に、胸の奥に痛みやしみるような感覚を覚えることがあります。
- 体重減少:食事が十分に摂れなくなることや、がんによる全身状態の悪化により、意図しない体重減少が見られます。
- 嗄声(させい:声がれ):がんが進行し、声帯を動かす神経(反回神経)に浸潤すると、声がかすれることがあります。
- 背中の痛み:がんが食道の壁を越えて背中側に広がることで、背部痛が生じることがあります。
食道がんの進行度は、TNM分類という国際的な基準で評価されます。T(Tumor:原発腫瘍の大きさや浸潤度)、N(Node:リンパ節転移の有無と範囲)、M(Metastasis:遠隔転移の有無)の3つの要素を組み合わせて、病期(ステージ)が決定されます。病期は0期からIV期まであり、治療法の選択に大きく影響します。
食道がんの主な原因と治療選択肢は?
食道がんの主な原因としては、以下のようなものが挙げられます。
- 喫煙:タバコに含まれる発がん性物質が食道粘膜を刺激します。
- 飲酒:アルコール、特に熱いアルコール飲料は食道粘膜にダメージを与えます。アセトアルデヒド分解酵素の活性が低い人は、よりリスクが高いとされています。
- 熱い飲食物の摂取:熱すぎる飲食物は食道粘膜に慢性的な炎症を引き起こす可能性があります。
- 逆流性食道炎・バレット食道:胃酸の慢性的な逆流が食道下部の粘膜を変化させ、腺がんのリスクを高めます。
- 栄養状態:野菜や果物の摂取不足、特定の栄養素の欠乏がリスクを高める可能性が指摘されています。
食道がんの治療法は、がんの進行度、患者さんの全身状態、合併症の有無などを総合的に判断して決定されます。主な治療法には以下のものがあります。
- 内視鏡的切除:早期のがんで、がんが粘膜内にとどまっている場合に適用されます。内視鏡を用いてがんを切除します。
- 外科手術:がんを含む食道の一部を切除し、胃や大腸の一部を用いて再建する手術です。進行がんの標準治療の一つです。
- 放射線治療:高エネルギーの放射線をがんに照射し、がん細胞を破壊する治療法です。手術が困難な場合や、手術後の再発予防、症状緩和目的で行われることがあります。
- 化学療法:抗がん剤を用いてがん細胞の増殖を抑える治療法です。手術の前後に補助的に行われたり、進行がんに対して単独または放射線治療と組み合わせて行われたりします。
- 免疫療法:患者さん自身の免疫力を高めてがん細胞を攻撃させる治療法です。近年、進行食道がんの治療選択肢として注目されています。
これらの治療法は、単独で行われることもあれば、組み合わせて行われることもあります(集学的治療)。治療を始めて数ヶ月ほどで「食事がスムーズに摂れるようになった」「痛みが和らいだ」とおっしゃる方が多いですが、治療効果には個人差があります。定期的な検査と専門医との密な連携が、治療を成功させる上で非常に重要です。
食道アカラシアとは?その病態と治療アプローチ

食道アカラシアは、食道の蠕動運動(ぜんどううんどう)が障害され、かつ下部食道括約筋(かぶしょくどうかつやくきん)が食物の通過時に十分に弛緩(しかん:緩むこと)しないことによって、食べ物や飲み物が胃へうまく送れなくなる疾患です。
この疾患は、食道壁内の神経細胞の変性によって引き起こされると考えられており、食道の機能的な障害が特徴です。日常診療では、若い世代の患者さんから「食べ物が喉の奥でつかえる」「食後に吐き戻してしまう」といった症状で受診されることがあり、内視鏡検査で食道内に食物残渣が貯留している所見からアカラシアが疑われるケースをよく経験します。稀な疾患ではありますが、診断が遅れると食道の拡張が進行し、栄養状態の悪化や誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)のリスクが高まります[2]。
食道アカラシアの主な症状は?
食道アカラシアの症状は、ゆっくりと進行することが多く、初期には自覚症状が軽微な場合があります。しかし、疾患が進行するにつれて以下のような症状が顕著になります。
- 嚥下困難(Dysphagia):最も特徴的な症状で、固形物だけでなく液体でも飲み込みにくさを感じることがあります。冷たい飲み物や早食いで悪化する傾向があります。
- 食物の逆流・吐き戻し(Regurgitation):胃に到達できなかった食物が、未消化のまま逆流してくることがあります。特に就寝中に起こりやすく、誤嚥性肺炎の原因となることもあります。
- 胸の痛み・不快感:食道に貯留した食物や、食道の異常な収縮によって、胸の奥に痛みや圧迫感を感じることがあります。
- 体重減少:嚥下困難により十分な食事が摂れないため、体重が減少することがあります。
- 胸やけ:胃酸の逆流による胸やけとは異なり、食道に貯留した食物が発酵することで生じる不快感です。
食道アカラシアの診断と治療法は?
食道アカラシアの診断には、以下の検査が用いられます。
- 食道造影検査:バリウムを飲んでレントゲン撮影を行い、食道の拡張や下部食道括約筋の狭窄、蠕動運動の異常を確認します。鳥のくちばしのように食道下部が細くなる「鳥のくちばし様」の所見が特徴的です。
- 食道内圧検査:食道内の圧力を測定し、蠕動運動の有無や下部食道括約筋の弛緩不全を客観的に評価する最も重要な検査です。
- 上部消化管内視鏡検査:食道粘膜の状態を確認し、がんなどの他の疾患を除外するために行われます。
食道アカラシアの治療は、下部食道括約筋の圧力を低下させ、食物の通過を改善することを目的とします。主な治療法は以下の通りです。
- 薬物療法:硝酸薬やカルシウム拮抗薬などを用いて、下部食道括約筋の緊張を和らげることを試みます。しかし、効果は一時的で、根治的な治療ではありません。
- 内視鏡的バルーン拡張術:内視鏡を用いて、狭窄した下部食道括約筋をバルーン(風船)で広げる治療法です。比較的簡便ですが、複数回の治療が必要になることがあります。
- ボツリヌス毒素注入療法:内視鏡下で下部食道括約筋にボツリヌス毒素を注入し、筋肉の収縮を一時的に抑制します。効果は数ヶ月程度で、繰り返し治療が必要になることがあります。
- 経口内視鏡的筋層切開術(POEM):内視鏡を用いて食道の内側から下部食道括約筋の筋肉を切開する治療法です。外科手術に近い効果が期待でき、近年注目されています。
- 外科手術(ヘルラー筋切開術):腹腔鏡手術などで下部食道括約筋の筋肉を切開する手術です。最も確実な治療法とされています。
これらの治療法の中から、患者さんの年齢、全身状態、食道の拡張度合いなどを考慮し、最適な方法を選択します。実際の診療では、POEMの登場により、患者さんの負担を軽減しつつ高い治療効果を目指せるようになりました。治療後も定期的な経過観察が重要となります。
バレット食道とは?その特徴とがん化リスク
バレット食道は、胃酸の慢性的な逆流によって、食道下部の扁平上皮(へんぺいじょうひ:食道の正常な粘膜)が、胃や腸のような円柱上皮(えんちゅうじょうひ)に置き換わる状態を指します。これは、逆流性食道炎(GERD)の合併症として発生することが多く、食道腺がんの発生リスクを高める前がん病変として認識されています。
バレット食道は、胃酸に対する防御反応として粘膜が変化した結果と考えられています。臨床の現場では、長期間にわたる胸やけや呑酸の症状を持つ患者さんの内視鏡検査で、食道下部に赤く変色した粘膜が見つかり、組織検査でバレット食道と診断されるケースをよく経験します。特に欧米では食道腺がんの主な原因とされており、日本でも近年増加傾向にあります。
バレット食道の主な症状と診断方法は?
バレット食道自体には、特有の症状はほとんどありません。多くの場合、基礎疾患である逆流性食道炎の症状(胸やけ、呑酸、胸の痛みなど)が認められます。しかし、バレット食道に進行すると、これらの逆流症状が改善したように感じられることもあり、かえって発見が遅れる原因となることがあります。これは、円柱上皮が胃酸に対する抵抗力を持つため、炎症症状が和らぐためと考えられています。
バレット食道の診断は、主に上部消化管内視鏡検査と組織生検によって行われます。
- 上部消化管内視鏡検査:食道と胃の接合部(食道胃接合部)より口側に、赤みがかった円柱上皮が舌状または円周状に伸びているのが観察されます。この変化の長さによって、ショートバレット食道(3cm未満)とロングバレット食道(3cm以上)に分類されます。
- 組織生検:内視鏡で観察された異常な粘膜から組織を採取し、病理組織学的に円柱上皮への変化(腸上皮化生:ちょうじょうひかせい)を確認することで確定診断となります。特に、腸上皮化生を伴うバレット食道は、がん化リスクが高いとされています。
バレット食道のがん化リスクと管理は?
バレット食道は、食道腺がんの前がん病変であり、がん化リスクがあることが最大の懸念点です。特に、ロングバレット食道や、組織検査で異型性(いけいせい:細胞の形態が異常になること)が認められる場合に、がん化リスクが高まります。異型性には、低悪性度異型性と高悪性度異型性があり、高悪性度異型性はがんへの進行が非常に近い状態とされています。
バレット食道における食道腺がんの年間発生率は、一般的に0.1〜0.5%と報告されていますが、異型性の程度によってリスクは大きく変動します。例えば、高悪性度異型性の場合、年間発生率は約10%にまで上昇するとされています。
バレット食道の管理と治療は、がん化の予防と早期発見に重点が置かれます。
- 逆流症状の管理:プロトンポンプ阻害薬(PPI)などを用いて胃酸の分泌を強力に抑制し、逆流性食道炎の症状をコントロールします。これにより、バレット食道の進展やがん化リスクを低減できる可能性があります。
- 定期的な内視鏡検査:バレット食道と診断された場合、がんの早期発見のために定期的な内視鏡検査と生検が推奨されます。検査の間隔は、バレット食道の長さや異型性の有無・程度によって異なりますが、一般的には1~3年に1回程度です。高悪性度異型性が認められた場合は、より頻繁な検査や積極的な治療が検討されます。
- 内視鏡的治療:異型性や早期がんが発見された場合、内視鏡的粘膜切除術(EMR)や内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)、ラジオ波焼灼術(RFA)などで病変を切除または焼灼することがあります。
バレット食道は自覚症状がないことが多いため、逆流性食道炎の症状がある方や、ご家族に食道がんの既往がある方は、定期的な内視鏡検査を受けることを強く推奨します。
診察の中で、バレット食道の患者さんには、胃酸の逆流をコントロールする生活習慣の改善と、定期的な内視鏡検査の重要性を繰り返しお伝えしています。早期に発見し、適切な処置を行うことで、食道腺がんへの進行を防ぐことが期待できます。
その他の食道疾患にはどのようなものがある?
食道には、逆流性食道炎(GERD)、食道がん、食道アカラシア、バレット食道以外にも、様々な疾患が存在します。これらの疾患も、嚥下困難や胸の痛みなど、日常生活に影響を及ぼす症状を引き起こすことがあります。
日々の診療では、患者さんの訴える症状や既往歴を詳細に確認し、適切な検査を通じて正確な診断に至ることを重視しています。食道疾患は多岐にわたり、症状が似ていても原因や治療法が全く異なる場合があるため、専門医による鑑別診断が非常に重要になります。
食道の炎症性疾患には何がある?
食道の炎症性疾患は、食道粘膜に炎症が生じる病態を指します。逆流性食道炎が最も一般的ですが、他にも以下のような疾患があります。
- 好酸球性食道炎(Eosinophilic Esophagitis: EoE):食物アレルギーなどが関与し、食道粘膜に好酸球という白血球が多数浸潤することで炎症が起こる疾患です。嚥下困難や食物の詰まり感が主な症状で、特に小児や若年成人に多く見られます。診断には内視鏡検査と食道生検による好酸球の確認が必要です。治療には、食事療法(アレルゲン除去食)やステロイド薬の内服・吸入、生物学的製剤などが用いられます。
- 感染性食道炎:カンジダ菌やヘルペスウイルス、サイトメガロウイルスなどの感染によって食道に炎症が生じる疾患です。免疫力が低下している患者さん(例:HIV感染者、臓器移植後、抗がん剤治療中など)に多く見られます。嚥下痛(えんげつう:飲み込むときの痛み)や胸の痛みが特徴的です。抗真菌薬や抗ウイルス薬による治療が行われます。
- 薬剤性食道炎:特定の薬剤(特に骨粗しょう症治療薬のビスホスホネート製剤、一部の抗生物質、非ステロイド性抗炎症薬など)が食道に停滞することで、粘膜が損傷され炎症や潰瘍を引き起こす疾患です。薬剤の服用方法(多量の水で服用、服用後すぐに横にならないなど)に注意することで予防できます。
- クローン病による食道病変:クローン病は消化管のどこにでも炎症を起こしうる慢性炎症性疾患であり、食道に病変が生じることもあります。食道潰瘍や狭窄を形成し、嚥下困難や胸の痛みを引き起こします[4]。
- 自己免疫性水疱性疾患による食道病変:類天疱瘡(るいてんぽうそう)や尋常性天疱瘡(じんじょうせいてんぽうそう)などの自己免疫性水疱性疾患が、食道にびらんや水疱、潰瘍を形成することがあります。嚥下痛や嚥下困難を伴うことがあります[3]。
食道の機能性疾患や構造異常には何がある?
食道の機能性疾患は、食道の形態に異常がないにもかかわらず、蠕動運動の異常や知覚過敏によって症状が生じる疾患です。構造異常は、食道の形態的な異常を指します。
- びまん性食道痙攣(Diffuse Esophageal Spasm: DES):食道の蠕動運動が不規則かつ非協調的になり、強い胸の痛みや嚥下困難を引き起こす疾患です。食道内圧検査で特徴的な所見が認められます。
- 食道裂孔ヘルニア:胃の一部が横隔膜の食道が通る穴(食道裂孔)から胸腔内に飛び出す状態です。多くの場合は無症状ですが、逆流性食道炎の原因となったり、症状を悪化させたりすることがあります。
- 食道憩室(しょくどうけいしつ):食道壁の一部が外側に袋状に飛び出したものです。食物が憩室に貯留し、嚥下困難、逆流、口臭などの症状を引き起こすことがあります。
- 食道狭窄(しょくどうきょうさく):食道が狭くなる状態です。逆流性食道炎の重症化、食道がん、放射線治療後などが原因となります。嚥下困難が主な症状で、内視鏡的バルーン拡張術などで治療が行われます。
これらの疾患は、それぞれに適切な診断と治療が必要です。実際の診療では、問診で得られた情報と内視鏡検査、必要に応じて食道内圧検査や食道造影検査などを組み合わせることで、疾患を特定していきます。症状が改善しない場合や、原因がはっきりしない場合には、専門医にご相談いただくことが重要です。
最新コラム(食道): 食道疾患の予防と早期発見の重要性

食道の疾患は、私たちの食生活や生活習慣と密接に関連しており、その予防と早期発見は健康寿命の延伸に不可欠です。近年、食道疾患に関する研究や治療法の進歩は目覚ましく、より効果的で患者さんの負担の少ない治療選択肢が増えています。
特に、食道がんのような重篤な疾患においては、早期発見が治療成績を大きく左右します。外来診療では、最新の内視鏡技術を導入し、微細な病変も見逃さないよう努めています。また、患者さんが安心して検査を受けられるよう、鎮静剤の使用などにも配慮しています。
食道疾患の予防には何が有効か?
食道疾患の多くは、生活習慣の改善によってリスクを低減できる可能性があります。以下に、一般的な予防策を挙げます。
- バランスの取れた食生活:高脂肪食や刺激物の過剰摂取を避け、野菜や果物を積極的に摂ることで、胃酸の分泌を適切に保ち、食道への負担を軽減します。
- 適正体重の維持:肥満は腹圧を高め、胃酸の逆流を促すため、適正体重を維持することが重要です。
- 禁煙・節酒:喫煙や過度な飲酒は、食道粘膜に直接的なダメージを与え、がん化リスクを高めることが知られています。
- 食後の行動に注意:食後すぐに横になるのを避け、就寝前の食事は控えることで、胃酸の逆流を防ぎます。
- ストレス管理:ストレスは消化器系の機能に影響を与えることがあるため、適切なストレス管理も重要です。
食道疾患の早期発見のための検査は?
食道疾患の早期発見には、定期的な健康診断や、症状がある場合の速やかな医療機関受診が不可欠です。特に、以下のような検査が重要となります。
- 上部消化管内視鏡検査(胃カメラ):食道粘膜を直接観察し、炎症、びらん、潰瘍、ポリープ、がんなどの病変を詳細に評価できる最も重要な検査です。必要に応じて組織生検を行い、病理診断を行います。
- バリウム検査(食道造影検査):バリウムを飲んで食道の形や動きをX線で観察する検査です。食道の狭窄、拡張、憩室、蠕動運動の異常などを評価できます。
- 食道内圧検査:食道の蠕動運動や下部食道括約筋の機能を客観的に評価する検査で、食道アカラシアなどの機能性疾患の診断に不可欠です。
- pHモニタリング検査:食道内のpH(酸性度)を24時間測定し、胃酸の逆流の頻度や程度を評価する検査です。逆流性食道炎(GERD)の診断や治療効果の判定に用いられます。
| 検査項目 | 主な目的 | 検出可能な主な疾患 |
|---|---|---|
| 上部消化管内視鏡検査 | 粘膜の直接観察、生検 | 逆流性食道炎、食道がん、バレット食道、食道潰瘍、好酸球性食道炎など |
| バリウム検査 | 食道の形態・動きの評価 | 食道アカラシア、食道憩室、食道狭窄、食道裂孔ヘルニアなど |
| 食道内圧検査 | 蠕動運動・括約筋機能の評価 | 食道アカラシア、びまん性食道痙攣、機能性胸やけなど |
| pHモニタリング検査 | 胃酸逆流の頻度・程度の評価 | 逆流性食道炎、非びらん性胃食道逆流症など |
定期的な検査は、特にリスク因子を持つ方にとって非常に重要です。早期に異常を発見し、適切な治療を開始することで、病気の進行を食い止め、良好な予後が期待できます。実際の診療では、患者さんの症状やライフスタイルに合わせて、最適な検査計画をご提案し、病気の早期発見に繋がるよう心がけています。
まとめ
食道の疾患は、逆流性食道炎(GERD)、食道がん、食道アカラシア、バレット食道をはじめ、多種多様な病態が存在します。それぞれの疾患は異なる症状、原因、治療法を持ち、正確な診断と適切な治療が患者さんの生活の質を向上させる上で不可欠です。
食道の疾患の多くは、胸やけ、嚥下困難、胸の痛みなどの共通の症状を示すことがありますが、その背景にある病態は大きく異なります。そのため、自己判断せずに、症状が現れた際には速やかに専門医を受診し、適切な検査を受けることが重要です。特に、食道がんのような重篤な疾患は、早期発見が治療の成功に直結します。
生活習慣の改善による予防、そして定期的な内視鏡検査などのスクリーニングは、食道の健康を維持し、病気の早期発見に繋がる重要な手段です。ご自身の体調に異変を感じた際は、迷わず医療機関にご相談ください。
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- ベザトール(モニタリン)添付文書(JAPIC)

