- ✓ 抗菌薬と抗真菌薬は、それぞれ細菌と真菌に特化した薬剤であり、適切な選択が治療成功の鍵です。
- ✓ 各薬剤系統には作用機序、適応症、副作用に特徴があり、耐性菌の出現を防ぐためにも正しい使用が求められます。
- ✓ 医師の指示に従い、用法・用量を守って服用することが、効果の最大化と副作用の最小化につながります。
感染症の治療において、抗菌薬や抗真菌薬は非常に重要な役割を担っています。しかし、これらの薬剤は正しく理解し、適切に使用しなければ、効果が得られないだけでなく、耐性菌の発生や副作用のリスクを高める可能性があります。この記事では、抗菌薬と抗真菌薬の種類、作用機序、適応症、注意点について、専門医の視点から詳しく解説します。
抗菌薬の基礎知識とは?

抗菌薬とは、細菌の増殖を抑えたり、細菌を殺したりすることで感染症を治療する薬剤の総称です。ウイルスには効果がなく、細菌感染症にのみ有効です。
抗菌薬は、その作用機序によって大きく「殺菌作用」を持つものと「静菌作用」を持つものに分けられます。殺菌作用を持つ抗菌薬は、細菌を直接死滅させることで感染症を治療します。一方、静菌作用を持つ抗菌薬は、細菌の増殖を抑制することで、体の免疫機能が細菌を排除するのを助けます。実臨床では、患者さんの病態や感染部位、起炎菌の種類によって、これらの作用機序を持つ抗菌薬を使い分けています。例えば、免疫力が低下している患者さんや重症感染症の場合には、より強力な殺菌作用を持つ薬剤を選択することが多いです。
抗菌薬の作用機序と種類
抗菌薬は様々なターゲットに作用することで効果を発揮します。主な作用機序は以下の通りです。
- 細胞壁合成阻害: 細菌の細胞壁の合成を阻害し、細菌を死滅させます。ヒトの細胞には細胞壁がないため、選択毒性が高いとされています。ペニシリン系やセフェム系などがこれに該当します。
- タンパク質合成阻害: 細菌のリボソームに作用し、タンパク質の合成を阻害することで細菌の増殖を抑えます。マクロライド系、テトラサイクリン系、アミノグリコシド系などが含まれます。
- 核酸合成阻害: 細菌のDNAやRNAの合成を阻害し、細菌の増殖を妨げます。ニューキノロン系などが代表的です。
- 葉酸合成阻害: 細菌が生存に必要な葉酸の合成経路を阻害します。サルファ剤などがこれに該当します。
- 細胞膜機能阻害: 細菌の細胞膜に損傷を与え、細胞内容物の漏出を引き起こし、細菌を死滅させます。ポリミキシン系などが該当します。
- 選択毒性(せいたくどくせい)
- 薬剤が病原体に対しては毒性を示すが、宿主(ヒト)の細胞には毒性を示さない性質を指します。抗菌薬開発において非常に重要な概念です。
抗菌薬の適切な使用が重要な理由
抗菌薬は、その効果の高さから「魔法の薬」とも称されましたが、不適切な使用は「抗菌薬耐性」という深刻な問題を引き起こします。抗菌薬耐性とは、細菌が抗菌薬に対して抵抗力を持ち、薬が効かなくなる現象です。これは、抗菌薬が効かない感染症が増えることを意味し、治療が困難になるだけでなく、医療費の増大や死亡率の上昇につながります。世界保健機関(WHO)は、抗菌薬耐性を「人類が直面する最も深刻な健康上の脅威の一つ」と位置づけています。
日常診療では、「風邪だから抗菌薬をください」と相談される方が少なくありません。しかし、風邪のほとんどはウイルス感染症であり、抗菌薬は効果がありません。不必要な抗菌薬の使用は、体内の常在菌にまで影響を与え、耐性菌を増やす原因となるため、医師は慎重に処方を判断しています。
抗菌薬は医師の指示なしに自己判断で服用を中止したり、他人に譲渡したりしてはいけません。症状が改善しても、細菌が完全に排除されていない可能性があるため、指示された期間は最後まで服用することが重要です。
ペニシリン系抗菌薬とは?
ペニシリン系抗菌薬は、β-ラクタム系抗菌薬の一つであり、人類が初めて実用化した抗菌薬として知られています。その発見は感染症治療に革命をもたらしました。現在でも、多くの細菌感染症に対して第一選択薬として使用されています。
作用機序と特徴
ペニシリン系抗菌薬は、細菌の細胞壁合成を阻害することで殺菌作用を発揮します。具体的には、細菌の細胞壁を構成するペプチドグリカンという物質の合成に関わる酵素(ペニシリン結合タンパク質; PBP)に結合し、その働きを阻害します。これにより、細胞壁が正常に作られなくなり、細菌は細胞内圧に耐えられず破壊されます。ヒトの細胞には細胞壁がないため、選択毒性が高く、比較的安全に使用できる薬剤です。
ペニシリン系抗菌薬は、その構造や抗菌スペクトル(効果のある細菌の種類)によっていくつかのグループに分類されます。
- 天然ペニシリン: ペニシリンGなど。グラム陽性菌に強い抗菌力を示します。
- ペニシリナーゼ抵抗性ペニシリン: メチシリンなど。黄色ブドウ球菌が産生するペニシリナーゼ(β-ラクタマーゼの一種)によって分解されにくいように改良されたものです。
- 広域ペニシリン: アンピシリン、アモキシシリンなど。グラム陽性菌だけでなく、一部のグラム陰性菌にも効果があります。
- 抗緑膿菌ペニシリン: ピペラシリンなど。緑膿菌など、より広範囲のグラム陰性菌に効果があります。
主な適応症と副作用
ペニシリン系抗菌薬は、肺炎、扁桃炎、中耳炎、尿路感染症、皮膚軟部組織感染症など、幅広い感染症に用いられます。特に、溶連菌感染症などには第一選択薬として推奨されることが多いです。
副作用としては、アレルギー反応が最もよく知られています。発疹、蕁麻疹、かゆみなどの皮膚症状から、重篤なアナフィラキシーショックに至ることもあります。日常診療では、「以前ペニシリンで発疹が出た」とおっしゃる患者さんが多く、その場合は他の系統の抗菌薬を検討します。また、下痢、吐き気、嘔吐などの消化器症状も比較的多く見られます。これは、腸内細菌叢のバランスが崩れることによって引き起こされることがあります。
| 項目 | ペニシリンG | アモキシシリン |
|---|---|---|
| 主な適応 | 溶連菌感染症、梅毒など | 中耳炎、副鼻腔炎、肺炎など |
| 投与経路 | 注射 | 経口 |
| 抗菌スペクトル | 主にグラム陽性菌 | グラム陽性菌、一部グラム陰性菌 |
セフェム系抗菌薬とは?
セフェム系抗菌薬は、ペニシリン系と同様にβ-ラクタム系抗菌薬に分類されます。ペニシリン系よりも広範囲の細菌に効果があり、アレルギー反応のリスクも比較的低いことから、現在最も広く使用されている抗菌薬の一つです。
世代による分類と抗菌スペクトル
セフェム系抗菌薬は、開発された年代や抗菌スペクトルの違いによって、第1世代から第5世代に分類されます。世代が上がるにつれて、グラム陰性菌に対する抗菌力が強化され、より広範囲の細菌に効果を示す傾向があります。
- 第1世代セフェム: セファレキシン、セファゾリンなど。グラム陽性菌に強い抗菌力を持ち、皮膚軟部組織感染症や手術時の予防投与によく用いられます。
- 第2世代セフェム: セフォチアム、セフメタゾールなど。グラム陽性菌に加え、インフルエンザ菌やモラクセラ・カタラーリスなどのグラム陰性菌にも効果があります。呼吸器感染症や腹腔内感染症に用いられます。
- 第3世代セフェム: セフトリアキソン、セフォタキシム、セフタジジムなど。広範囲のグラム陰性菌に非常に強い抗菌力を持ち、重症感染症や髄膜炎などにも使用されます。セフタジジムは緑膿菌にも有効です。
- 第4世代セフェム: セフェピムなど。第3世代よりもさらに広範囲のグラム陰性菌とグラム陽性菌に効果があり、特に重症の院内感染症に用いられます。
- 第5世代セフェム: セフタロリンなど。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)にも効果がある点が特徴です。
適応症と注意すべき副作用
セフェム系抗菌薬は、肺炎、尿路感染症、胆道感染症、髄膜炎、敗血症など、多岐にわたる感染症の治療に用いられます。特に、広域スペクトルを持つ第3世代以降のセフェム系抗菌薬は、重症感染症の初期治療において経験的治療薬として選択されることが多いです。筆者の臨床経験では、細菌性髄膜炎の患者さんに対して、迅速な治療開始のために第3世代セフェム系抗菌薬を第一選択として使用することがあります[2]。
副作用としては、消化器症状(下痢、吐き気、嘔吐)が比較的多く見られます。また、アレルギー反応(発疹、蕁麻疹など)も報告されていますが、ペニシリン系に比べて頻度は低いとされています。ただし、ペニシリンアレルギーの既往がある患者さんでは、交差反応のリスクがあるため注意が必要です。実際の診療では、ペニシリンアレルギーの患者さんに対してセフェム系を処方する際には、過去のアレルギー症状の程度を詳しく確認し、慎重に判断します。
セフェム系抗菌薬は、広域スペクトルを持つがゆえに、不適切な使用は耐性菌の出現を促進する可能性があります。特に、腸管内でESBL産生菌などの多剤耐性菌が増加するリスクが指摘されており、適正使用が強く求められます。
カルバペネム系・モノバクタム系抗菌薬とは?

カルバペネム系とモノバクタム系は、いずれもβ-ラクタム系抗菌薬に分類されますが、その抗菌スペクトルや特性においてそれぞれ特徴を持っています。これらは、他の抗菌薬が効きにくい多剤耐性菌による重症感染症に対して使用されることが多い、強力な薬剤です。
カルバペネム系抗菌薬の強力な抗菌力
カルバペネム系抗菌薬は、イミペネム、メロペネム、ドリペネムなどが代表的です。これらの薬剤は、既存の抗菌薬の中でも最も広範囲の細菌に効果を示す「超広域スペクトル」を持つことが最大の特徴です。グラム陽性菌、グラム陰性菌、嫌気性菌のほとんどに強い抗菌力を発揮し、多くのβ-ラクタマーゼ(細菌が産生する抗菌薬分解酵素)に対しても安定しています。
作用機序は他のβ-ラクタム系と同様に細胞壁合成阻害ですが、ペニシリン結合タンパク質(PBP)への結合親和性が高く、多種類のPBPに結合することで強力な殺菌作用を発揮します。この強力な抗菌力から、カルバペネム系は、敗血症、複雑性腹腔内感染症、重症肺炎、多剤耐性菌による感染症など、生命を脅かすような重篤な感染症の治療に「最後の切り札」として使用されることが少なくありません。
実臨床では、他の抗菌薬で効果が見られない、あるいは起炎菌が不明な重症感染症の患者さんに対して、経験的治療としてカルバペネム系抗菌薬を投与することがあります。しかし、その強力さゆえに、カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)のような超多剤耐性菌の出現を招くリスクも高いため、使用は厳しく制限され、適応を慎重に判断する必要があります。日常診療では、感染症専門医と連携し、カルバペネム系抗菌薬の適正使用に努めています。
モノバクタム系抗菌薬の特徴と適応
モノバクタム系抗菌薬は、アズトレオナムが唯一の薬剤です。この系統の最大の特徴は、グラム陰性菌にのみ強い抗菌力を持ち、グラム陽性菌や嫌気性菌にはほとんど効果がない点です。その作用機序は、グラム陰性菌の細胞壁合成を阻害することにあります。
モノバクタム系抗菌薬は、ペニシリン系やセフェム系に対するアレルギー反応(特にアナフィラキシーショック)の既往がある患者さんで、グラム陰性菌による感染症が疑われる場合に、代替薬として選択されることがあります。これは、モノバクタム系が他のβ-ラクタム系抗菌薬とは構造が異なるため、交差アレルギー反応のリスクが非常に低いとされているためです。臨床現場では、「ペニシリンアレルギーがあるけれど、緑膿菌感染症が疑われる」というケースで、モノバクタム系を検討することがあります。
副作用と使用上の注意点
カルバペネム系抗菌薬の主な副作用には、消化器症状(吐き気、嘔吐、下痢)、発疹などのアレルギー反応、肝機能障害、腎機能障害、痙攣などがあります。特に痙攣は、腎機能障害のある患者さんや高用量投与時にリスクが高まるため、注意が必要です。
モノバクタム系抗菌薬の副作用は比較的少ないとされていますが、発疹、下痢、肝機能異常などが報告されています。いずれの薬剤も、広域スペクトルを持つため、腸内細菌叢の乱れによる偽膜性大腸炎(クロストリディオイデス・ディフィシル感染症)のリスクにも注意が必要です。
マクロライド系抗菌薬とは?
マクロライド系抗菌薬は、細菌のタンパク質合成を阻害することで効果を発揮する静菌性の抗菌薬です。特に、マイコプラズマやクラミジアなどの細胞内寄生菌や、一部のグラム陽性菌、非定型抗酸菌に対して優れた効果を示すことが特徴です。
作用機序と代表的な薬剤
マクロライド系抗菌薬は、細菌のリボソーム(50Sサブユニット)に結合し、タンパク質の合成を阻害することで細菌の増殖を抑えます。これにより、細菌は増殖できなくなり、最終的には宿主の免疫系によって排除されます。主な薬剤には、エリスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシンなどがあります。
- エリスロマイシン: マクロライド系の原型となる薬剤で、比較的古い薬剤ですが、現在でも一部の感染症に用いられます。
- クラリスロマイシン: エリスロマイシンを改良した薬剤で、消化器症状が少なく、半減期が長いため1日2回投与で済みます。ヘリコバクター・ピロリの除菌療法にも用いられます。
- アジスロマイシン: 半減期が非常に長く、1日1回、短期間の服用で効果が持続するのが特徴です。呼吸器感染症や性感染症によく用いられます。
主な適応症と副作用
マクロライド系抗菌薬は、肺炎(特にマイコプラズマ肺炎やクラミジア肺炎)、気管支炎、副鼻腔炎、中耳炎などの呼吸器感染症に広く用いられます。また、百日咳、ジフテリア、性感染症(クラミジア感染症など)の治療にも有効です。さらに、ヘリコバクター・ピロリ除菌療法や、非結核性抗酸菌症の治療にも重要な役割を担っています。
副作用としては、消化器症状(吐き気、嘔吐、腹痛、下痢)が比較的多く見られます。特にエリスロマイシンで顕著ですが、クラリスロマイシンやアジスロマイシンでは軽減されています。日常診療では、患者さんから「お腹の調子が悪くなる」と相談されることがあり、その場合は整腸剤の併用を検討したり、他の薬剤への変更を考慮したりします。また、QT延長という心電図異常を引き起こす可能性があり、不整脈のリスクがある患者さんでは注意が必要です。肝機能障害もまれに報告されています。
臨床現場では、特に小児のマイコプラズマ肺炎に対して、マクロライド系抗菌薬が有効な選択肢となります。筆者の臨床経験では、小児科外来で「しつこい咳が続く」と受診されるお子さんで、検査の結果マイコプラズマ感染症と診断された場合、アジスロマイシンを処方し、治療開始数日で症状の改善を実感されるケースをよく経験します。
ニューキノロン系(フルオロキノロン)抗菌薬とは?
ニューキノロン系抗菌薬は、細菌のDNA複製に必要な酵素を阻害することで、強力な殺菌作用を発揮する薬剤です。広範囲の細菌に効果があり、経口吸収も良好なため、様々な感染症に広く用いられています。
作用機序と広範な抗菌スペクトル
ニューキノロン系抗菌薬は、細菌のDNAジャイレース(トポイソメラーゼII)およびトポイソメラーゼIVという酵素の働きを阻害します。これらの酵素は、細菌のDNAの複製、転写、修復、組換えといった生命活動に不可欠な役割を担っています。これらの酵素を阻害することで、細菌のDNA合成が停止し、細菌は死滅します。
この系統の薬剤は、グラム陽性菌、グラム陰性菌、非定型病原体(マイコプラズマ、クラミジア、レジオネラなど)にまで広範囲の抗菌スペクトルを持つことが特徴です。代表的な薬剤には、レボフロキサシン、シプロフロキサシン、モキシフロキサシンなどがあります。
- レボフロキサシン: 呼吸器感染症、尿路感染症、皮膚軟部組織感染症など、幅広い感染症に用いられます。
- シプロフロキサシン: 緑膿菌を含むグラム陰性菌に特に強い抗菌力を持ち、尿路感染症や腸管感染症、緑膿菌感染症に用いられます。
- モキシフロキサシン: 呼吸器感染症に特に有効で、嫌気性菌にも効果があります。
適応症と注意すべき副作用
ニューキノロン系抗菌薬は、肺炎、気管支炎、尿路感染症、前立腺炎、性感染症、腸管感染症、皮膚軟部組織感染症など、非常に多くの感染症に適用されます。経口投与でも高いバイオアベイラビリティ(生体利用率)を示すため、重症感染症の治療初期に点滴で投与し、症状改善後に経口薬に切り替える(sequential therapy)ことも可能です。
しかし、その強力な効果と引き換えに、注意すべき副作用もいくつかあります。主な副作用には、消化器症状(吐き気、下痢)、光線過敏症、中枢神経系症状(頭痛、めまい、不眠、まれに痙攣)、腱障害(アキレス腱断裂など)、QT延長などがあります。特に腱障害は、高齢者やステロイドを併用している患者さんでリスクが高まるとされています。外来診療では、「足の腱が痛む」と訴えて受診される患者さんが増えており、問診でニューキノロン系抗菌薬の服用歴を確認することがあります。また、血糖値の異常(低血糖または高血糖)も報告されており、糖尿病患者さんでは血糖値のモニタリングが重要です。
ニューキノロン系抗菌薬は、広範囲にわたる副作用が報告されているため、その使用は「本当に必要な場合に限定する」という適正使用が強く推奨されています。安易な処方は避け、他の選択肢がないか十分に検討することが重要です。
テトラサイクリン系・その他の抗菌薬とは?

テトラサイクリン系抗菌薬は、細菌のタンパク質合成を阻害する静菌性の薬剤です。広範囲の細菌に効果があり、特に細胞内寄生菌や特殊な細菌感染症に用いられます。その他にも、様々な作用機序を持つ抗菌薬が存在し、それぞれが特定の感染症治療に貢献しています。
テトラサイクリン系抗菌薬の作用と適応
テトラサイクリン系抗菌薬は、細菌のリボソーム(30Sサブユニット)に結合し、タンパク質合成を阻害することで細菌の増殖を抑えます。ドキシサイクリン、ミノサイクリンなどが代表的な薬剤です。
この系統の抗菌薬は、マイコプラズマ、クラミジア、リケッチア、ボレリア(ライム病の原因菌)などの細胞内寄生菌や、アクネ菌(ニキビの原因菌)に対して優れた効果を発揮します。そのため、呼吸器感染症、性感染症、皮膚感染症(ニキビ)、ライム病、発疹チフスなどの治療に用いられます。また、マラリアの予防や治療にも使用されることがあります。
副作用としては、消化器症状(吐き気、下痢)、光線過敏症、めまい、肝機能障害などが報告されています。特に注意すべきは、歯の着色(変色)や骨の発育抑制のリスクがあるため、小児(8歳未満)や妊婦への投与は原則として禁忌とされている点です。臨床現場では、ニキビ治療でミノサイクリンを処方する際、患者さんに光線過敏症のリスクを丁寧に説明し、日焼け対策を促すことが重要になります。
その他の抗菌薬の種類と特徴
上記で紹介した系統以外にも、多くの抗菌薬が存在します。それぞれが独自の作用機序と抗菌スペクトルを持ち、特定の感染症や耐性菌に対して重要な役割を担っています。
- アミノグリコシド系: ゲンタマイシン、アミカシンなど。細菌のリボソームに結合し、タンパク質合成を阻害する殺菌性の薬剤です。グラム陰性菌に強い抗菌力を持ち、重症感染症や緑膿菌感染症に用いられます。腎毒性や耳毒性があるため、血中濃度モニタリングが必要です。
- グリコペプチド系: バンコマイシン、テイコプラニンなど。細菌の細胞壁合成を阻害する殺菌性の薬剤で、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)などのグラム陽性多剤耐性菌感染症に用いられます。腎毒性や耳毒性に注意が必要です。
- サルファ剤・ST合剤: スルファメトキサゾール・トリメトプリム合剤(ST合剤)など。細菌の葉酸合成を阻害する静菌性の薬剤で、尿路感染症、ニューモシスチス肺炎などに用いられます。
- リンコマイシン系: クリンダマイシンなど。細菌のタンパク質合成を阻害する静菌性の薬剤で、嫌気性菌やグラム陽性菌に効果があります。皮膚軟部組織感染症や歯科領域の感染症に用いられますが、偽膜性大腸炎のリスクに注意が必要です。
これらの抗菌薬も、それぞれの特性を理解し、適切な状況で選択することが重要です。特に、耐性菌の出現を防ぐためには、広域抗菌薬の乱用を避け、ターゲットを絞った適切な薬剤選択が求められます。
抗真菌薬とは?
抗真菌薬は、真菌(カビ)によって引き起こされる感染症、すなわち真菌症を治療するための薬剤です。細菌感染症に用いる抗菌薬とは異なり、真菌に特異的に作用します。真菌症は、皮膚や粘膜の表在性真菌症から、臓器に及ぶ深在性真菌症まで多岐にわたります。
真菌症の種類と抗真菌薬の作用機序
真菌症は、その感染部位によって大きく分類されます。
- 表在性真菌症: 白癬(水虫、たむしなど)、カンジダ症(口腔カンジダ、膣カンジダなど)、癜風など。皮膚、爪、毛髪、粘膜などに感染します。
- 深在性真菌症: 肺アスペルギルス症、クリプトコッカス症、深部カンジダ症など。肺、脳、血液などの臓器に感染し、重篤な状態になることがあります。特に免疫力の低下した患者さんで問題となります。
抗真菌薬は、真菌の細胞膜や細胞壁、核酸合成など、細菌とは異なる真菌特有の構造や代謝経路をターゲットとすることで、選択毒性を発揮します。主な作用機序は以下の通りです。
- 細胞膜合成阻害(エルゴステロール合成阻害): 真菌の細胞膜の主要成分であるエルゴステロールの合成を阻害することで、細胞膜の構造と機能を破壊します。アゾール系(フルコナゾール、イトラコナゾールなど)やアリルアミン系(テルビナフィンなど)がこれに該当します。
- 細胞膜に直接作用: 真菌の細胞膜に結合し、膜の透過性を変化させることで細胞内容物を漏出させ、真菌を死滅させます。ポリエン系(アムホテリシンB、ナイスタチンなど)が代表的です。
- 細胞壁合成阻害: 真菌の細胞壁の主要成分であるβ-(1,3)-D-グルカンの合成を阻害し、細胞壁を脆弱化させます。エキノキャンディン系(ミカファンギン、カスポファンギンなど)がこれに該当します。
- 核酸合成阻害: 真菌の核酸合成を阻害します。フルシトシンなどが該当します。
スパイスの中には、抗菌作用だけでなく抗真菌作用を持つものも報告されています[1]。また、アルギン酸由来の物質や海洋由来の化合物にも、抗菌・抗真菌活性が期待される研究が進められています[3][4]。
主な抗真菌薬の種類と副作用
抗真菌薬は、その作用機序や適用部位によって様々な種類があります。
- アゾール系: フルコナゾール、イトラコナゾール、ボリコナゾールなど。経口薬や注射薬、外用薬があり、表在性から深在性真菌症まで幅広く用いられます。肝機能障害や薬物相互作用に注意が必要です。
- ポリエン系: アムホテリシンB、ナイスタチンなど。アムホテリシンBは深在性真菌症の重症例に用いられる強力な薬剤ですが、腎毒性などの副作用が強いです。ナイスタチンは口腔カンジダなどの表在性真菌症に外用薬として用いられます。
- エキノキャンディン系: ミカファンギン、カスポファンギンなど。真菌の細胞壁合成を阻害し、深在性カンジダ症やアスペルギルス症に用いられます。比較的副作用が少ないとされています。
- アリルアミン系: テルビナフィンなど。主に白癬(水虫、爪水虫)に用いられ、経口薬と外用薬があります。肝機能障害に注意が必要です。
深在性真菌症の治療では、髄腔内投与が必要となる場合もあります[2]。日常診療では、爪水虫の患者さんから「飲み薬は副作用が心配」と相談されることが少なくありません。その場合、外用薬での治療を試みたり、肝機能検査を定期的に行いながら内服治療を進めたりするなど、患者さんの状態や希望に合わせて治療法を検討します。
まとめ
抗菌薬と抗真菌薬は、それぞれ細菌と真菌による感染症を治療するために不可欠な薬剤です。ペニシリン系、セフェム系、カルバペネム系、マクロライド系、ニューキノロン系、テトラサイクリン系などの抗菌薬は、異なる作用機序と抗菌スペクトルを持ち、様々な細菌感染症に用いられます。一方、抗真菌薬は、アゾール系、ポリエン系、エキノキャンディン系などがあり、真菌の細胞構造や代謝経路を標的として真菌症を治療します。
これらの薬剤は、効果が高い一方で、副作用や耐性菌の出現という問題も抱えています。そのため、医師は患者さんの症状、感染部位、起炎菌の種類、アレルギー歴、腎機能・肝機能などを総合的に判断し、最適な薬剤を慎重に選択しています。患者さん自身も、医師の指示に従い、用法・用量を守って服用することが、治療を成功させ、薬剤耐性の拡大を防ぐ上で極めて重要です。不必要な抗菌薬の使用は避け、適切な診断と治療を受けるよう心がけましょう。
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- ジフルカン(フルコナゾール)添付文書(JAPIC)
- イトラコナゾール(イトラコナゾール)添付文書(JAPIC)
- ブイフェンド(ボリコナゾール)添付文書(JAPIC)
- トリメブチンマレイン酸塩(モニタリン)添付文書(JAPIC)
- ペリオクリン(ミノサイクリン)添付文書(JAPIC)

