- ✓ 下痢は急性と慢性に大別され、それぞれ原因と対処法が異なります。
- ✓ 市販薬は症状緩和に役立ちますが、脱水症状や特定の症状がある場合は医療機関の受診が必要です。
- ✓ 薬剤師は適切な市販薬の選択や受診のタイミングについてアドバイスできます。
急性の下痢(数日〜1週間)とは?原因と対処法

急性の下痢とは、一般的に数日から1週間程度で治まる下痢のことで、突然発症することが多いです。多くの場合、感染症や食事内容が原因となります。
急性の下痢の主な原因とは?
急性の下痢の最も一般的な原因は、細菌やウイルスによる感染症です。ノロウイルスやロタウイルスなどのウイルス性胃腸炎、あるいはサルモネラ菌、O157などの細菌性食中毒が挙げられます。これらの病原体が腸に感染することで、腸の粘膜が炎症を起こし、水分吸収が阻害されたり、腸の動きが過剰になったりして下痢を引き起こします。また、旅行中に生水や加熱が不十分な食品を摂取することで発症する旅行者下痢症も、細菌感染が主な原因とされています[4]。
- ウイルス性胃腸炎: ノロウイルス、ロタウイルスなど。感染力が強く、嘔吐を伴うことも多いです。
- 細菌性食中毒: サルモネラ菌、カンピロバクター、病原性大腸菌(O157など)など。汚染された食品の摂取が原因となります。
- 薬剤性: 抗生物質など特定の薬剤の副作用として下痢が起こることもあります。抗生物質は腸内細菌のバランスを崩し、下痢を引き起こすことがあります。
- 過敏性腸症候群(IBS): ストレスなどが原因で、腸の機能異常により下痢や便秘が繰り返されます。急性の下痢として発症することもあります。
薬局での経験上、抗生物質服用中や服用後に「お腹がゆるくなった」と相談される患者さんが多くいらっしゃいます。これは、抗生物質が病原菌だけでなく、腸内の善玉菌にも影響を与え、腸内環境が変化することで下痢を引き起こすことがあるためです。このような場合は、整腸剤の併用を検討することがあります。
急性の下痢の対処法は?
急性の下痢の対処の基本は、脱水症状の予防と腸への負担軽減です。下痢によって体内の水分や電解質が失われるため、経口補水液などでこまめに水分補給を行うことが非常に重要です。特に、乳幼児や高齢者では脱水症状が進行しやすいため、注意が必要です。
- 水分補給: 経口補水液、スポーツドリンク、薄めたお茶などを少量ずつ頻繁に摂取します。
- 食事: 消化の良いもの(おかゆ、うどん、すりおろしリンゴなど)を少量ずつ摂り、刺激物や脂っこいものは避けます。
- 市販薬: 止瀉薬(下痢止め)や整腸剤が有効な場合があります。ただし、感染性の下痢の場合、下痢を無理に止めることで病原体の排出を妨げ、症状を悪化させる可能性もあるため、使用には注意が必要です。
発熱、激しい腹痛、血便、意識障害などの症状がある場合や、乳幼児・高齢者の下痢は重症化しやすいため、速やかに医療機関を受診してください。
慢性の下痢(数週間以上続く)とは?原因と治療法
慢性の下痢とは、一般的に数週間以上、あるいは数ヶ月にわたって続く下痢を指します。急性の下痢とは異なり、感染症以外の原因が背景にあることが多く、専門的な診断と治療が必要となる場合があります[1]。
慢性の下痢の主な原因とは?
慢性の下痢の原因は多岐にわたり、消化器系の疾患や内分泌系の異常、薬剤の副作用などが考えられます。特に、過敏性腸症候群(IBS)や炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎)は、慢性の下痢の代表的な原因です[2]。
- 過敏性腸症候群(IBS): 腸の機能異常により、腹痛を伴う下痢や便秘が慢性的に繰り返されます。ストレスが症状を悪化させることが知られています。
- 炎症性腸疾患(IBD): クローン病や潰瘍性大腸炎など、腸に慢性的な炎症が起こる病気です。血便や体重減少を伴うこともあります。
- 甲状腺機能亢進症: 甲状腺ホルモンの過剰分泌により、代謝が活発になり、腸の動きが速くなることで下痢を引き起こすことがあります。
- 薬剤性: 一部の降圧剤、糖尿病治療薬、抗がん剤などが慢性の下痢を引き起こすことがあります。
- 膵外分泌機能不全: 膵臓から分泌される消化酵素が不足することで、脂肪などの消化吸収がうまくいかず、脂肪便や下痢を引き起こします。
- 乳糖不耐症: 乳製品に含まれる乳糖を分解する酵素が不足しているため、乳製品を摂取すると下痢を起こします。
調剤の現場では、新しい薬が処方された後に「以前より下痢が続くようになった」という相談を受けることが多いです。特に、高血圧治療薬や糖尿病治療薬の中には、副作用として下痢が報告されているものもあります。このような場合は、医師と連携し、薬剤の変更や減量を検討することもあります。
慢性の下痢の検査と治療法は?
慢性の下痢の場合、原因を特定するために様々な検査が行われます。問診や身体診察に加え、血液検査、便検査、内視鏡検査(胃カメラ、大腸カメラ)、画像検査(CT、MRI)などが実施されることがあります。原因が特定されれば、それに応じた治療が行われます。
- 食事療法: 乳糖不耐症であれば乳製品を避ける、炎症性腸疾患であれば特定の食品を制限するなど、原因に応じた食事の見直しを行います。
- 薬物療法:
- 止瀉薬: ロペラミド塩酸塩(商品名:ロペミンなど)などが用いられます。腸の運動を抑え、水分吸収を促進することで下痢を和らげます。ジェネリック医薬品も広く利用されています。
- 整腸剤: プロバイオティクス(乳酸菌、ビフィズス菌など)を含む製剤で、腸内環境を整えます。
- 抗炎症薬: 炎症性腸疾患の場合、ステロイドや免疫抑制剤などが使用されます。
- 消化酵素補充療法: 膵外分泌機能不全の場合、消化酵素製剤が処方されます。
- 生活習慣の改善: ストレス管理、十分な睡眠、適度な運動などが、特に過敏性腸症候群の症状緩和に役立つことがあります。
下痢の応急処置・市販薬・受診先とは?

下痢の症状が出た際、まずは自宅でできる応急処置を試みることが大切です。しかし、症状によっては市販薬の利用や医療機関の受診が必要となります。
自宅でできる応急処置は?
下痢の応急処置の基本は、脱水症状の予防と腸を休ませることです。特に、下痢が止まらないと感じる時は、水分と電解質の補給が最優先となります。
- 水分・電解質補給: 経口補水液やスポーツドリンクを少量ずつこまめに摂取します。カフェインやアルコールは利尿作用があるため避けてください。
- 消化に良い食事: おかゆ、うどん、白身魚、鶏むね肉など、脂質が少なく消化の良いものを摂り、香辛料や食物繊維が多いものは避けます。
- 体を温める: 腹部を温めることで、腸の過度な動きを和らげ、痛みを軽減できる場合があります。
- 安静にする: 十分な休息を取り、体の回復を促します。
市販薬の選び方と注意点は?
市販薬には、下痢を直接止める止瀉薬と、腸内環境を整える整腸剤があります。症状や原因に応じて使い分けることが重要です。
- 止瀉薬(下痢止め)
- 腸の過剰な動きを抑えたり、腸からの水分分泌を抑制したりすることで、下痢を和らげます。ロペラミド塩酸塩を含む製剤や、生薬成分(タンニン酸ベルベリンなど)を含む製剤があります。感染性の下痢の場合、病原体を体外に排出するのを妨げる可能性があるため、発熱や血便を伴う場合は使用を避けるべきです。
- 整腸剤
- 乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌を補給し、腸内フローラのバランスを整えることで、下痢や便秘を改善します。急性の下痢だけでなく、慢性の下痢や抗生物質による下痢にも有効な場合があります。
| 項目 | 止瀉薬(下痢止め) | 整腸剤 |
|---|---|---|
| 主な作用 | 腸の運動抑制、水分分泌抑制 | 腸内環境の改善、善玉菌補給 |
| 適した症状 | 一時的な下痢、腹痛を伴う下痢 | 軽度の下痢、軟便、抗生物質による下痢 |
| 注意点 | 感染性下痢、発熱、血便時は避ける | 即効性は低い場合がある |
服薬指導の際に「どの下痢止めを選べば良いかわからない」と質問される患者さんが多くいらっしゃいます。感染性の疑いがある場合は、病原体の排出を妨げないよう、まずは整腸剤や水分補給を優先し、止瀉薬の使用は慎重に検討するようお伝えしています。
医療機関を受診すべきタイミングは?
以下の症状が見られる場合は、自己判断せずに速やかに医療機関を受診してください。
- 激しい腹痛や嘔吐を伴う場合
- 発熱(特に38℃以上)がある場合
- 血便や黒色便、粘液便がみられる場合
- 脱水症状(口の渇き、尿量の減少、意識が朦朧とするなど)がある場合
- 乳幼児や高齢者、妊婦の場合
- 市販薬を使用しても症状が改善しない、または悪化する場合
- 海外渡航後に下痢が続く場合[4]
受診先は、内科や消化器内科が適切です。小児の場合は小児科を受診しましょう。
症状の掛け合わせ(下痢+〇〇)で考える原因と対処法
下痢は単独で発生するだけでなく、他の症状と組み合わさることで、その原因や重症度を判断する重要な手がかりとなります。ここでは、下痢に加えてよく見られる症状との組み合わせについて解説します。
下痢+発熱
下痢に発熱を伴う場合、多くは細菌やウイルスによる感染性胃腸炎が原因と考えられます。特に高熱の場合、細菌性食中毒やウイルス性胃腸炎の可能性が高まります[3]。
- 考えられる原因: ウイルス性胃腸炎(ノロウイルス、ロタウイルスなど)、細菌性食中毒(サルモネラ菌、カンピロバクター、O157など)。
- 対処法: 水分・電解質補給を最優先し、解熱剤で発熱を和らげます。止瀉薬は病原体の排出を妨げる可能性があるため、医師の指示なしには使用を避けるべきです。高熱やぐったりしている場合は、速やかに医療機関を受診してください。
下痢+腹痛
下痢に腹痛が伴うのは一般的ですが、その痛み方や程度によって原因が異なります。激しい差し込むような痛みや、排便後に痛みが和らぐ場合は、過敏性腸症候群や感染性胃腸炎が考えられます。
- 考えられる原因: 感染性胃腸炎、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、薬剤性など。
- 対処法: 腹部を温め、消化の良い食事を摂ります。痛みが強い場合は、市販の鎮痛剤(非ステロイド性抗炎症薬ではないもの)や、医師から処方された鎮痙薬を使用することもあります。激しい腹痛が続く場合や、痛みが悪化する場合は医療機関を受診してください。
下痢+嘔吐
下痢と嘔吐が同時に起こる場合、ウイルス性胃腸炎(特にノロウイルスやロタウイルス)や細菌性食中毒の可能性が高いです。嘔吐が続くと脱水症状が急速に進行するため、特に注意が必要です。
- 考えられる原因: ウイルス性胃腸炎、細菌性食中毒。
- 対処法: 嘔吐が落ち着いてから、経口補水液をスプーン1杯程度から少量ずつ頻繁に摂取し、脱水を防ぎます。無理に食事を摂らず、胃腸を休ませることが大切です。嘔吐が止まらない、水分が摂れない場合は、速やかに医療機関を受診してください。
実際の処方パターンとして、下痢と嘔吐を伴う感染性胃腸炎の患者さんには、吐き気止めと整腸剤が一緒に処方されることが一般的です。これは、まず嘔吐を抑えて水分摂取を可能にし、その上で腸内環境を整えることで回復を促すためです。
下痢+血便
下痢に血便が混じる場合、腸管の粘膜に損傷があることを示しており、重篤な疾患の可能性が高いため、自己判断せずに直ちに医療機関を受診する必要があります。
- 考えられる原因: 細菌性赤痢、O157などの出血性大腸炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、大腸がん、憩室炎など。
- 対処法: 直ちに医療機関(消化器内科)を受診してください。止瀉薬の使用は禁忌です。
まとめ

下痢は、急性のものから慢性のものまで、様々な原因によって引き起こされる一般的な症状です。急性の下痢の多くは感染症や食事によるもので、水分補給と消化の良い食事で対処できることが多いですが、発熱や激しい腹痛、血便などを伴う場合は医療機関の受診が必要です。慢性の下痢は、過敏性腸症候群や炎症性腸疾患など、より複雑な原因が背景にあることが多く、専門的な診断と治療が求められます。市販薬は症状緩和に役立つことがありますが、自身の症状や体質に合った選択が重要です。薬剤師は、市販薬の選び方や受診のタイミングについて具体的なアドバイスを提供できますので、お気軽にご相談ください。
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- R L Riveron Corteguera. [Persistent diarrhea].. Archivos dominicanos de pediatria. 1996. PMID: 12290553
- Darren M Brenner, J Enrique Domínguez-Muñoz. Differential Diagnosis of Chronic Diarrhea: An Algorithm to Distinguish Irritable Bowel Syndrome With Diarrhea From Other Organic Gastrointestinal Diseases, With Special Focus on Exocrine Pancreatic Insufficiency.. Journal of clinical gastroenterology. 2023. PMID: 37115854. DOI: 10.1097/MCG.0000000000001855
- J A Walker-Smith. Post-infective diarrhoea.. Current opinion in infectious diseases. 2002. PMID: 11964877. DOI: 10.1097/00001432-200110000-00010
- Marie-Fleur Durieux, Marie-Laure Dardé, Jean-François Faucher. [Traveller’s diarrhea].. La Revue du praticien. 2020. PMID: 32237586
- ロペミン(ロペラミド)添付文書(JAPIC)

