子どものエピペン
使い方と園・学校の備え
持っていることに加えて、「誰が、どこから取り出し、いつ使うか」まで決めておくことが大切です。操作は医師・薬剤師から教わり、練習用器具で確かめましょう。
エピペンは、アナフィラキシーの緊急時に使うアドレナリン自己注射薬です。本人に処方された製剤を、主治医から教わった症状の目安で速やかに使い、119番へ連絡します。使った後に改善しても受診が必要です。家庭と園・学校で保管場所、使用の目安、連絡と見守りの役割を共有しましょう。[1]
今、強い症状があれば119番
アレルギー反応が疑われ、息が苦しい、のどが締まる、ぐったりする、繰り返し吐く、強い腹痛が続くなど。処方されたエピペンがあれば、指示された緊急時の手順ですぐに使います。
じんましんなどだけでも悪化することがあります。決めてある対応表に従って観察・連絡し、迷う場合は医療機関へ相談。強い症状が加われば待たずに119番へ。
使う薬、判断の目安、保管場所、連絡先を主治医と確認。家族・園・学校で共有し、練習用器具で操作を確かめます。
緊急性の高い症状は1つでも対応が必要です。すべての症状がそろうまで、保護者の到着まで、飲み薬が効くまで待ちません。[1]
強い症状のときに、救急医療へつなぐ薬です
エピペンは処方薬で、すべての子に同じように必要となるわけではありません。使う必要性、製剤の種類、携帯する本数は体重や過去の症状などを踏まえて医師が判断します。成長して体重が変わったときも、自己判断で製剤を変えず、診察で確認してください。[1]
アレルギー反応が疑われ、息が苦しい、声がかすれる、のどが締まる、ぐったりする、繰り返し吐く、我慢できない腹痛が続くなどの強い症状があれば、事前に教わった手順で速やかに使います。倒れたり、すべての症状がそろったりするまで待つ薬ではありません。[1]
緊急時は使用と119番を遅らせない
抗ヒスタミン薬などの飲み薬が効くのを待ったり、保護者の到着を待ったりしません。本人に処方されたエピペンと緊急時対応計画に沿って行動し、救急車を呼びます。
薬の使用をためらう不安も、症状のない日に相談してよいことです。「使う場面が想像できない」「家族が操作を知らない」「学校にどう説明するか分からない」と具体的に伝えてください。医療機関の外での使用を調べたレビューでは、必要な場面でも十分に使用されていないことが示されています。ただし、国ごとの制度が異なり、海外の学校での共用薬の仕組みを日本の対応と同じには扱えません。[5]
太ももの外側へ。脚を動かさないように支えます
以下は、処方された患者さんと保護者が操作を復習するための要点です。この記事だけで初めて練習するのではなく、処方時の説明とメーカー公式の図・動画を確認してください。実物のエピペンを練習に使うことは避け、専用の練習用器具を使います。[2]
ケースから取り出し、本体の中央を握ります。オレンジ色の先端を下にし、先端に指を置かないようにします。
青い安全キャップをまっすぐ引き抜きます。横に折り曲げるような力をかけません。
介助する人は太ももの付け根と膝を固定し、子どもの脚が急に動かないようにします。
太ももの前外側へ垂直に、カチッと音がするまで強く押し付け、数秒間そのまま保持します。振り下ろして刺しません。
緊急時は衣服の上からでも注射できます。腕やお尻、指に打つものではありません。使用後は針を覆うオレンジ色のカバーが伸びていることを確認し、119番で使用した時刻と様子を伝えます。操作に不安があるときは、そのことも伝えて指示を受けてください。[2]
メーカー公式:エピペンの操作手順を図と説明で確認する(外部サイト)製品の説明は更新されることがあります。ネット上の古い秒数や別の注射器の方法を混ぜず、お手元の製剤の説明を確認してください。使い方に加えて、子どもが怖がって動く場合に誰が支えるかも、練習用器具で事前に確かめておきます。
一度使ったら、よくなっても必ず受診します
エピペンは救急治療のすべてを終える薬ではありません。使用後に元気になっても、救急要請を取り消さず医療機関で評価を受けます。使用した時刻、症状の変化、ほかに使った薬を救急隊へ伝え、使用済みの器具も渡せるようにします。[2]
一度使った器具に液が残って見えても、同じ器具で再び注射することはできません。使用済み器具はオレンジ色のカバー側からケースへ戻し、ふたが閉まらなくても無理に押し込まないでください。安全な扱いと処分は医療者の指示に従います。[2]
複数回のアドレナリンが必要な例もあります。系統的レビュー・メタ解析は、追加投与への備えの必要性を考える資料になりますが、対象の年齢や原因、診療の場にはばらつきがあります。全員に同じ携帯本数や追加の時刻を当てはめず、予備薬と追加使用の条件を主治医と決め、緊急時は救急隊・医師の指示に従ってください。[6]
救急車を待つ間は、原則として寝かせ、立たせたり歩かせたりしません。呼吸が苦しい場合は上体を起こして足を伸ばし、吐く場合は横向きにします。反応がなく普段どおりの呼吸がなければ、その場で119番の指示に従い心肺蘇生やAEDの対応を始めます。[1]
救急車を待つ姿勢と、改善後の経過観察を読む使える場所に、期限と温度を確かめて保管
薬は携帯用ケースに入れ、直射日光や高温の車内を避けます。メーカーは15~30℃での保存を望ましいとし、冷蔵庫などの冷たい場所に置かないよう案内しています。暑い日や寒い日の携帯方法に迷ったら、医師・薬剤師へ相談してください。[3]
大人が場所を把握し、緊急時に取り出せる一方、幼児が勝手に触れないようにします。
期限前に診察・再処方の予定を立てます。家庭と学校で預けている薬の期限をそれぞれ確認します。
窓から見える薬液の変色や沈殿物、器具の破損があれば、そのままにせず新しい処方などを相談します。
遠足・旅行・習い事のときも、薬と対応表が子どもの行き先についていくよう確認します。
ランドセルのどのポケットか、職員室のどこか、といった具体的な場所まで共有します。保管のために取り出しが遅れることがないよう、休み時間や体育館で症状が出た場合も想定してください。器具を落として壊した、期限が近いなどの変化を、家庭だけでなく預け先にも連絡します。[3]
書類と薬だけでなく、動く人を決めます
園や学校には、主治医が記入する生活管理指導表など施設で求められる書類を提出し、面談で対応を相談します。病名だけでなく、本人の症状の目安、処方薬、緊急連絡先を共有してください。書類の様式や更新の時期は施設に確認します。[1]
| 項目 | 共有する内容 | 確かめる場面 |
|---|---|---|
| 見つけた人 | 子どものそばを離れず、助けを呼ぶ | 担任が不在の時間、校庭、登下校の引き継ぎ |
| 薬・救急対応 | 薬の場所、使う基準、119番と救急車の誘導 | 複数の職員が同じ手順を確認できるか |
| 連絡・記録 | 保護者への連絡、時刻と症状の記録 | 連絡がつかなくても救命対応を遅らせない |
| 行事 | 持参薬、担当者、移動先と救急連絡先 | 遠足、宿泊行事、部活、習い事 |
東京都の緊急時対応資料には、施設での役割分担、症状の確認、エピペン、119番、心肺蘇生、経過記録が整理されています。食物アレルギー向けの資料なので、薬や虫刺されが原因となる子には、本人の計画に合わせて医師と補足を確認します。[4]

処方の確認と一緒に「薬は今どこにあり、誰が取り出せますか」と尋ねます。家で使えるだけでなく、学校や外出先でも同じように取り出せるかが大切です。薬の場所と担当する大人を具体的に確認し、進級や行事で変わる点を一緒に整理します。
練習用器具で、取り出すところから確認
注射の動作だけでなく、薬を取り出し、助けを呼び、子どもの脚を支え、119番へ伝えるところまで通して練習します。家庭では一人の保護者だけに任せず、祖父母など普段預ける相手も参加できると、同じ手順を共有しやすくなります。
対面での練習が、アナフィラキシーの知識や自己注射器の操作を改善する可能性は、系統的レビューでも示されています。一方、研究の確かさには限界があり、一度練習すれば必ず対応できるとは言えません。入園・進級、担当者の変更、薬の更新を、再確認の機会にしましょう。[7]
遠足や宿泊行事では、普段の教室と違う場所で使うことを想定します。薬を誰が持つか、子どもと離れないか、夜間に症状が出た場合の連絡先はどこかを確認してください。保護者が同行できないことだけで一律に諦めず、医師と施設が必要な備えを整理することが大切です。
子どもには「自分だけで全部判断する」ことを求めず、変だと思ったらすぐ近くの大人へ知らせるよう、短く繰り返して伝えます。年齢に応じて本人の理解や練習も進めながら、周囲の大人が責任を持って支える体制を作ります。
よくある質問
練習に本物のエピペンを使ってよいですか?
使いません。針と薬の入っていない専用の練習用器具を使います。処方時に医師・薬剤師から教わり、家族や園・学校でも手順を確認してください。
一度使った後、液が残っています。もう一度使えますか?
同じ器具は再使用できません。症状が続く場合は119番で伝え、予備薬の使用などは本人の対応計画と医療者の指示に従ってください。
学校には薬を預けるだけで十分ですか?
薬の場所だけでなく、使う症状の目安、誰が使うか、119番と見守り・連絡の役割まで共有します。担任が不在の時間や校外行事も想定して確認してください。
冷蔵庫で保管した方が長持ちしますか?
メーカーは15~30℃での保存を望ましいとし、冷蔵庫などの冷所には置かないよう案内しています。ケースに入れ、直射日光や高温の車内も避けます。
参考文献
- 日本アレルギー学会:アナフィラキシーガイドライン2022(2023年3月修正版)。診断、初期対応、園・学校での対応。
- ヴィアトリス:エピペンの使い方・実践編(処方された患者さんと保護者向け)。
- ヴィアトリス:エピペンの保存・携帯に関する注意事項。
- 東京都アレルギー情報navi.:緊急時対応(食物アレルギー)。2025年7月更新。
- Miles LM, et al. Community Use of Epinephrine for the Treatment of Anaphylaxis: A Review and Meta-Analysis. J Allergy Clin Immunol Pract. 2021;9:2321–2333. PMID: 33549844.
- Patel N, et al. Use of multiple epinephrine doses in anaphylaxis: A systematic review and meta-analysis. J Allergy Clin Immunol. 2021;148:1307–1315. PMID: 33862009.
- de Silva D, et al. Diagnosing, managing and preventing anaphylaxis: Systematic review. Allergy. 2021;76:1493–1506. PMID: 32880997.
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