介護を考え始めたときは、「自宅か施設か」をすぐ決めるのではなく、本人が困っている生活動作、必要な医療、家族が続けられる支援、利用できる制度を同じ地図で整理することが出発点です。このページでは、2026年7月時点の公的情報に基づき、介護保険の申請からサービス利用、在宅医療、施設選び、費用と相談先までを体系的に案内します。
状況別の最初の相談先
- まだ認定を受けていない本人の住所地の地域包括支援センター、または市区町村の介護保険窓口へ相談します。
- 退院後の生活が不安病院の退院支援担当者と地域の窓口をつなぎ、住まい・医療・介護を同時に調整します。
- 急な体調悪化がある意識、呼吸、強い痛みなど緊急性があるときは、ケアプラン調整より先に医療機関や救急相談へつなぎます。

介護の相談を始める前に、4つの情報をそろえる
介護サービスは、年齢や病名だけで自動的に決まるものではありません。本人の心身状態、生活環境、介助の必要度を要介護認定で確認し、その結果と希望に基づいてケアプランを作ります。相談前に情報を一枚へまとめると、市区町村、主治医、ケアマネジャー、事業所が同じ前提で検討できます。
- 要介護認定
- 介護サービスの必要性と程度を、市区町村が全国一律の基準に基づいて判定する手続きです。
- ケアプラン
- 本人の目標、利用するサービス、担当事業所、頻度などをまとめる介護サービス計画です。
- 地域包括支援センター
- 高齢者の総合相談、権利擁護、介護予防支援等を担う、市区町村が設置する中核的な相談機関です。
本人が「できること」と「困っていること」
食事、排泄、入浴、着替え、移動、買い物、調理、服薬、金銭管理、電話、外出について、できる・見守りが必要・一部介助・全面介助に分けます。認定調査では当日の動作だけでなく普段の状態が重要です。良い日と悪い日の差、夜間の様子、転倒や行方不明の危険なども、事実が分かる範囲で記録します。
医療と薬の情報
診断名、通院先、入退院歴、服薬、お薬手帳、食事や活動上の注意、医療機器の有無を整理します。複数の医療機関から薬が出ている場合は、自己判断で中止せず、主治医または薬剤師へ重複や相互作用を相談します。在宅で医療的支援が必要なら、介護サービスだけでなく訪問診療・訪問看護の体制も検討します。
本人の希望と家族が続けられる範囲
本人がどこで、誰と、どのように暮らしたいかを確認します。同時に、家族が対応できる曜日・時間帯、夜間対応、移動距離、仕事・育児・通院との両立を具体化します。善意を前提に無制限の介護を組み込むと継続できないため、家族が担わない部分も明確にしてサービスを組み立てます。
65歳以上の本人の住所地を担当する地域包括支援センターへ相談します。総合相談、権利擁護、介護予防支援などを担う市区町村の中核的な窓口です。担当センターは市区町村サイトまたは介護サービス情報公表システムの生活関連情報から確認できます。
介護保険の対象と要介護認定:申請から利用まで
65歳以上の第1号被保険者は、原因を問わず要介護・要支援状態と認定されると介護保険サービスを利用できます。40〜64歳の医療保険加入者である第2号被保険者は、厚生労働省が定める16の特定疾病が原因で介護が必要と認定された場合が対象です。年齢だけでなく、認定とサービスごとの利用要件を確認します。
認定は非該当、要支援1・2、要介護1〜5に分かれる
要支援は介護予防サービス、要介護は介護給付の対象となる区分です。非該当でも、市区町村の介護予防・日常生活支援総合事業などを利用できる場合があります。認定区分だけでサービス内容が一意に決まるわけではなく、本人の目標、生活環境、地域の提供体制を踏まえてケアプランを作ります。
申請から認定通知までは原則30日
- 市区町村へ申請本人・家族のほか、地域包括支援センターや指定居宅介護支援事業者等が手続きを代行できる場合があります。介護保険被保険者証など必要書類は自治体へ確認します。
- 認定調査と主治医意見書認定調査員が本人の心身状態と生活環境を確認します。主治医意見書は市区町村が主治医へ依頼し、主治医がいない場合は市区町村が指定する医師の診察が必要です。
- 一次判定・二次判定認定調査と主治医意見書をもとに一次判定を行い、介護認定審査会が特記事項等も含めて二次判定します。
- 認定通知市区町村が結果と有効期間を通知します。申請から通知までは原則30日ですが、遅れる場合もあるため退院予定など急ぐ事情は申請時に伝えます。
- ケアプランと契約要介護では居宅介護支援事業所のケアマネジャー、要支援では地域包括支援センター等へ相談し、サービス担当者会議、計画、契約を経て利用します。
状態が変わった場合は、認定の有効期間中でも区分変更申請を検討できます。結果に不服がある場合の審査請求や、認定前の暫定利用には期限・自己負担の注意があるため、市区町村へ個別に確認してください。
自己負担と支給限度:月額だけでなく総額で比べる
介護保険サービスの利用者負担は原則1割で、一定以上所得者は2割または3割です。負担割合は介護保険負担割合証で確認します。居宅サービスには要介護度別の区分支給限度基準額があり、限度額の範囲内は1割・2割・3割、超えた分は原則全額自己負担です。
居宅サービスの1か月当たりの利用限度額
| 区分 | 厚生労働省の公表額 | 確認ポイント |
|---|---|---|
| 要支援1 | 50,320円 | 地域区分による1単位の単価、サービス種別、加算・減算で実際の費用は変わります。ケアプランと事業所の見積書で確認します。 |
| 要支援2 | 105,310円 | |
| 要介護1 | 167,650円 | |
| 要介護2 | 197,050円 | |
| 要介護3 | 270,480円 | |
| 要介護4 | 309,380円 | |
| 要介護5 | 362,170円 |
この表は制度全体を把握するための基準額です。すべてのサービスが同じ方法で限度額へ算入されるわけではなく、住宅改修、特定福祉用具販売、施設サービスなどは扱いが異なります。市区町村やケアマネジャーから月間サービス利用票と費用内訳を受け取り、限度額内・限度額外・保険外を分けて確認します。
介護保険の自己負担以外にかかる費用
- 通所・短期入所・施設の食費、居住費、滞在費
- 日用品、理美容、教養娯楽、個別契約の生活支援など
- 福祉用具や住宅改修の対象外部分、限度額を超える部分
- 医療保険の診療費、薬剤費、訪問診療や訪問看護の医療保険分
- 有料老人ホーム等の入居一時金、家賃、管理費、追加サービス費
負担が高いときに確認する制度
1か月の介護サービス自己負担が所得区分ごとの上限を超えた場合は、高額介護サービス費の対象になり得ます。医療保険と介護保険の年間自己負担を合算する高額医療・高額介護合算療養費、施設の食費・居住費を軽減する負担限度額認定などもあります。対象費用、世帯、所得、申請先が異なるため、市区町村と加入する医療保険者へ確認します。
基本サービス費のほか、加算、食費、居住費、日用品、医療費、キャンセル料、入院中の居室費、看取り対応の費用を含む月額試算を受け取ります。制度・報酬・自治体の助成は改定されるため、2026年7月以降も契約時点の最新資料を確認してください。
居宅・通所・短期宿泊・地域密着型サービスを役割で選ぶ
介護保険サービスは「自宅で受ける」「施設へ通う」「短期間泊まる」「通い・訪問・宿泊を組み合わせる」「施設で生活する」「福祉用具を使う」に大別できます。名称ではなく、どの生活上の課題を、どの時間帯に、誰が支えるかで選びます。
| 生活上の課題 | 主なサービス | 確認すること |
|---|---|---|
| 入浴・排泄・食事・家事を自宅で支える | 訪問介護、訪問入浴 | 提供できる行為、同居家族がいる場合の生活援助、時間帯、緊急対応 |
| 健康管理・療養支援・リハビリを自宅で受ける | 訪問看護、訪問リハビリテーション | 主治医の指示、保険区分、訪問頻度、夜間連絡、目標と評価 |
| 日中の活動・入浴・機能訓練・家族の休息 | 通所介護、通所リハビリテーション | 送迎、医療対応、食事、入浴、利用時間、欠席時費用 |
| 短期間の宿泊や介護者不在に備える | 短期入所生活介護、短期入所療養介護 | 予約方法、医療・服薬対応、送迎、連続利用、緊急利用 |
| 通いを中心に訪問・宿泊を柔軟に組み合わせる | 小規模多機能型居宅介護 | 登録制、定員、担当ケアマネジャー、他サービスとの併用 |
| 介護と訪問看護を一体で組み合わせる | 看護小規模多機能型居宅介護 | 要介護者が対象、看護ニーズ、利用圏域、夜間・緊急対応 |
地域密着型サービスは居住する市区町村が基本
定期巡回・随時対応型訪問介護看護、認知症対応型共同生活介護、小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護などの地域密着型サービスは、原則として事業所がある市区町村の住民が対象です。隣接自治体の事業所を自由に選べるとは限りません。住所地特例や自治体間の同意など例外は、保険者へ確認します。
事業所は「公表情報+見学+契約書」で比べる
介護サービス情報公表システムで、所在地、サービス内容、職員体制、運営情報等を比較できます。公表情報だけで決めず、見学時の説明、重要事項説明書、料金表、契約書、事故・苦情対応、第三者評価等を確認します。空き状況や提供時間は変わるため、事業所へ直接確認してください。
在宅生活を組み立てる:住まい・介護・医療・家族を一枚にする
在宅生活の可否は、家族が同居しているかだけでは決まりません。本人の移動・排泄・食事・服薬、住宅の段差、夜間の安全、医療処置、サービス提供地域、家族が対応できない時間を合わせて判断します。ケアプランには平常時だけでなく、悪天候、介護者の体調不良、停電・災害、急変時の代替手段も加えます。
1週間の時間割に落とし込む
起床、食事、服薬、排泄、入浴、通院、通所、就寝を時間帯ごとに並べ、支援者と空白時間を確認します。訪問介護と訪問看護では役割が異なり、家族の希望する行為が保険サービスの対象外となることもあります。ケアマネジャーと各事業所へ提供範囲を確認し、保険外サービスを使う場合は費用と責任範囲を契約書で確認します。
福祉用具と住宅改修は、購入前・工事前に相談する
車いす、特殊寝台、歩行器、手すりなどは、貸与・販売の対象や軽度者の例外が品目と状態で異なります。住宅改修も対象工事、支給限度、事前申請が関係します。先に購入・着工すると給付対象にならない場合があるため、市区町村、ケアマネジャー、福祉用具専門相談員へ事前に確認します。
家族の休息と就労をケアプランへ含める
通所、短期入所、訪問サービスは本人の生活支援であると同時に、家族が睡眠、仕事、通院、育児を続けるための時間を確保する選択肢になります。家族の負担が限界に近づいてから追加するのではなく、定期的な休息と緊急時の短期入所先を前もって検討します。
在宅医療と急変時対応:介護サービスとの境界を確認する
在宅医療は、自宅や高齢者向け住まいで、医師、歯科医師、看護師、薬剤師、リハビリ専門職等が連携して療養を支える仕組みです。医師が計画的に訪問する訪問診療と、急変時等の求めに応じる往診は役割が異なります。提供地域、診療内容、連絡方法、時間外対応は医療機関ごとに確認します。

訪問看護は医療保険・介護保険の条件を確認
訪問看護は主治医の指示に基づいて提供されます。要介護・要支援認定を受けた人は介護保険が優先されるのが基本ですが、厚生労働大臣が定める疾病、急性増悪等に対する特別訪問看護指示書などでは医療保険となる場合があります。病名だけで自己判断せず、主治医、訪問看護事業所、ケアマネジャー、保険者へ確認します。
平常時・夜間・災害時の連絡先を分ける
- 平日日中:主治医、訪問看護、ケアマネジャーのどこへ先に連絡するか
- 夜間・休日:24時間対応の有無、電話相談、往診、救急要請の判断
- 転倒・発熱・食事低下:観察項目と連絡基準、本人の意思
- 災害・停電:薬、衛生材料、電源を必要とする機器、避難先、連絡手段
- 入院時:お薬手帳、診療情報、ケアプラン、緊急連絡先の共有方法
救急要請をためらわない症状
反応が乏しい、呼吸が苦しい、突然の片側の麻痺や言葉の障害、激しい胸痛、大量出血など緊急性が疑われる場合は、通常の介護連絡を待たず119番等へ連絡します。地域の救急相談窓口は自治体で異なります。本人の急変時の希望、かかりつけ医からの指示、救急搬送先の情報を事前に共有しておきます。
施設・高齢者向け住まい:目的と医療対応で比較する
「老人ホーム」という呼び方には、介護保険施設、介護付き有料老人ホーム、住宅型有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、認知症グループホームなど異なる制度が含まれます。介護職員が常時すべての医療に対応できるとは限らず、外部サービスとの契約が必要な住まいもあります。

| 種類 | 主な役割・対象 | 特に確認すること |
|---|---|---|
| 介護老人福祉施設(特養) | 要介護高齢者の生活施設。新規入所は原則要介護3以上 | 待機、看護・医療体制、看取り、居室、食費・居住費 |
| 介護老人保健施設(老健) | リハビリテーション等を提供し、在宅復帰・在宅療養支援を目指す | 入所目的、リハビリ、退所支援、入所期間の方針 |
| 介護医療院 | 長期療養が必要な要介護者へ、医療・看護・介護と生活を一体で提供 | 医療処置、生活環境、療養棟の類型、看取り |
| 認知症グループホーム | 認知症の人が少人数で共同生活する地域密着型サービス | 認知症・要介護要件、住所地、医療連携、費用、退去条件 |
| 介護付き有料老人ホーム | 特定施設入居者生活介護の指定を受け、ホームが介護を提供 | 指定の有無、人員体制、追加費用、医療・看取り、契約方式 |
| 住宅型有料老人ホーム・サ高住 | 住まいと生活支援が中心。介護は外部事業所等と別契約の場合がある | 家賃・管理費、介護契約、夜間職員、重度化・入院・退去条件 |
見学時に確認する12項目
- 本人の要介護度・認知症・医療処置への対応可否
- 日中と夜間の職種・人数、緊急時の連絡と搬送
- 協力医療機関、訪問診療、訪問看護、歯科、薬局との連携
- 食事形態、アレルギー、栄養、持ち込み
- 入浴、排泄、移動、リハビリ、外出の方針
- 個室・多床室、面会、家族の宿泊、感染対策
- 事故、身体拘束、虐待防止、苦情、第三者評価
- 基本月額、加算、保険外費用、入院中の費用
- 入居一時金の償却、返還、短期解約特例
- 状態悪化、長期入院、認知症症状による退去条件
- 看取り方針と本人の意思確認
- 重要事項説明書、契約書、料金表の持ち帰り可否
本人と家族に合う選択基準:5つの軸で比較する
サービスや住まいを比べるときは、「安全だから施設」「本人が希望するから自宅」の二択にしません。本人の意思を中心に、医療・介護の必要度、家族の継続可能性、地域の資源、費用を同じ表へ並べます。認知機能に変化がある場合も、本人が理解し意思を示せる部分を残し、必要に応じて権利擁護の支援を受けます。
1. 本人が大切にしたい生活
住み慣れた場所、家族や友人との距離、食事、入浴、外出、趣味、宗教・文化、ペット、プライバシーを確認します。「自宅か施設か」だけでなく、日中だけ通所、短期宿泊を組み合わせる、サービス付き住宅へ移るなど中間の選択肢も検討します。
2. 24時間の安全と医療
転倒、火の不始末、服薬、嚥下、排泄、徘徊、夜間不眠、急変、医療処置を時間帯別に評価します。医療機関や訪問看護が近いだけで24時間対応になるとは限りません。契約上の対応範囲と連絡後の動きを確認します。
3. 家族が続けられる支援
主介護者だけでなく、家族全体の仕事、育児、病気、移動時間、経済状況を確認します。家族が無理なく続けられる上限を先に決め、超える部分を訪問・通所・短期入所・見守り等で補います。
4. 月額総額と将来の増加
現在の要介護度の費用だけでなく、重度化、医療処置、個室への変更、入院、看取り、契約終了時を試算します。公的給付の対象外費用と返還条件を確認し、複数事業所・施設を同じ条件で比較します。
5. 3か月ごとの見直し項目
本人の目標、食事・体重、移動・転倒、服薬、睡眠、介護者の休息、サービスの空白、費用を定期的に見直します。状態が急に変わった場合は予定を待たず、主治医、ケアマネジャー、市区町村へ相談します。
本人の住所地の地域包括支援センターと、市区町村の介護保険窓口を確認し、医療が関係するときは主治医・退院支援担当者も同じ情報で相談します。事業所は介護サービス情報公表システムから検索できます。
介護・在宅医療の詳しいガイド:8つの子記事から選ぶ
このページは、制度・在宅・施設・認知症・家族支援・リハビリ・高齢者医療・介護事業をつなぐHUBです。必要なテーマを子記事で深掘りし、金額・対象・申請書・提供地域は公的資料と窓口で最新情報を確認してください。
よくある質問(FAQ)
介護が必要か分からない段階でも相談できますか?
要介護認定の結果が出るまで、どのくらいかかりますか?
介護保険サービスは、必ず1割負担ですか?
訪問診療と訪問看護は同じサービスですか?
特別養護老人ホームと老人保健施設はどう違いますか?
本人と家族の希望が違うときは、どう整理すればよいですか?
参考文献・公的資料
- 厚生労働省 介護サービス情報公表システム「サービス事業所を比較する」
- 厚生労働省 介護サービス情報公表システム「居宅介護支援」
- 厚生労働省 介護サービス情報公表システム「介護老人保健施設」
- 厚生労働省「介護医療院とは」
- 厚生労働省 在宅医療・介護連携推進事業「発行物・研修等」
- Stall N, et al. Systematic review of outcomes from home-based primary care programs for homebound older adults. J Am Geriatr Soc. 2014. PMID: 25371236.
- Pel-Littel RE, et al. Barriers and facilitators for shared decision making in older patients with multiple chronic conditions: a systematic review. BMC Geriatr. 2021. PMID: 33549059.

