肩の付け根の骨折:治療とリハビリ
上腕骨近位端骨折で、固定や手術、リハビリの開始に迷っている方へ。骨折を守ることと肩の動きを戻すことを、どのように両立するか解説します。
受診を急ぐ症状を先に確認する →上腕骨近位端骨折は、肩の付け根にある腕の骨の骨折です。固定して治す場合も多く、手術は骨の形やずれ、周囲の傷みなどで判断します。リハビリは骨折の安定性を確認して始めるため、痛みや経過日数だけで肩の運動を増やさないでください。
転倒後に肩が上がらないときの受診
骨が見える傷、強い変形、新たなしびれや指先の冷たさ・色の変化がある場合は救急受診してください。大きな事故のあとや、息苦しさ・意識の変化がある場合は119番へ連絡します。
転倒後に肩が強く痛み、腕を上げられない、腫れがある場合は、無理に動かさず早めに整形外科を受診します。肩が外れている脱臼などを伴うこともあるため、自分で腕を引いて戻そうとしないでください。[4]
「上腕骨」は肩から肘までの長い骨で、「近位端(きんいたん)」は肩に近い部分を指します。普段の転倒でも骨折することがあり、診察とX線で確認します。骨が複雑に割れているときなどには、CTで詳しく調べることがあります。[1]
固定と手術は、骨の状態と生活を合わせて選ぶ
治療は、腕をつる補助具などで保護する方法と、手術による方法に分かれます。手術では金属で骨を支える方法や、傷んだ関節側を人工物に置き換える方法が検討されます。どれを選ぶかは骨折の形、骨の質、生活状況などで変わります。[1]
主に高齢者のずれた骨折を対象とした研究では、手術をしても固定に比べて1〜2年後の機能が明らかによくなるとは示されていません。手術によって、追加の処置や再手術の負担が増える可能性もあります。[2]
ただし、この結果はすべての肩の骨折に当てはまるものではありません。若い方の強い外傷、脱臼を伴う骨折、骨の一部の特殊な割れ方などは、研究の対象が少ないか対象外です。「高齢だから」「ずれているから」という一つの理由だけで決めません。[2]
傷が開いている、皮膚が骨に押されている、血管の損傷が疑われる、脱臼を伴うなどの場合は、早急な専門的判断が必要です。[4]
肩を動かす時期は、個別に指示を受ける
固定して治す場合、骨折を保護しながら肩が硬くなりすぎないようにすることが課題になります。早めに運動を始める場合もありますが、開始日、動かし方、許される範囲は骨折の安定性を確認して決めます。[1]
2025年の研究では、手術をせず治療する患者さんで、1週間以内に動かし始める方法と、3〜4週間待つ方法が比較されました。早めに始める方法に短期間の機能面の利点がありましたが、長期の差は明確ではありません。[3]
この研究は「受傷から1週間で誰でも自宅の体操を始めてよい」という意味ではありません。骨折の種類ごとの差や、骨のずれが増える可能性には不確かさが残ります。担当医が安全性を判断した範囲で進めてください。[3]
- 指・手首・肘と肩を分けて、動かしてよい場所を確認する
- 自分の力で動かすのか、補助を受けるのかを確認する
- 痛みが出たときの中止・連絡の目安を確認する
- 次の段階へ進める条件と再診日を確認する
腕を大きく振る、重りを持つ、反対の手で強く引き上げる運動は、教わっていない段階で行わないでください。手術後も、術式と骨の状態に合わせた制限が必要です。動画の運動が今のご自身に合うかは、担当者に確認します。
肩の骨折では「腕を動かす」という言葉だけでは、指の動きと肩を上げる動きが混同されることがあります。診察では、動かしてよい場所と避ける動作を分けて確認する視点が大切です。

着替え・洗髪・睡眠の困りごとを減らす
肩が使いにくいと、片手だけで行う家事や身支度が増えます。まず「一人でできる動作」と「手助けが必要な動作」を整理しましょう。着替えや洗髪を安全に行う方法は、固定の指示を踏まえて医療スタッフに実際に確認してください。
就寝時の装具の扱いや腕の支え方は、痛みと固定方法に合わせます。苦しい姿勢を我慢したり、楽だからと装具を自己判断で外したりせず、相談してください。痛み止めが十分に効かず眠れない場合も伝えます。
台所の高い棚、重い洗濯物、布団の上げ下ろしなど、肩に負担がかかる作業は代わりを頼めるか考えます。一人暮らしの方は、退院や通院の見通しと合わせて支援を相談すると安心です。
杖や歩行器を使っていた方は、けがをした腕で体重を支えられるか確認が必要です。肩を守るために歩行が不安定になることもあるため、移動方法や自宅の段差について担当チームと相談してください。
再診では、痛み・画像・できる動作を確認
回復は「痛みが減る」「骨がつく」「肩の動きが戻る」という複数の過程に分かれます。日付だけで順調かどうかを判断せず、前回より何ができるようになったか、何が難しいままかを伝えます。
通院で経過を確認しながら、運動の範囲や日常動作を見直します。急に痛みが強くなった、新たなしびれが出た、転倒して再びぶつけた場合は、予約日を待たず連絡してください。長く残る痛みや動かしにくさも相談の対象です。
骨が弱くなる骨粗しょう症や転倒への対策も大切です。軽い転倒で骨折した方は、骨の健康を調べる必要があるか相談しましょう。床の物を減らす、足元を明るくするなど、再び転ばない環境の確認も行います。[1]
職場や家庭に復帰の目安を伝えるときは、日付だけでなく「肩より上へ腕を上げない」「重い物を持つ許可はまだ出ていない」など、担当医から示された動作制限を共有してください。ご自身で制限を作らず、診察時に言葉を確かめます。
診察で確認したいこと
- 固定で治す理由、または手術を勧める理由は何か
- 今日から動かせる場所・方向と、避ける動作は何か
- 着替え・睡眠・入浴で装具をどう扱うか
- 家事や仕事、介助にどんな支援が必要か
ほかの部位の骨折も含めて治療を整理したい場合は、肩・腕・手首の骨折の受診と治療の案内へ進めます。このページの運動に関する説明は、個別のリハビリ指示に代わるものではありません。
よくある質問
骨がずれていたら必ず手術ですか。
必ずではありません。固定で治療する場合も多く、骨折の形、皮膚や血管への影響、年齢や生活の状況を合わせて判断します。
いつから肩を動かせますか。
骨折の安定性と治療方法によります。早く動かし始める場合もありますが、経過日数だけで決めず、担当医に開始時期と範囲を確認してください。
痛みを我慢して大きく動かす方がよいですか。
自己判断で無理に動かさないでください。教わった範囲で進め、痛みが強まるときの対応も確認します。肩が硬くなる不安がある場合は、運動の内容を相談してください。
高齢で転んで骨折しました。肩以外に調べることはありますか。
骨粗しょう症や転倒の原因・環境について相談することが大切です。服薬や歩行の状況も伝え、必要な検査や再発予防を担当医と考えます。
参考文献
- 日本整形外科学会.上腕骨近位端骨折.整形外科シリーズ30.2013年作成.
学会の患者向け資料 - Handoll HH et al. Interventions for treating proximal humeral fractures in adults. Cochrane Database Syst Rev. 2022. PMID: 35727196.
Cochrane系統的レビュー - Challoumas D et al. Early versus delayed mobilisation for non-surgically treated proximal humerus fractures: a systematic review and meta-analysis of randomised trials. BMC Musculoskelet Disord. 2025. PMID: 40016664.
無作為化試験の系統的レビュー・メタ解析 - NICE. Fractures (non-complex): assessment and management. NG38. 2016.
公的診療ガイドライン
本記事は一般的な医療情報であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。症状、既往歴、服薬、妊娠などによって適切な対応は異なります。骨が見える傷、指先の冷たさや色の変化、新たな強いしびれがある場合は通常の予約を待たず救急受診してください。意識の変化、息苦しさ、安全に移動できない状態では119番へ連絡してください。
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