- ✓ ニキビ跡は「萎縮性瘢痕」と「肥厚性瘢痕」に大別され、特に萎縮性瘢痕はアイスピック型、ボックスカー型、ローリング型の3つに分類されます。
- ✓ それぞれのニキビ跡の形状や深さ、皮膚組織への影響を理解することで、適切な治療法を選択する上で重要です。
- ✓ 症状に応じた複合的な治療アプローチが効果的であり、専門医との相談が改善への第一歩となります。
ニキビ跡は、ニキビの炎症が治まった後に皮膚に残る変化の総称であり、その種類は多岐にわたります。特に、皮膚がへこんでしまう「萎縮性瘢痕(いしゅくせいはんこん)」は、その形状によってアイスピック型、ボックスカー型、ローリング型の3つに分類され、それぞれ特徴が異なります。これらの分類を理解することは、ご自身のニキビ跡の状態を正確に把握し、適切な治療法を選択するために非常に重要です。
ニキビ跡とは?その基本的な分類

ニキビ跡とは、尋常性ざ瘡(いわゆるニキビ)の炎症が治癒した後に皮膚に残る、色調の変化や組織の凹凸を指します。大きく分けて、色素沈着(赤みや茶色いシミ)と瘢痕(はんこん、傷跡)に分類されます。特に瘢痕は、皮膚がへこむ「萎縮性瘢痕」と、盛り上がる「肥厚性瘢痕」に分けられます。
萎縮性瘢痕は、ニキビの炎症によって真皮層のコラーゲンやエラスチンといった組織が破壊され、修復が不完全なまま治癒することで生じます。これは、皮膚の表面が陥没して見える状態です。一方で、肥厚性瘢痕は、過剰なコラーゲン生成によって皮膚が盛り上がる状態を指し、ケロイドに至ることもあります。日常診療では、多くの患者さんが「ニキビ跡が残ってしまった」と相談される際に、この萎縮性瘢痕の状態を指していることが少なくありません。
- 瘢痕(はんこん)
- 皮膚の損傷が治癒した後に残る、正常な皮膚組織とは異なる組織のこと。ニキビ跡の場合、炎症による真皮組織の破壊や過剰な修復の結果として生じます。
ニキビ跡の発生メカニズムは複雑で、炎症の程度、期間、個人の体質、治療の有無などが影響します。特に重度のニキビや、不適切な処置(潰すなど)は、瘢痕形成のリスクを高めることが知られています[3]。ニキビ跡の治療を考える上で、まずはこれらの基本的な分類を理解することが重要です。
萎縮性瘢痕の3つの主要なタイプとは?
萎縮性瘢痕は、その形状や深さによって、主にアイスピック型、ボックスカー型、ローリング型の3つに分類されます[2]。これらの分類は、ニキビ跡の治療法を選択する上で非常に重要な指標となります。実際の診療では、患者さんの顔にこれら複数のタイプのニキビ跡が混在しているケースも珍しくありません。
アイスピック型ニキビ跡の特徴と深さ
アイスピック型ニキビ跡は、その名の通り、アイスピックで刺したような、小さく深く、V字型に皮膚が陥没した跡です。開口部が狭く、深部まで達しているのが特徴で、毛穴の開口部に一致してできることが多いです。直径は2mm未満であることが多く、真皮深層から皮下組織にまで及ぶことがあります[1]。
このタイプは、特に重度の嚢腫性ニキビや結節性ニキビの後に形成されやすいとされています。深さが特徴であるため、表面的な治療では改善が難しいことが多いです。臨床現場では、このアイスピック型のニキビ跡を「まるで針で刺されたような跡が残ってしまった」と訴える患者さんが増えています。治療には、深部にアプローチできる方法が求められます。
ボックスカー型ニキビ跡の特徴と形状
ボックスカー型ニキビ跡は、四角く、垂直な壁を持つような形状の陥没跡です。水痘(水ぼうそう)の跡に似ていると表現されることもあります。直径は1.5〜4mm程度と幅広く、深さも浅いものから深いものまで様々です。皮膚の表面から真皮中層までの深さに及ぶことが多いです[1]。
このタイプは、真皮層のコラーゲンが破壊され、その部分が瘢痕組織に置き換わることで形成されます。アイスピック型と比較して、底面が平らであるため、光の当たり方によっては影ができやすく、目立ちやすい傾向があります。実臨床では、ボックスカー型のニキビ跡に対しては、その深さに応じて様々な治療法を検討します。患者さんからは「ファンデーションを塗っても隠しきれない」という悩みをよく聞きます。
ローリング型ニキビ跡の特徴と広がり
ローリング型ニキビ跡は、皮膚の表面が波打つように、広範囲にわたってゆるやかに陥没しているのが特徴です。個々の陥没の境界が不明瞭で、皮膚の下の線維性組織が引っ張られることで生じます。直径は4mm以上と比較的大きく、深さは真皮深層まで及ぶことがあります[1]。
このタイプは、皮膚の深部にある線維性瘢痕組織が皮膚表面を下に引っ張ることで、なだらかな凹凸を形成します。炎症が広範囲に及んだニキビの後に見られることが多いです。筆者の臨床経験では、ローリング型のニキビ跡は、肌全体の質感に影響を与えるため、患者さんからは「肌のキメが粗くなったように感じる」という訴えをよく聞きます。治療には、線維性組織のリリースやボリュームアップを目的としたアプローチが有効です。
| ニキビ跡の種類 | 形状の特徴 | 深さの目安 | 主な原因 |
|---|---|---|---|
| アイスピック型 | 小さく深いV字型陥没、毛穴に一致 | 真皮深層〜皮下組織 | 重度嚢腫性・結節性ニキビ |
| ボックスカー型 | 四角く、垂直な壁を持つ陥没 | 真皮中層まで | 真皮層のコラーゲン破壊 |
| ローリング型 | 広範囲に波打つようななだらかな陥没 | 真皮深層、皮下組織の線維化 | 広範囲な炎症、線維性組織の牽引 |
ニキビ跡の治療法はタイプによってどう異なる?

ニキビ跡の治療は、そのタイプや深さ、患者さんの肌質によって大きく異なります。単一の治療法で全てのニキビ跡を完璧に改善することは難しく、複数の治療法を組み合わせる「コンビネーション治療」が効果的な場合が多いです。治療法の選択には、専門医による正確な診断が不可欠です。
各タイプに推奨される治療アプローチ
- アイスピック型: 非常に深いため、TCA CROSS(トリクロロ酢酸を局所的に塗布し、組織の再生を促す治療)やパンチエキシジョン(陥没部分をくり抜き、縫合する手術)など、局所的かつ深部にアプローチする治療が検討されます。レーザー治療では、フラクショナルレーザーが有効な場合もありますが、複数回の治療が必要となることが多いです。
- ボックスカー型: フラクショナルレーザー(CO2フラクショナルレーザーやピコフラクショナルレーザーなど)が効果的とされることが多いです。また、ダーマペンやサブシジョン(皮膚の下の線維性組織を剥がす治療)も選択肢となります。深さによっては、ヒアルロン酸注入で一時的に改善を図ることもあります。
- ローリング型: 皮膚の下の線維性組織が原因となるため、サブシジョンが第一選択となることが多いです。これに加えて、フラクショナルレーザーやヒアルロン酸注入、PRP療法などを組み合わせることで、より自然な改善が期待できます。
日常診療では、患者さんのニキビ跡の状態を細かく診察し、どの治療法が最も効果的か、またダウンタイムや費用なども考慮しながら、個別の治療計画を立てています。特に、複数のタイプのニキビ跡が混在している場合は、それぞれのタイプに合わせた治療を段階的に行うことが重要です。
新しい治療法の可能性と研究
ニキビ跡の治療法は日々進化しており、新しい技術や薬剤の研究が進められています。例えば、局所塗布薬によるニキビ跡の改善に関する研究も行われており、将来的にはより手軽な治療選択肢が増える可能性もあります[4]。
また、超音波診断装置を用いたニキビ跡の評価も進んでおり、肉眼では見えにくい皮膚深部の変化を捉えることで、より精密な治療計画の立案に役立てられています[1]。こうした技術の進歩は、ニキビ跡で悩む患者さんにとって、より良い治療結果をもたらすことに繋がると期待されます。
ニキビ跡の治療は、一度で劇的な改善が見られることは少なく、複数回の治療と継続的なケアが必要となる場合が多いです。また、治療にはダウンタイムや副作用のリスクも伴うため、治療を受ける前に医師から十分な説明を受け、納得した上で選択することが重要です。
ニキビ跡の予防策とは?なぜ早期治療が重要なのか?
ニキビ跡の治療も重要ですが、何よりもニキビ跡を作らないための予防が最も大切です。ニキビ跡の形成リスクは、ニキビの炎症の程度や期間に大きく左右されるため、ニキビができた初期段階での適切なケアと治療が非常に重要となります。
ニキビ跡を予防するための日常ケア
ニキビ跡を予防するためには、まずニキビそのものの発生を抑え、炎症を悪化させないことが基本です。
- 適切な洗顔: 刺激の少ない洗顔料で優しく洗い、清潔な状態を保ちましょう。過度な洗顔は皮膚を乾燥させ、バリア機能を低下させる可能性があります。
- 保湿ケア: 洗顔後はしっかりと保湿を行い、皮膚のバリア機能を維持することが大切です。ノンコメドジェニック処方の製品を選ぶと良いでしょう。
- 紫外線対策: 紫外線は炎症後色素沈着を悪化させるだけでなく、皮膚の老化を促進し、ニキビ跡を目立たせる原因にもなります。日焼け止めを塗るなど、日常的な紫外線対策を心がけましょう。
- ニキビを触らない・潰さない: ニキビを触ったり潰したりすると、炎症が悪化し、瘢痕形成のリスクが格段に高まります。
- 生活習慣の改善: バランスの取れた食事、十分な睡眠、ストレスの軽減なども、ニキビの発生や悪化を防ぐ上で重要です。
なぜニキビの早期治療がニキビ跡予防に繋がるのか?
ニキビは炎症性疾患であり、炎症が長く続いたり、重度になったりするほど、真皮組織へのダメージが大きくなり、ニキビ跡(特に萎縮性瘢痕)が形成されやすくなります[3]。そのため、ニキビができた初期段階で皮膚科を受診し、適切な治療を開始することが、ニキビ跡の予防に直結します。
早期に治療を開始することで、炎症を速やかに鎮静化させ、真皮組織の破壊を最小限に抑えることができます。これにより、ニキビ跡が残る可能性を低減し、もし残ったとしても軽度なものにとどめることが期待できます。日々の診療では、「もっと早く受診していれば、ここまでひどくならなかったのに」と後悔される患者さまも少なくありません。ニキビは放置せずに、早めに専門医に相談することが肝要です。
ニキビ跡の診断はどのように行われる?

ニキビ跡の診断は、主に視診によって行われますが、より詳細な評価のためにダーモスコピーや超音波診断装置が用いられることもあります。正確な診断は、適切な治療計画を立てる上で不可欠です。
専門医による視診の重要性
専門医は、患者さんのニキビ跡の形状、深さ、色調、分布などを総合的に評価します。アイスピック型、ボックスカー型、ローリング型のいずれに該当するか、あるいは複数のタイプが混在しているかを見極めます。この視診によって、ニキビ跡の重症度を判断し、治療の方向性を決定します。診察の場では、「このへこみはどのタイプですか?」と質問される患者さんも多いです。
また、ニキビ跡の治療経験が豊富な医師は、患者さんの肌質や過去の治療歴、期待する効果などを踏まえ、個々に最適な治療法を提案することができます。ニキビ跡の状態は一人ひとり異なるため、画一的な治療ではなく、オーダーメイドの治療計画が求められます。
診断ツールとしての超音波診断装置
近年では、超音波診断装置を用いてニキビ跡の深さや皮膚組織の状態を客観的に評価する試みも行われています[1]。超音波画像は、肉眼では捉えきれない真皮層のコラーゲン構造の変化や、線維性組織の有無などを可視化できるため、より精密な診断と治療効果の評価に役立ちます。
例えば、ローリング型ニキビ跡の原因となる深部の線維性組織の存在を超音波で確認することで、サブシジョンなどの治療の必要性や範囲をより正確に判断することが可能になります。これにより、治療の精度を高め、患者さんにとって最適なアプローチを選択できるようになります。
まとめ
ニキビ跡は、その形状や深さによってアイスピック型、ボックスカー型、ローリング型の3つの主要なタイプに分類されます。これらの分類を理解することは、ご自身のニキビ跡の状態を正確に把握し、適切な治療法を選択する上で非常に重要です。アイスピック型は小さく深いV字型、ボックスカー型は四角く垂直な壁を持つ陥没、ローリング型は広範囲に波打つようななだらかな陥没が特徴です。それぞれのタイプに応じた治療法があり、多くの場合、複数の治療を組み合わせたコンビネーション治療が効果的です。ニキビ跡の治療は専門医による正確な診断と、継続的な治療計画が不可欠であり、早期のニキビ治療がニキビ跡の予防に最も効果的です。
よくある質問(FAQ)
- Francesco Lacarrubba, Anna Elisa Verzì, Aurora Tedeschi et al.. Clinical and ultrasonographic correlation of acne scars.. Dermatologic surgery : official publication for American Society for Dermatologic Surgery [et al.]. 2014. PMID: 24118266. DOI: 10.1111/dsu.12321
- Ashley K Clark, Suzana Saric, Raja K Sivamani. Acne Scars: How Do We Grade Them?. American journal of clinical dermatology. 2018. PMID: 28891036. DOI: 10.1007/s40257-017-0321-x
- Lin Liu, Yuzhou Xue, Yangmei Chen et al.. Prevalence and risk factors of acne scars in patients with acne vulgaris.. Skin research and technology : official journal of International Society for Bioengineering and the Skin (ISBS) [and] International Society for Digital Imaging of Skin (ISDIS) [and] International Society for Skin Imaging (ISSI). 2023. PMID: 37357642. DOI: 10.1111/srt.13386
- Chingshubam Bikash, Rashmi Sarkar. Topical management of acne scars: The uncharted terrain.. Journal of cosmetic dermatology. 2023. PMID: 36606377. DOI: 10.1111/jocd.15584

