【自家組織による隆鼻術:耳介軟骨・肋軟骨・筋膜移植を医師が解説】

自家組織による隆鼻術:耳介軟骨・肋軟骨・筋膜移植を医師が解説
最終更新日: 2026-09-03
📋 この記事のポイント
  • ✓ 自家組織隆鼻術は、人工プロテーゼを使わず自身の耳介軟骨・肋軟骨・筋膜を移植するため、アレルギーや長期的な露出のリスクが極めて低いです。
  • ✓ 耳介軟骨は「自然な柔軟性」、肋軟骨は「強固な支持力」、筋膜は「クッション効果」など、移植する組織ごとに異なる優れた物性があります。
  • ✓ 移植された組織は血管が新生して周囲と「生着」するため、異物排除反応がない一方で、わずかな組織吸収やワーピング(軟骨の湾曲)を考慮した専門的な技術が必要です。
※ 本記事は医療に関する情報提供を目的としています。個別の症状については、かかりつけの医療機関にご相談ください。

自家組織による隆鼻術とは?

自家組織による隆鼻術は、鼻の美容整形外科分野において、シリコンプロテーゼやゴアテックスなどの人工物を一切使用せず、患者さん自身の身体から採取した骨や軟骨、筋膜、脂肪などの組織を用いて鼻の高さや形状を整える高難度の外科的治療法です。特に、将来にわたる高い安全性と、触り心地まで再現された極めて自然な仕上がりを求める方から支持されています。

人工プロテーゼと自家組織の違い

シリコンプロテーゼに代表される人工物移植は、手術が比較的短時間で済み、安価でシャープな鼻筋を作りやすいという利点があります。しかし、体内にとってはあくまで「異物」であるため、長期的にはカプセル拘縮(人工物の周囲にできる被膜が縮んで鼻が変形する現象)を引き起こしたり、皮膚が経年劣化で薄くなってプロテーゼの輪郭が浮き出たり、最悪の場合は鼻先を突き破って露出したりする重篤な合併症リスクをはらんでいます。これに対し、自家組織は元々自分自身の細胞から成り立っているため、移植後に周囲の組織と一体化し、アレルギーや異物排出反応を一切起こさないのが最大のメリットです。

自家組織が生着する生理学的プロセス

移植された軟骨や筋膜は、採取された瞬間は血流が途絶えた状態(虚血状態)になりますが、鼻に移植されてから数週間をかけて、周囲の毛細血管から新しい血管が伸びて侵入してきます(血管新生)。これにより再び酸素や栄養が供給されるようになり、最終的に自己の体の一部として定着します。この生理現象を「生着(せいちゃく)」と呼びます。生着が完了した組織は、まさに鼻そのものの肉や骨として生存し続けるため、加齢変化にも自然に対応し、人工物のような突然のズレや感染に悩まされる心配がありません。医学的な臨床比較研究においても、自家組織移植(特に耳介軟骨など)は、人工物を用いた移植と比較して重篤な感染率が有意に低く、優れた生体適合性を示し、結果として高い患者満足度を得られることが実証されています[2]。

自家組織移植(じかそしきいしょく)
自らの体(耳、胸、頭部など)から採取した組織を鼻などの別の部位に移植する外科手術。他家組織や人工物のように拒絶反応や異物反応を起こさず、生きた細胞として同化するため、極めて安全性が高い特徴があります。
血管新生(けっかんしんせい)
既存の血管から新しい微小血管が形成され、伸長していくプロセス。移植された自家組織が長期間壊死せずに生き残るためには、この血管新生による血流の再開が不可欠です。
ワーピング(Warping)
移植された軟骨(特に肋軟骨)が、時間の経過とともに軟骨自体の持つ「反り(内部応力)」によって曲がってしまう現象。鼻の変形を引き起こすため、デザイン段階や削り出しの工夫により、このワーピングを極限まで回避する術式が求められます。

耳介軟骨移植の特徴とメリット・デメリット

耳介軟骨(じかいなんこつ)移植は、耳の裏側から採取した柔らかい軟骨を用いて、鼻先(鼻尖)に自然な高さや丸みを持たせる隆鼻術です。鼻先のデザイン調整において、最も広く応用されているポピュラーな術式です。

日常診療では、「シリコンプロテーゼを入れた後の鼻先の不自然なツッパリ感や、いつか皮膚を突き破って露出してしまうのではないかという恐怖」を訴えて相談される患者さんが少なくありません。実際の診療では、こうした懸念を解消するための最適なファーストチョイスとして、生体親和性が高く、触り心地も極めて自然な耳介軟骨を用いた鼻尖形成や鼻先の下垂(下に向ける)コントロールを提案しています。

耳介軟骨とは?採取方法と傷跡

耳介軟骨は、耳の形を保っている軟骨であり、組織学的には「弾性軟骨(だんせいなんこつ)」というグループに分類されます。これはコラーゲン線維だけでなく、エラスチンという伸縮性に優れた繊維を豊富に含んでいるため、曲げたりねじったりしても元の形状にしなやかに戻るという、極めて優れた柔軟性を持っています。この柔軟性が、触ったときに柔らかく動く「天然の鼻先」を再現する上で最も重要な役割を果たします。
採取時は、耳の裏側の皮膚のシワや、耳と頭の境界の溝に沿って2〜3cmほど切開してアプローチします。耳のフレームライン(縁)となる重要な軟骨構造を残しつつ、内側の凹んだ不要な部分(耳甲介など)から必要量を採取するため、術後に耳の形が変わってしまうことは基本的にはありません。抜糸後の傷跡は耳の裏側に隠れるため、正面から見えることはなく、他人に気づかれるリスクが非常に低いのが特徴です。

耳介軟骨のメリットとデメリット

  • メリット1:極めて自然な質感
    本来の鼻尖(鼻先)の軟骨組織に近い弾力を持つため、術後に触られたときにも手術をしたことが見破られにくいほど自然です。

  • メリット2:アレルギー・感染に非常に強い
    自己組織を移植するため、人工物特有の異物炎症や長期にわたる遅発性感染の心配がほとんどありません。

  • デメリット1:支持力・量の制限
    採取できる軟骨の量や面積に限界があります。また、非常に硬い柱を作るような支持力にはやや欠けるため、鼻を極端に前方に押し出したり、非常に長い鼻中隔延長を行ったりする場合には、強度が不十分な場合があります。

  • デメリット2:長期的なリマデリング(吸収と変形)
    移植された耳介軟骨は、生着して完全に安定するまでの間に一部の軟骨細胞が吸収され、周囲が健康な線維組織へと置き換わるような細かな生物学的変化が起こることが分かっています[1]。そのため、このわずかなボリューム変化(吸収率)を見越した、高度なサイズ調整が求められます。

肋軟骨移植の特徴とメリット・デメリット

肋軟骨(ろくなんこつ)移植は、自身の胸から頑丈な軟骨を採取して鼻の構造物とする、最もダイナミックな隆鼻術です。鼻をしっかりと劇的に高くしたい場合や、過去の手術による変形を根本から再建する場合に重宝されます。

実臨床では、過去にシリコンプロテーゼ挿入や他院での鼻中隔延長術を繰り返した結果、鼻の内部組織が著しく瘢痕化(傷跡組織でガチガチに硬くなること)し、皮膚が引きつれて鼻先が短くなってしまった難治性の患者さんをよく経験します。このようなケースでは、強力に縮まろうとする瘢痕組織の張力に真っ向から抵抗できる強固な支柱が必要となるため、非常に頑丈な肋軟骨が、安全かつ美しくお鼻を再構築するための極めて重要なキー素材となります。

肋軟骨とは?採取方法と術後の痛み

肋軟骨は、肋骨(あばら骨)の先端と胸骨を繋いでいる、胸郭を形成する一部の軟骨です。組織学的には「ガラス軟骨(硝子軟骨)」に分類され、耳介軟骨のような柔らかいゴムのような弾力はなく、非常に硬くて厚みがあり、強固な直線強度を有しています。そのため、鼻を大きく突き出して固定する「鼻中隔延長術」や、鼻筋全体の高さをしっかり出すためのインプラント代替素材として最適な性質を持ちます。
採取は通常、女性であれば右胸の下(アンダーバストライン)、男性であれば右胸部の適切な部位に沿って約2〜3cm皮膚を切開し、第6、第7、または第8肋軟骨の一部を切り出します。切開部位は服や下着、水着などで十分に隠れるため、時間とともに傷跡は白く細い線状になり、目立ちにくくなります。採取後数日間は、起き上がるときや呼吸時、咳をしたときにドナー部位に鈍い痛みを伴うため、術後は適切な鎮痛コントロールや、できるだけ低侵襲な採取アプローチを行うことが大切です。

肋軟骨のメリットとデメリット

  • メリット1:圧倒的な支持力と量
    硬く太い直線が取れるため、鼻先をダイナミックに下方向へ引き伸ばしたり、鼻筋に大きな高さを出したりすることが、これ一つで十分にまかなえます。また、他院での治療後の修正手術でも極めて有効です。

  • メリット2:長期にわたる高い吸収抵抗性
    耳介軟骨と肋軟骨の術後経過を比較した生物学的実験によれば、肋軟骨は時間経過に伴う吸収率が非常に低く、移植後の構造的な形態を長期間において極めて高度に維持できることが明らかになっています[3]。

  • デメリット1:経時的な湾曲リスク(ワーピング)
    肋軟骨の最大の弱点は、軟骨独自の繊維の特性により、時間が経つと「反り返る・曲がる」性質があることです。これにより、移植後に鼻先や鼻筋が斜めに変形してしまうリスクが存在します。

  • デメリット2:鼻先が固くなり、侵襲が大きい
    肋軟骨を移植した鼻先は非常に強固に固定されるため、術後は触ってもほとんど動かないほど硬い仕上がりになります。また、胸の切開が必要となるため、体への侵襲度が他の移植手術に比べて高くなります。

筋膜移植の特徴とメリット・デメリット

筋膜(きんまく)移植は、主に自分の側頭部(頭の横側の髪の毛の中)から採取した、薄くてしなやかな結合組織の膜を用いる術式です。他のがっしりとした軟骨組織と組み合わせたり、クッション材として使用したりすることで、その真価を発揮します。

外来診療では、「過去に受けたシリコンプロテーゼや他院での軟骨移植手術のせいで、鼻先の皮膚が限界まで薄くなって赤くテカっている」「鼻筋のプロテーゼの輪郭が浮き出て、見るからに整形した鼻のようになってしまい、不自然さを解消したい」と悲痛な面持ちで受診される患者さんが増えています。実際の診療では、このような鼻筋の不自然な硬さや透け感を根本から解消し、なだらかで美しいラインを作るために、採取した筋膜で移植軟骨を包んで形を滑らかにする、あるいは薄くなった皮膚の内側に筋膜のみをシート状に滑り込ませて皮膚を保護するアプローチを行い、大変喜ばれています。

筋膜とは?採取方法と傷跡

隆鼻術で用いられる代表的な組織は「側頭筋膜(そくとうきんまく)」です。これは、側頭部の耳の上方に位置する側頭筋という大きな筋肉を覆っている、コラーゲンが極めて豊富な非常に強靭で薄い繊維状の膜です。非常に引き裂きに強く、柔軟性としなやかさを併せ持っています。
採取する際は、耳の上方の側頭部にある髪の毛の中から、頭皮を約1.5〜2cmほど縦に小さく切開します。髪の毛の中にすべての傷が収まるため、顔や首元、耳の後ろなどの目立つ場所には一切の傷跡が残りません。術後は髪の毛に隠れて完全に覆われるため、他人から採取跡を見られる心配もなく、非常に傷跡のケアがしやすい部位です。

筋膜のメリットとデメリット

  • メリット1:皮膚の透け防止と凹凸の緩和
    軟骨を移植した際に生じる不自然な角張りやゴツゴツ感を包み込んでマイルドにし、鼻の表面をなめらかに仕立てる天然のフィルターとしてこれ以上ない働きをします。

  • メリット2:極めて低い術後トラブル
    極めて血流の馴染みがよく、薄いため、周囲から非常に速やかに血管新生を受けて定着します。しなやかなため、仕上がりを不自然に硬くすることがありません。

  • デメリット1:単体での構造維持力のなさ
    筋膜はあくまで「薄い布(膜)」のような組織であるため、それ自体に鼻の構造をガチッと支えて固定する硬さはありません。高さを大きく出そうとして何重にも折りたたんで挿入しても、生着後に全体が薄く潰れてしまうため、これ単体で大きな隆鼻効果を狙うことはできません。

  • デメリット2:特殊な加工技術が必要
    細かく砕いた軟骨を筋膜で丁寧に包み込んで鼻筋に流し込む「ダイスド・カートレッジ・グラフト」などの術式を正確に行うためには、医師側の非常に繊細で丁寧な術中操作の技術と、長い手術時間を必要とします。

各自家組織の比較と最適な選び方

自家組織隆鼻術を満足のいく結果に導くためには、ご自身が求める鼻のデザイン(シャープにしたい、自然に少しだけ変化させたいなど)と、各組織の物理的なポテンシャルやドナー負担をしっかりと天秤にかけることが極めて大切になります。

診察の場では、「ネットで肋軟骨がいいと見たのですが、私は本当に肋軟骨を採らなければいけませんか?」といったご質問を多くの患者様からいただきます。臨床経験上、仕上がりの形状の美しさはもちろんのこと、患者さんの本来の解剖学的な鼻の構造(もともとの鼻中隔軟骨の大きさや皮膚の厚み)や、ドナーサイト(採取部位)に傷を増やすことへの心理的な抵抗感、お仕事へ復帰できるまでのダウンタイムなどをトータルに考慮して、最適な組織を選択・組み合わせることが、最も安全で満足度の高い仕上がりに繋がります。

採取組織硬さ・支持力主な適応部位採取部位(傷跡)特徴と生着後の性質
耳介軟骨適度な硬さと柔軟性(カーブ)鼻尖形成、鼻先の下垂・挙上、マイルドな延長耳の裏側(目立たないシワに沿う)触り心地が天然の鼻に非常に近く柔らか。長期的には一部が穏やかに線維化し生着する[1]。
肋軟骨非常に硬く頑丈、直線強度が高い強固な鼻中隔延長、大きな鼻背(鼻筋)形成、他院修正胸の下(2〜3cmの白い細線状に)非常に強い支持力があり、長期的な吸収が極めて少ない[3]。将来的な湾曲(ワーピング)への配慮が必要。
側頭筋膜しなやかで薄いシート状鼻筋のなだらかなボリューム、軟骨の被覆、皮膚の保護頭皮内(髪の毛に隠れて見えない)クッション材として他組織と併用。軟骨のゴツゴツ感を防ぎ、極めて自然な触感を獲得できる。

目的・ニーズに応じた選択の目安

どのようなお悩みにどの術式が向いているか、一般的なアプローチの指針をご紹介します。

  1. 鼻先を「少しだけ高く、かつ自然に動かせる硬さにしたい」場合
    このケースには「耳介軟骨移植」がベストマッチします。耳の軟骨の自然なカーブと弾力を生かして、鼻尖を自然に尖らせることが可能です。ドナーとなる耳への負担も最小限に留められます。

  2. 鼻筋を通したいけれど「シリコンプロテーゼは絶対に入れたくない」場合
    「細片肋軟骨または耳介軟骨を側頭筋膜で包み込んで移植する(ダイスド・カートレッジ・イン・ファシア)」という非常に自然なアプローチ、あるいは「肋軟骨」を極薄く削りだして挿入するアプローチが選択肢となります。将来的に露出することのない、生涯安心できる安全な鼻筋を作ることができます。

  3. 鼻が短く、鼻の穴が正面から見えるのを「根本的に長くしたい(鼻中隔延長術)」場合
    このケースでは、強力な支持体となれる「肋軟骨」の一択になることが多いです。ご自身の元々の鼻中隔軟骨が小さく脆い日本人の場合、耳介軟骨だけでは皮膚の引っ張りに負けて曲がってしまうケースがあるため、強靭な肋軟骨で強固な基盤を作ることが必要となります。

自家組織による隆鼻術のリスクや副作用はある?

自家組織隆鼻術は、人工物アレルギーや異物露出のない極めて安全で優れた方法ですが、ご自身の身体組織を「生きたまま移植する」という外科的特性上、いくつかの特有のリスクや合併症に配慮しなければなりません。

臨床現場では、手術を受けることによる劇的なメリット(一生ものの自然な鼻が手に入ることなど)だけでなく、身体の他の部分(耳や胸元)から採取することの負担、指示や生体組織ゆえの不確定要素についても事前に100%納得して受診していただくことが、最終的な術後満足度を高める鍵になります。臨床経験上、自家組織移植における組織の「吸収率」や「湾曲(ワーピング)」には個人差が大きいため、カウンセリング時に丁寧な画像シミュレーションと十分な説明を行い、個人差を最小限に抑えるよう配慮しています。

主なリスクと合併症のメカニズム

移植組織の吸収(Resorption)によるボリュームの減少

移植した軟骨や筋膜は、100%すべてが永久に残るわけではなく、周囲から血流が再生されるまでの初期段階に、組織の一部(5%〜20%程度)が体内に自然に吸収され、線維組織などに穏やかに置き換わる変化(リマデリング)を起こします[1]。そのため、術後3〜6ヶ月の生着完成期には、術直後よりも少しだけ鼻の高さが落ち着く(低くなる)ことがあります。腕の良い医師は、この「吸収される割合」をこれまでの臨床経験から考慮し、あらかじめわずかに大きめに移植を施す(オーバーコレクション)などの精細な手技を行います。

肋軟骨の湾曲変形(ワーピング:Warping)

肋軟骨は非常に硬いというメリットがある一方で、元々軟骨自体に曲がろうとする強い内部の張力がかかっています。切り出して削った後、数ヶ月から数年かけて本来の引っ張り合いのバランスに沿って徐々に曲がっていき、鼻先や鼻筋が斜めに変形してしまうリスクがあります[3]。これを避けるため、手術の際には軟骨の中心部(対称な張力を持つ部分)だけをくり抜いて使用する、あらかじめスライスして内部のテンションを殺す、細かく細片化して筋膜で包み込んで充填する、などのワーピング変形を防ぐ極めて高度な工夫が求められます。

難治性修正手術での生着低下と補強

他院で何度も鼻をいじっている修正手術(Revision Rhinoplasty)の場合、鼻腔内の粘膜や皮膚は硬い「瘢痕組織(はんこんそしき)」となって血流が非常に悪くなっています。このような状態の場所に自家組織のみをそのまま移植しても、血流新生がうまくいかず生着率が落ちたり、感染が生じたりするリスクが高くなります。そのような極めて繊細なケースにおいては、多孔質の生体適合ポリエチレンプレートなどの補強材料と自身の耳介軟骨を巧妙に組み合わせて、鼻尖の血流と強度を保護しつつ再建を果たす特別な術式が非常に有用となることもあります[4]。

⚠️ 注意点

自家組織隆鼻術は、自身の生きた細胞を使用するため異物排除のリスクは低く抑えられますが、ドナー採取部位(耳、胸、頭部)への術後の局所的な疼痛、感染、傷跡、気胸(肋軟骨の採取時に稀に胸膜を傷つけて肺から空気が漏れるリスク)などの別のアプローチに対するケアや、一定期間の活動制限が必要です。手術をお受けになる際は、医師の豊富な再建外科経験や、アフターケア体制の充実度を十分に確認した上で受診をご決断ください。

術後の経過とダウンタイムの目安

自家組織を用いた隆鼻術は、お顔の鼻部分と、組織を取り出すドナーサイト(採取部位)の「2カ所」を同時に処置するため、通常のシリコンプロテーゼ挿入術に比べてダウンタイムはやや長くなり、慎重な術後管理が必要になります。

筆者の臨床経験では、治療開始からおよそ1〜2ヶ月ほど経過すると外見的な強い腫れはほとんど解消し、その後約3〜6ヶ月をかけて移植された軟骨や筋膜が周囲組織となじんで一体化し、本来の自然で心地よい柔らかさに落ち着く変化を実感される患者さんが多いです。術後のフォローアップ検診では、傷跡の治り具合はもちろんのこと、移植した組織がグラつかずにしっかり安定しているか、鼻尖の動きの柔軟性、そして何より患者さんが生活の中で不快な思いや不安を抱えていないかを各段階において詳細に確認し、寄り添ったケアに尽力しています。

術後のタイムラインと生活の過ごし方

手術から完成にいたるまでの典型的なスケジュールは以下の通りです。

  1. 術後1〜3日目(ピーク期)
    お鼻、およびドナーサイト(胸、耳、側頭部)に強い腫れ、痛み、内出血が最も生じやすい時期です。鼻はズレを防ぐため、厳重にギプスやテーピングで固定されます。鼻から一時的な少量の出血があることもあるため、無理をせず静養し、顔を高くして寝たり、保冷剤で優しく周囲を冷やすことで腫れを抑えられます。

  2. 術後7日目(固定除去・抜糸)
    クリニックを受診し、鼻のギプスを外し、皮膚を縫合していた極細の糸(抜糸)を取り除きます。耳の裏側の抜糸もこのときに行われます(肋軟骨採取の場合は10日前後になることもあります)。この時点で大きな腫れは引きはじめ、内出血も薄黄色の状態に変わるため、軽いメイクでかなりカバーできるようになります。

  3. 術後1ヶ月(むくみ改善期)
    不自然な膨らみ(むくみ)は8〜9割ほどが消失し、マスクを外しても他人に手術を気づかれるような不自然さはほとんど無くなります。ただし、鼻先を指で触るとまだ知覚が鈍かったり、カチカチと極端に硬い感覚を覚えたりしますが、これは末梢の知覚神経がゆっくり再生されていく過程で、通常は数ヶ月で自然に元の滑らかな感覚に戻ります。

  4. 術後3〜6ヶ月(完成期)
    血管新生が完了し、移植された軟骨や筋膜が完璧に鼻に同化(生着)します。組織の吸収(後戻り)も完全にストップし、傷跡も赤みが抜けて白い目立たない細線になります。鼻先にある程度の弾力が戻り(※強固な肋軟骨移植の場合を除く)、美しい仕上がりが完全に定着します。

絶対に注意すべき術後の禁止事項

  • メガネ・サングラスの着用(術後1ヶ月禁止)
    鼻筋に重みや圧力がかかると、生着前の軟骨が変形したり埋まり込んだりする原因になります。しばらくの間はコンタクトレンズを使用するか、メガネが鼻骨に当たらなくなるよう専用 of テープ固定具などを利用してください。

  • うつ伏せ寝(術後1ヶ月禁止)
    睡眠中、無意識に枕や布団に鼻を強く押し付けると、せっかく精密に配置した軟骨がズレて斜鼻になってしまうことがあります。仰向けで寝る習慣をつけて、頭の左右に枕を添えて寝返りを防ぐ工夫をしてください。

  • 激しいスポーツ・衝突リスクのある行動(術後3ヶ月回避)
    サッカー、バスケットボール、または混雑した場所での不意の衝突、小さなお子様やペットの不意な接触などは、鼻の形を容易にゆがめます。生着が十分に強固になるまでは、鼻をぶつける危険性の高いアクティビティは厳に控える必要があります。

まとめ

自家組織による隆鼻術は、ご自身の「耳介軟骨」「肋軟骨」「側頭筋膜」などの生体組織を用いて鼻に自然な美しさを獲得させる、非常に優れた治療法です。人工プロテーゼとは違い、血管新生を伴って鼻に「生着」するため、異物アレルギーや将来的な露出などのリスクをほとんど引き起こさず、一生ものの滑らかで安全な鼻を手に入れることができます。ただし、ご自身の組織だからこそ生じるわずかな「吸収」や、肋軟骨における「ワーピング(湾曲変形)」といった生物学的な現象に配慮する必要があり、これらを高いレベルでコントロールするためには医師の豊富な解剖学知識と外科手術の技量が問われます。治療に際しては、ご自身が希望する鼻先の丸みや高さ、仕事復帰までのダウンタイム、採取に伴う体への負担などを主治医としっかりとすり合わせ、最も適した組織の組み合わせを一緒に選択していくことが、手術を成功に導くための何よりの秘訣です。

よくある質問(FAQ)

質問:耳介軟骨を採取すると、耳の形が変わったり、耳の聞こえが悪くなったりしませんか?
回答:耳介軟骨の採取は、耳の形をしっかり支えている「フレーム(耳輪)」という部分を完全に避けて、内側の窪んだ部分の余剰軟骨から採取するため、術後に耳が潰れたり変形したりすることはありません。また、手術は外耳道の周囲や鼓膜には一切触れないため、聴力に悪影響を及ぼすことも基本的にはありませんので、安心して治療をお受けいただけます。
質問:肋軟骨を採取する手術は痛みが強いと聞きましたが、どの程度続き、いつ治まりますか?
回答:肋軟骨の採取時は、胸の筋肉やあばら骨周辺を処置するため、術後およそ2〜3日間は「激しい筋肉痛」のような強い痛みを伴います(特にベッドから起き上がるときや、大笑いしたり咳をしたりしたとき)。通常は、術後しっかり処方される痛み止めを内服することで問題なくコントロールでき、1週間目の抜糸の頃にはピークを越え、術後2週間から1ヶ月をかけて日常生活では全く気にならない程度に落ち着いていきます。
質問:過去に入れたシリコンプロテーゼを抜いて、同時に自家組織への入れ替えはできますか?
回答:はい、多くの場合で同日の手術(抜去と同時に自家組織移植)を行うことが可能です。人工プロテーゼによって皮膚が極めて薄くなっている場合や、すでに軽度の拘縮が始まっている場合に、異物を取り出し、同時に側頭筋膜や耳介軟骨に置き換えることで、安全性を高めながらご希望のナチュラルな形状に整えることができます。ただし、過去の感染によって膿んでいる場合(活動期の感染)は、一度プロテーゼを抜いて数ヶ月おいて落ち着かせてから、改めて自家組織による隆鼻術を行う二期的な方法が安全です。
質問:自家組織は、何年か経つと完全に身体に吸収されて、なくなってしまうことはありませんか?
回答:はい、経時的に「完全に吸収されてすっかり失われてしまう」ということはありません。移植後に新しい血流のネットワークが繋がって「生着」した軟骨や筋膜は、まさに本物の鼻の構造物として永久的に残ります。術後3〜6ヶ月の段階で一部が穏やかに吸収(平均して5%〜20%、組織の厚みにより異なる)される初期変化が終わった後は、そのボリュームのまま半永久的にその部位に定着して生き続けます。
この記事の監修
👨‍⚕️
新井智博
美容外科医
👨‍⚕️
林一樹
美容外科医