前立腺肥大症の症状とIPSSの見方
点数だけで自己診断せず、困る場面と尿の出しやすさを一緒に伝えます。
前立腺肥大症でみられる症状は、尿を出しにくい症状、尿をためにくい症状、排尿後の症状に分けます。IPSS(国際前立腺症状スコア)は7項目を0〜5点で答える質問票ですが、点数だけで前立腺肥大症を診断したり、手術を決めたりはしません。
尿が出ない・感染・血尿・神経症状は点数をつける前に受診
救急を検討
尿がまったく出ず下腹部が強く張る、急な脚の脱力や会陰部のしびれ、意識の変化。
当日中に相談
発熱・悪寒と排尿痛、血の塊を伴う血尿、強いわき腹痛、カテーテルが出なくなった。
泌尿器科へ予約
勢い低下、夜間頻尿、残尿感が続き、睡眠・外出・仕事に支障がある。
急に尿が出なくなった、下腹部が強く張る場合は急性尿閉が疑われます。発熱・悪寒、血の塊を伴う血尿、急な脚の脱力や会陰部のしびれがある時も、IPSSの結果にかかわらず早く相談します。[1][2]
「出す・ためる・出した後」の症状は重なって現れる

同じ症状は過活動膀胱、尿路感染、糖尿病、睡眠障害、薬、神経疾患でも起こります。症状の並びだけで原因を決めません。[2]
IPSSは7つの症状を、この1か月について答える
IPSSは、残尿感、2時間以内の再排尿、尿の途切れ、尿意を我慢する難しさ、勢い低下、いきみ、夜間排尿の7項目です。それぞれ0〜5点で、合計は0〜35点です。別に、現在の排尿状態が続くとどう感じるかを尋ねる生活の質(QOL)質問があります。[3][4]
0〜7点は軽症、8〜19点は中等症、20〜35点は重症の目安
一般に合計0〜7点を軽症、8〜19点を中等症、20〜35点を重症の目安とします。ただし、7点でも夜間頻尿で仕事に影響する人、20点でも困り感が小さい人がいます。治療はQOL、残尿、感染・結石・腎機能、本人の希望を含めて決めます。[1][3]
質問票の言葉が分かりにくい、認知・視力・言語の問題がある時は、家族や医療者と確認します。勝手に項目を省いたり言い換えたりすると、以前の点数と比較しにくくなります。
夜間頻尿は、3日程度の排尿日誌で尿量と時刻を確かめる
排尿日誌には、排尿時刻と量、強い尿意、漏れ、飲水、就寝・起床を記録します。夜間に起きる原因が、膀胱にためにくいこと、夜につくられる尿が多いこと、睡眠の問題のどれに近いかを整理できます。[2]
記録のために水分を増減したり、我慢し過ぎたりしません。普段どおりに過ごし、できる範囲で記録します。
点数に加え、いつから・何に困るか・薬の影響を伝える
徐々にか、急にか。最近変わった症状は何か。
睡眠、通勤、会議、運転、外出、排尿時間など。
痛み、血尿、発熱、尿漏れ、口渇、むくみ。
利尿薬、市販の風邪薬、カフェイン、アルコール、便秘。
診察では「夜2回」という回数だけでなく、尿意で目覚めたのか、目覚めたついでに排尿したのかを伺います。眠りと尿量のどちらを優先して調べるかが変わるためです。
IPSSは「この1か月」を振り返る質問票です。旅行、飲酒、風邪薬、強いストレスなど普段と違う出来事が多かった場合は、点数と一緒に伝えます。治療後も同じ版の質問票を使うと変化を比べやすくなります。
合計点が同じでも、内訳は異なります。勢い低下やいきみが中心なら尿の通りと膀胱収縮を確認し、頻尿・急な尿意が中心なら尿量、感染、過活動膀胱なども検討します。合計点だけで薬を選びません。
夜間頻尿では、回数に加えて一回量が重要です。毎回多量なら夜間につくられる尿の多さ、少量なら膀胱のためにくさ、目が覚めたついでなら睡眠の問題が関係することがあります。
「残尿感」は出し切れない感覚で、実際の残尿量とは別です。反対に、感覚がなくても尿が多く残る場合があります。勢い低下、腹圧排尿、尿漏れがある時は超音波で残尿を確認します。
質問票に答えにくい場合は、無理に推測せず「分からない」と伝えてください。家族が記入を手伝う時も、本人の感覚と家族が見た行動を分けると診察の助けになります。
治療効果を見る時は、合計点の低下だけでなく、最も困っていた項目が改善したかを確かめます。夜間回数が変わらなくても、再入眠しやすくなった、日中の急な尿意が減ったなど、生活の変化も記録します。
反対に、点数が大きく変わらなくても、残尿が増えた、感染を繰り返す、尿が出なくなった場合は治療方針の見直しが必要です。症状の主観評価と安全性の評価を分けて考えます。
症状が日によって変わる場合は、良い日と悪い日の違いをメモします。飲水、飲酒、便秘、寒さ、長時間の移動、風邪薬などが手がかりになることがあります。
よくある質問
IPSSが高ければ前立腺肥大症ですか?
高い点数は症状が強い目安ですが、原因は前立腺肥大症に限りません。尿検査、残尿、尿流、前立腺評価などと組み合わせます。
IPSSは何点から薬が必要ですか?
点数だけで決めません。生活への支障、残尿、合併症、前立腺容積、希望を確認して、経過観察・生活改善・薬・手術を選びます。
夜2回トイレに起きるのは前立腺肥大症ですか?
可能性はありますが、夜間多尿、睡眠障害、心臓・腎臓の病気、むくみ、糖尿病、飲水や薬も関係します。排尿日誌が役立ちます。
残尿感があれば実際に尿が残っていますか?
感覚と実際の残尿量は一致しないことがあります。超音波などで排尿後残尿を測って確認します。
参考文献
- 日本泌尿器科学会編.男性下部尿路症状・前立腺肥大症診療ガイドライン.2017.
- European Association of Urology. Management of Non-neurogenic Male LUTS: Diagnostic Evaluation. 2026.
- Yao MW, Green JSA. How international is the International Prostate Symptom Score? Low Urin Tract Symptoms. 2022. PMID: 34734477.
- Harrison JK, et al. Identifying the most reliable and valid bladder health screening tool: a systematic review. Disabil Rehabil. 2020. PMID: 30696291.
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