- ✓ 耳鼻咽喉科の検査は、聴覚、平衡機能、鼻・副鼻腔、喉頭・咽頭など多岐にわたり、症状に応じた適切な診断に不可欠です。
- ✓ 聴力検査や内視鏡検査、画像診断など、それぞれの検査には目的と得られる情報があり、患者さんの状態に合わせて選択されます。
- ✓ 専門医による正確な診断と、患者さんへの丁寧な説明が、適切な治療への第一歩となります。
耳鼻咽喉科における検査は、耳、鼻、喉の不調の原因を特定し、適切な治療方針を決定するために非常に重要です。多岐にわたる検査の中から、患者さんの症状や病態に合わせて最適なものが選択されます。
聴覚・平衡機能検査とは?

聴覚・平衡機能検査は、耳の聞こえや体のバランスに関する問題を評価するために行われる一連の検査です。これらの検査は、難聴、耳鳴り、めまいなどの症状の原因を特定し、その程度や種類を診断する上で不可欠となります。
聴力検査の主な種類と目的
聴力検査にはいくつかの種類があり、それぞれ異なる目的で実施されます。最も基本的なのは、純音聴力検査です。これは、様々な高さ(周波数)の純音を聞かせ、どのくらいの小さな音まで聞こえるかを測定することで、聴力の閾値(いきち)を調べる検査です。この検査により、難聴の種類(伝音性難聴、感音性難聴、混合性難聴)や程度を客観的に評価できます。日常診療では、「テレビの音が大きくなったと言われる」「高い音が聞き取りにくい」といった訴えで受診される患者さんが多く、純音聴力検査で難聴のパターンを把握することが診断の第一歩となります。
その他にも、言葉の聞き取り能力を評価する語音聴力検査や、中耳の機能を調べるティンパノメトリー、耳小骨筋反射検査などがあります。ティンパノメトリーは、鼓膜の動きや中耳腔の圧力を測定し、滲出性中耳炎や耳管機能不全などの診断に役立ちます。小児の滲出性中耳炎の診断では、この検査が非常に有用であり、鼓膜所見と合わせて、治療方針を決定する上で重要な情報を提供します。
平衡機能検査の種類と診断
めまいやふらつきを訴える患者さんに対しては、平衡機能検査が行われます。主な検査としては、眼振検査(電気眼振図:ENGやビデオ眼振検査:VNG)、重心動揺検査、体平衡機能検査などがあります。眼振検査は、眼球の不随意な動きである眼振の有無や特徴を記録することで、めまいの原因が内耳にあるのか、脳にあるのかを鑑別する手がかりとなります。実際の診療では、「ぐるぐる回るめまいが突然起こった」「頭を動かすと吐き気がする」といった患者さんの訴えに対し、眼振検査で特徴的な眼振パターンを捉えることで、良性発作性頭位めまい症やメニエール病などの診断に繋がることがよくあります。重心動揺検査は、不安定な足元でどれだけ体が揺れるかを測定し、平衡機能の障害の程度を客観的に評価します。
- 純音聴力検査
- 様々な周波数の純音を用いて、聞こえの閾値を測定する基本的な聴力検査。難聴の種類や程度を評価します。
- ティンパノメトリー
- 鼓膜の動きや中耳腔の圧力を測定し、中耳の機能を評価する検査。滲出性中耳炎などの診断に有用です。
聴覚・平衡機能検査は、患者さんの協力が不可欠です。特に小児の場合、検査が難しいこともありますが、経験豊富なスタッフが丁寧にサポートし、正確な結果を得られるよう努めます。
鼻・副鼻腔の検査とは?
鼻・副鼻腔の検査は、鼻づまり、鼻水、くしゃみ、嗅覚障害、顔面痛などの症状の原因を特定するために行われます。これらの検査を通じて、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎、鼻ポリープなどの診断を行います。
鼻腔・副鼻腔内視鏡検査の重要性
鼻腔・副鼻腔内視鏡検査は、鼻の奥や副鼻腔の開口部を直接観察できる非常に重要な検査です。細いファイバースコープを鼻腔に挿入し、鼻粘膜の状態、鼻甲介の腫脹、鼻ポリープの有無、副鼻腔からの分泌物の流出などを詳細に確認します。これにより、X線やCTでは捉えにくい初期の変化や、アレルギー性鼻炎における粘膜の蒼白・浮腫、慢性副鼻腔炎における膿性鼻汁の貯留などを直接視認できます。日常診療では、「長引く鼻水と鼻づまりで市販薬が効かない」と受診される患者さんが多く、内視鏡で鼻腔内を観察すると、思わぬ鼻ポリープが発見されることもあります。
アレルギー検査の種類と意義
アレルギー性鼻炎が疑われる場合には、アレルギー検査が行われます。主な検査としては、血液検査(特異的IgE抗体検査)と皮膚テスト(プリックテスト)があります。血液検査では、スギ、ダニ、ハウスダスト、カビ、ペットのフケなど、特定のアレルゲンに対するIgE抗体の量を測定し、原因アレルゲンを特定します。実臨床では、「毎年春になると鼻水が止まらない」という患者さんに対し、血液検査でスギ花粉に対する高いIgE抗体価が検出され、スギ花粉症と確定診断に至るケースをよく経験します。皮膚テストは、アレルゲンエキスを皮膚に少量滴下し、反応を観察する検査で、より迅速に結果が得られますが、全身状態によっては実施できない場合もあります。これらの検査結果に基づいて、アレルゲン回避指導や薬物療法、アレルゲン免疫療法などの治療方針が立てられます。
米国耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会が発行する臨床診療ガイドライン(成人副鼻腔炎)では、急性細菌性副鼻腔炎の診断において、症状の持続期間や重症度を考慮し、内視鏡検査や画像診断を適切に用いることが推奨されています[3]。特に、症状が10日以上続く場合や、症状が悪化する場合には、これらの検査が重要となります。
| 検査項目 | 主な目的 | 得られる情報 |
|---|---|---|
| 鼻腔・副鼻腔内視鏡検査 | 鼻腔・副鼻腔内部の直接観察 | 粘膜の状態、ポリープ、分泌物、構造異常 |
| 血液検査(特異的IgE抗体) | アレルギーの原因特定 | 特定アレルゲンに対する抗体価 |
| 皮膚テスト(プリックテスト) | アレルギーの原因特定(迅速) | 皮膚の反応(膨疹、紅斑) |
喉頭・咽頭の検査とは?

喉頭・咽頭の検査は、のどの痛み、声のかすれ、飲み込みにくさ、異物感などの症状を評価するために行われます。これらの検査は、咽頭炎、扁桃炎、声帯ポリープ、喉頭がんなどの診断に不可欠です。
喉頭ファイバースコープ検査の役割
喉頭ファイバースコープ検査は、細い内視鏡を鼻から挿入し、咽頭や喉頭、声帯を直接観察する検査です。これにより、肉眼では見えにくい病変や、声帯の動きの異常などを詳細に確認できます。声帯ポリープや声帯結節、喉頭がんなどの早期発見に非常に有用です。日常診療では、「声がかすれて治らない」「のどに何か引っかかっている感じがする」と訴えて受診される患者さんが多く、ファイバースコープ検査で声帯の炎症や腫瘍性病変が発見されることがあります。特に、喫煙歴のある患者さんで声のかすれが続く場合は、喉頭がんの可能性も考慮し、慎重な観察が求められます。
嚥下機能検査と声帯機能検査
飲み込みにくさ(嚥下障害)を訴える患者さんに対しては、嚥下機能検査が行われます。代表的なものに、嚥下内視鏡検査(VE)や嚥下造影検査(VF)があります。嚥下内視鏡検査では、内視鏡で咽頭や喉頭を観察しながら、実際に食べ物や飲み物を摂取してもらい、嚥下のプロセスや誤嚥の有無を確認します。筆者の臨床経験では、高齢の患者さんで「むせやすくなった」という訴えがあり、嚥下内視鏡検査で少量の水分でも誤嚥が見られたため、食事形態の変更や嚥下リハビリテーションを導入したケースを経験しています。
声帯機能検査は、声のかすれや発声障害の原因を詳しく調べるために行われます。ストロボスコピーという検査では、声帯の振動をスローモーションで観察し、声帯の粘膜波動や閉鎖不全の有無を評価します。これにより、声帯ポリープや結節だけでなく、声帯麻痺や機能性発声障害などの診断にも役立ちます。米国耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会が発行する臨床診療ガイドライン(小児の扁桃摘出術)では、反復性扁桃炎の診断基準として、年間あたりの発症回数などが示されており、適切な診断に基づいた治療が重要とされています[4]。
画像診断と病理検査とは?
耳鼻咽喉科領域における画像診断と病理検査は、肉眼や内視鏡では確認できない深部の病変や、病変の性質を詳しく調べるために行われます。これらの検査は、診断の確定や治療方針の決定に極めて重要な役割を果たします。
CT・MRIによる詳細な評価
CT(Computed Tomography)検査は、X線を用いて体の断面画像を撮影する検査で、骨の構造や副鼻腔の炎症、腫瘍の広がりなどを詳細に評価するのに優れています。特に副鼻腔炎の診断においては、副鼻腔内の膿貯留や粘膜肥厚の程度、骨の破壊などを客観的に把握できるため、手術の適応や術式を決定する上で不可欠です。日常診療では、「慢性的な鼻づまりと顔面痛が続く」という患者さんのCT検査で、広範囲にわたる副鼻腔炎が確認され、手術が必要と判断されるケースをよく経験します。
MRI(Magnetic Resonance Imaging)検査は、強力な磁場と電波を利用して体の断面画像を撮影する検査で、軟部組織の描出に優れています。脳腫瘍、聴神経腫瘍、顔面神経麻痺(ベル麻痺)の原因検索、頭頸部領域の悪性腫瘍の浸潤範囲評価などに用いられます。特に、顔面神経麻痺の患者さんで、ウイルス感染以外の原因が疑われる場合や、回復が遅い場合には、MRIで顔面神経の走行や周囲の異常がないかを確認することがあります。米国耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会による臨床診療ガイドライン(ベル麻痺)では、非典型的な症状や回復が遅い場合に画像診断を検討することが推奨されています[2]。
病理検査による確定診断
病理検査は、組織の一部を採取し、顕微鏡で詳細に観察することで、病変の性質を確定診断する検査です。特に、腫瘍性病変が疑われる場合や、炎症性疾患で診断が難しい場合に実施されます。例えば、喉頭や鼻腔内に腫瘍が発見された場合、生検(組織の一部を採取すること)を行い、病理医が細胞の形態や配列を評価することで、良性か悪性か、どのような種類の腫瘍であるかを確定します。この確定診断がなければ、適切な治療方針(手術、放射線治療、化学療法など)を決定することはできません。臨床現場では、内視鏡検査で異常な粘膜病変が見つかった際に、患者さんに生検の必要性を丁寧に説明し、病理検査の結果を待つことになります。この結果が、患者さんの今後の治療に大きく影響するため、非常に重要な検査です。
最新コラム・症例報告から学ぶ耳鼻咽喉科の検査

耳鼻咽喉科の検査技術は日々進化しており、最新の知見や症例報告は、より正確な診断と効果的な治療に繋がる重要な情報源となります。ここでは、臨床現場で役立つ新しい検査アプローチや、特定の疾患における検査のポイントについて解説します。
AIを活用した診断支援の可能性
近年、AI(人工知能)技術の医療分野への応用が注目されており、耳鼻咽喉科の検査においてもその可能性が探られています。例えば、内視鏡画像やCT画像をAIが解析し、病変の検出や診断支援を行う研究が進められています。これにより、医師の診断を補助し、見落としを減らす効果が期待されます。筆者の臨床経験では、まだ実用化には至っていませんが、将来的にAIが画像診断の精度向上に寄与し、医師の負担軽減に繋がることを期待しています。
特定の疾患における検査の進歩
特定の疾患においては、診断の精度を高めるための新しい検査方法が導入されています。例えば、急性外耳炎の診断においては、詳細な身体診察と合わせて、必要に応じて耳鏡検査や培養検査が行われます。米国耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会が発行する臨床診療ガイドライン(急性外耳炎)では、適切な診断に基づいた治療が強調されています[1]。また、難聴の分野では、遺伝子検査の進歩により、先天性難聴の原因遺伝子を特定し、将来的な治療法の選択肢を広げる研究も進んでいます。日々の診療では、「なぜこの病気になったのか」という患者さんの問いに対し、遺伝子検査がその答えの一つとなる可能性も出てきています。
症例報告から学ぶ検査の応用
実際の症例報告は、教科書的な知識だけでは得られない、検査の応用や診断のヒントを与えてくれます。例えば、稀な疾患や非典型的な症状を示す患者さんに対して、どのような検査を組み合わせ、どのように診断に至ったかという報告は、他の医師にとって貴重な情報となります。特定の症状に対して、複数の検査を段階的に実施し、最終的な診断に至るまでのプロセスは、臨床推論能力を高める上で非常に役立ちます。臨床現場では、診断に苦慮する症例に遭遇した際、過去の症例報告を参考に、新たな検査の選択肢を検討することもあります。
まとめ
耳鼻咽喉科における検査は、耳、鼻、喉の様々な症状の原因を特定し、適切な治療へと繋げるための重要なプロセスです。聴覚・平衡機能検査では、難聴やめまいの種類と程度を評価し、鼻・副鼻腔の検査では、アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎などの診断に内視鏡やアレルギー検査が不可欠です。喉頭・咽頭の検査では、声のかすれや嚥下障害の原因を特定し、喉頭ファイバースコープ検査が重要な役割を果たします。さらに、CTやMRIによる画像診断、そして病理検査による確定診断は、深部の病変や腫瘍性疾患の診断に不可欠です。これらの検査は、患者さんの症状や病態に合わせて選択され、専門医の経験と知識に基づいて総合的に判断されます。正確な診断は、効果的な治療への第一歩であり、患者さんのQOL(生活の質)向上に大きく貢献します。
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- Richard M Rosenfeld, Seth R Schwartz, C Ron Cannon et al.. Clinical practice guideline: acute otitis externa.. Otolaryngology–head and neck surgery : official journal of American Academy of Otolaryngology-Head and Neck Surgery. 2014. PMID: 24491310. DOI: 10.1177/0194599813517083
- Reginald F Baugh, Gregory J Basura, Lisa E Ishii et al.. Clinical practice guideline: Bell’s palsy.. Otolaryngology–head and neck surgery : official journal of American Academy of Otolaryngology-Head and Neck Surgery. 2014. PMID: 24189771. DOI: 10.1177/0194599813505967
- Richard M Rosenfeld, Jay F Piccirillo, Sujana S Chandrasekhar et al.. Clinical practice guideline (update): adult sinusitis.. Otolaryngology–head and neck surgery : official journal of American Academy of Otolaryngology-Head and Neck Surgery. 2015. PMID: 25832968. DOI: 10.1177/0194599815572097
- Ron B Mitchell, Sanford M Archer, Stacey L Ishman et al.. Clinical Practice Guideline: Tonsillectomy in Children (Update)-Executive Summary.. Otolaryngology–head and neck surgery : official journal of American Academy of Otolaryngology-Head and Neck Surgery. 2019. PMID: 30921525. DOI: 10.1177/0194599818807917

