心不全の薬物療法|4つの基本薬・利尿薬と副作用を解説

循環器内科医と患者が心不全の薬を一剤ずつ確認している診察イメージ
循環器内科|心不全の薬

心不全の薬物療法と副作用・安全確認

心不全のタイプと治療目的を分け、将来の悪化を減らす薬と、息切れ・むくみを軽くする薬、安全確認の違いを整理します。

最終更新 2026.09.05医学レビュー 2026.09.04
役割を知る薬の目的を分ける
組み合わせる少量から組み合わせる
安全を確かめる開始後も再評価
結論から

心不全の薬には、将来の悪化や入院を減らすことを目指す薬と、息苦しさやむくみを軽くする薬があります。心臓の押し出す力が低下したタイプ(HFrEF)では4種類の基本薬を組み合わせ、水分がたまった状態には利尿薬を使います。血圧、腎機能、カリウム、脈拍などを見ながら調整するため、自己中止や残薬の再開は避けてください。

このページで分かること
  • 薬は何のために使う?
  • どんな副作用で早めに連絡する?
  • 血圧低下や飲み忘れがあれば自己中止してよい?
最初に知っておきたい言葉
HFrEF(ヘフレフ)
心臓の血液を押し出す力が低下したタイプの心不全です。
HFpEF(ヘフペフ)
押し出す割合が保たれていても、心臓が広がりにくいなどの問題で起こる心不全です。
ARNI/ACE阻害薬/ARB
血圧やホルモンの働きを調整し、心臓と血管の負担を減らす薬のグループです。
β遮断薬
心拍を速める交感神経の働きを抑え、心臓を休ませる薬です。
MRA
体内の塩分・水分や心臓への負担に関わるホルモンの働きを抑える薬です。
SGLT2阻害薬
尿へ糖とナトリウムを排出する作用があり、心不全の悪化を減らす目的でも使う薬です。糖尿病がない人にも検討されます。
利尿薬
尿を増やして余分な水分を減らし、息苦しさやむくみを和らげる薬です。
01

薬の役割は「将来の悪化を減らす」「症状を軽くする」「原因を治す」

将来の悪化を減らす
心不全による死亡や入院を減らすことを目的に、使える条件を確認して複数の基本薬を組み合わせます。
息切れ・むくみを軽くする
利尿薬などで余分な水分を減らし、つらい症状を和らげます。
原因や一緒にある病気を治療する
高血圧、狭心症・心筋梗塞、弁膜症、心房細動、糖尿病、腎疾患などを並行して管理します。

同じ「心不全の薬」でも役割が異なります。症状が軽くなったことだけで、将来の悪化を減らす薬が不要になったとは判断しません。[1]

02

押し出す力が低下した型(HFrEF)は、4種類の基本薬を組み合わせる

4種類すべてが必要とは限りません。血圧、脈拍、腎機能、カリウム、ほかの病気を確認し、使えない条件がないか、無理なく続けられるかを見ながら選びます。

ARNI/ACE阻害薬/ARB

心臓と血管への負担を減らします。血圧、腎機能、カリウム、血管浮腫などを確認します。

β遮断薬

心拍を速める神経の働きを抑えます。安定期に少量から始め、脈拍、血圧、水分のたまり具合を確認します。

MRA

将来の心不全悪化を減らす目的で用います。高カリウム血症と腎機能を確認します。

SGLT2阻害薬

糖尿病の有無にかかわらず使用を検討します。脱水、感染症、ケトアシドーシスなどに注意します。

4薬を一つずつ目標量まで待ってから次へ進むとは限らず、状態に応じて早めに組み合わせ、続けられる範囲で調整します。DAPA-HFとEMPEROR-Reducedは、SGLT2阻害薬がHFrEFの心不全悪化・心血管イベントを減らす根拠を示しました。[1][3][4]

03

押し出す力が保たれた型(HFpEF)は、むくみと一緒にある病気を整える

HFpEFでは、利尿薬で水分のたまりを調整し、高血圧、心房細動、肥満、糖尿病、腎疾患、睡眠時無呼吸などを管理します。EMPEROR-PreservedとDELIVERは、LVEFが保たれた、または軽度低下した心不全で、SGLT2阻害薬が主に心不全入院を含む複合転帰を減らすことを示しました。[1][5][6][7]

ARNI、ARB、MRAなどは患者背景とLVEF、国内承認・適応を確認して検討します。HFrEFの処方をそのまま全員へ当てはめません。

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利尿薬はうっ血を軽くするが、体重だけで自己増減しない

ループ利尿薬などは、肺うっ血やむくみを減らし、症状を軽くする重要な薬です。一方、脱水、低血圧、腎機能悪化、ナトリウム・カリウム異常などが起こることがあります。生存改善を目的とする基本薬とは役割が異なります。[1]

早めに連絡する状態

尿が極端に少ない、強い口渇、立てないほどのふらつき、意識変化、動悸・筋力低下、嘔吐や下痢で薬が飲めない場合は、追加服用をせず処方元へ連絡してください。

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副作用は薬ごとに違うため、症状・血圧・採血を組み合わせる

血圧・脈拍
ふらつき、失神、強いだるさ、徐脈などを確認します。
腎機能・電解質
クレアチニン、eGFR、カリウム、ナトリウムを導入・増量後に確認します。
体液量
体重、むくみ、呼吸、尿量、口渇から、うっ血と脱水の両方を確認します。
併用薬
NSAIDs、市販薬、サプリメント、糖尿病薬などを含め相互作用を確認します。

具体的な注意点は製品ごとに異なるため、処方時の説明とPMDAの最新添付文書を確認します。[2]

06

薬の開始・増量は、我慢して続けることでも自己中止することでもない

心不全薬は、血圧や腎機能が許す範囲で段階的に開始・調整します。STRONG-HF試験は、急性心不全後の適格患者に対し、厳密な監視を伴う迅速な治療最適化の有用性を示しましたが、家庭での自己増量を支持する研究ではありません。[8]

循環器内科医と患者が心不全の薬を一剤ずつ確認している診察イメージ
図|心不全の薬は目的と安全確認を一剤ずつ整理する 血圧、腎機能、電解質、症状、飲み方を確認しながら、続けられる組み合わせを検討します。写真は服薬確認場面のイメージです。
診察室から

日々の循環器内科診療では、薬の名前だけでなく「何を目的に、いつ飲み、開始後に何が変わったか」を一剤ずつ並べます。血圧が低めでも症状なく続けられる場合と、数値は同じでも立ちくらみや食事低下が問題になる場合があり、検査値と生活への影響を合わせて調整します。

根拠の限界として、主要試験の対象や併用薬は実際の患者さん全員を網羅しません。この記事は処方選択や用量変更の指示ではありません。飲み忘れ、発熱・下痢・嘔吐、手術、妊娠、腎機能変化がある場合は、薬ごとの対応を処方元へ確認してください。

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よくある質問

SGLT2阻害薬は糖尿病がなくても使いますか?

心不全の型や腎機能などにより、糖尿病がなくても検討されます。適応と安全性を確認して処方します。

血圧が低いので心不全薬をやめてもよいですか?

自己中止しないでください。症状、血圧の推移、腎機能、ほかの薬を確認し、優先順位や用量を主治医が調整します。

むくみが取れたら利尿薬は不要ですか?

うっ血の状態により減量・継続を判断します。体重や見た目だけで中止すると再増悪する場合があります。

市販の痛み止めを飲んでもよいですか?

NSAIDsなどは腎機能や体液貯留へ影響することがあります。製品名を薬剤師・医師へ伝えて確認してください。

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参考文献