ORTHOPEDICS · PATIENT GUIDE

膝の手術を考えるときの選択肢

痛みの強さに加えて、取り戻したい生活と、手術後の負担を一緒に考えます。

医学レビュー:2026年9月19日更新日:
相談生活への支障を伝える
比較手術ごとの目的を見る
準備回復中の暮らしを考える
最初に押さえたいこと

膝の手術は、診断と生活への支障、これまでの治療への反応を合わせて検討します。人工関節、骨切り術、関節鏡は目的と適応が異なり、画像の変形や年齢だけで一律に決めるものではありません。期待する改善に加えて合併症、回復までの生活、将来の再手術の可能性を聞き、手術以外の選択肢とも比較します。

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相談する目安は、痛みと生活への影響

歩行や階段が強く制限される、睡眠や仕事に影響するなどの症状があり、運動・薬・補助具などで十分な改善が得られないときは、手術の相談が選択肢になります。持病などで手術以外の治療が使いにくい場合も含め、個別に判断します。[3]

「注射を何回したら手術」「一定の年齢なら手術」といった共通の境界はありません。診断、変形の部位、脚の向き、動く範囲、筋力、全身状態を確認します。症状が急に変わった場合は、慢性の関節症の進行と決めず、別の原因も調べます。[1]

すでに手術を提案されていても、今すぐ必要なのか、待つ場合に何を確認するのかを聞けます。感染や一部の外傷など急ぐ状態は別ですが、予定手術では、別の専門医の意見を聞くことも可能です。

診察室から

手術の相談では、「まだ我慢できますか」だけでなく、何を諦めるようになったかを聞きます。買い物、仕事、介護などの制限と、手術後に必要な支援は人によって違うためです。画像の説明と同じくらい、退院後の階段や通院方法を具体的に確認し、現実的な目標を共有します。

膝の模型を使って医師が患者と家族に手術の選択肢を説明する様子
手術の相談では、期待する改善と、回復中に必要な生活の支援を整理します。(イラスト)
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人工関節・骨切り術・関節鏡の違い

選択肢を比較

人工膝関節置換術

対象
関節の傷みが強く、痛みや機能の低下が生活を大きく妨げる場合など。
根拠・役割
傷んだ関節面を人工の部品に置き換え、痛みと動作の改善を目指します。全体を置換する方法と一部を置換する方法があります。
注意・限界
感染、血栓、動きの制限、残る痛みなどの危険があります。将来の再手術が必要になることもあります。
選択肢を比較

骨切り術

対象
傷みの部位や脚の向きなどの条件が合い、自分の関節を残す方法が適する場合。
根拠・役割
骨の向きを調整して、膝の一部に集中する負担を移します。
注意・限界
骨がつくまでの管理が必要です。体重をかける時期、固定材料の扱い、将来の人工関節の可能性を確認します。
選択肢を比較

関節鏡手術

対象
処置すべき損傷など、関節内に明確な対象がある場合。
根拠・役割
小さな切開からカメラなどを入れ、損傷の修復・処置をします。半月板などの状態に応じて方法が変わります。
注意・限界
膝関節症や加齢に伴う半月板変化に対する、一律の「掃除」の手術は勧められません。

膝関節症の代表的な手術には人工関節や骨切り術があります。どちらが適するかは、年齢だけでなく変形の範囲、活動、膝の安定性などを含めて検討します。[1]

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期待できる効果と、保証できないこと

人工膝関節の適応がある人を対象とした比較試験では、手術と非手術治療を組み合わせた群で、非手術治療だけの群より痛みや機能が改善しました。一方で健康上の重大な問題も多く、改善の大きさだけで選べるわけではありません。[4]

人工関節は長く使える場合がありますが、一生交換が不要と保証することはできません。長期の複数の研究をまとめた検討では再手術に至る例もあり、感染、緩み、摩耗などを含め、術後の経過をみる必要があります。「再手術を受けていない割合」は「痛みが全くない割合」とも異なります。[5]

術前と同じ可動域に戻ること、正座ができること、どんなスポーツにも復帰できることを一律には約束できません。自分が望む動作について、可能性と制限を一つずつ確認します。

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半月板の手術は、けがと加齢の変化を分ける

加齢に伴う膝の変化に対する関節鏡手術は、実際の処置を行わない模擬手術などと比べ、痛みや機能への重要な上乗せ効果が乏しいという複数の研究をまとめた検討があります。MRIに半月板の変化があるだけで、切除手術が必要になるわけではありません。[6]

中高年の変性半月板損傷を対象にしたESCAPE試験では、運動療法の長期成績は関節鏡による部分切除に劣りませんでした。ただし、急性外傷で膝が伸びなくなる損傷などへ、そのまま当てはめることはできません。[8]

外傷による半月板損傷では、損傷の場所やずれ、治癒の見込みに応じて、縫って修復する方法などを検討します。動きが物理的に妨げられている場合は、早めの専門医評価が必要です。[7]詳しくは半月板損傷の治療の考え方で整理しています。

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術前に持ち帰りたい質問

  • この手術を勧める理由と、他の方法を選びにくい理由は何か。
  • 自分の痛み・歩行・仕事には、どのような改善が見込めるか。
  • 自分の持病や服薬で増える危険はあるか。
  • 入院、歩行補助具、通院リハビリの予定はどうなるか。
  • 運転、仕事、家事、介護、運動は、どの条件で再開できるか。
  • 費用の見積もり、利用できる制度、追加費用はどこに相談するか。

糖尿病、心臓・肺・腎臓の病気、感染、血栓の既往、飲んでいる薬、アレルギーなどを伝えます。歯科や皮膚の治療中の問題も含めて申告し、何を術前に整えるべきか確認します。自己判断で薬を止めたり、急に無理な減量を始めたりせず、担当の医療チームと準備します。

予定を聞くときは、「一般的には何週間」だけでなく、再開を判断する条件を聞きます。立ち仕事と座り仕事、階段の多い自宅と平屋では必要な支援が違います。家族が手伝える期間や、移動手段を早めに共有してください。

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回復中の暮らしも治療計画に入れる

退院できる時期と、痛みや腫れが落ち着いて活動が広がる時期は同じではありません。術式や経過に応じて、歩行、関節を動かす練習、筋力練習を進めます。別の人の回復日程をそのまま自分の目標にしないことが大切です。

自宅では、つまずきやすい物、寝室からトイレまでの移動、浴室や玄関の段差を確認します。補助具や手すりを検討する場合は、退院前に理学療法士などと相談すると準備しやすくなります。傷の手当て、入浴、服薬、受診日を紙などで確認しておきます。

術後の急な変化は、予定の再診を待たない

急な息苦しさ・胸の痛みは119へ。傷の赤みや排液、発熱、急に増える膝やふくらはぎの痛み・腫れは、手術した医療機関へ速やかに連絡してください。[2]

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迷うときは、治療を続ける場合も具体化する

手術を見送る場合も、「様子をみる」で終えず、運動、薬、補助具、再診の時期と、前倒しで相談する変化を決めます。希望する活動を続けられるか、治療の負担が増えていないかを確認し、必要に応じて選択を見直します。

手術を選ぶ場合も、判断の理由を自分の言葉で説明できるか確かめます。膝関節症の治療全体に戻り、得たい改善と受け入れられる負担を整理すると、診察で相談しやすくなります。

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よくある質問

手術の説明に家族も同席できますか?

本人が希望する場合は、医療機関に同席の方法を相談できます。退院後の介助や通院についても話せるため、手伝う人が聞きたいことを事前にまとめると役立ちます。

一人暮らしでも手術を受けられますか?

一人暮らしだけで適否は決まりません。退院後の移動、買い物、食事、通院を具体的に伝え、リハビリや生活支援、退院先について早めに相談してください。

別の医師の意見を聞くとき、何を準備しますか?

紹介状、画像、検査結果、これまでの治療経過を用意できるか相談します。予定手術を待つ間の注意点と、どの症状なら早く連絡するかも確認しておきます。

手術費用はどこで確認できますか?

病院の医療相談窓口や会計、加入している保険者へ相談できます。自己負担の見込みに加え、入院中の費用、退院後のリハビリ・通院費、利用できる制度を確認します。

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参考文献

本記事は一般的な医療情報であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。症状、既往歴、服薬、妊娠などによって適切な対応は異なります。急な強い腫れ・熱感、けが後の歩行困難、強い全身症状は予約を待たず医療機関へ連絡してください。