ORTHOPEDICS · PATIENT GUIDE

膝の痛みの原因と受診目安

「どこが痛いか」に加えて、いつ始まり、どんな動作が難しいかを確認します。

監修日:2026年9月19日更新日:
最初急な腫れと外傷を確認
整理場所・経過・動作を伝える
選択原因に合う治療へ
最初に押さえたいこと

膝の痛みは、変形性膝関節症、半月板や靱帯の損傷、炎症、骨折などで起こります。場所だけでは原因を決められません。急に腫れて熱を持つ、けがの後に体重をかけられない場合は早く受診します。長引く痛みでは歩行や階段への影響を伝え、診察から必要な検査と治療を選びます。

01

最初に、今日の受診が必要かを確認する

急な赤み・熱・強い腫れは当日中に相談

発熱があってもなくても、急に腫れて熱を持つ膝では感染などを確認する必要があります。注射・手術の後、糖尿病がある場合や免疫を抑える薬の使用も伝えます。[2]

転んだ後に体重をかけられない、膝が変形している、足先が冷たい・しびれる場合も早い評価が必要です。変形や血流の異常を疑う症状は救急へ連絡し、安全に移動できない場合は救急要請を相談します。

膝を曲げ伸ばしして骨折の有無を試したり、歩けるから骨折ではないと判断したりしないでください。外傷後の画像検査を選ぶための判断基準はありますが、医療者が診察で使うものです。靱帯損傷や感染を除外する家庭用テストではありません。[3]

02

痛みの始まり方から、調べる原因を整理する

ここでは主に成人の膝の痛みを扱います。子ども、人工関節のある人、手術後の人は、この記事の一般的な進め方をそのまま当てはめず、担当医へ状態を伝えてください。膝以外の関節もつらい場合は、関節の痛み・腫れの受診と治療も参考になります。

転倒・ひねりけがの後から痛む

骨折、靱帯、半月板などの損傷を考えます。直後の腫れ、膝崩れ、伸ばせない状態も伝えます。

徐々に歩き始めや階段で痛む

関節の変化や周囲の腱などを評価します。年齢だけで変形性膝関節症と決めず、診察で確かめます。

急な腫れ熱や赤みが加わる

感染、結晶による炎症、出血などを考えます。けががない場合も、初めての強い腫れは相談が必要です。

症状が広い腰・股関節・脚全体もつらい

膝以外の部位からの影響や神経・血流なども診察します。しびれや足の色の変化を伝えます。

膝の内側が痛むことは変形性膝関節症でも見られますが、半月板や周囲の腱など別の原因もあります。お皿の前、外側、膝の裏といった場所は大切な情報でも、場所と病名は一対一には対応しません。[8]

長く同じ症状があった人でも、今回の急な悪化は別に評価します。「以前と同じ病名があるから」と新しい腫れや熱を説明し切らず、始まった時刻や前日との違いを伝えます。両膝の場合は、どちらが先か、腫れの程度が同じかも確認します。

03

受診では、歩行・階段・睡眠への影響を伝える

痛みの強さだけでなく、何をすると困るかが治療の目標になります。買い物の途中で休む、駅の階段を下りにくい、椅子から立つとき手が必要など、日常の場面を一つ挙げてください。

いつもできる距離を無理に測り直す必要はありません。普段の移動でどこまで行けたか、帰り道ではどうだったかを伝えます。痛みを増やす動作の動画を撮るために、危険な姿勢を再現することも避けます。

診察では歩き方、膝の腫れや熱、曲げ伸ばし、押したときの痛み、筋力や安定性などを確認します。必要に応じて股関節や腰、神経・血流も調べ、膝の画像だけで評価を終えないようにします。[1]

診察室から

膝の痛みを診るときは、階段の上りと下り、椅子から立つとき、歩き始めのどこがつらいかを分けて聞きます。杖や手すりを使った場合の変化も、負担を減らす方法を考える材料になるためです。動作の特徴だけでは病名を決めず、腫れ、関節の動き、筋力と合わせて評価します。

手すりを使い、膝の状態を確かめながら階段を移動する男性
膝の痛みは、階段や立ち上がりなど、困る動作を具体的に伝えると相談しやすくなります。(イラスト)
04

画像検査は、調べたいことに合わせて選ぶ

選択肢を比較

X線(レントゲン)

対象
骨折や骨の形、関節の変化を調べたい場合
根拠・役割
骨の配列や関節の隙間を評価します。慢性の膝痛で画像が必要な場合は、最初の検査になることが多い方法です。[7]
注意・限界
半月板や靱帯を直接詳しく見る検査ではありません。撮り方や姿勢でも得られる情報が変わります。
選択肢を比較

MRI・超音波

対象
診察で疑う組織の変化を追加で調べたい場合
根拠・役割
MRIは半月板・靱帯・骨の内部、超音波は水や腱などの評価に役立つ場面があります。[7]
注意・限界
全員に両方を行うわけではありません。MRI所見だけで痛みの原因や手術の必要性は決まりません。
選択肢を比較

採血・関節液の検査

対象
感染・炎症・結晶などを疑う場合
根拠・役割
関節にたまった液を採って細菌や結晶などを調べることがあります。[2]
注意・限界
採血が正常でも感染を完全には否定できません。画像検査だけでは答えが出ない場合があります。

中高年を対象とした研究では、症状がない膝にも半月板の損傷が見つかりました。画像に書かれた単語だけで「ここが痛みの原因」「手術が必要」と決めず、左右、部位、経過と合うかを確認します。[4]

詳しい目的と受ける前の確認点は、膝のレントゲン・MRIの解説で整理しています。以前の画像があれば、撮影日とともに受診先へ伝えると、経過の比較に役立ちます。

05

診断後は、生活の目標に沿って治療を選ぶ

  1. 急ぐ原因を先に扱う

    骨折や感染、強い不安定性などでは、それぞれに必要な治療を優先します。

  2. 原因と目標を共有する

    病名だけでなく、歩行や睡眠など何を改善したいかを決めます。

  3. 基本の治療を調整する

    状態に合う運動、生活調整、薬、補助具などを組み合わせます。

  4. 効果と負担を再評価する

    続けられた内容、生活の変化、副作用を確認し、必要なら方法を変えます。

  5. 適応があれば手術を比較する

    症状と病変、本人の希望、治療経過から判断し、退院後の支援も確認します。

変形性膝関節症では、運動や生活調整が治療の土台になります。運動の研究は短期の痛みや機能の改善を支持しますが、改善の大きさには幅があり、誰にも同じメニューや効果を保証するものではありません。[6]

加齢に伴う半月板損傷を対象にした比較試験では、運動療法は5年後の膝の機能について部分切除術に劣らない結果でした。一方、外傷後に膝が物理的に伸びない状態などは同じ条件ではなく、早い診察が必要です。[5]

治療の反応が乏しいときは、次の薬や注射を加える前に、何を目標に、どの期間、どの程度実施したかを整理します。痛みの軽減と、歩ける範囲が広がることは別の指標なので、両方を確かめます。

06

家での工夫は、無理に動かさず続けられる範囲から

原因がはっきりしない急な腫れや外傷では、自己流の強いストレッチやスクワットを始めず受診を優先します。慢性的な膝関節症と確認された場合は、ずっと動かさないのではなく、状態に合わせて活動を調整します。[1]

長く歩く代わりに短く分ける、立ちっぱなしの家事に椅子を使う、手すりのある経路を選ぶなど、困る動作の負担を減らす方法があります。杖や装具は高さ・使う側・締め方が重要なので、担当者に合わせてもらいます。

体重への対応が必要な場合も、痛みを本人の努力不足に結びつける必要はありません。食事、筋力、持病を一緒に考え、急な食事制限で筋肉が落ちないよう、続けられる方法を相談します。[1]

薬は持病や併用薬で使えるものが変わります。処方薬に市販薬を足す場合は成分が重ならないか確認し、薬の種類・効いた時間・眠気や胃の不快感などを再診時に伝えます。

07

知りたい内容に合わせて次の解説を選ぶ

病名がまだ分からない段階では、すべての記事を読む必要はありません。まず受診の急ぎ方と診察で伝えることを確認し、診断や治療の説明を受けた後に、必要な選択肢を読み直す使い方ができます。

肩の痛みも気になる場合は、肩の痛みの原因と受診・治療の選び方で、肩に合う受診目安や詳しい解説を確認できます。

08

様子を見る場合も、再診の条件を決める

仕事や家事で休みにくい場合も、その事情を伝えてください。運動、薬、移動の工夫を、実際の生活に合う形へ調整する材料になります。通院の頻度や自宅でできることを確認し、続けにくい計画のまま我慢せず、担当者と実行可能な方法を考えます。

診察の後は、運動や仕事の範囲、治療を見直す時期、急いで連絡する変化を確認します。検査をしない場合や、まず薬・生活調整を試す場合も、次の確認が不要という意味ではありません。

再診では、痛みが残っていることだけでなく、階段や歩行がどう変わったかを共有します。実施できなかった運動があれば、理由をそのまま伝えてください。時間、痛み、転倒への不安などに応じて方法を変える材料になります。

膝が急に赤く腫れる、発熱する、けがの後に急に歩けなくなるなどの変化があれば予約日を待ちません。以前の画像で変形性膝関節症と診断されていても、新しい症状は別に評価が必要です。[2]

09

よくある質問

整形外科へ行くとき、どのような服装がよいですか?

膝の上まで無理なく出せる服装が診察に役立ちます。着替えの貸し出しがあるか、移動の介助が必要かなど、不安な点は予約時に確認できます。

両膝が痛いときは、痛いほうだけ説明すればよいですか?

両方の症状を伝えてください。どちらが先か、腫れや痛む動作が同じか、片側をかばって歩いているかも診察に役立ちます。

通勤で階段を避けられない場合はどう相談しますか?

階段の数や荷物、手すりの有無などを伝え、経路、休憩、補助具、仕事の負担を相談します。受診までに強い症状がある場合は無理に通勤せず、医療機関へ連絡してください。

受診までの痛みを記録する必要がありますか?

必須ではありません。始まった時期と、特に困る動作を一つ伝えるだけでも構いません。急な腫れやけがでは、記録より連絡と受診を優先します。

10

参考文献

本記事は一般的な医療情報であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。症状、既往歴、服薬、妊娠などによって適切な対応は異なります。急な強い腫れ・熱感、けが後の歩行困難、強い全身症状は予約を待たず医療機関へ連絡してください。