- ✓ レーザーは特定の波長の光を増幅・指向性を持たせたもので、医療分野で多岐にわたる応用がされています。
- ✓ 医療用レーザーにはCO2、Nd:YAG、アレキサンドライトなど多様な種類があり、それぞれ異なる波長と特性を持ちます。
- ✓ 選択的光熱融解やフラクショナル技術など、作用原理を理解することで治療効果やリスクを適切に評価できます。
レーザーは、現代医療において診断から治療まで幅広い分野で不可欠なツールとなっています。しかし、「レーザー治療」と一言で言っても、その種類や作用原理は多岐にわたり、それぞれ異なる特性を持っています。この記事では、レーザーの基本的な概念から、医療で用いられる主なレーザーの種類、そしてその作用原理までを専門医の視点からわかりやすく解説します。
レーザーとは?その基本的な定義と特徴

レーザーとは、Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation(誘導放出による光の増幅)の頭文字をとったもので、特定の波長の光を増幅して放出する装置、またはその光自体を指します[1]。一般的な光とは異なり、レーザー光には主に以下の3つの特徴があります。
- 単色性(Monochromaticity):特定の波長(色)の光のみで構成されているため、非常に純粋な色をしています。
- 指向性(Directionality):光がほとんど拡散せず、まっすぐに進む性質があります。これにより、遠くまで光を届けたり、狭い範囲にエネルギーを集中させたりすることが可能です。
- コヒーレンス(Coherence):光の波の位相(タイミング)が揃っているため、干渉しやすく、非常に高いエネルギー密度を持つことができます。
これらの特性により、レーザーは医療分野で精密な切開、凝固、蒸散、色素破壊など、多様な目的で利用されています[4]。日常診療では、患者さんから「レーザーって熱い光なんですか?」と質問されることが多く、光のエネルギーが集約されていることを丁寧に説明するようにしています。
- 波長
- 光の波の長さを示し、ナノメートル(nm)で表されます。波長によって光が物質に吸収される度合いが異なり、これがレーザーの医療応用において非常に重要な要素となります。
レーザー光は強力なエネルギーを持つため、適切な保護具なしでの使用は目に損傷を与えるリスクがあります。医療現場では、患者さんだけでなく医療従事者も適切な保護メガネを着用することが義務付けられています。
医療用レーザーの種類と波長:CO2・Er:YAG・Nd:YAG・アレキサンドライト・ルビー
医療で用いられるレーザーは、その発振媒体や波長によって多種多様な種類があります。それぞれのレーザーは特定の波長を持ち、その波長によって体内の特定の物質(色素、水分など)に選択的に吸収される性質を利用して治療効果を発揮します[3]。ここでは主要な医療用レーザーの種類と、その特徴について解説します。
CO2レーザー(炭酸ガスレーザー)
CO2レーザーは、波長10,600nmの赤外線領域のレーザーで、水に非常に良く吸収される特性を持っています。人体の約70%は水分であるため、皮膚組織の表面を薄く蒸散させたり、切開したりするのに適しています。ほくろやイボの除去、皮膚の表面を削るアブレーション治療などに用いられます。臨床現場では、CO2レーザーで小さな病変を除去した際に「痛みも少なく、きれいに取れてよかった」とおっしゃる患者さんが多く見られます。
Er:YAGレーザー(エルビウムヤグレーザー)
Er:YAGレーザーは、波長2,940nmのレーザーで、CO2レーザーと同様に水への吸収率が高いですが、CO2レーザーよりもさらに表層に作用し、熱損傷が少ないのが特徴です。そのため、より繊細なアブレーションや、皮膚の再生を促すフラクショナルレーザー治療に利用されます。ダウンタイムを抑えつつ、皮膚のハリや小じわの改善を目指す治療でよく使われます。
Nd:YAGレーザー(ネオジムヤグレーザー)
Nd:YAGレーザーは、波長1,064nmの近赤外線レーザーで、皮膚の深部まで到達する特性があります。ヘモグロビンやメラニンにも吸収されますが、水への吸収は比較的少ないため、血管病変(赤あざなど)や深在性の色素性病変(ADMなど)の治療に用いられます。また、ロングパルスモードでは脱毛にも応用されます。日々の診療では、「以前からあるシミがなかなか消えなくて」と相談される方に、Nd:YAGレーザーによる治療を検討することが少なくありません。
アレキサンドライトレーザー
アレキサンドライトレーザーは、波長755nmのレーザーで、メラニン色素に非常に良く吸収される特性を持っています。そのため、脱毛治療やシミ、そばかす、あざなどの色素性病変の治療に広く用いられます。特に日本人を含むアジア人の肌質に適しているとされ、多くの美容皮膚科で導入されています。
ルビーレーザー
ルビーレーザーは、波長694nmのレーザーで、アレキサンドライトレーザーと同様にメラニン色素への吸収率が高いですが、より短いパルス幅で高いピークパワーを出すことが可能です。これにより、深在性の色素斑や刺青(タトゥー)の除去に効果を発揮します。タトゥー除去の治療では、「何回か治療を受けているけど、なかなか薄くならない」と訴えて受診される患者さんが増えており、レーザーの種類や設定の検討が重要になります。
| レーザーの種類 | 波長(nm) | 主なターゲット | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| CO2レーザー | 10,600 | 水 | ほくろ・イボ除去、皮膚の蒸散 |
| Er:YAGレーザー | 2,940 | 水 | 皮膚の再表面化、フラクショナル治療 |
| Nd:YAGレーザー | 1,064 | ヘモグロビン、メラニン | 血管病変、深在性色素斑、脱毛 |
| アレキサンドライトレーザー | 755 | メラニン | 脱毛、シミ・そばかす |
| ルビーレーザー | 694 | メラニン | 深在性色素斑、刺青除去 |
レーザーの作用原理:選択的光熱融解・フラクショナル技術・ピコ秒技術

医療用レーザーがどのようにして体内で作用し、治療効果をもたらすのかを理解することは、適切な治療選択と安全な施術のために不可欠です。主な作用原理として、選択的光熱融解、フラクショナル技術、ピコ秒技術が挙げられます。
選択的光熱融解とは?
選択的光熱融解(Selective Photothermolysis)とは、レーザー光が特定のターゲット(色素、血管、水分など)にのみ選択的に吸収され、そのターゲットだけを熱で破壊する原理です[4]。周囲の正常な組織にはほとんど影響を与えないため、副作用を最小限に抑えつつ、病変部のみを治療することが可能です。
- ターゲット(発色団):メラニン(シミ、脱毛)、ヘモグロビン(血管腫)、水(皮膚の蒸散、引き締め)などがあります。
- 適切な波長:ターゲットに最も吸収されやすい波長のレーザーを選択します。
- 適切なパルス幅:ターゲットが熱を周囲に拡散する前に、十分なエネルギーを与えて破壊できる短い時間(パルス幅)を設定します。
この原理は、シミ治療や脱毛、血管病変の治療の根幹をなしており、実臨床では、患者さんの肌の色調や病変の種類に応じて、最適なレーザー機器と設定を選ぶことが非常に重要になります。
フラクショナル技術とは?
フラクショナルレーザーは、レーザー光を微細な点状に分割して照射する技術です。これにより、皮膚に多数の微細な熱損傷部位(マイクロゾーン)を作り出し、周囲の正常な組織を残しながら、皮膚の自己修復能力を活性化させます。この技術は、ニキビ跡の凹凸、毛穴の開き、小じわ、肌質の改善などに効果が期待されます。日常診療では、肌の凹凸や毛穴の悩みを抱える患者さんから「肌を入れ替えたい」という相談を受けることがあり、フラクショナルレーザーがその選択肢の一つとなります。
ピコ秒技術とは?
ピコ秒レーザーは、従来のナノ秒レーザーよりもさらに短い「ピコ秒(1兆分の1秒)」という極めて短い時間でレーザーを照射する技術です。この超短パルスにより、光熱作用ではなく、光音響作用(衝撃波)によってターゲット色素を微細な粒子に破砕します[2]。これにより、熱による周囲組織へのダメージを最小限に抑えつつ、より効率的に色素を破壊できるため、シミやそばかす、肝斑、刺青などの治療において、より高い効果と短いダウンタイムが期待されています。筆者の臨床経験では、従来のレーザーで取りきれなかった薄いシミや、難治性の肝斑に対してピコ秒レーザーが有効であったケースを多く経験しています。
レーザー治療のダウンタイム一覧:機種別・出力別の目安
レーザー治療を受ける上で、多くの方が気になるのが「ダウンタイム」です。ダウンタイムとは、治療後に生じる赤み、腫れ、かさぶた、色素沈着などが回復するまでの期間を指します。レーザーの種類や出力、治療部位、個人の体質によって大きく異なります。ここでは、主要なレーザー治療におけるダウンタイムの目安について解説します。
アブレーション系レーザー(CO2、Er:YAG)のダウンタイム
CO2レーザーやEr:YAGレーザーを用いた蒸散・切除治療では、病変部が削られるため、治療直後から赤みや浸出液(じゅくじゅく)が生じます。その後、数日〜1週間程度でかさぶたになり、1〜2週間でかさぶたが剥がれ落ちます。かさぶたが剥がれた後も、数週間〜数ヶ月間は赤みが残ることが多く、場合によっては炎症後色素沈着が生じることもあります。実際の診療では、ほくろ除去後の患者さんには、最低でも1ヶ月間は軟膏と保護テープによるケアを継続し、紫外線対策を徹底するよう指導しています。
色素系レーザー(アレキサンドライト、ルビー、Nd:YAG)のダウンタイム
シミやあざの治療に用いられる色素系レーザーでは、治療直後に照射部位が一時的に白っぽくなる「ホワイトニング現象」が見られることがあります。その後、数時間で赤みや腫れが生じ、数日後には微細なかさぶたや黒い点々(マイクロクラスト)が形成されます。これらの変化は1〜2週間程度で自然に剥がれ落ち、その後は一時的に色素沈着(炎症後色素沈着)が生じることがあります。この色素沈着は通常、数ヶ月かけて徐々に薄くなりますが、個人差が大きいため、経過観察が重要です。診察の場では、「治療後、シミが一時的に濃くなったように見えることがある」と事前に説明することで、患者さんの不安を軽減するように心がけています。
フラクショナルレーザーのダウンタイム
フラクショナルレーザーのダウンタイムは、レーザーの種類(アブレーション型か非アブレーション型か)や出力によって大きく異なります。アブレーション型(Er:YAGフラクショナルなど)では、治療後に赤み、腫れ、点状のかさぶたが生じ、数日〜1週間程度で回復します。非アブレーション型(Nd:YAGフラクショナルなど)では、赤みや腫れは比較的軽度で、数日程度で治まることが多いです。筆者の臨床経験では、治療開始1ヶ月ほどで肌のキメやハリの改善を実感される方が多いですが、ダウンタイムの程度や回復期間には個人差が大きいと感じています。
ダウンタイムを軽減するための注意点
- 冷却:治療直後の冷却は、赤みや腫れを軽減するのに有効です。
- 保湿:皮膚のバリア機能を保つために、保湿を徹底することが重要です。
- 紫外線対策:治療後の皮膚は非常にデリケートなため、徹底した紫外線対策が色素沈着の予防に不可欠です。
- 摩擦を避ける:治療部位を刺激しないよう、優しくケアすることが大切です。
レーザー治療の安全性とリスク:副作用や注意すべき点は?

レーザー治療は、その精密な作用により高い効果が期待できる一方で、医療行為である以上、いくつかのリスクや副作用が存在します。患者さんが安心して治療を受けられるよう、これらの点を十分に理解しておくことが重要です。
一般的な副作用とは?
レーザー治療に伴う一般的な副作用には、以下のようなものがあります。
- 赤み・腫れ:治療直後から数日間続くことが一般的です。冷却や適切な軟膏で管理します。
- 痛み:照射時に輪ゴムで弾かれるような痛みを感じることがありますが、麻酔クリームや冷却で軽減できます。
- かさぶた・水疱:特にアブレーション系レーザーや高出力治療で生じやすく、適切なケアが必要です。
- 色素沈着(炎症後色素沈着):治療後に一時的にシミが濃くなったように見えることがあります。これは、炎症反応によってメラニンが過剰に生成されるためで、通常は数ヶ月で自然に改善しますが、紫外線対策が不十分だと長引くことがあります。
- 色素脱失(白斑):稀に、メラニン色素が過度に破壊され、治療部位が白く抜けることがあります。特に色黒の肌の方や、高出力での治療でリスクが高まる可能性があります。
臨床現場では、治療前にこれらの可能性を十分に説明し、患者さんが不安なく治療に臨めるよう努めています。特に色素沈着は患者さんの満足度に大きく影響するため、治療後のスキンケア指導は非常に重要なポイントになります。
レーザー治療を受ける上での注意点
安全にレーザー治療を受けるためには、以下の点に注意が必要です。
- 事前のカウンセリング:医師による詳細な診察とカウンセリングを受け、自身の肌質、病変の種類、期待できる効果、リスクについて十分に理解することが重要です。既往歴や内服薬についても正確に伝える必要があります。
- 日焼け:治療前の日焼けは、色素沈着のリスクを高めるため避けるべきです。治療後も厳重な紫外線対策が求められます。
- 妊娠・授乳中:一般的に、妊娠中や授乳中のレーザー治療は推奨されません。
- 特定の疾患:光線過敏症、ケロイド体質、てんかんなどの疾患がある場合は、治療が受けられないことがあります。
- 医師の経験と技術:レーザー治療は、機器の性能だけでなく、施術を行う医師の知識と経験が結果を大きく左右します。信頼できる医療機関を選ぶことが大切です。
実際の診療では、問診で患者さんの肌の状態、生活習慣、過去の治療歴などを詳細に確認し、レーザー治療が最適かどうか、またどの種類のレーザーが最も効果的で安全かを判断します。特に、肝斑や炎症後色素沈着の既往がある患者さんには、レーザーの設定を慎重に調整し、治療後のフォローアップを密に行うようにしています。
レーザー治療は、個々の状態によって効果やリスクが異なります。インターネット上の情報だけでなく、必ず専門医と相談し、ご自身の状態に合った治療計画を立てることが最も重要です。
まとめ
レーザーは、その単色性、指向性、コヒーレンスといった独自の特性を活かし、現代医療において多岐にわたる応用がされている画期的な技術です。CO2、Er:YAG、Nd:YAG、アレキサンドライト、ルビーなど、様々な種類のレーザーが存在し、それぞれが異なる波長とターゲットを持つことで、特定の病変に対して選択的に作用します。選択的光熱融解、フラクショナル技術、ピコ秒技術といった作用原理を理解することは、レーザー治療の効果と安全性を深く理解する上で不可欠です。ダウンタイムや副作用のリスクも存在するため、治療を受ける前には専門医による十分なカウンセリングと適切な情報提供が求められます。レーザー治療を検討する際は、自身の状態に最も適した治療法を選択するためにも、信頼できる医療機関で相談することが大切です。
📱 【スマホで完結】お薬のオンライン処方なら東京オンラインクリニック
「忙しくて病院に行く時間がない」「まずは薬を試してみたい」という方には、オンライン診療がおすすめです。東京オンラインクリニックなら、スマホ一つで診察から処方まで完結。最短即日でお薬をご自宅にお届けします。
オンライン診療を予約する(初診料無料)よくある質問(FAQ)
- Inja Bogdan Allemann, Joely Kaufman. Laser principles.. Current problems in dermatology. 2011. PMID: 21865794. DOI: 10.1159/000328236
- Hoon Chung, Tianhong Dai, Sulbha K Sharma et al.. The nuts and bolts of low-level laser (light) therapy.. Annals of biomedical engineering. 2012. PMID: 22045511. DOI: 10.1007/s10439-011-0454-7
- R M Herd, J S Dover, K A Arndt. Basic laser principles.. Dermatologic clinics. 1997. PMID: 9189674. DOI: 10.1016/s0733-8635(05)70446-0
- Lisa Carroll, Tatyana R Humphreys. LASER-tissue interactions.. Clinics in dermatology. 2006. PMID: 16427500. DOI: 10.1016/j.clindermatol.2005.10.019
- ディフェリン(アダパレン)添付文書(JAPIC)
- ベピオ(過酸化ベンゾイル)添付文書(JAPIC)
- ダラシン(クリンダマイシン)添付文書(JAPIC)

