産婦人科 / 妊娠合併症

トキソプラズマとCMV
妊娠中の予防と検査

妊娠中のトキソプラズマとサイトメガロウイルス(CMV)について、食事・子どもの世話での予防、抗体陽性の意味、追加検査や国内治療の考え方、出生後へ伝える情報を整理します。

更新日 2026-10-27監修日 2026-10-27
POINT 1陽性だけで胎児への影響は確定しない
POINT 2毎日の具体的な予防を続ける
POINT 3母体と赤ちゃんの治療を混同しない
結論から

トキソプラズマとサイトメガロウイルス(CMV)は、妊娠中の感染で胎児に影響することがあるため、食事や手洗いなどの予防が大切です。ただし、抗体検査が陽性でも、直ちに妊娠中の感染や胎児の障害が確定するわけではありません。心配な接触や結果があれば、時期と検査内容を産科へ伝え、追加評価の必要性を相談してください。[2][3]

01

二つの感染症の違いを知る

トキソプラズマ

寄生虫による感染症です。加熱不十分な肉、猫のふんに由来する汚染を含む土や食品などが感染のきっかけになります。妊娠中の初感染が疑われる場合は、胎児への影響を考えて検査や治療を検討します。[1][2]

サイトメガロウイルス(CMV)

唾液や尿などの体液を介して感染するウイルスです。健康な大人では無症状のこともありますが、妊娠中に胎児へ感染すると、聴力などに影響する場合があります。[6]

どちらも、母体の症状の強さだけでは胎児への影響を判断できません。一方で、接触の機会があったこと、母体感染、胎児感染、出生後の症状は別の段階です。すべてを同じ意味として受け取らないことが大切です。[2][3]

02

食事と子どもの世話でできる予防

トキソプラズマ:口に入る経路を減らす

  • 肉は中心まで十分に加熱し、加熱が不十分な肉を避けます。
  • 野菜や果物をよく洗い、生肉を扱った調理器具を洗浄します。
  • 土を扱った後は手を洗います。土や猫の排泄物を片付ける際は、手袋などで直接触れる機会を減らし、作業後に手洗いをします。

猫がいることだけで感染が決まるわけではありません。家族で排泄物の片付けを分担するなど、汚染を口に運ばない工夫を相談できます。食事の注意も、すべての食材を避けるという意味ではありません。[1]

CMV:唾液や尿への接触後を整える

  • おむつ交換やトイレの手伝いの後は、石けんと水で手を洗います。
  • 小さい子どもと食器・コップを共用せず、食べ残しを口に入れないようにします。
  • 唾液が口に入るような接触を減らします。家族にも予防方法を共有すると続けやすくなります。

子どもとの関わりをすべて避ける必要はなく、体液を口や目などへ運ぶ場面を具体的に見直します。予防をしていても感染の可能性をゼロにはできません。感染が疑われても、誰かの責任と決めつけないでください。[6][3]

03

IgG・IgMが陽性と言われたら

抗体検査は感染の経過を考える手がかりですが、結果一つで感染時期や胎児への影響が決まるものではありません。IgG陽性は過去の感染を含み、IgM陽性も最近の感染だけを意味するとは限りません。値の変化、検査した妊娠週数、症状、超音波所見などを合わせて判断します。[2][3]

必要に応じて、抗体が病原体と結びつく強さをみる「IgG avidity」などで感染時期を推定します。検査法や採血時期によって解釈が変わるため、インターネットにある数値の表を別の検査に当てはめないでください。トキソプラズマとCMVでも検査の扱いは同じではありません。[2][4]

検査を希望するときは、何を確認する目的か、結果によって次に何をするか、費用を先に聞けます。トキソプラズマIgG avidityには国内で保険適用となる条件がありますが、すべての人・検査が一律に保険で受けられるわけではありません。条件は担当医・検査施設に確認します。[2]

04

接触が心配なときの相談の準備

生肉を食べた、子どもの唾液に触れたなど、心配な出来事があっただけで感染が確定するわけではありません。日時、食べたものや接触の状況、妊娠週数、発熱などの症状、これまでの検査結果を整理し、産科へ相談してください。無症状の接触歴だけで直ちに救急搬送が必要とは限りませんが、検査の時期は自己判断せず確認します。

発熱が続く、食事や水分が取れない、強い腹痛や出血がある場合は、その症状を優先して医療機関へ連絡します。このページの二つの感染症だけに原因を絞らないことも大切です。

患者が持参したノートを医師と一緒に確認する説明用イラスト
気になる体調や記録、検査への不安を伝え、必要な確認と次の予定を相談します。説明用の生成イラストで、実際の患者・医師・診療場面ではありません。
診察室から

抗体結果の相談では、「自分が最近感染したのか」と「赤ちゃんに影響があるのか」が一緒に心配されていないかを整理します。検査日と妊娠週数、接触歴を時系列に並べると、追加確認の目的を説明しやすくなります。ただし、記憶している接触がなくても感染を否定できず、抗体一項目だけで胎児の状態を決めることもできません。

05

国内での治療と追加検査の考え方

トキソプラズマでは、妊娠成立後の初感染が疑われる妊婦に対し、胎児への感染抑制を目的としたスピラマイシンが国内で承認されています。胎児感染が疑われる場合の方針は別に検討します。薬を飲めば影響を完全に防げるという意味ではなく、担当医が検査と経過に応じて判断します。[7]

薬には下痢や発疹などの副作用があり、重いアレルギーや不整脈などへの注意も必要です。既往歴と併用薬を伝え、服用中に気になる症状があれば相談してください。授乳を含む薬の扱いも個別に確認します。[7]

CMVでは、母体の感染の評価と、出生後の赤ちゃんの治療を区別します。新生児に用いる薬を妊婦が使うという意味ではありません。妊娠中の治療を検討する場合は国内での適応、期待できることと限界を専門施設で確認し、自己入手した薬を使わないでください。[3]

胎児への感染を調べる羊水検査などを提案される場合には、検査の時期、分かること・分からないこと、処置の負担、結果を治療や出産計画にどう生かすかを確認します。検査をしたから将来のすべての症状が予測できるわけではありません。[3][2]

06

出産施設へ伝えたい情報

妊娠中に感染が疑われた場合は、抗体検査の日付と結果、治療歴、胎児の検査所見を出産施設へ引き継いでもらいます。里帰り出産や転院では、紹介状に含まれているかを確認するとよいでしょう。

先天性CMV感染の確認には、出生後早い時期の尿検査が重要で、国内では生後3週間以内の検査が用いられます。聴覚スクリーニングが要再検だった場合も、精密な聴力検査を待つ間にこの時期を過ぎないよう、出産施設へ速やかに相談してください。要再検だけでCMV感染や難聴が確定するわけではありません。[5]

必要な検査とフォローは小児科などが計画します。出産後に何を確認するかを妊娠中から共有し、家族も相談先を把握しておくと、退院後の連絡がしやすくなります。

07

よくある質問

抗体のIgMが陽性なら、妊娠中の感染で確定ですか?

確定ではありません。陽性が長く続く場合や偽陽性もあり、IgG、追加検査、採血時期、症状などを合わせて判断します。胎児への影響も別に評価します。

猫を飼っていたり、上の子の世話をしたりしても大丈夫ですか?

感染の機会を減らす具体的な対策が大切です。排泄物や土を扱う作業を分担し、作業後に手洗いをします。子どもと食器を共用せず、おむつ交換後も手を洗いましょう。生活状況に合わせて相談できます。

妊娠中の検査だけで赤ちゃんの感染は全部分かりますか?

すべては分かりません。必要に応じて出生後の検査につなぎます。先天性CMV感染の確認には生後3週間以内の尿検査が重要なため、妊娠中の結果を出産施設へ伝えてください。

08

参考文献