前立腺手術後の尿失禁|回復・骨盤底筋訓練・治療を医師が解説

前立腺手術後の男性が骨盤底筋訓練と尿漏れの経過を相談する場面
UROLOGY / POST-PROSTATE TREATMENT

前立腺手術後の尿失禁と回復・治療

回復の個人差を前提に、漏れ方と推移を記録し、訓練から追加治療まで段階的に考えます。

最終更新 2026.09.20監修日 2026.09.20
TREND回復の推移を見る
TECHNIQUE訓練方法を確認
OPTIONS追加治療を段階選択
結論から

前立腺手術後の尿失禁は、尿道を閉じる仕組みや膀胱の働きが変化して起こります。多くは時間とともに改善しますが、回復の速さには個人差があります。パッド枚数・漏れる動作・経過を記録し、正しく指導された骨盤底筋訓練を行います。支障が続く場合は原因を再評価し、男性用スリングや人工尿道括約筋を相談します。

01

尿が出ない、発熱、血の塊、強い痛みは予定受診を待たない

救急を検討

尿が出ず下腹部が強く張る、急な両脚の脱力、会陰部のしびれ、意識の変化。

当日中に相談

発熱・悪寒、わき腹痛、血の塊を伴う血尿、手術後に急に尿が出にくくなった。

泌尿器科へ予約

尿漏れが続く、パッドが増えた、外出・仕事・睡眠を避けるようになった。

手術後の連絡基準は術式と時期で異なります。退院時の指示を優先し、尿量、血尿、体温、痛み、カテーテルの状態を伝えてください。急なふくらはぎの腫れ・胸痛・息苦しさも救急相談が必要です。[1][2]

02

パッド枚数だけでなく、週・月ごとの改善傾向と困る場面を見る

根治的前立腺全摘除術後は、咳・立ち上がり・歩行・運動で漏れる腹圧性が中心ですが、強い尿意を伴う切迫性が重なることもあります。術前の尿機能、年齢、手術方法、括約筋や神経の状態などで回復経過は異なります。[1][2]

前立腺手術後の男性が骨盤底筋訓練と尿漏れの経過を相談する場面
図|前立腺手術後は、訓練方法と月ごとの回復を確認し、支障が続く場合に追加評価と治療を相談します。

「何か月で必ず治る」という線引きはできません。1日のパッド枚数と濡れ具合、夜間、動作、週ごとの変化を記録します。最初から乾燥を目標にして落ち込むより、重いパッドから軽いものへ、交換回数が減るなど小さな変化も共有します。

診察室から

日々の泌尿器科診療では、「3枚使う」という数字に加えて、朝は乾いていて夕方に増えるのか、立ち上がりか歩行で漏れるのかを伺います。回復が続いているか、訓練方法を直すべきか、追加評価へ進むかを判断しやすくなるためです。

03

骨盤底筋訓練は尿を止める筋肉を確認し、力み過ぎず続ける

骨盤底筋訓練は術後尿失禁の回復を支える基本的な方法です。肛門と尿道を内側へ引き上げるように収縮し、腹筋・お尻・太ももへの過度な力を避けます。呼吸を止めず、短い収縮と保持を組み合わせ、医師・看護師・理学療法士の指導に合わせます。[1][3][4]

機器を加える方法も研究されていますが、すべての人に上乗せ効果が確立しているわけではありません。正しい収縮と継続をまず確認します。排尿途中で毎回尿を止める練習は行わず、痛みや出しにくさがある時は相談してください。[5]

04

改善が乏しい時は、括約筋・膀胱・尿道・残尿を分けて評価する

漏れの程度、排尿日誌、パッド使用量、尿検査、尿の勢い、残尿を確認します。血尿、痛み、感染、尿道狭窄、膀胱頸部の狭窄、過活動膀胱が疑われる時は、膀胱鏡や尿流動態検査などを目的に応じて追加します。[1]

腹圧性が中心
咳・立位・歩行で漏れ、強い尿意との関係が弱い。
切迫性が重なる
急で我慢しにくい尿意の直後に漏れ、頻尿・夜間頻尿を伴う。
排尿障害
勢い低下、時間がかかる、残尿増加。狭窄や膀胱収縮の問題を確認。

前立腺がん治療後はPSAフォローと尿失禁の評価を並行します。がんの治療状況、追加放射線治療の予定・既往は、尿失禁手術の時期と方法にも関わります。

05

回復が止まり生活支障が続く時は、スリング・人工尿道括約筋を比較する

保存療法を続けても困る尿失禁が残る場合、回復傾向、重症度、放射線治療歴、尿道の状態、手先の操作、本人の希望を確認して手術を検討します。ガイドラインでは改善が見込めない場合に術後6か月頃から相談し、1年でも支障が続けば手術を提示する考え方がありますが、時期は個別に決めます。[1]

MALE SLING

男性用スリング

尿道を支える器具で、一般に軽度から中等度、放射線治療歴がなく、括約筋機能が保たれる人などで検討します。効果不十分、尿閉、痛み、感染などに注意します。

ARTIFICIAL SPHINCTER

人工尿道括約筋

中等度から重度を含む標準的選択肢です。手でポンプを操作します。感染、びらん、機械故障、再手術の可能性を理解して選びます。

比較研究には限界があり、重症度や放射線歴による選択の違いもあります。単純な優劣ではなく、自分の尿失禁の程度と器具を扱えるかで相談します。[6]

06

皮膚を守り、活動を続け、回復記録を次の判断につなげる

パッド

漏れの量に合う吸収量を選び、濡れたままにせず皮膚を確認します。

活動

許可された範囲で歩行・運動を続け、漏れを恐れて閉じこもらない方法を相談します。

水分

極端に減らさず、夕方以降やカフェインとの関係を記録します。

次回相談

漏れの推移、尿意、尿の勢い、PSA、追加治療の予定を確認します。

尿失禁は性機能や仕事、睡眠、外出への不安とも関係します。話しにくい内容でも治療目標に必要な情報です。家族への説明、費用、器具の扱いも含めて相談してください。

次回受診で伝えること一日のパッド枚数に加え、朝と夕方の違い、漏れる動作、急な尿意、尿の勢い、前月からの変化をメモします。改善が小さくても、経過を連続して見ることで訓練の調整や追加検査の判断につながります。
07

よくある質問

術後どのくらいで尿漏れは治りますか?

回復の速さには大きな個人差があります。月ごとのパッド量と漏れる場面を記録し、改善傾向があるかを手術担当医と確認します。

骨盤底筋訓練は手術前から始めたほうがよいですか?

術前から筋肉の場所を理解することは役立つ場合がありますが、研究結果は一様ではありません。手術予定と体調に合わせて担当医や理学療法士の指導を受けてください。

パッドが1枚なら手術は不要ですか?

枚数だけでは決めません。濡れ具合、仕事・運動・外出への影響、回復傾向、本人の希望を確認します。少量でも強く困る場合は相談できます。

人工尿道括約筋は一生使えますか?

長く使える器具ですが、感染、びらん、機械故障などで再手術が必要になることがあります。操作方法と将来のメンテナンスを理解して選びます。

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参考文献