房室ブロックの種類・症状と治療の考え方
同じ「房室ブロック」でも、心電図の型と原因によって緊急度が大きく異なります。
房室ブロックは、心房から心室へ進む電気信号が遅れる、または途中で途切れる状態です。1度、2度、3度で意味が異なり、特にモビッツII型・高度・3度房室ブロックは、症状がなくても早い専門評価が必要です。
- どの型が危険?
- 原因は薬だけ?
- いつペースメーカーが必要?
- 房室結節
- 心房から心室へ電気信号を中継する場所です。
- PR間隔
- 心房の興奮から心室の興奮までの時間を心電図で表したものです。
- 高度房室ブロック
- 心房から心室への信号が二つ以上続けて伝わらない状態です。
- 完全房室ブロック
- 心房と心室の電気的なつながりが途絶え、それぞれ別のリズムで動く状態です。
失神・意識変化・胸痛・強い息苦しさは119番を考える
突然意識を失った、呼びかけへの反応が悪い、立てないほどのふらつき、冷汗を伴う胸痛、安静でも強い息苦しさがある状態です。
完全房室ブロックなどでは心拍が急に低下し、脳や全身への血流が不足することがあります。症状が治まっても運転せず、周囲に助けを求めてください。心筋梗塞に伴う場合もあるため、胸痛や冷汗を伴うときは特に急ぎます。[1][2][4][5]
1度・2度・3度は「信号がどこまで伝わるか」で分ける
| 心電図の型 | 何が起きるか | 一般的な対応 |
|---|---|---|
| 1度 | すべて伝わるが時間がかかる | 原因と基礎疾患を確認し、多くは経過観察 |
| 2度I型 | 徐々に遅れて一拍伝わらなくなる | 症状、起きる場所・時間、原因で判断 |
| 2度II型 | 予告なく一拍以上伝わらなくなる | 高い型への進行を考え早く専門評価 |
| 高度 | 二つ以上続けて伝わらない | 緊急度を評価しペースメーカーを検討 |
| 3度(完全) | 心房と心室が別々のリズムで動く | 可逆原因を確認し、多くはペースメーカーを検討 |

2対1房室ブロックは、心電図だけではI型かII型か分けにくいことがあります。単なる数字ではなく、QRS波の幅、運動や薬への反応、基礎疾患を合わせて判断します。[1][4][5]
薬・心筋虚血・炎症・加齢変化などを確認する
原因によっては一時的に回復しますが、戻ったように見えても再発や進行の評価が必要です。処方薬を自己中止すると、狭心症や不整脈が悪化することがあります。変更は必ず医師の指示で行います。[1][4][5]
12誘導心電図で型を確認し、心臓の病気と一時的な原因を調べる
心電図でP波とQRS波の関係、PR間隔、QRS幅を確認します。発作的な場合はホルター心電図や長期間の記録器を用います。失神がある場合は、症状の頻度に合う記録法を選び、転倒やけがの状況も確認します。
- 緊急度を判断
血圧、意識、胸痛、呼吸状態、心拍を確認します。
- 型を確認
12誘導心電図とモニターで伝導の途切れ方を見ます。
- 原因を探す
薬、採血、心筋虚血、感染、甲状腺などを確認します。
- 心臓を評価
心エコーや必要な画像で心機能・基礎疾患を調べます。
心サルコイドーシスなどが疑われる場合は、MRIや核医学検査などを追加することがあります。検査の順番は発症状況と緊急度で変わります。[1][4][5]
危険な型では、症状がなくてもペースメーカーを検討する
急性期に血圧低下や意識障害がある場合は、原因治療と同時に薬や一時的なペーシングで心拍を確保します。回復可能な原因がなく、モビッツII型、高度、3度房室ブロックが確認された場合は、症状がなくても恒久的ペースメーカーが推奨されることがあります。[2][4][5]
どのペーシング方法を選ぶかは、心機能、心室を刺激する割合、年齢、静脈や感染のリスクなどで変わります。刺激伝導系ペーシングやリードレスペースメーカーは選択肢ですが、すべての人に同じ利点があるわけではありません。[3][5][6]
健診で見つかった場合も、型と次の行動を確認する
日々の循環器内科診療では、紹介状に「房室ブロック」とだけ書かれていても、心電図の型、起きた時間帯、症状、薬、過去との変化を一つずつ確認します。患者さんには「1度か2度か」だけでなく、次に失神したらどう動くか、いつ再検査するかまで持ち帰ってもらうようにします。
受診時は健診心電図の原本、お薬手帳、失神・ふらつきの時刻、家族が見た様子を持参します。症状がある間は一人での入浴、高所作業、運転について安全性を相談してください。
1度や一部の2度I型は経過観察になることがありますが、自己判断で放置せず、病型・原因・再検査時期を確認してください。
よくある質問
1度房室ブロックでもペースメーカーが必要ですか?
多くは不要ですが、症状、伝導障害の場所、ほかの心疾患、著しいPR延長などで判断が変わります。
2度I型なら安全ですか?
夜間の生理的な変化もありますが、症状、広いQRS、日中・運動時の出現、基礎疾患がある場合は詳しい評価が必要です。
薬をやめれば治りますか?
薬が原因でも自己中止は危険です。適応を確認したうえで医師が調整し、改善後も再発・基礎疾患を評価します。
完全房室ブロックでも症状がないことはありますか?
補充調律で一時的に症状が乏しいことがありますが、急な悪化リスクを含め早い専門評価が必要です。
参考文献
- 日本循環器学会ほか:2022年改訂版 不整脈の診断とリスク評価に関するガイドライン
- 日本循環器学会ほか:2021年JCS/JHRSガイドライン フォーカスアップデート版 不整脈非薬物治療
- 日本循環器学会ほか:2024年JCS/JHRSガイドライン フォーカスアップデート版 不整脈治療
- Kusumoto FM, et al. 2018 ACC/AHA/HRS Guideline on bradycardia and conduction delay. PMID: 30412710
- Glikson M, et al. 2021 ESC Guidelines on cardiac pacing and CRT. PMID: 34455430
- Zhang S, et al. Conduction system pacing for atrioventricular block: systematic review and network meta-analysis. PMID: 36386361
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