徐脈性不整脈の症状・検査・治療ガイド
脈拍の数字だけで決めず、症状・心電図・戻せる原因を順番に確認します。
徐脈性不整脈は、心臓の電気信号を作る・伝える働きが弱くなり、必要な心拍を保てない状態です。心拍数が低いだけで治療を決めず、失神などの症状、心電図の型、薬や全身の原因を確認し、必要ならペースメーカーを検討します。
- 脈が何回なら危険?
- どの病気が隠れている?
- 検査・治療はどう進む?
- 徐脈
- 一般には脈拍が1分60回未満の状態ですが、体質や睡眠でも起こります。
- 徐脈性不整脈
- 心臓の電気信号を作る・伝える働きが低下し、治療判断が必要になる不整脈です。
- 洞不全症候群
- リズムを作る洞結節の働きが弱る病気です。
- 房室ブロック
- 心房から心室へ電気信号が伝わりにくい、または途切れる状態です。
意識を失った、胸痛・強い息苦しさがあるなら119番を考える
失神、呼びかけへの反応低下、冷汗を伴う胸痛、安静でも強い息苦しさ、片側の麻痺・言葉の異常がある状態です。
脈が遅く立てない、失神を繰り返す、転倒してけがをした場合も周囲に助けを求めます。症状が治まっても運転せず、心筋梗塞や高い型の房室ブロックなど緊急原因を確認します。[1][2][4][5]
「脈が遅い」だけでは、病気か治療が必要かは決まらない
一般に安静時の脈拍が1分60回未満を徐脈と呼びますが、睡眠中、運動習慣、体質、薬の影響で健康な人にもみられます。重要なのは、心臓が必要な血流を送れず、めまい、失神、だるさ、息切れ、運動能力低下などが起きているかです。普段と比べて歩ける距離や階段の段数が減った変化も重要な症状です。[1][4][5]
家庭用血圧計やスマートウォッチの値は手掛かりになります。ただし、期外収縮や測定誤差で実際より遅く表示されることがあるため、数字だけで薬を止めたり救急度を決めたりしません。

洞不全症候群と房室ブロックでは、問題が起こる場所が違う
洞不全症候群の症状と治療
洞結節の働き、めまい・失神、心電図検査、ペースメーカーを考える条件を説明します。
詳しく確認する房室ブロックの種類と治療
1度・2度・3度の違い、危険な心電図、原因確認、治療の考え方を整理します。
詳しく確認するペースメーカー手術と術後の生活
機器の種類、植え込みの流れ、傷の管理、電気機器・MRI・定期点検を確認します。
詳しく確認する| 主な状態 | 問題が起こる場所 | 判断の要点 |
|---|---|---|
| 洞不全症候群 | リズムを作る洞結節 | 症状と徐脈・停止が同時か |
| 房室ブロック | 心房から心室への伝導路 | 1度・2度・3度の型と原因 |
| 薬や全身の原因 | 心拍を作る・伝える働き全体 | 薬、電解質、甲状腺、睡眠、急性心疾患 |
心房細動で脈が遅くなる場合や、速い脈と遅い脈を繰り返す場合もあります。病名を一つに決めつけず、記録された心電図から整理します。[1][4][5]
症状の頻度に合う心電図で、起きた瞬間を捉える
まず12誘導心電図で脈の始まりと伝わり方を確認し、薬、血圧、酸素飽和度、採血、心エコーで原因と心臓の状態を調べます。一度の心電図が正常でも、発作がない時間だった可能性があります。
- 問診
症状の時刻、姿勢、動作、持続、けが、薬を確認します。
- 心電図
洞不全か房室ブロックか、危険な型かを見ます。
- 長時間記録
症状の頻度に合わせてホルター、携帯型、植込み型を選びます。
- 原因評価
採血、心エコー、睡眠検査、必要な画像を追加します。
症状の頻度と記録期間が合わないと見逃しやすくなります。「いつ起こるか分からない」こと自体を伝え、次の検査方法を相談します。[1][4][5]
戻せる原因を整え、病型と症状に応じてペースメーカーを検討する
薬、甲状腺機能、電解質、睡眠時無呼吸、急性心疾患など治療可能な原因があれば先に対応します。薬は必要性を確認しながら医師が調整します。洞不全症候群では症状と徐脈の一致を重視し、房室ブロックではモビッツII型・高度・3度など病型によって症状がなくてもペースメーカーを検討します。[2][4][5]
ペースメーカーは遅い脈への治療で、すべての動悸や息切れを治す機器ではありません。期待できる改善、合併症、定期点検、代替法を確認して決めます。[3][6]
受診前は症状の時刻・薬・測定値を一つにまとめる
日々の循環器内科診療では、脈拍の最低値よりも「その時間に何をしていて、どんな症状があったか」を重視します。血圧計やスマートウォッチの画面を見せてもらい、処方薬と照らし合わせて、次に必要な心電図の記録期間を決めます。
お薬手帳、健診心電図、家庭の脈拍・血圧、症状の時刻、失神時に家族が見た様子を持参します。脈が遅いと言われた時刻が睡眠中か日中か、運動時に心拍が上がるかも手掛かりです。家族が同席できない場合は、倒れた前後の様子や回復までの時間をメモしてもらうと役立ちます。
医師には、①病名と心電図の型、②緊急時の行動、③薬の扱い、④次の検査と期間、⑤運転・入浴・仕事の制限、⑥ペースメーカーを考える条件、を確認すると整理しやすくなります。次回予約だけでなく、予定を待たず連絡する症状と連絡先も確認してください。
症状を確かめるために一人で運動したり、薬を抜いたりしないでください。失神・前失神がある間は安全に関わる活動を相談します。
よくある質問
脈拍が40回/分なら救急ですか?
数字だけでは決まりません。失神、意識変化、胸痛、強い息苦しさ、立てないほどのふらつきがあれば救急要請を考えます。
症状がなければ放置してよいですか?
病型によります。モビッツII型、高度、完全房室ブロックなどは無症状でも早い評価が必要です。
スマートウォッチの通知は受診時に役立ちますか?
役立つことがあります。通知時刻、波形、症状を保存し、医療用心電図で確認します。
ペースメーカーを入れると寿命は延びますか?
適応となる徐脈で危険な心拍低下を防ぎ、症状や生活の質を改善します。効果は病型や併存症で異なります。
参考文献
- 日本循環器学会ほか:2022年改訂版 不整脈の診断とリスク評価に関するガイドライン
- 日本循環器学会ほか:2021年JCS/JHRSガイドライン フォーカスアップデート版 不整脈非薬物治療
- 日本循環器学会ほか:2024年JCS/JHRSガイドライン フォーカスアップデート版 不整脈治療
- Kusumoto FM, et al. 2018 ACC/AHA/HRS Guideline on bradycardia and conduction delay. PMID: 30412710
- Glikson M, et al. 2021 ESC Guidelines on cardiac pacing and CRT. PMID: 34455430
- Zhang S, et al. Conduction system pacing for atrioventricular block: systematic review and network meta-analysis. PMID: 36386361
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