- ✓ 動悸は心臓疾患だけでなく、心臓以外の原因や精神的な要因でも起こり得ます。
- ✓ 症状が続く場合や他の症状を伴う場合は、速やかに医療機関を受診することが重要です。
- ✓ 市販薬は一時的な対処に留め、根本原因の特定と治療には専門医の診断が不可欠です。
動悸は、心臓の拍動を強く感じたり、速く感じたり、不規則に感じたりする症状の総称です。多くの人が経験する一般的な症状であり、その原因は多岐にわたります。この記事では、動悸の主な原因、対処法、市販薬の選び方、そして医療機関を受診すべきタイミングについて、薬剤師の視点から詳しく解説します。
心臓の病気・不整脈による動悸とは?

心臓の病気や不整脈による動悸は、心臓の電気的活動や構造に異常が生じることで発生します。これらの動悸は、時に重篤な疾患のサインであるため、注意が必要です。
動悸の原因として最も懸念されるのが、不整脈をはじめとする心臓の病気です。心臓は規則正しい電気信号によって収縮・拡張を繰り返していますが、この電気信号に異常が生じると不整脈となり、動悸として自覚されることがあります。調剤の現場では、「胸がドキドキする」「脈が飛ぶ感じがする」といった相談を受けることが多く、その背景に不整脈が隠れているケースも少なくありません。
不整脈の種類と特徴
不整脈には様々な種類があり、それぞれ異なる特徴を持っています。
- 期外収縮: 最も一般的な不整脈で、心臓が本来のタイミングよりも早く収縮することで起こります。脈が飛んだり、一瞬止まったように感じたりすることがあります。多くの場合は良性ですが、頻度が高い場合や症状が強い場合は精査が必要です[4]。
- 心房細動: 心房が不規則に興奮し、細かく震えることで、脈がバラバラになる不整脈です。動悸の他に、息切れや倦怠感を伴うこともあります。脳梗塞のリスクを高めるため、適切な診断と治療が重要です[1][3]。
- 発作性上室性頻拍 (PSVT): 突然脈が速くなり、突然止まる特徴を持つ不整脈です。心拍数が150〜250回/分にも達することがあり、強い動悸やめまい、失神感を伴うことがあります[2]。
心臓の構造的異常による動悸
不整脈だけでなく、心臓の構造的な異常も動悸の原因となることがあります。
- 心臓弁膜症: 心臓の弁に異常があると、血液の流れが滞り、心臓に負担がかかることで動悸が生じることがあります。
- 心筋症: 心臓の筋肉に異常が生じる病気で、心機能の低下や不整脈を誘発し、動悸の原因となります。
- 狭心症・心筋梗塞: 虚血性心疾患は、胸痛が主な症状ですが、動悸や息切れを伴うこともあります。
診断と治療の進め方
心臓が原因の動悸が疑われる場合、医療機関では以下のような検査が行われます。
- 心電図検査: 心臓の電気的活動を記録し、不整脈の有無や種類を特定します。発作時以外では異常が見られないこともあります。
- ホルター心電図: 24時間心電図を記録することで、日常生活での不整脈の発生状況を把握します。
- 心臓超音波検査(心エコー): 心臓の動きや構造、弁の状態などを確認し、心臓弁膜症や心筋症などの構造的異常を評価します。
- 血液検査: 甲状腺機能異常や貧血など、動悸を引き起こす可能性のある全身疾患の有無を調べます。
治療は、不整脈の種類や重症度、基礎疾患によって異なります。薬物療法としては、抗不整脈薬やβ遮断薬などが用いられます。心房細動の場合、血栓予防のために抗凝固薬が処方されることもあります[1]。また、カテーテルアブレーションなどの非薬物療法が選択されることもあります[2]。実際の処方パターンとして、心拍数をコントロールするためのβ遮断薬や、期外収縮の症状緩和のための漢方薬などが併用されるケースもよく見られます。
心臓以外が原因の動悸・対処法
動悸は心臓の病気だけでなく、心臓以外の様々な要因によっても引き起こされることがあります。これらの原因を理解し、適切に対処することが重要です。
患者さんから「健康診断では異常がなかったのに動悸がする」と質問されることが多くいらっしゃいます。このような場合、心臓以外の原因が背景にある可能性を考慮する必要があります。特に、ストレスや生活習慣が大きく関与しているケースが目立ちます。
精神的要因による動悸
ストレスや不安、パニック障害などは、自律神経のバランスを乱し、動悸を引き起こす主な精神的要因です。自律神経は心拍数や血圧を調整しているため、そのバランスが崩れると心臓が過剰に反応し、動悸として感じられます。
- ストレス: 精神的ストレスは交感神経を優位にし、心拍数や血圧を上昇させ、動悸を引き起こします。
- 不安・パニック障害: 突然の激しい動悸、息苦しさ、めまいなどを伴うパニック発作は、心臓病と間違われやすいですが、精神科的な治療が必要です。
対処法: ストレスマネジメント(リラクゼーション、瞑想、適度な運動)、十分な睡眠、カウンセリングや精神科医による治療が有効です。
生活習慣による動悸
特定の生活習慣や物質の摂取も動悸の原因となります。
- カフェイン: コーヒー、紅茶、エナジードリンクなどに含まれるカフェインは、心臓を刺激し、動悸を引き起こすことがあります。
- アルコール: 過剰なアルコール摂取は、心臓に負担をかけ、不整脈や動悸の原因となることがあります。
- 喫煙: ニコチンは血管を収縮させ、心拍数を増加させるため、動悸のリスクを高めます。
- 睡眠不足: 睡眠不足は自律神経の乱れにつながり、動悸を引き起こすことがあります。
対処法: カフェインやアルコールの摂取量を控える、禁煙する、十分な睡眠時間を確保するなど、生活習慣の見直しが重要です。
その他の身体的要因
心臓以外の身体的な病気も動悸の原因となることがあります。
- 貧血: 血液中のヘモグロビンが不足すると、全身に酸素を運ぶために心臓がより速く拍動する必要があり、動悸として感じられます。
- 甲状腺機能亢進症: 甲状腺ホルモンが過剰に分泌されると、代謝が活発になり、心拍数が増加して動悸が生じます。
- 低血糖: 血糖値が急激に下がると、体がストレス反応を起こし、動悸や冷や汗、手の震えなどを引き起こすことがあります。
- 薬剤の副作用: 一部の薬剤(例: 気管支拡張薬、甲状腺ホルモン製剤、一部の抗うつ薬など)は、副作用として動悸を引き起こすことがあります。
対処法: 貧血の場合は鉄剤の補充、甲状腺機能亢進症の場合は甲状腺ホルモンを抑える薬による治療、低血糖の場合は適切な食事管理など、原因疾患に対する治療が必要です。薬局での経験上、風邪薬やアレルギー薬に含まれる交感神経刺激成分によって動悸を感じる方もいらっしゃるため、市販薬を選ぶ際も成分の確認に注意が必要です。
心臓以外の原因であっても、動悸が頻繁に起こる場合や、日常生活に支障をきたす場合は、自己判断せずに医療機関を受診し、適切な診断を受けることが大切です。
動悸の応急処置・市販薬・受診先

動悸が起きた際にどのように対処すれば良いか、また市販薬の選択肢や、どの医療機関を受診すべきかについて解説します。
突然の動悸に不安を感じる方は少なくありません。服薬指導の際に「急にドキドキした時にどうすればいいですか?」と質問される患者さんが多くいらっしゃいます。まずは落ち着いて、適切な応急処置を試みることが重要です。
動悸が起きた際の応急処置
動悸を感じた際には、以下の応急処置を試みてください。
- 落ち着いて座る・横になる: 可能な限り安静にし、体を休ませましょう。
- 深呼吸をする: ゆっくりと深く息を吸い込み、ゆっくりと吐き出すことで、自律神経を落ち着かせることができます。
- 水分補給: 脱水も動悸の原因となることがあるため、水をゆっくりと飲むことも有効です。
- 迷走神経刺激: 医師の指導のもと、冷たい水を顔につける、息をこらえてお腹に力を入れる(バルサルバ法)などの迷走神経刺激を試すことで、心拍数を落ち着かせることができる場合があります[2]。
市販薬の選択肢と注意点
市販薬の中には、動悸や不安感の緩和を目的としたものもありますが、これらは一時的な症状緩和に留まります。根本的な治療にはなりません。
- 漢方薬: 精神的な緊張やストレスによる動悸には、柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)や桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)などが用いられることがあります。これらは自律神経のバランスを整える効果が期待されます。
- 鎮静作用のある生薬製剤: ホップやカノコソウなどの生薬を配合した製品は、軽い鎮静作用により、不安感を和らげることがあります。
市販薬を使用する際は、必ず添付文書を読み、用法・用量を守ってください。特に、他の薬を服用している場合や持病がある場合は、薬剤師や医師に相談してから使用しましょう。動悸が頻繁に起こる、症状が強い、他の症状を伴う場合は、市販薬でごまかさずに医療機関を受診することが最優先です。
動悸で受診すべき医療機関はどこ?
動悸の原因は多岐にわたるため、適切な医療機関を選ぶことが重要です。
- 内科・循環器内科: 動悸の症状がある場合、まずは内科を受診するのが一般的です。特に、心臓病が疑われる場合は循環器内科が専門となります。心電図や心エコーなどの検査で心臓の状態を詳しく調べることができます。
- 心療内科・精神科: ストレスや不安、パニック障害など、精神的な要因による動悸が強く疑われる場合は、心療内科や精神科の受診も検討しましょう。
緊急性が高い場合の受診: 以下の症状を伴う場合は、すぐに救急車を呼ぶか、緊急で医療機関を受診してください。
- 激しい胸の痛みや圧迫感
- 呼吸困難や息切れ
- めまい、意識の混濁、失神
- 冷や汗
薬局での経験上、患者さんがどの科を受診すべきか迷われることも多いため、まずはかかりつけ医に相談し、必要に応じて専門医を紹介してもらうのがスムーズな流れです。
症状の掛け合わせ(動悸+〇〇)でわかることは?
動悸は単独で現れることもありますが、他の症状を伴うことで、その原因を特定する重要な手がかりとなることがあります。動悸に加えてどのような症状があるかを確認することは、適切な診断と治療に繋がります。
動悸の症状を訴える患者さんに対し、薬剤師として「他にどのような症状がありますか?」と詳しく問診することは非常に重要です。例えば、動悸だけでなく息切れや胸の痛みを伴う場合は心臓疾患の可能性が高まりますし、発汗や手の震えがあれば甲状腺機能亢進症も視野に入ります。これらの情報は、医師が診断を下す上で貴重な手がかりとなります。
動悸+胸痛・息切れ
動悸に胸痛や息切れが伴う場合、心臓の病気が強く疑われます。
- 狭心症・心筋梗塞: 胸の圧迫感や締め付けられるような痛み、左腕への放散痛、息切れなどを伴うことがあります。特に労作時に症状が悪化する場合は注意が必要です。
- 心不全: 心臓のポンプ機能が低下し、全身に十分な血液を送れない状態です。動悸、息切れ(特に横になった時や労作時)、足のむくみなどが特徴です。
- 不整脈(特に頻脈性不整脈): 脈が速くなりすぎると、心臓が十分に血液を送り出せなくなり、胸痛や息切れを感じることがあります。心房細動や発作性上室性頻拍などが該当します[1][2]。
動悸+めまい・失神
動悸にめまいや失神が伴う場合、脳への血流が一時的に不足している可能性があり、重篤な不整脈や心臓病のサインであることがあります。
- 重症不整脈: 徐脈(脈が遅すぎる)や頻脈(脈が速すぎる)が極端な場合、心臓からの血液拍出量が減少し、脳への血流が不足してめまいや失神を引き起こすことがあります。
- 起立性低血圧: 立ち上がった際に血圧が急激に下がり、めまいや動悸を感じることがあります。
動悸+発汗・手の震え・体重減少
これらの症状が動悸と同時に現れる場合、甲状腺機能亢進症が疑われます。
- 甲状腺機能亢進症(バセドウ病など): 甲状腺ホルモンが過剰に分泌されると、全身の代謝が異常に活発になります。これにより、心拍数増加による動悸、多汗、手の震え、体重減少、イライラ感などの症状が現れます。
動悸+顔色不良・倦怠感
動悸に顔色不良や強い倦怠感が伴う場合、貧血の可能性を考慮します。
- 貧血: 血液中の赤血球やヘモグロビンが不足すると、全身に酸素を運ぶ能力が低下します。このため、心臓はより多くの血液を送り出そうと活発に働き、動悸として感じられます。顔色が青白い、常にだるい、疲れやすいといった症状も伴います。
これらの症状の組み合わせは、病気の早期発見に繋がる重要な情報です。症状を正確に医師に伝えることで、より迅速かつ適切な診断・治療を受けることができます。
- 不整脈
- 心臓の電気的活動に異常が生じ、心拍数が速くなったり(頻脈)、遅くなったり(徐脈)、不規則になったりする状態の総称です。動悸の主な原因の一つであり、種類によっては重篤な合併症を引き起こす可能性があります。
まとめ

動悸は、心臓の病気、心臓以外の身体的要因、精神的要因、生活習慣など、多岐にわたる原因によって引き起こされる症状です。特に、胸痛、息切れ、めまい、失神などを伴う場合は、心臓病や重篤な不整脈の可能性が高いため、速やかに医療機関を受診することが重要です。市販薬は一時的な症状緩和に留め、根本原因の特定と治療には専門医の診断が不可欠です。ご自身の症状を正確に把握し、適切なタイミングで専門医に相談することで、安心して日常生活を送ることに繋がります。
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- Darae Ko, Mina K Chung, Peter T Evans et al.. Atrial Fibrillation: A Review.. JAMA. 2025. PMID: 39680399. DOI: 10.1001/jama.2024.22451
- Gary Peng, Paul C Zei. Diagnosis and Management of Paroxysmal Supraventricular Tachycardia.. JAMA. 2024. PMID: 38497695. DOI: 10.1001/jama.2024.0076
- Zhicheng Hu, Ligang Ding, Yan Yao. Atrial fibrillation: mechanism and clinical management.. Chinese medical journal. 2023. PMID: 37914663. DOI: 10.1097/CM9.0000000000002906
- Gregory M Marcus. Evaluation and Management of Premature Ventricular Complexes.. Circulation. 2021. PMID: 32339046. DOI: 10.1161/CIRCULATIONAHA.119.042434
- ポンタール(カウンセリン)添付文書(JAPIC)

