【男性機能・男性不妊とは?専門医が解説する原因と対策】

男性機能・男性不妊
男性機能・男性不妊とは?専門医が解説する原因と対策
最終更新日: 2026-05-12
📋 この記事のポイント
  • ✓ 男性機能障害と男性不妊は密接に関連しており、包括的な評価が重要です。
  • ✓ ED、男性不妊、男性更年期障害、性感染症は男性の性と生殖の健康に大きく影響します。
  • ✓ 専門医による適切な診断と治療、生活習慣の改善が、これらの問題の解決に繋がります。
※ 本記事は医療に関する情報提供を目的としています。個別の症状については、かかりつけの医療機関にご相談ください。

男性の性と生殖に関する健康は、生活の質(QOL)に深く関わる重要なテーマです。ED(勃起障害)や男性不妊といった問題は、身体的な健康だけでなく、精神的な側面やパートナーシップにも影響を及ぼすことがあります。この記事では、男性機能と男性不妊に関する様々な側面について、専門医の視点からエビデンスに基づいた情報を提供します。正確な知識を得て、適切な対処法を検討するための一助となれば幸いです。

ED(勃起障害)とは?その原因と治療法

男性の勃起障害(ED)の原因と治療法を説明する医療情報コンテンツ
EDの原因と治療法

ED(Erectile Dysfunction:勃起障害)とは、満足のいく性行為を行うのに十分な勃起が得られない、または維持できない状態が持続的または繰り返し起こることを指します。EDは男性のQOLを著しく低下させるだけでなく、心血管疾患などの全身疾患のサインである可能性も指摘されています[1]

EDの主な原因とは?

EDの原因は多岐にわたりますが、大きく分けて器質性、心因性、混合性の3つに分類されます。

  • 器質性ED: 血管や神経の障害、ホルモン異常などが原因で起こります。糖尿病、高血圧、脂質異常症、肥満、喫煙などの生活習慣病は血管内皮機能を障害し、EDのリスクを高めます。また、神経疾患(脊髄損傷、多発性硬化症など)や手術(前立腺がん手術後など)によっても神経が損傷され、EDを引き起こすことがあります[4]
  • 心因性ED: ストレス、不安、うつ病、夫婦関係の問題などが原因で起こります。特に若い世代では、性行為への過度なプレッシャーや失敗への恐怖から心因性EDを発症するケースも少なくありません。
  • 混合性ED: 器質性と心因性の両方の要素が絡み合って発症するタイプで、最も多く見られます。

実臨床では、「以前は問題なかったのに、最近どうも…」と相談される患者さんが増えています。問診で生活習慣や既往歴を詳しく伺うと、高血圧や糖尿病の診断を受けている方が多く、EDが全身の健康状態を反映していることを改めて感じます。

EDの診断と治療選択肢

EDの診断は、問診、身体診察、血液検査(男性ホルモン値、血糖値、脂質など)、必要に応じて勃起機能検査などを行います。治療は原因に応じて選択されます。

主な治療法

  • PDE5阻害薬: 勃起を促す作用を持つ内服薬で、シルデナフィル(バイアグラ)[5]、タダラフィル(シアリス)[6]などが代表的です。性行為の前に服用することで、勃起をサポートします。
  • 陰茎注射: 薬剤を直接陰茎に注射する方法で、PDE5阻害薬が効かない場合などに検討されます。
  • 陰圧式勃起補助具: 陰茎に装着し、陰圧をかけることで勃起を促す医療機器です。
  • 生活習慣の改善: 禁煙、適度な運動、バランスの取れた食事、ストレス管理などは、EDの改善だけでなく全身の健康にも寄与します。
  • 心理療法: 心因性EDの場合や、治療に対する不安がある場合に有効です。

日常診療では、PDE5阻害薬の処方を希望される方が多いですが、その際に必ず生活習慣の改善の重要性をお伝えしています。薬だけに頼るのではなく、根本的な原因へのアプローチも同時に行うことが、長期的な効果に繋がると考えています。

PDE5阻害薬
陰茎の血管を拡張させ、血流を増加させることで勃起を促進する薬です。ホスホジエステラーゼ5型(PDE5)という酵素の働きを阻害することで、勃起に必要なサイクリックGMPという物質の分解を防ぎます。

男性不妊とは?その原因と検査・治療について

男性不妊とは、避妊せずに性交渉を1年以上続けても妊娠に至らない場合に、男性側に原因がある状態を指します。不妊症カップルの約半数に男性側の要因が関与しているとされており、決して稀な問題ではありません[2]

男性不妊の原因はどこにある?

男性不妊の原因は多岐にわたり、精子を作る機能の障害、精子の通り道の障害、勃起・射精機能の障害などに分類されます。

  • 造精機能障害: 精巣で精子がうまく作られない状態です。精索静脈瘤(精巣の血管の逆流)、染色体異常、内分泌異常(ホルモンバランスの乱れ)、精巣炎、抗がん剤治療、放射線治療、生活習慣(喫煙、過度の飲酒、肥満など)などが原因となります。
  • 精路通過障害: 精子が作られても、精子の通り道が詰まっているために体外に排出されない状態です。感染症(性感染症など)や手術、先天的な異常などが原因となることがあります。
  • 性機能障害: ED(勃起障害)や射精障害(早漏、遅漏、逆行性射精など)により、性交渉が困難であったり、精子が適切に子宮内に到達できない状態です。EDと男性不妊は密接に関連していることが報告されています[1]
  • 原因不明: 約30%のケースでは、現在の医学では明確な原因を特定できない「原因不明不妊」と診断されます。

外来診療では、「妻が妊娠しないので、自分も検査を受けたい」と受診される方が増えています。男性不妊は、女性不妊と比べて社会的な認知度がまだ低い傾向にありますが、ご夫婦で協力して取り組むべき課題であることを常に説明しています。

男性不妊の検査と治療法

男性不妊の検査は、まず精液検査から始まります。精液量、精子濃度、運動率、奇形率などを評価します。異常が見られた場合、血液検査(ホルモン値、染色体検査など)、超音波検査、精巣生検などの精密検査に進みます。

主な治療法

  • 薬物療法: ホルモン異常が原因の場合、ホルモン補充療法や排卵誘発剤の男性版のような薬を使用することがあります。
  • 手術療法: 精索静脈瘤や精路通過障害の場合、手術によって改善が期待できることがあります。
  • 補助生殖医療(ART): 体外受精(IVF)、顕微授精(ICSI)などがあります。精子数が極端に少ない場合や、精子の運動率が低い場合でも、これらの技術によって妊娠の可能性を高めることができます。
  • 生活習慣の改善: 禁煙、禁酒、バランスの取れた食事、適度な運動、ストレス軽減、精巣の温度上昇を避ける(長時間のサウナやタイトな下着を避けるなど)などが推奨されます。

臨床現場では、精液検査の結果にショックを受ける患者さんもいらっしゃいますが、適切な治療や生活習慣の改善で精子の質が向上するケースも少なくありません。特に、肥満や非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)が男性不妊と関連していることも指摘されており、総合的な健康管理が重要です[3]

男性更年期障害(LOH症候群)とは?症状と対処法

男性更年期障害(LOH症候群)の症状と対処法を解説する専門コンテンツ
男性更年期障害の症状と対処法

男性更年期障害、正式にはLOH症候群(Late-onset Hypogonadism)とは、加齢に伴い男性ホルモン(テストステロン)の分泌が低下することで、様々な身体的・精神的な症状が現れる状態を指します。女性の更年期障害と同様に、男性にもホルモンバランスの変化による影響があることが知られています。

男性更年期障害の主な症状

LOH症候群の症状は個人差が大きく、多岐にわたります。主な症状は以下の通りです。

  • 精神神経症状: 意欲低下、集中力低下、不眠、イライラ、うつ症状、不安感など。
  • 身体症状: 疲労感、倦怠感、筋肉量・筋力低下、体脂肪増加、発汗、ほてり、関節痛、骨密度の低下など。
  • 性機能症状: 性欲低下、ED(勃起障害)、朝立ちの減少など。EDとLOH症候群は併発することが多く、互いに影響し合うことがあります[1]

日々の診療では、「最近、なんだか元気が出ない」「仕事に集中できない」「性欲が落ちた」といった漠然とした訴えで受診される方が少なくありません。問診票でLOH症候群の可能性を疑い、テストステロン値の検査を提案することがよくあります。

診断と治療法

診断は、問診による症状の評価と血液検査によるテストステロン値の測定が中心です。テストステロン値が低い場合でも、必ずしもLOH症候群と診断されるわけではなく、症状との関連性を総合的に判断します。

主な治療法

  • テストステロン補充療法: テストステロン製剤を注射や塗布で補充する方法です。症状の改善が期待できますが、前立腺がんや重度の睡眠時無呼吸症候群など、適用できないケースもあります。
  • 生活習慣の改善: 適度な運動(特に筋力トレーニング)、バランスの取れた食事、十分な睡眠、ストレス管理は、テストステロン分泌を促進し、症状の緩和に役立ちます。
  • 漢方薬: 症状に応じて漢方薬が処方されることもあります。

筆者の臨床経験では、テストステロン補充療法を開始して数ヶ月ほどで「気力が戻ってきた」「体が楽になった」と改善を実感される方が多いです。ただし、治療開始後も定期的な血液検査でホルモン値や副作用の有無を確認することが重要です。

⚠️ 注意点

テストステロン補充療法は、前立腺がんのリスクがある方や、すでに前立腺がんを患っている方には禁忌とされています。治療開始前には必ず前立腺の検査が必要です。

性感染症(STI)とは?男性の健康への影響と予防

性感染症(Sexually Transmitted Infections: STI)とは、性行為によって感染する病気の総称です。男性の性と生殖の健康に直接的な影響を及ぼすだけでなく、不妊症の原因となることもあります[2]。早期発見・早期治療が非常に重要です。

男性に多い性感染症の種類と症状

男性に多い主な性感染症とその症状は以下の通りです。

  • クラミジア感染症: 最も多い性感染症の一つです。尿道炎(排尿時の痛み、かゆみ、膿)、精巣上体炎(陰嚢の腫れや痛み)などを引き起こします。無症状のことも多く、知らないうちにパートナーに感染させてしまうリスクがあります。
  • 淋菌感染症: 尿道炎(強い排尿痛、黄色い膿)、精巣上体炎などを引き起こします。クラミジアよりも症状が強く出ることが多いです。
  • 性器ヘルペス: 陰茎や陰嚢、肛門周辺に水ぶくれや潰瘍ができ、強い痛みやかゆみを伴います。再発を繰り返しやすい特徴があります。
  • 梅毒: 初期には陰部にしこり(硬性下疳)ができ、その後全身に発疹が現れることがあります。放置すると心臓や脳に重篤な合併症を引き起こす可能性があります。近年、感染者数が増加傾向にあります。
  • 尖圭コンジローマ: 陰茎、陰嚢、肛門周辺にイボ状の病変ができます。ヒトパピローマウイルス(HPV)が原因です。

診察の場では、「コンドームを使っていたから大丈夫だと思っていた」と質問される患者さんも多いですが、コンドームは全ての性感染症を完全に防げるわけではありません。特に、性器ヘルペスや尖圭コンジローマなどは、コンドームで覆われていない部分からも感染する可能性があります。

性感染症の検査と治療、そして予防

性感染症の検査は、尿検査、血液検査、患部の病変からの検体採取などによって行われます。早期に診断し、適切な治療を開始することが重要です。

主な治療法

  • 薬物療法: 細菌性の性感染症(クラミジア、淋菌、梅毒など)には抗生物質が有効です。ヘルペスには抗ウイルス薬、コンジローマには塗り薬や外科的治療が用いられます。

予防策

  • コンドームの正しい使用: 感染リスクを低減する最も効果的な方法です。
  • 不特定多数との性交渉を避ける: パートナーの数を減らすことで感染リスクを低減できます。
  • 定期的な検査: 感染の疑いがある場合や、パートナーが変わった際には定期的に検査を受けることが推奨されます。特に無症状のSTIは、検査でしか発見できません。
  • HPVワクチン: 尖圭コンジローマの原因となるHPV感染を予防するワクチンは、男性にも有効です。

実際の診療では、性感染症の診断を受けた患者さんには、必ずパートナーの検査・治療も勧めるようにしています。ピンポン感染(治療しても再感染を繰り返すこと)を防ぐためにも、パートナーと同時に治療することが非常に重要です。

男性機能と不妊に関する最新コラム:研究動向と新たな知見

男性機能と不妊に関する最新研究動向と新たな知見をまとめたコラム
男性機能と不妊の最新研究

男性機能と男性不妊に関する研究は日々進展しており、新たな知見が次々と報告されています。ここでは、最近注目されているトピックや研究動向について解説します。

生活習慣病と男性機能の関連性

肥満、糖尿病、高血圧、脂質異常症といった生活習慣病は、EDや男性不妊のリスクを高めることが以前から知られています。特に、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、男性の性機能障害や不妊症と共通の病態生理学的メカニズムを持つ可能性が示唆されており、注目されています[3]

  • メカニズム: NAFLDは、インスリン抵抗性や慢性炎症を引き起こし、テストステロンの産生低下や血管内皮機能障害を招く可能性があります。これらの変化が、EDや精子の質の低下に繋がると考えられています。
  • 臨床的意義: NAFLD患者の男性機能評価や、ED・男性不妊患者におけるNAFLDのスクリーニングの重要性が増しています。生活習慣の改善によるNAFLDの管理は、男性機能の改善にも寄与する可能性があります。

臨床経験上、肥満やメタボリックシンドロームの患者さんで、EDや精子の質の低下を訴えるケースは非常に多く、食事指導や運動療法を積極的に提案するようにしています。体重減少によって、性機能が改善する例も少なくありません。

環境因子と男性不妊

近年、環境中の化学物質(内分泌撹乱物質)が男性の生殖機能に悪影響を及ぼす可能性が指摘されています。プラスチック製品に含まれるフタル酸エステルやビスフェノールAなどが、精子の質を低下させる要因として研究されています。

  • 研究動向: これらの化学物質への曝露量と精子パラメーターの変化、さらには男性不妊との関連性について、疫学研究や動物実験が進行中です。
  • 対策: 現時点では明確な予防策が確立されているわけではありませんが、可能な範囲で化学物質への曝露を減らす生活を心がけることが推奨されます。

男性不妊治療の進歩

顕微授精(ICSI)の登場以来、男性不妊治療は大きく進歩しました。さらに、精巣内精子採取術(TESE)や、精子形成を誘導する新たな薬物療法の開発など、重度の男性不妊に対する治療選択肢も拡大しています。また、AIを活用した精子自動解析システムなど、診断技術の向上も期待されています。

日々の診療では、「精子がないと言われた」と絶望的な気持ちで受診される方もいらっしゃいますが、TESEなどの技術によってご自身の精子で子供を授かる可能性も十分にあります。最新の医療情報を常にアップデートし、患者さんに最適な選択肢を提示できるよう努めています。

治療法対象となる主な不妊原因特徴
タイミング法軽度の造精機能障害、性機能障害自然妊娠に近い形で、排卵日に合わせて性交渉を行う
人工授精(AIH)軽〜中度の造精機能障害、性機能障害精子を直接子宮内に注入する
体外受精(IVF)重度の造精機能障害、精路通過障害(TESE併用)体外で受精させ、胚を子宮に戻す
顕微授精(ICSI)高度な造精機能障害、精子数が極めて少ない場合卵子に直接精子を注入する

まとめ

男性機能の低下や男性不妊は、多くの男性にとってデリケートで深刻な問題です。ED、男性不妊、男性更年期障害、性感染症はそれぞれ異なる病態ですが、互いに影響し合うことも少なくありません。これらの問題は、適切な診断と治療、そして生活習慣の改善によって、多くの場合改善が期待できます。

自身の身体の変化に気づいたら、一人で悩まずに、専門の医療機関を受診することが何よりも重要です。早期の相談が、より良い治療結果に繋がり、生活の質の向上に寄与します。医療機関では、患者さんのプライバシーに配慮し、安心して相談できる環境が整っています。正確な情報を得て、ご自身の健康と向き合う一歩を踏み出しましょう。

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よくある質問(FAQ)

ED治療薬は誰でも服用できますか?
ED治療薬(PDE5阻害薬)は、心臓病や脳卒中の既往がある方、硝酸薬を服用している方など、特定の持病や服用中の薬によっては使用できない場合があります。必ず医師の診察を受け、安全性を確認した上で処方してもらう必要があります。自己判断での服用は危険ですので避けてください。
男性不妊の検査は痛いですか?
男性不妊の基本的な検査である精液検査は、ご自身で精液を採取するだけなので痛みはありません。血液検査も一般的な採血と同様です。精巣の超音波検査も痛みはありません。もし精巣生検などの精密検査が必要な場合は、局所麻酔下で行われるため、痛みは最小限に抑えられます。
男性更年期障害は何歳くらいから起こりますか?
男性更年期障害(LOH症候群)は、一般的に40代後半から50代にかけて発症することが多いですが、個人差が大きく、30代後半から症状が現れる方もいらっしゃいます。加齢とともにテストステロンの分泌量が徐々に減少するため、年齢とともに発症リスクは高まります。
性感染症は再発しますか?
性感染症の種類によっては再発することがあります。特に性器ヘルペスは、一度感染するとウイルスが体内に潜伏し、免疫力の低下などで症状が再発しやすい特徴があります。また、治療後も再度感染するリスクはありますので、予防策を継続することが重要です。
この記事の監修
👨‍⚕️
高他大暉
泌尿器科医
👨‍⚕️
吉田春生
泌尿器科医
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