【小児泌尿器科とは?疾患・治療を専門医が解説】

小児泌尿器科
小児泌尿器科とは?疾患・治療を専門医が解説
最終更新日: 2026-05-12
📋 この記事のポイント
  • 小児泌尿器科は、子どもの泌尿器・生殖器の先天性および後天性疾患を専門とする分野です。
  • ✓ 先天性疾患には水腎症や膀胱尿管逆流症などがあり、早期発見と適切な管理が重要です。
  • ✓ 夜尿症や包茎などの一般疾患も多く、生活指導や薬物療法、手術など多岐にわたる治療が行われます。
※ 本記事は医療に関する情報提供を目的としています。個別の症状については、かかりつけの医療機関にご相談ください。

小児泌尿器科は、新生児から思春期までの子どもたちの泌尿器および生殖器に関する疾患を専門的に診断・治療する医療分野です。大人の泌尿器科とは異なり、成長発達段階にある子どもの特性を考慮した専門的な知識と技術が求められます。先天性の異常から、成長に伴って現れる機能的な問題まで、幅広い疾患に対応します[1]

小児泌尿器の先天性疾患とは?早期発見の重要性

小児泌尿器の先天性疾患を早期発見し治療する医師と子供の様子
小児泌尿器の先天性疾患

小児泌尿器の先天性疾患とは、生まれつき泌尿器や生殖器に構造的・機能的な異常がある状態を指します。これらの疾患は、出生前診断で見つかることもあれば、出生後に症状が現れて診断されることもあります。早期に発見し、適切な治療を行うことで、将来的な腎機能障害や生殖機能への影響を最小限に抑えることが可能です。

水腎症(すいじんしょう)

水腎症は、腎臓で作られた尿が膀胱へうまく流れず、腎臓内に溜まって腎盂(じんう)や腎杯(じんぱい)が拡張する状態です。先天性水腎症の多くは、尿管と腎盂のつなぎ目(腎盂尿管移行部)が狭くなっていることが原因で起こります。胎児期の超音波検査で発見されることが多く、出生後も定期的な超音波検査で経過を観察します。軽度であれば自然に改善することもありますが、拡張が進行したり、腎機能に影響が出たりする場合は手術が必要になることがあります。実臨床では、出生前に診断された水腎症の赤ちゃんに対し、出生後も慎重に経過を追い、感染症予防のための抗菌薬を処方しながら、適切な時期に介入を検討するケースを多く経験します。

膀胱尿管逆流症(ぼうこうにょうかんぎゃくりゅうしょう)

膀胱尿管逆流症(VUR)は、膀胱に溜まった尿が、排尿時や膀胱内圧が上がった際に尿管を逆流して腎臓に戻ってしまう病態です。この逆流によって、腎臓に細菌が到達しやすくなり、腎盂腎炎を繰り返すことで腎臓にダメージを与える可能性があります。診断には排尿時膀胱尿道造影検査(VCUG)が用いられます。治療は、軽度であれば抗菌薬による感染予防と自然治癒を期待した経過観察が中心ですが、重度の場合や腎盂腎炎を繰り返す場合は、手術(内視鏡的注入療法や尿管膀胱新吻合術)が検討されます。日々の診療では、「熱性けいれんかと思ったら腎盂腎炎だった」と相談される方が少なくありません。VURが原因で腎盂腎炎を繰り返すお子さんには、保護者の方に病態を丁寧に説明し、適切な治療方針を一緒に考えていくことが重要です。

尿道下裂(にょうどうかせつ)

尿道下裂は、男児の尿道の出口が陰茎の先端ではなく、陰茎の途中や陰嚢、会陰部などに開口している先天性疾患です。尿の方向が定まらない、立って排尿しにくい、陰茎が下向きに曲がっている(陰茎弯曲)といった症状が見られます。治療は手術が基本で、尿道の延長と陰茎弯曲の矯正を行います。手術時期は一般的に1歳から2歳頃が推奨されます。手術の目的は、機能的・整容的に正常に近い状態にすることです。臨床現場では、尿道下裂のお子さんの保護者から「将来、排尿や性機能に影響はないか」と不安を訴えられることが多く、丁寧な説明と長期的なフォローアップが重要になります。

停留精巣(ていりゅうせいそう)

停留精巣は、精巣が陰嚢内に下降しきらず、腹腔内や鼠径管内にとどまっている状態です。出生時には約3%の男児に見られますが、生後3ヶ月までに多くは自然下降します。生後6ヶ月を過ぎても下降しない場合は、自然下降は期待しにくくなります。停留精巣を放置すると、精子形成機能の障害や将来的な精巣腫瘍のリスクが高まるため、1歳頃までに手術(精巣固定術)を行うことが推奨されています。実際の診療では、乳児健診で指摘されて受診されるケースが多く、保護者の方には早期手術の重要性と精巣を陰嚢内に固定することの意義を詳しく説明しています。

先天性疾患
生まれつき持っている病気や体の異常のこと。遺伝的な要因や胎児期の環境要因などが関与することがあります。

小児泌尿器の一般疾患とは?日常でよく見られる症状

小児泌尿器の一般疾患とは、先天性ではない、成長に伴って発症する泌尿器や生殖器の機能的な問題や感染症などを指します。これらは子どもの日常生活に大きな影響を与えることがあり、適切な診断と治療によって症状の改善が期待できます。

夜尿症(やにょうしょう)

夜尿症、いわゆる「おねしょ」は、5歳を過ぎても週に数回以上、睡眠中に無意識に排尿してしまう状態が3ヶ月以上続く場合に診断されます。原因は、膀胱の容量が小さい、夜間の尿量が多い(抗利尿ホルモンの分泌不足)、睡眠が深い、排尿を抑制する脳の成熟の遅れなど、複数要因が絡み合っていることが多いです。治療は、生活習慣の改善(夕食後の水分制限、寝る前の排尿など)が基本ですが、改善が見られない場合は薬物療法(抗利尿ホルモン薬、抗コリン薬など)や夜尿アラーム療法が検討されます。外来診療では、「もう小学生なのに、いつまでおねしょが続くのか」と心配して受診される保護者の方が増えています。夜尿症は子どもの自尊心にも関わるデリケートな問題であるため、焦らず、家族全体でサポートしていく姿勢が大切だと伝えています。

包茎(ほうけい)

包茎は、亀頭が包皮で覆われている状態を指します。乳幼児期は生理的に包皮と亀頭が癒着している「生理的包茎」がほとんどで、成長とともに自然に剥けることが多いため、基本的には経過観察となります。しかし、包皮炎を繰り返す、排尿時に包皮が風船のように膨らむ(バルーニング)、真性包茎で亀頭が全く露出しないといった場合は治療が検討されます。治療法としては、ステロイド軟膏を塗布して包皮の進展を促す方法や、手術(環状切開術など)があります。実際の診療では、保護者の方から「いつ頃までに剥けるべきか」「手術が必要なのはどんな場合か」といった質問をよく受けます。筆者の臨床経験では、生理的包茎の多くは思春期までに自然に改善するため、過度な心配は不要ですが、炎症を繰り返す場合は早めの受診を勧めています。

膀胱炎・尿路感染症

子どもでも膀胱炎や尿路感染症は起こります。特に女児は尿道が短いため、細菌が膀胱に侵入しやすく、感染症を起こしやすい傾向があります。症状は、排尿時の痛み、頻尿、残尿感、発熱などですが、乳幼児では不機嫌、食欲不振、嘔吐など非特異的な症状で現れることもあります。診断は尿検査で行い、治療は抗菌薬の内服が中心です。再発を繰り返す場合は、背景に膀胱尿管逆流症などの基礎疾患がないか精査することもあります。日常診療では、おむつが取れたばかりのお子さんが頻繁にトイレに行きたがる、排尿を嫌がるなどの症状で受診され、尿路感染症と診断されるケースをよく経験します。適切な抗菌薬治療で症状は速やかに改善することが多いですが、再発予防のための衛生指導も重要です。

陰嚢水腫(いんのうすいしゅ)

陰嚢水腫は、陰嚢内に水が溜まって腫れる状態です。精巣の周りには、胎児期に腹腔と交通していた鞘状突起という管があり、通常は出生後に閉鎖します。この鞘状突起が閉じずに腹腔内の液体が陰嚢に流れ込むことで発生します。多くは自然に閉鎖し、1歳頃までに自然に治癒することが多いため、経過観察が基本です。しかし、1歳を過ぎても改善しない場合や、腫れが大きく鼠径ヘルニア(脱腸)を合併している場合は、手術(鞘状突起結紮術)が検討されます。臨床経験上、陰嚢水腫は痛みがないことが多く、保護者の方が陰嚢の腫れに気づいて受診されることがほとんどです。自然治癒の可能性を説明しつつ、定期的な診察で経過を観察し、手術が必要な場合は適切な時期を提案します。

疾患名主な症状主な治療法
夜尿症5歳以降の週数回以上の夜間遺尿生活指導、薬物療法、アラーム療法
包茎亀頭が包皮で覆われている、炎症を繰り返す経過観察、ステロイド軟膏、手術
膀胱炎・尿路感染症排尿痛、頻尿、発熱(乳幼児は非特異的症状)抗菌薬治療、衛生指導
陰嚢水腫陰嚢の腫れ、大きさの変化経過観察、手術(1歳以降も改善しない場合)

最新コラム(小児泌尿器): 進歩する診断と治療

小児泌尿器科における最新の診断技術と治療法を示す医療機器
小児泌尿器科の最新医療技術

小児泌尿器科の分野は日々進歩しており、診断技術の向上や低侵襲治療の開発が進んでいます。特に、画像診断の精密化や遺伝子診断の導入、内視鏡手術の普及は、子どもの負担を軽減し、より良い治療成績に貢献しています[3]

低侵襲手術の普及

近年、小児泌尿器科領域でも腹腔鏡手術やロボット支援手術といった低侵襲手術が広く導入されています。これらの手術は、従来の開腹手術に比べて傷が小さく、術後の痛みが少ない、回復が早いといったメリットがあります。例えば、水腎症に対する腎盂形成術や、膀胱尿管逆流症に対する尿管膀胱新吻合術など、様々な疾患で適用が拡大しています。筆者の臨床経験では、特に学童期のお子さんでは、傷が小さいことで精神的な負担も軽減され、早期の社会復帰につながることを実感しています。保護者の方からも「傷が目立たないのが嬉しい」という声をよく聞きます。

機能性排尿障害への新たなアプローチ

夜尿症や昼間の尿失禁といった機能性排尿障害に対しては、行動療法や薬物療法に加え、近年では骨盤底筋トレーニングやバイオフィードバック療法など、より専門的なアプローチが注目されています。これらの治療は、子ども自身が排尿機能を意識的にコントロールできるよう促すもので、薬に頼りすぎない治療法として期待されています。また、排尿日誌を用いた詳細な評価や、尿流測定などの客観的なデータに基づいた個別化された治療計画が重要視されています。日々の診療では、排尿日誌をつけてもらうことで、子どもの排尿パターンや水分摂取量、夜尿の頻度などを客観的に把握し、保護者の方と一緒に治療方針を検討しています。この客観的なデータが、治療効果の評価やモチベーション維持に大きく貢献すると感じています。

再生医療や遺伝子治療の可能性

まだ研究段階ではありますが、将来的には再生医療や遺伝子治療が小児泌尿器科領域の難治性疾患に新たな治療選択肢をもたらす可能性があります。例えば、重度の膀胱機能不全に対する膀胱再生や、先天性腎疾患に対する遺伝子治療などが研究されており、今後の進展が期待されます。これらの先端医療は、現在のところ臨床応用には至っていませんが、難病に苦しむ子どもたちとその家族にとって、希望の光となるでしょう。学会などでは、これらの最新の研究成果が活発に議論されており、小児泌尿器科の未来を形作る重要な要素となっています[4]

⚠️ 注意点

最新の治療法や研究段階の技術については、その有効性や安全性に関する十分なエビデンスが確立されていない場合があります。治療を選択する際は、必ず専門医と十分に相談し、メリットとデメリットを理解した上で判断してください。

小児泌尿器科とは?その役割と対象疾患

小児泌尿器科は、新生児期から思春期までの子どもたちの泌尿器(腎臓、尿管、膀胱、尿道)および生殖器(精巣、陰茎、卵巣、膣など)に特化した専門分野です。大人の泌尿器科とは異なり、子どもの成長・発達段階を考慮した診断、治療、長期的なフォローアップが求められます。子どもの体は日々変化しており、疾患の症状や治療への反応も大人とは異なるため、小児科医との連携も不可欠です。この分野は、子どものQOL(Quality of Life)を生涯にわたって支える重要な役割を担っています[2]

小児泌尿器科が対象とする主な疾患

小児泌尿器科が扱う疾患は多岐にわたります。大きく分けて、生まれつきの異常である先天性疾患と、成長過程で発症する後天性疾患(一般疾患)があります。

  • 先天性疾患: 水腎症、膀胱尿管逆流症、尿道下裂、停留精巣、総排泄腔遺残、二分脊椎に伴う神経因性膀胱など。これらの疾患は、腎機能障害や不妊症など、将来にわたる影響を及ぼす可能性があるため、早期の診断と適切な管理が極めて重要です。出生前診断で発見されることも多く、出生後の専門的なフォローアップが計画されます。
  • 後天性疾患(一般疾患): 夜尿症、昼間遺尿症、頻尿、尿路感染症(膀胱炎、腎盂腎炎)、包茎、陰嚢水腫、精索静脈瘤、急性陰嚢症(精巣捻転など)、外傷など。これらは子どもの日常生活に密接に関わる問題が多く、保護者の心配事となることも少なくありません。機能的な問題から感染症、緊急性を要する疾患まで、幅広い対応が求められます。

診断と治療のアプローチ

小児泌尿器科での診断は、問診、身体診察に加え、超音波検査、尿検査、血液検査、レントゲン検査(排泄性尿路造影、排尿時膀胱尿道造影など)、CT、MRIといった画像診断が用いられます。特に超音波検査は、非侵襲的で子どもへの負担が少ないため、広く活用されています。治療法は疾患によって様々ですが、生活指導、薬物療法、カテーテル治療、内視鏡手術、開腹手術などがあります。子どもの成長を考慮し、最も適切なタイミングで、かつ可能な限り低侵襲な方法を選択することが重視されます。例えば、夜尿症では生活指導が基本ですが、効果が見られない場合は薬物療法やアラーム療法を検討します。また、停留精巣のように、放置すると将来的なリスクが高まる疾患では、適切な時期に手術を行うことが推奨されます。

小児泌尿器科医の役割

小児泌尿器科医は、単に病気を治すだけでなく、子どもの成長発達を見守り、将来にわたる健康をサポートする役割を担っています。疾患によっては、長期的なフォローアップが必要となるため、子どもとその家族との信頼関係を築き、継続的な支援を提供することが重要です。また、小児科医、小児外科医、放射線科医、看護師、理学療法士など、多職種連携を通じて包括的な医療を提供することも、小児泌尿器科の大きな特徴です。診察の場では、「うちの子はいつになったらおむつが取れるのか」「おちんちんの皮が剥けないのは異常なのか」といった、保護者の方の素朴な疑問や不安に寄り添い、丁寧な説明を心がけています。

まとめ

小児泌尿器科の専門医が患者と家族に寄り添う温かい対応
小児泌尿器科の専門的ケア

小児泌尿器科は、子どもの泌尿器および生殖器に関する専門分野であり、先天性疾患から成長に伴って生じる一般疾患まで、幅広い病態に対応します。水腎症や膀胱尿管逆流症といった先天性の異常は、早期発見と適切な管理が将来の腎機能や生殖機能に大きく影響するため、特に重要です。夜尿症や包茎などの一般疾患も、子どもの生活の質に関わるため、専門的な診断と治療が求められます。近年では、低侵襲手術の普及や機能性排尿障害への新たなアプローチなど、診断・治療技術の進歩が目覚ましく、子どもの負担軽減と治療成績の向上が期待されています。小児泌尿器科医は、子どもの成長発達を長期的に見守り、多職種と連携しながら、子どもとその家族の健康をサポートする重要な役割を担っています。

📱 【スマホで完結】お薬のオンライン処方なら東京オンラインクリニック

「忙しくて病院に行く時間がない」「まずは薬を試してみたい」という方には、オンライン診療がおすすめです。東京オンラインクリニックなら、スマホ一つで診察から処方まで完結。最短即日でお薬をご自宅にお届けします。

オンライン診療を予約する(初診料無料)

よくある質問(FAQ)

Q1: 小児泌尿器科を受診する目安はありますか?
A1: お子さんの排尿に関する問題(おねしょが続く、昼間のおもらし、排尿時の痛み、頻尿など)、陰部の異常(陰嚢の腫れ、おちんちんの形がおかしい、精巣が触れないなど)、または検診で尿の異常を指摘された場合などが受診の目安となります。特に乳幼児期は症状をうまく伝えられないため、保護者の方が気づいた些細な変化でも、早めに専門医に相談することをお勧めします。
Q2: 夜尿症はいつ頃まで様子を見て良いのでしょうか?
A2: 一般的に5歳を過ぎても週に数回以上夜尿がある場合を夜尿症と診断し、治療を検討する目安となります。小学校入学後も続く場合は、子どもの精神的な負担も考慮し、一度専門医に相談されることをお勧めします。生活習慣の改善から薬物療法まで、様々なアプローチがありますので、お子さんに合った治療法を見つけることができます。
Q3: 子どもの包茎は必ず手術が必要ですか?
A3: いいえ、必ずしも手術が必要ではありません。乳幼児期の包茎は生理的なものがほとんどで、成長とともに自然に剥けることが多いため、基本的には経過観察となります。しかし、包皮炎を繰り返す、排尿時に包皮が膨らむ、亀頭が全く露出しない真性包茎などの場合は、軟膏治療や手術が検討されることがあります。個々の状態に応じて判断するため、専門医にご相談ください。
Q4: 停留精巣はなぜ治療が必要なのですか?
A4: 停留精巣を放置すると、精巣が体温の高い場所にとどまるため、将来的に精子を作る機能(造精機能)が障害されたり、精巣腫瘍のリスクが高まったりする可能性があります。これらのリスクを低減するため、生後6ヶ月を過ぎても精巣が陰嚢内に下降しない場合は、1歳頃までに精巣を陰嚢内に固定する手術(精巣固定術)が推奨されています。
この記事の監修
👨‍⚕️
高他大暉
泌尿器科医
👨‍⚕️
吉田春生
泌尿器科医
このテーマの詳しい記事