- ✓ 尿路結石は激しい痛みを伴うことが多く、腎臓から尿道までの尿路に結石ができる病気です。
- ✓ 診断には尿検査、画像検査が重要で、治療は結石の大きさや位置によって薬物療法、体外衝撃波、手術が選択されます。
- ✓ 予防には十分な水分摂取と食生活の改善が不可欠であり、再発率も高いため継続的な対策が重要です。
尿路結石は、腎臓から尿道までの尿路に結石が形成される病気で、しばしば激しい痛み(疝痛)を伴います。この痛みは「七転八倒の痛み」と形容されることもあり、突然発症することが特徴です。結石の成分や大きさ、位置によって症状や治療法が異なります。
尿路結石の基礎知識

尿路結石の基礎知識とは、その定義、種類、発生メカニズム、そして主な症状について理解することです。
尿路結石は、腎臓、尿管、膀胱、尿道のいずれかの部位に結石が形成される病態を指します。結石の主な成分は、シュウ酸カルシウム、リン酸カルシウム、尿酸、ストラバイト、シスチンなど多岐にわたります。最も多いのはシュウ酸カルシウム結石で、全体の約80%を占めると言われています。結石は、尿中の特定の物質が過飽和状態になり、結晶化して固まることで発生します。この結晶化には、尿量不足、食生活、遺伝的要因、特定の疾患などが複雑に関与しています。
尿路結石はなぜできる?発生メカニズムと種類
尿路結石の発生メカニズムは、尿中の結石形成促進物質(カルシウム、シュウ酸、尿酸など)と結石形成抑制物質(クエン酸、マグネシウムなど)のバランスが崩れることで起こります。尿量が少ないと、これらの物質が濃縮されやすくなり、過飽和状態となって結晶が析出しやすくなります。また、尿pHの異常も結石形成に影響を与えます。例えば、尿酸結石は酸性尿で形成されやすく、リン酸カルシウム結石はアルカリ性尿で形成されやすい傾向があります。
- シュウ酸カルシウム結石
- 最も一般的な結石で、シュウ酸とカルシウムが結合して形成されます。ほうれん草、チョコレート、ナッツ類などシュウ酸を多く含む食品の過剰摂取や、腸からのシュウ酸吸収亢進などが原因となることがあります。
- 尿酸結石
- 尿酸値が高い方や、痛風の患者さんに多く見られます。尿が酸性に傾きすぎると形成されやすくなります。肉類や魚卵などのプリン体を多く含む食品の過剰摂取が関与することがあります。
- ストラバイト結石(感染結石)
- 尿路感染症、特に特定の細菌(ウレアーゼ産生菌)が関与して形成されます。これらの細菌が尿素を分解し、アンモニアを生成することで尿がアルカリ性になり、結石ができやすくなります。
尿路結石の主な症状と合併症
尿路結石の最も特徴的な症状は、突然発症する激しい痛み(疝痛)です。結石が尿管を移動する際に尿の流れが妨げられ、尿管が痙攣することで痛みが生じます。痛みは背中や脇腹から下腹部、鼠径部にかけて広がり、吐き気や嘔吐を伴うことも少なくありません。血尿(肉眼的血尿または顕微鏡的血尿)もよく見られる症状です。結石が膀胱に近い部位にある場合は、頻尿や排尿時の痛みを感じることもあります。
合併症としては、尿路感染症(発熱、悪寒を伴う)、腎機能障害、水腎症(腎臓に尿がたまる状態)などがあります。特に、結石による尿路閉塞と感染症が同時に起こると、敗血症などの重篤な状態に進行するリスクがあるため、早期の診断と治療が重要です。実臨床では、「今まで経験したことのない激痛で、救急車を呼んでしまいました」と訴えて受診される患者さんが多く見られます。特に、痛みが強い場合は、感染症の合併がないか慎重に確認する必要があります。
尿路結石の検査と診断
尿路結石の検査と診断は、症状の評価から始まり、尿検査、血液検査、そして画像診断を組み合わせて行われます。正確な診断は、適切な治療方針を決定するために不可欠です。
患者さんが激しい腰痛や腹痛を訴えて来院された場合、まず尿路結石を疑い、問診で症状の経過や既往歴、家族歴などを詳しく確認します。特に、過去に結石を経験しているか、痛風などの基礎疾患があるかは重要な情報です。小児における尿路結石の診断は、成人と比較して症状の表現が非特異的である場合があり、画像診断が特に重要となります[1][4]。
どのような検査が行われるのか?
尿路結石の診断には、主に以下の検査が行われます。
- 尿検査: 血尿の有無、尿路感染症の兆候(白血球、細菌)、尿pH、尿中の結晶成分などを確認します。これにより、結石の種類を推測する手がかりにもなります。
- 血液検査: 炎症反応(CRP)、腎機能(クレアチニン、eGFR)、電解質(カルシウム、リン)、尿酸値などを評価します。感染症の有無や腎機能への影響を確認するために重要です。
- 画像検査: 結石の位置、大きさ、数、尿路の拡張の有無などを詳細に評価するために不可欠です。
画像検査の種類と特徴
| 検査方法 | 特徴 | メリット・デメリット |
|---|---|---|
| 腹部X線検査(KUB) | カルシウムを含む結石(X線不透過性結石)を描出可能。 | 簡便で被曝量が少ない。X線透過性結石(尿酸結石など)は見えない。腸管ガスなどで見えにくい場合がある。 |
| 超音波検査(エコー) | 腎臓や膀胱内の結石、水腎症の有無を確認。 | 非侵襲的で被曝がない。尿管結石の描出は難しい場合がある。 |
| CT検査(造影剤なし) | 全ての種類の尿路結石を高い精度で描出可能。結石の大きさ、位置、尿路閉塞の程度を詳細に評価。 | 診断精度が高い。被曝がある。 |
| 点滴静注腎盂造影(IVP) | 造影剤を静脈注射し、尿路の形態や結石による閉塞の程度を評価。 | 尿路全体の評価が可能。造影剤アレルギーや腎機能障害のリスク、被曝があるため、CTに取って代わられつつある。 |
日常診療では、CT検査が最も診断に有用であり、結石の正確な情報だけでなく、他の腹部疾患との鑑別にも役立ちます。特に、痛みが強い患者さんでは、結石以外の緊急性の高い疾患(急性虫垂炎、大動脈解離など)を除外するためにもCT検査が推奨されます。筆者の臨床経験では、CT検査によって結石の診断が確定し、患者さんの不安が軽減されるケースを多く経験します。
尿路結石の治療

尿路結石の治療は、結石の大きさ、位置、症状の有無、合併症の状況などに応じて、保存的治療と積極的治療に大別されます。治療の目標は、結石の排出を促し、症状を緩和し、合併症を防ぐことです。
治療法の選択は、患者さんの状態や結石の特徴を総合的に判断して行われます。例えば、小さな結石であれば自然排出を期待して保存的治療を選択しますが、痛みが強く、感染を伴う場合や、腎機能への影響が懸念される場合は、より積極的な治療が必要となります。
保存的治療:自然排出を待つ選択肢
結石が5mm以下と小さい場合や、痛みがコントロールできる場合は、自然排出を期待して保存的治療が選択されることがあります。この治療の基本は以下の通りです。
- 水分摂取: 1日2L以上の水分を積極的に摂取し、尿量を増やして結石の排出を促します。
- 鎮痛剤: 痛みが強い場合は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や鎮痙剤などを用いて痛みを和らげます。
- 排石促進剤: 尿管の筋肉を弛緩させ、結石の排出を助けるα1ブロッカー(例: タムスロシン塩酸塩)などが処方されることがあります[5]。最近では、PDE5阻害薬(例: シルデナフィル)も排石促進効果が報告されており、治療選択肢の一つとして検討されることがあります[6]。
日常診療では、「いつ結石が出るのか不安で…」と相談される方が少なくありません。自然排出を待つ場合でも、定期的な診察と画像検査で結石の位置や大きさを確認し、経過を慎重に観察することが重要です。筆者の臨床経験では、排石促進剤と十分な水分摂取を継続することで、数週間から数ヶ月で結石が排出されるケースを多く経験しています。
積極的治療:体外衝撃波砕石術(ESWL)と手術
結石が大きく自然排出が困難な場合、痛みが持続する場合、尿路閉塞による腎機能障害のリスクがある場合、感染症を合併している場合などには、積極的な治療が検討されます。
- 体外衝撃波砕石術(ESWL: Extracorporeal Shock Wave Lithotripsy): 体外から衝撃波を照射し、結石を細かく砕いて自然排出を促す治療法です。非侵襲的で身体への負担が少ないのが特徴です。
- 経尿道的尿管結石砕石術(TUL: Transurethral Ureterolithotripsy): 尿道から内視鏡(尿管鏡)を挿入し、結石を直接確認しながらレーザーなどで砕き、摘出する手術です。ESWLで効果がない場合や、結石が大きく尿管に嵌頓している場合などに選択されます。
- 経皮的腎結石砕石術(PCNL: Percutaneous Nephrolithotomy): 背中から腎臓に小さな穴を開け、内視鏡を挿入して大きな腎結石を砕き、摘出する手術です。サンゴ状結石など、非常に大きな結石に対して行われます。
- 腹腔鏡下・開腹手術: 非常に稀ですが、他の治療法が困難な場合や、複雑な結石に対して行われることがあります。
治療法の選択は、結石の特性だけでなく、患者さんの年齢、全身状態、基礎疾患なども考慮して慎重に決定されます。特に小児の尿路結石では、成長への影響を考慮した治療選択が求められることがあります[1]。
臨床現場では、ESWLとTULが尿路結石治療の二大柱となっています。どちらの治療法もメリット・デメリットがあり、患者さんのライフスタイルや希望も考慮しながら、最適な方法を一緒に検討していきます。筆者の臨床経験では、治療開始後も定期的なフォローアップを欠かさず行い、結石の再発予防についても指導することが、長期的な患者さんのQOL向上に繋がると感じています。
尿路結石の予防
尿路結石は一度経験すると再発する可能性が高い病気です。そのため、適切な予防策を講じることが非常に重要になります。予防の基本は、食生活の改善と十分な水分摂取です。
再発率は5年で約半数、10年で約7割と言われており、継続的な予防が求められます。日々の診療では、「またあの痛みを経験したくない」という患者さまも少なくありません。結石の種類に応じた具体的な食事指導や生活習慣の改善が、再発予防の鍵となります。
再発を防ぐための食生活のポイント
結石の種類によって食事指導は異なりますが、一般的に以下の点が重要です。
- 十分な水分摂取: 1日2L以上の水分(水やお茶)を摂取し、尿量を増やすことが最も重要です。尿量を増やすことで、尿中の結石形成物質の濃度が薄まり、結晶化しにくくなります。特に夏場や運動後など汗をかく際は、意識して水分を補給しましょう。
- 塩分の制限: 塩分の過剰摂取は尿中カルシウム排泄を増加させ、結石形成を促進する可能性があります。加工食品や外食を控えめにし、薄味を心がけましょう。
- 動物性タンパク質の制限: 肉類などの動物性タンパク質の過剰摂取は、尿酸やカルシウムの排泄を増加させ、尿を酸性に傾ける傾向があります。適度な摂取を心がけましょう。
- シュウ酸の摂取に注意: シュウ酸カルシウム結石の場合、シュウ酸を多く含む食品(ほうれん草、チョコレート、ナッツ類、紅茶、コーヒーなど)の過剰摂取に注意が必要です。ただし、完全に避けるのではなく、バランスの取れた食事を心がけ、シュウ酸を多く含む食品を摂る際は、同時にカルシウムを摂取することで、腸管内でシュウ酸とカルシウムが結合し、吸収されにくくすることが期待できます。
- クエン酸の摂取: クエン酸は尿中のカルシウムと結合し、結石形成を抑制する効果が期待できます。レモンやグレープフルーツなどの柑橘類に多く含まれています。
生活習慣の改善と定期的な経過観察の重要性
食生活だけでなく、生活習慣の改善も予防には欠かせません。
- 適度な運動: 肥満は尿路結石のリスクを高める要因の一つです。適度な運動を心がけ、体重管理に努めましょう。
- ストレス管理: ストレスが結石形成に直接関与するという明確なエビデンスは少ないものの、全身の健康状態を良好に保つことは重要です。
- 定期的な医療機関受診: 結石を一度経験した方は、定期的に医療機関を受診し、尿検査や画像検査で結石の再発や腎機能の状態を確認することが推奨されます。特に、無症状で結石が形成されている場合もあるため、早期発見が重要です。
外来診療では、患者さんの生活習慣を詳細にヒアリングし、個々のライフスタイルに合わせた具体的なアドバイスを行うようにしています。例えば、仕事中に水分を摂り忘れてしまう方には、デスクに水筒を置く、アラームを設定するなど、具体的な行動変容を促します。臨床経験上、結石の予防には個人差が大きいと感じており、患者さん一人ひとりに寄り添った継続的なサポートが不可欠です。
最新コラム(尿路結石)

尿路結石の診断と治療は日々進化しており、新たな知見や治療法が報告されています。ここでは、尿路結石に関する最近のトピックや研究動向についてご紹介します。
医療技術の進歩により、診断の精度が向上し、より低侵襲な治療選択肢が増えています。また、結石形成のメカニズムに関する研究も進んでおり、個別化された予防法の開発が期待されています。
小児尿路結石の増加とその背景
近年、小児における尿路結石の発生率が増加傾向にあることが報告されています[1]。これには、食生活の変化(高塩分・高糖質食)、運動不足、肥満、特定の薬物の使用などが関与していると考えられています。小児の結石は、成人と比較して診断が難しい場合があり、症状の表現が非典型的であることや、画像診断における被曝の問題も考慮する必要があります[4]。小児の結石治療においては、成長期の身体への影響を最小限に抑えつつ、効果的な治療を行うための専門的なアプローチが求められます。
日常診療では、小児の患者さんで「お腹が痛い」と訴えて受診し、検査の結果、尿路結石が見つかるケースを経験することがあります。特に、遺伝的要因や代謝異常が背景にある場合もあり、詳細な検査と長期的なフォローアップが重要になります。
慢性炎症性疾患と尿路結石の関連性
最近の研究では、強直性脊椎炎などの慢性炎症性疾患と尿路結石の発生リスクの関連性が指摘されています[3]。これらの疾患では、炎症反応が持続することで尿中の結石形成促進物質が増加したり、尿路の機能に影響を与えたりする可能性があります。また、一部の治療薬が結石形成リスクを高めることも知られています。このような関連性の解明は、特定の疾患を持つ患者さんに対する尿路結石の予防や管理において、新たな視点を提供するものと期待されます。
アンキローザン脊椎炎(強直性脊椎炎)患者さんでは、尿路結石の有病率が高いことがメタアナリシスで示されています[3]。これは、慢性炎症や代謝異常が関与している可能性が考えられます。このような背景を持つ患者さんに対しては、結石リスクを考慮した定期的なスクリーニングや、より積極的な予防策の検討が重要になります。
尿路結石研究の最前線
尿路結石に関する研究は多岐にわたり、結石形成の分子メカニズムの解明、新しい治療法の開発、個別化医療の推進などが進められています[2]。例えば、遺伝子解析による結石リスクの評価や、AIを活用した画像診断の効率化、ナノテクノロジーを用いた結石溶解薬の開発なども期待されています。これらの研究成果が、将来的に尿路結石の診断、治療、予防をさらに向上させることに繋がるでしょう。
筆者の臨床経験では、新しい治療法や診断技術が導入されるたびに、患者さんの負担が軽減され、より効果的な治療が可能になることを実感しています。今後も、最新の知見を取り入れながら、患者さんにとって最善の医療を提供できるよう努めていきたいと考えています。
まとめ
尿路結石は、激しい痛みを伴うことが多く、再発率も高い疾患です。診断には尿検査や画像検査が重要であり、結石の大きさや位置、患者さんの状態に応じて、薬物療法、体外衝撃波砕石術、内視鏡手術などが選択されます。一度結石を経験した方は、十分な水分摂取、バランスの取れた食事、適度な運動といった生活習慣の改善を通じて、再発予防に努めることが非常に重要です。また、小児尿路結石の増加や、慢性炎症性疾患との関連性など、尿路結石に関する研究は日々進展しており、今後の診断・治療・予防のさらなる発展が期待されます。
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オンライン診療を予約する(初診料無料)よくある質問(FAQ)
- Valerie Panzarino. Urolithiasis in Children.. Advances in pediatrics. 2021. PMID: 32591054. DOI: 10.1016/j.yapd.2020.03.004
- Dean G Assimos. Urolithiasis/Endourology.. The Journal of urology. 2023. PMID: 37199091. DOI: 10.1097/JU.0000000000003538
- Océane Henares, Arnaud Pflimlin, Xavier Romand et al.. Urolithiasis in ankylosing spondylitis: A meta-analysis.. Joint bone spine. 2022. PMID: 35490944. DOI: 10.1016/j.jbspin.2022.105388
- Julie Bernardor, Valeska Bidault, Justine Bacchetta et al.. Pediatric urolithiasis: what can pediatricians expect from radiologists?. Pediatric radiology. 2023. PMID: 36329164. DOI: 10.1007/s00247-022-05541-1
- タムスロシン塩酸塩(タムスロシン)添付文書(JAPIC)
- シルデナフィル(ウリセス)添付文書(JAPIC)

