Emergency department testing guide
救急外来の検査は、病名を一度に確定する「一式の検査」ではありません。まず気道・呼吸・循環、意識、バイタルサインから緊急度を判断し、症状と診察所見に応じて血液検査、心電図、X線、CT、超音波などを選びます。治療を先に始める場合、時間を空けて再検査する場合、検査を追加せず経過を見る場合もあります。結果の数値だけでなく、発症時刻と変化を含めて受け止めることが大切です。
検査の目的は、①直ちに治療が必要な異常を見つける、②危険な病気の可能性を下げる、③入院・帰宅・転院を決める、④治療後の変化を確かめることです。全員に同じ検査を行うのではなく、緊急度と病気の可能性に合わせて組み合わせます。一つの正常値だけでは発症直後の病気を否定できず、異常値だけでも診断は確定しません。[1][3]
反応がない・普段どおり呼吸していない、突然の強い胸痛や呼吸困難、顔や手足の片側の麻痺・ろれつ困難、突然の激しい頭痛、吐血・大量出血、けいれんが続く、重い外傷などは直ちに119番へ連絡してください。自分で検査先を探したり、検査結果を待ったりしないでください。[2]

救急外来で検査を行う目的:緊急度と次の行動を決める
救急外来では、病名を確定することだけが検査の目的ではありません。危険な状態を早く見つけること、治療を始めても安全か確認すること、帰宅後に悪化する可能性を評価することも重要です。診断が確定していなくても、重症化の危険が高ければ監視・治療・入院を優先します。反対に、検査値に軽い異常があっても、症状と所見が安定し外来で再評価できるなら帰宅となる場合があります。
「除外するための検査」と「確定に近づく検査」がある
検査によって得意な役割が異なります。たとえば正常心電図だけでは急性冠症候群を完全には除外できませんが、危険な不整脈や明らかなST変化を早期に捉える助けになります。Dダイマーは血栓の存在を直接確定する検査ではなく、症状と事前確率が適切な場合に肺血栓塞栓症等の可能性を下げ、画像検査の要否を考える材料です。CTは出血・損傷の位置を詳しく示しますが、すべての痛みに必要なわけではありません。
検査を待つより治療が先になることがある
心停止、気道閉塞、重い低酸素、ショック、けいれん持続などでは、生命維持に必要な処置を検査結果より先に始めます。蘇生、酸素化、止血、血糖補正などと採血・心電図・超音波を並行し、状態の変化で優先順位を更新します。救急検査は治療の開始を不必要に遅らせない範囲で行われます。[3][4]
救急外来の検査の流れ:トリアージから再評価まで
- 受付・トリアージ主症状、発症時刻、意識、呼吸、循環、出血、激しい痛み等を確認し、診療の優先度を決めます。
- バイタルサインと一次評価体温、脈拍、呼吸数、血圧、SpO2、意識、血糖等を必要に応じて測り、危険な異常へ対応します。
- 問診・身体診察症状の場所・性質・時間経過、持病、薬、アレルギー、外傷機転、妊娠可能性を整理します。
- 初期検査疑う病気に応じて心電図、採血、尿、X線、超音波等を選び、治療と並行する場合があります。
- 追加検査・再検査初期結果、症状変化、治療反応からCT、MRI、培養、髄液、時間を空けた採血等を検討します。
- 結果の統合と方針決定帰宅、経過観察、入院、手術・専門治療、別施設への転院を決め、未確定結果と再受診条件を共有します。
受付順ではなく緊急度順
院内トリアージは、来院後に状態を評価し、緊急度区分に応じて診療の優先順位を決める仕組みです。あとから来た人が先に検査や処置を受けることがあります。待っている間に痛みが増す、息苦しくなる、冷汗が出る、反応が鈍くなるなどの変化があれば、遠慮せずスタッフへ伝えてください。[1]
同じ人でも検査計画は変わる
最初は軽症に見えても、発熱・血圧低下・意識変化が加われば感染症やショックの評価を急ぎます。初回検査が問題なくても胸痛が続く、神経症状が再発する、腹痛が局在化する場合は再診察や追加検査が必要です。救急診療は一回の測定ではなく、時間経過を含む連続した評価です。
バイタルサイン:すべての検査を組み立てる出発点
バイタルサインは単なる受付時の数値ではなく、緊急度、治療の必要性、治療後の反応を捉える情報です。体温、脈拍、呼吸数、血圧、酸素飽和度、意識レベルを基本とし、症状により血糖、痛み、尿量、末梢循環等も確認します。単独の値より、普段との違いと経時変化が重要です。
| 項目 | 主に分かること | 結果を見る注意点 |
|---|---|---|
| 体温 | 感染・炎症、低体温、環境障害の手がかり | 高齢者・免疫低下では重い感染でも高熱がない場合がある |
| 脈拍 | 頻脈・徐脈、不整、循環負荷 | 痛み、発熱、不安、薬、脱水でも変化する |
| 呼吸数 | 呼吸負荷、代謝異常、全身悪化 | SpO2が保たれていても呼吸仕事量が増えている場合がある |
| 血圧 | 循環不全、高血圧緊急症等の手がかり | 普段の値、左右差、測定条件、臓器障害を合わせる |
| SpO2 | 末梢での酸素化の目安 | 冷たい指、体動、マニキュア、末梢循環不良等で誤差が生じる |
| 意識 | 脳、呼吸、循環、代謝、中毒等の異常 | 眠気と意識障害を区別し、普段の状態を家族等から確認する |
異常値の原因を一つに決めつけない
頻脈は不整脈だけでなく発熱、脱水、出血、痛みでも起こります。SpO2低下は肺炎や喘息だけでなく、測定不良でも生じます。血圧が保たれていても初期ショックを否定できない場合があります。症状、皮膚色、呼吸状態、尿量、検査結果と組み合わせ、必要に応じて再測定します。
測定後に治療反応を確認する
酸素投与、輸液、解熱、鎮痛、不整脈治療等の後は、症状とバイタルサインがどう変わったかを確認します。数値が一時的に改善しても原因が解決したとは限りません。再悪化の可能性や観察時間を含めて入院・帰宅を判断します。
救急外来の血液検査:項目ごとの目的と限界
採血項目は症状に応じて選びます。「救急セット」として全項目を測るわけではありません。感染、出血、心臓病、腎障害、電解質異常、中毒など、見逃すと危険な病態を想定し、結果が診療方針を変える項目を優先します。基準範囲は健康な集団から定める参考域で、病気を診断する境界値と同じとは限りません。[10]
| 検査群 | 主な目的 | 単独判断しない理由 |
|---|---|---|
| 血算(CBC) | 貧血、出血の影響、白血球、血小板 | 感染の初期や免疫低下で白血球が典型的に変化しないことがある |
| 電解質・血糖 | ナトリウム、カリウム、血糖等の緊急異常 | 採血条件や点滴、薬、腎機能の影響を受ける |
| 腎・肝機能 | 臓器障害、薬・造影検査の安全性 | 過去値と尿量、脱水、筋肉量等を合わせる |
| CRP等 | 炎症の程度と推移の参考 | 感染の有無や細菌・ウイルスを単独で区別できない |
| 心筋トロポニン | 心筋傷害の検出 | 発症直後は上昇前のことがあり、心筋梗塞以外でも上がる |
| Dダイマー | 適切な事前確率で血栓症の除外を補助 | 感染・外傷・妊娠・高齢等でも上がり、陽性だけで血栓を確定しない |
| 乳酸 | 組織灌流低下や重症度の参考、治療後の推移 | けいれん、肝機能、薬等でも変化し、正常でも重症を完全に否定しない |
| 凝固検査 | 出血・血栓傾向、抗凝固薬の影響 | 薬の種類によって数値へ反映されにくい場合がある |
敗血症が疑われるときの培養と乳酸
感染に伴う臓器障害が疑われる場合は、バイタルサインと臓器機能を迅速に評価し、血液培養等の検体採取、乳酸測定、感染源の検索を行います。血液培養は可能なら抗菌薬投与前に採取しますが、採取のために必要な抗菌薬開始を大きく遅らせてはいけません。乳酸は一回値だけでなく、全身状態と再測定を含めて評価します。[4]
血液ガス分析は呼吸と酸塩基の評価
動脈血液ガスでは酸素分圧、二酸化炭素分圧、pH等を測り、呼吸不全、ショック、代謝異常を評価します。静脈血液ガスがpHや二酸化炭素の初期評価に使われる場合もありますが、動脈血の酸素分圧と同じではありません。採血部位、酸素投与条件、呼吸状態を記録し、結果だけで挿管等を決めず、意識・呼吸仕事量・循環を合わせます。
心電図と心臓の検査:胸痛・動悸・失神を時間軸で評価

12誘導心電図で分かること
心電図は、心拍数・リズム、伝導障害、心筋虚血を示す変化、電解質異常を疑う変化等を確認します。胸痛や急性冠症候群が疑われる場合は早期の記録が重要です。ただし検査した瞬間の電気活動であり、発作が止まっている不整脈や発症直後の心筋梗塞では初回に明らかな変化がないことがあります。[5][6]
心筋トロポニンは心筋傷害のマーカー
高感度心筋トロポニンは急性冠症候群の評価に重要ですが、「陽性=心筋梗塞」とは限りません。心不全、頻脈、肺血栓塞栓症、腎機能低下、心筋炎等でも上昇します。発症から短いとまだ上昇していないことがあるため、発症時刻と施設の測定法に応じて再検します。心電図、症状、変化量を組み合わせます。
心エコーとモニター
ベッドサイド心エコーは、心臓の動き、心嚢液、右心負荷、容量状態等を短時間で評価する助けになります。ただし観察できる範囲と精度は検査条件・実施者で変わり、詳細な心エコーやCT等が必要な場合があります。心電図モニターは不整脈を連続監視しますが、12誘導心電図や症状の評価を置き換えるものではありません。
不整脈の種類や検査後の流れは不整脈ガイドでも確認できます。
画像検査:X線・CT・超音波・MRIをどう使い分けるか
画像検査は「詳しい検査ほどよい」のではなく、疑う病気、必要な速さ、被ばく・造影・磁場のリスク、患者の安定性、施設で利用できる機器から選びます。ACRの画像適正基準も、症状と臨床状況ごとに適切な検査を判断する考え方を示しています。[7]
| 検査 | 救急での主な役割 | 主な注意 |
|---|---|---|
| X線 | 骨折、胸部の大きな異常、腸管ガス等を短時間で確認 | 細かな骨折・初期肺炎等が写らない場合がある。放射線被ばくあり |
| CT | 頭蓋内出血、外傷、胸腹部の出血・炎症・血管病変等を詳しく評価 | 放射線被ばく。造影時は過敏反応・腎機能等を確認 |
| 超音波 | 心臓、腹腔内出血、胆道、尿路、妊娠、血管等をベッドサイドで評価 | 被ばくなし。体格・ガス・検査者・観察範囲で限界がある |
| MRI | 脳梗塞、脊髄、軟部組織等を詳細に評価 | 検査時間、強磁場、植込み機器、金属、閉所、監視体制を確認 |
頭部症状:出血を急いで見るCTと梗塞を詳しく見るMRI
突然の麻痺・言語障害、意識障害、激しい頭痛、頭部外傷では、出血や大きな構造異常を短時間で確認するため単純CTが選ばれることがあります。MRIは脳梗塞等に高い情報を与えますが、撮影時間や金属・機器の安全確認が必要です。どちらを先に行うかは、発症時刻、病状、治療可能性、施設体制で決まります。
胸痛・呼吸困難:病気ごとに必要な画像が違う
胸部X線は肺炎、気胸、心拡大等の手がかりになりますが、急性冠症候群を直接除外する検査ではありません。大動脈解離や肺血栓塞栓症では造影CTが重要になる一方、事前確率と腎機能・造影剤反応を考慮します。心不全・心タンポナーデ等では超音波が迅速な判断を助けます。
腹痛・外傷:診察所見と超音波・CTを組み合わせる
腹痛の部位、妊娠可能性、循環状態、外傷機転により検査を選びます。超音波は被ばくがなくベッドサイドで行えますが、すべての臓器・病変を十分に観察できるとは限りません。CTは広範囲を詳しく評価できますが、不要な被ばくや偶発所見を避けるため適応を判断します。詳しい特徴はCT検査、超音波検査、MRI検査の各ガイドも参照してください。
尿検査・妊娠反応・培養・髄液検査・POCT
尿検査と妊娠反応
尿検査は尿路感染、血尿、蛋白、糖・ケトン、脱水等の手がかりになります。採取方法や月経、保管時間で結果が影響を受けるため、症状と尿沈渣・培養を組み合わせます。妊娠可能性がある場合の尿・血中hCGは、異所性妊娠等の評価や画像・薬剤選択に関係します。結果が早期妊娠で陰性となる可能性も考慮します。
培養検査
血液、尿、喀痰、髄液等の培養は、感染の原因微生物と薬剤感受性を調べるために行います。最終結果まで日数がかかるため、重症感染では結果を待たず経験的治療を始め、判明後に薬を調整します。汚染菌と真の感染を区別するため、採取方法、複数セット、全身状態を合わせます。
髄液検査
発熱、強い頭痛、意識障害、項部硬直等で髄膜炎・脳炎等を疑う場合、腰椎穿刺で脳脊髄液を調べます。凝固異常、局所神経所見、頭蓋内圧亢進を疑う所見等があるときは、穿刺前に画像や安全性を確認します。検査を待つことで必要な抗菌薬等が遅れないよう、疑う病態に応じて順序を決めます。
POCT(診療現場即時検査)
血糖、血液ガス、一部の心筋マーカー、感染症迅速検査など、受診者の近くで短時間に測定する検査があります。迅速である一方、検査室法との違い、測定範囲、検体量、偽陰性・偽陽性を理解して使います。緊急判断を支える道具であり、病歴・診察や必要な確定検査を置き換えるものではありません。
検査結果の受け止め方:正常・異常だけで決めない
基準範囲は診断の境界線ではない
検査結果の「H」「L」は基準範囲の外であることを示しますが、それだけで病気を確定しません。健康な人でも一定割合が範囲外となり、年齢、妊娠、食事、運動、採血時刻、薬、測定法で変わります。一方、基準範囲内でも症状と経過から病気を疑う場合があります。過去値や変化量を確認してください。[10]
事前確率で同じ結果の意味が変わる
症状や診察から病気の可能性が低い人の軽い異常と、典型的な症状がある人の同じ異常では意味が違います。検査は病気の可能性を上げ下げする情報です。陽性なら必ず病気、陰性なら必ず安全という検査は多くありません。結果が判断を変えるかを考えて選択します。
発症時刻と推移を見る
心筋トロポニン、炎症反応、画像所見などは、病気の初期に明らかでないことがあります。初回正常でも症状が続く・悪化する場合は、再検査や別の検査を検討します。反対に、治療後に数値が改善しても、呼吸・循環・意識が悪化していれば数値だけで安心できません。
偶発所見と緊急所見を区別する
CT等で、現在の症状とは直接関係しない結節・嚢胞等が見つかることがあります。緊急治療が不要でも後日フォローが必要な場合があるため、所見名、受診先、期限を書面で確認します。救急外来で扱う問題と、外来で精査する問題を分けることが重要です。
再検査と待ち時間:なぜ同じ検査を繰り返すのか
時間を置くことで見える変化がある
発症直後の心筋トロポニン、進行する出血によるヘモグロビン、治療後の乳酸・電解質などは、時間による変化が診断と安全確認に重要です。再検査の間隔は、検査法、発症時刻、病状で異なります。単に「結果が出なかったから」ではなく、変化量を見る計画的な再測定です。
画像の撮影後も読影と統合に時間が必要
撮影終了は診療終了ではありません。画像を確認し、必要に応じて放射線科の読影、専門科への相談、過去画像との比較を行います。血液検査も検体の搬送・測定・再確認があり、培養はさらに時間がかかります。複数の結果を合わせて安全な方針を決めるため待ち時間が生じます。
待合中の変化は新しい検査情報
胸痛が強くなる、息が苦しい、冷汗、しびれ・麻痺、意識がぼんやりする、出血が増える、急な発疹や顔の腫れがある場合は、次の呼び出しを待たず伝えてください。症状変化によりトリアージ区分、検査順、治療計画が変わります。
造影CT・MRIなど検査前の安全確認

ヨード造影剤
造影CTは血管や臓器を詳しく評価できますが、過敏反応や腎機能への影響等に注意します。過去のヨード造影剤による反応、喘息、腎臓病、透析、糖尿病、甲状腺疾患、服用薬を伝えます。投与中・投与後に息苦しさ、顔や喉の腫れ、全身じんましん、血圧低下を疑う症状があれば直ちに知らせます。[11]
メトホルミン等の薬
ヨード造影剤とメトホルミン等のビグアナイド系糖尿病薬は、腎機能や検査条件によって一時中止・再開確認が必要になる場合があります。緊急検査では利益を優先する場合もあります。自己判断で中止・再開せず、お薬手帳や薬の写真を提示し、具体的な指示を受けてください。
MRIの磁場と植込み機器
MRIはX線被ばくがありませんが、強い磁場を使います。心臓ペースメーカー、人工内耳、脳動脈瘤クリップ、神経刺激装置、インスリンポンプ、体内金属、金属片の外傷歴を伝え、機器カードを提示します。「MRI対応」でも撮影条件や監視が必要です。安全性が不明な機器を自己判断で持ち込みません。[8]
ガドリニウム造影剤
造影MRIでは腎機能と過去の造影剤反応を確認します。腎機能低下でも一律に検査不能とは限らず、造影の利益、代替法、製剤、投与量を検討します。検査しない不利益も含めて個別に判断します。[9]
妊娠・授乳
妊娠の可能性や妊娠週数を伝えます。生命に関わる病気が疑われるときは必要なX線・CTを過度に遅らせない場合がありますが、撮影範囲、代替検査、造影剤を検討します。授乳中の対応も造影剤と状況で異なるため、説明を受けてください。
検査後の帰宅・経過観察・入院・転院の判断
| 方針 | 主な判断材料 | 確認すること |
|---|---|---|
| 帰宅 | 緊急疾患の可能性が十分下がり、症状・バイタルが安定し、自宅で観察可能 | 診断の確実度、薬、未確定結果、再受診症状、フォロー先 |
| 救急外来で経過観察 | 時間による症状・検査値の変化を見る必要がある | 再採血・再心電図の予定、飲食・移動の制限 |
| 入院 | 監視、酸素・点滴、追加検査、専門治療、生活支援が必要 | 入院目的、予想する検査、持参薬、家族連絡 |
| 転院・専門施設 | 手術、カテーテル、脳卒中治療、集中治療等の体制が必要 | 転院理由、検査画像・情報の共有、搬送方法 |
診断未確定でも帰宅することがある
救急外来の役割は、危険な病態の可能性を評価し、今すぐ必要な処置と次の診療先を決めることです。症状の原因が完全には確定しなくても、緊急性が低く外来フォローが可能なら帰宅となります。その場合は「何が否定できたか」「何が未確定か」「いつ・どこへ再診するか」を確認します。
正常検査後も再受診が必要なことがある
初期には所見が出にくい病気や、帰宅後に進行する病気があります。症状が続く・悪化する、新しい麻痺・呼吸困難・失神・高熱・出血が出る場合は、前回検査が正常でも再受診してください。結果票と退院時説明書を持参し、前回受診後の変化を伝えます。
未確定結果の連絡経路を確認
培養、病理、外部委託検査、画像の最終読影などが後日確定する場合があります。医療機関から連絡するのか、自分で確認するのか、連絡が取れない場合の方法を確認します。電話番号や住所の変更があれば伝えてください。
救急外来で検査前に伝える情報
症状と発症時刻
- 最後に普段どおりだった時刻
- 突然か徐々か、症状が最も強かった時刻
- 持続・反復、動作・食事・外傷との関係
- 自宅で測った体温・血圧・血糖・SpO2
- 行った応急手当と使用した薬
脳卒中や心臓病など時間依存性の治療では、発症時刻が検査・治療選択に関係します。本人が話せない場合は、家族や目撃者の連絡先、救急隊へ伝えた情報が役立ちます。
持病・薬・アレルギー
- 心臓、肺、腎臓、肝臓、糖尿病、出血・血栓の病気
- 抗凝固薬・抗血小板薬、糖尿病薬、ステロイド、免疫抑制薬
- 処方薬、市販薬、サプリメント、最終服用時刻
- 薬・造影剤・食物等のアレルギーと過去の症状
- 手術歴、植込み機器、体内金属
薬名が分からなければ、お薬手帳、薬袋、容器、スマートフォンの写真を提示します。抗凝固薬は頭部外傷や出血評価、メトホルミンは造影検査、ステロイド・免疫抑制薬は感染評価に関係します。
妊娠可能性と最終月経
妊娠の可能性、妊娠週数、最終月経、授乳を伝えます。必要な救急検査を一律に避けるのではなく、胎児・母体への利益とリスク、代替検査を検討します。緊急時でも分かる範囲で伝えてください。
救急車を呼ぶ場面と準備は救急外来・救急車利用ガイド、症状別の目安は救急受診を考える症状でも確認できます。
検査と緊急度の関係:結果待ちにしない症状
| 症状・状況 | 主な初期評価の例 | 行動 |
|---|---|---|
| 反応なし、普段どおり呼吸しない | 呼吸・脈拍、心電図、蘇生中の原因検索 | 直ちに119番、指令員の指示で心肺蘇生・AED |
| 突然の胸痛、冷汗、呼吸困難、失神 | バイタル、心電図、心筋トロポニン、X線・超音波・CT等 | 自己運転せず119番。検査より搬送を優先 |
| 突然の麻痺、ろれつ困難、視野異常 | 発症時刻、神経診察、血糖、頭部CT/MRI等 | 症状が消えても119番。食事・内服を自己判断しない |
| 大量出血、吐血、黒色便、重い外傷 | 循環、血算・凝固・交差適合、超音波・CT等 | 119番。飲食を避け、抗凝固薬情報を伝える |
| 高熱と意識変化、呼吸増加、血圧低下 | バイタル、血液培養、乳酸、臓器機能、感染源検索 | 救急要請・当日評価。検査結果待ちで受診を遅らせない |
| 顔・喉の腫れ、喘鳴、全身じんましん | 気道・呼吸・循環、原因薬剤・食物 | アナフィラキシーを疑い119番。処方済みアドレナリンは指示どおり使用 |
家庭の測定値だけで救急判断を遅らせない
家庭用血圧計、パルスオキシメータ、スマートウォッチは参考になりますが、測定誤差や機器の限界があります。強い胸痛、呼吸困難、意識変化、麻痺等があれば、一見正常な値でも救急相談を優先します。反対に異常表示が出たときは症状と再測定を確認し、危険症状があれば119番へ連絡してください。
検査結果の写真だけで自己診断しない
結果票や画像には、測定条件、基準範囲、医師の読影、臨床的な重要度が必要です。インターネット上の別施設の基準値と単純比較せず、検査を依頼した医療機関へ確認します。緊急症状がある場合は、過去の正常結果を理由に受診を見送らないでください。
救急で行われる検査ガイドの全体マップ
このピラーでは、救急外来に到着してから、緊急度評価、血液・心電図・画像等の選択、結果の統合、再検査、帰宅・入院判断までを扱いました。検索意図を次の5領域へ分けて理解すると、検査名だけでなく「なぜ今必要か」を確認しやすくなります。
体温、脈拍、呼吸数、血圧、酸素飽和度、意識を繰り返し確認する意味。
血算、生化学、血糖、心筋トロポニン、凝固、乳酸、血液ガス等の目的と限界。
X線、CT、超音波、MRIを症状・緊急度・安全性から選ぶ考え方。
心電図、尿、妊娠反応、培養、髄液、POCTなどを追加する条件。
新しい検査技術は診療支援として評価し、個別の検査選択は標準手順と再評価を優先。
未公開の子記事へ架空のURLは作りません。公開済みの関連情報は本文と関連記事から確認できます。外傷の検査は外傷・環境救急ガイド、日常的な症状の整理はよくある症状ガイドも参照してください。
救急外来の検査に関するよくある質問(FAQ)
参考文献・公的資料
- 厚生労働省「救急外来におけるトリアージと検体検査」
- 厚生労働省「こんな時は迷わず119へ」
- 日本蘇生協議会「JRC蘇生ガイドライン2025」
- 日本集中治療医学会・日本救急医学会「日本版敗血症診療ガイドライン2024 バンドル」
- AHA/ACCほか「胸痛の評価と診断ガイドライン」
- 日本蘇生協議会「JRCガイドライン2025 緊急心血管治療補遺」
- American College of Radiology「Appropriateness Criteria」
- 日本医学放射線学会「画像診断におけるMRIの安全性と運用指針」
- 日本医学放射線学会・日本腎臓学会「腎障害患者におけるガドリニウム造影剤使用ガイドライン 第3版」
- 日本臨床検査医学会「学生用共用基準範囲 改訂版」2025年
- PMDA「ヨード造影剤 電子化された添付文書」2025年4月改訂
- 日本医学放射線学会「画像診断ガイドライン2021年版」
- PMDA「重篤副作用疾患別対応マニュアル:アナフィラキシー」

