フラクショナルレーザーによるニキビ跡治療:CO2・エルビウムYAGとは?
最終更新日: 2026-05-12
📋 この記事のポイント
- ✓ フラクショナルレーザーはニキビ跡、特に萎縮性瘢痕に有効な治療法です。
- ✓ CO2レーザーとエルビウムYAGレーザーは、それぞれ異なる特性を持ち、症状に応じて使い分けられます。
- ✓ 治療効果の最大化と副作用の軽減には、適切な機器選択と術後のケアが重要です。
※ 本記事は医療に関する情報提供を目的としています。個別の症状については、かかりつけの医療機関にご相談ください。
ニキビ跡、特に肌に凹凸を残す萎縮性瘢痕(いしゅくせいはんこん)は、多くの方にとって深刻な肌の悩みの一つです。このようなニキビ跡の改善に有効な治療法として、近年注目されているのがフラクショナルレーザー治療です。フラクショナルレーザーは、皮膚に微細な穴を開けることで、肌の再生を促し、ニキビ跡の凹凸を滑らかにする効果が期待できます。本記事では、フラクショナルレーザーの中でも代表的なCO2レーザーとエルビウムYAGレーザーに焦点を当て、そのメカニズム、効果、注意点について詳しく解説します。
📑 目次
フラクショナルレーザーとは?そのメカニズムを解説

- フラクショナルレーザー
- レーザー光を点状に分割して照射することで、皮膚に微細な穴を開け、周囲の正常組織を残しながら皮膚の再生を促す治療技術。これにより、ダウンタイム(治療後の回復期間)を短縮しつつ、効果的な肌の入れ替えを可能にします。
CO2レーザーとエルビウムYAGレーザー:それぞれの特徴と効果の違い
フラクショナルレーザーにはいくつかの種類がありますが、ニキビ跡治療で主に用いられるのはCO2(炭酸ガス)レーザーとエルビウムYAGレーザーです。これらはどちらもアブレーティブ(蒸散型)レーザーに分類され、皮膚組織を蒸散させることで効果を発揮しますが、その特性には違いがあります。CO2フラクショナルレーザーとは?
CO2フラクショナルレーザーは、水に非常に吸収されやすい10,600nmの波長を持つレーザーです。皮膚組織の約70%は水分で構成されているため、CO2レーザーは照射された部位の水分に吸収され、瞬間的に皮膚組織を蒸散させます。これにより、微細な穴が形成されると同時に、周囲の組織には熱凝固作用が働きます。- 特徴: 蒸散作用と熱凝固作用の両方が強く、深部にまで作用しやすい。
- 効果: ニキビ跡の凹凸改善、肌の引き締め、毛穴の縮小など、比較的重度のニキビ跡や深いしわに有効とされる。
- ダウンタイム: 熱凝固作用が強いため、赤みや腫れ、かさぶたの期間が長く、数日から1週間程度かかることが多い。
エルビウムYAGフラクショナルレーザーとは?
エルビウムYAGフラクショナルレーザーは、2,940nmの波長を持つレーザーで、CO2レーザーよりもさらに水への吸収率が高いのが特徴です。そのため、照射された皮膚組織は瞬時に蒸散しますが、周囲への熱影響はCO2レーザーに比べて非常に少ないとされています。- 特徴: 水への吸収率が高く、熱凝固作用が少ないため、周囲組織へのダメージが小さい。
- 効果: 比較的軽度から中程度のニキビ跡、肌の質感改善、小じわの改善などに適している。
- ダウンタイム: 熱影響が少ないため、CO2レーザーに比べて赤みや腫れが少なく、ダウンタイムは短い傾向にあります。
| 項目 | CO2フラクショナルレーザー | エルビウムYAGフラクショナルレーザー |
|---|---|---|
| 波長 | 10,600nm | 2,940nm |
| 水への吸収率 | 高い | 非常に高い |
| 熱凝固作用 | 強い | 少ない |
| 深達度 | 深い | 比較的浅い |
| ニキビ跡の種類 | 重度の凹凸、深いしわ | 軽度〜中程度の凹凸、肌質改善 |
| ダウンタイム | 数日〜1週間程度(赤み、腫れ、かさぶた) | 比較的短い(赤み、腫れが軽度) |
フラクショナルレーザー治療の一般的な流れと期間は?

治療前のカウンセリングと準備
治療を検討する際は、まず医師による丁寧なカウンセリングが不可欠です。ニキビ跡の状態、肌質、過去の治療歴、期待する効果、ダウンタイムへの許容度などを詳しく確認します。この際、筆者は患者さんの肌のタイプやニキビ跡の深さ、広がりを詳細に診察し、最適なレーザーの種類や照射設定を判断します。特に、色素沈着のリスクが高い肌質の方には、事前の美白ケアやテスト照射を提案することもあります。- 診察・カウンセリング: 医師がニキビ跡の状態を評価し、適切なレーザーの種類や治療計画を提案します。
- 同意書の確認: 治療内容、効果、リスク、費用などについて十分に説明を受け、同意書に署名します。
- 麻酔: 治療中の痛みを軽減するため、麻酔クリームを塗布することが一般的です。
施術とアフターケア
麻酔が効いたことを確認した後、レーザーを照射します。照射時間は顔全体で15分〜30分程度が目安です。照射後は、冷却や保湿を行い、炎症を抑えるための軟膏を塗布します。治療後は、紫外線対策と保湿が非常に重要です。日焼け止めを塗布し、刺激の少ない保湿剤で肌を保護してください。また、メイクはダウンタイムの経過を見て、医師の指示に従って再開するようにしましょう。臨床現場では、施術後の保湿と紫外線対策を怠ると、色素沈着のリスクが高まるため、患者さんには特に丁寧な説明を心がけています。治療回数と期間
ニキビ跡の状態にもよりますが、一般的にフラクショナルレーザー治療は1回の施術で完結するものではなく、複数回の施術が必要です。通常、3〜5回程度の治療を1ヶ月〜2ヶ月間隔で行うことが多いです。効果の現れ方には個人差がありますが、筆者の臨床経験では、治療開始から3〜6ヶ月ほどでニキビ跡の凹凸が目立たなくなり、肌質の改善を実感される方が多いです。ネットワークメタアナリシスでも、フラクショナルレーザーはニキビ跡治療において有効な選択肢の一つとされています[4]。治療効果を最大化し、副作用を軽減するためのポイント
フラクショナルレーザー治療の効果を最大限に引き出し、同時に副作用のリスクを最小限に抑えるためには、いくつかの重要なポイントがあります。適切なレーザー選択と設定
ニキビ跡の種類(アイスピック型、ボックスカー型、ローリング型など)、深さ、患者さんの肌質(乾燥肌、脂性肌、敏感肌など)、色素沈着のリスクなどを総合的に判断し、CO2レーザーとエルビウムYAGレーザーのどちらが適しているか、あるいは両方を組み合わせるべきかを医師が判断します。また、レーザーの出力や照射密度といった設定も、効果と安全性を左右する重要な要素です。日常診療では、患者さんの肌の状態を細かく観察し、前回の治療効果やダウンタイムの状況を考慮して、毎回最適な設定を調整することが重要になります。徹底した術前・術後ケア
- 術前: 治療部位に炎症や日焼けがないか確認し、必要に応じて治療を延期することもあります。
- 術後: 冷却、保湿、紫外線対策を徹底します。処方された軟膏やクリームを指示通りに使用し、肌を清潔に保つことが感染予防にも繋がります。
ダウンタイム中の過ごし方
治療後のダウンタイムは、レーザーの種類や設定、個人の肌質によって異なりますが、赤み、腫れ、かさぶた、ざらつきなどが生じることがあります。これらの症状は一時的なものであり、適切なケアを行うことで通常は数日〜1週間程度で落ち着きます。⚠️ 注意点
ダウンタイム中に無理にメイクをしたり、かさぶたを剥がしたりすると、色素沈着や感染のリスクが高まります。また、激しい運動や飲酒、長時間の入浴など、血行を促進する行為は赤みを増強させる可能性があるため、避けるようにしてください。
フラクショナルレーザー治療の費用と保険適用は?

費用の目安
治療費用は、使用するレーザーの種類、照射範囲(顔全体、部分など)、施術回数、医療機関の方針によって大きく異なります。一般的には、1回あたりの施術費用は数万円から十数万円程度が目安となるでしょう。複数回セットでの割引プランが用意されている医療機関もあります。保険適用について
ニキビ跡治療は、病的な状態の治療というよりも、美容的な改善を目的とするため、保険適用外となるのが一般的です。ただし、重度のケロイドや肥厚性瘢痕など、機能的な問題や痛みを伴う場合は、保険適用となる可能性もゼロではありません。しかし、フラクショナルレーザーは主に萎縮性瘢痕(凹んだニキビ跡)に用いられるため、ほとんどの場合で自由診療となります。費用については、カウンセリング時に必ず確認し、納得した上で治療を開始することが大切です。フラクショナルレーザー治療の副作用とリスクは?
フラクショナルレーザー治療は効果的な一方で、いくつかの副作用やリスクも存在します。これらを理解し、適切に対処することが安全な治療には不可欠です。主な副作用
- 赤み、腫れ: 治療直後から数日間続くことが一般的です。CO2レーザーの方が強く出やすい傾向があります。
- かさぶた、ざらつき: 微細な穴が開いた部分が小さなかさぶたとなり、肌がざらつくことがあります。自然に剥がれるのを待ちましょう。
- 乾燥: 治療後の肌は一時的に乾燥しやすくなります。保湿を徹底してください。
- 色素沈着(PIH): 炎症後色素沈着と呼ばれるもので、特にアジア人の肌では起こりやすいリスクです。紫外線対策を怠ったり、肌への刺激が強すぎたりすると発生しやすくなります。通常は数ヶ月で自然に薄れていきますが、治療が必要な場合もあります。
稀なリスク
- 感染: 治療部位から細菌やウイルスが侵入し、感染症を引き起こす可能性があります。清潔な状態を保ち、処方された抗生剤などを適切に使用することが重要です。
- 瘢痕形成: 非常に稀ですが、治療部位が逆に凹んだり、盛り上がったりする瘢痕になるリスクもゼロではありません。
- アレルギー反応: 麻酔や使用する薬剤に対してアレルギー反応を起こす可能性があります。
まとめ
フラクショナルレーザーは、CO2レーザーとエルビウムYAGレーザーという2つの主要なタイプがあり、ニキビ跡の凹凸改善に有効な治療法です。それぞれのレーザーには異なる特性があり、ニキビ跡の種類や肌質、ダウンタイムへの許容度に応じて最適な選択をすることが重要です。治療効果を最大化し、副作用を最小限に抑えるためには、医師による適切な診断と施術、そして患者さん自身の丁寧な術前・術後ケアが不可欠です。治療を検討する際は、必ず専門医と十分に相談し、納得した上で治療計画を立てるようにしてください。よくある質問(FAQ)
📖 参考文献
- Niloufar Najar Nobari, Anahita Tabavar, Sara Sadeghi et al.. A systematic review of the comparison between needling (RF-needling, meso-needling, and micro-needling) and ablative fractional lasers (CO2, erbium YAG) in the treatment of atrophic and hypertrophic scars.. Lasers in medical science. 2023. PMID: 36749436. DOI: 10.1007/s10103-022-03694-x
- Jianguo Chen, Yingying Wan, Yan Lin et al.. Fractional Carbon Dioxide Laser or Erbium:Yttrium-Aluminum-Garnet Laser Assisted by Topical Application/Intradermal Injection of Platelet-Rich Plasma for Postacne Scars.. Plastic and reconstructive surgery. 2022. PMID: 34847111. DOI: 10.1097/PRS.0000000000008513
- Woraphong Manuskiatti, Thanawan Iamphonrat, Rungsima Wanitphakdeedecha et al.. Comparison of fractional erbium-doped yttrium aluminum garnet and carbon dioxide lasers in resurfacing of atrophic acne scars in Asians.. Dermatologic surgery : official publication for American Society for Dermatologic Surgery [et al.]. 2013. PMID: 23205717. DOI: 10.1111/dsu.12030
- Yunong Wang, Zhanxue Sun, Lingling Cai et al.. Comparative efficacy and safety of six photoelectric therapies for the atrophic acne scars: A network meta-analysis.. Indian journal of dermatology, venereology and leprology. 2023. PMID: 37067138. DOI: 10.25259/IJDVL_572_2021
🏛️ ガイドライン・公的資料
この記事の監修
👨⚕️
丸岩裕磨
美容皮膚科医

