肩の注射の種類・効果と注意点
薬の名前だけで選ばず、どこへ何のために注射するか、効果をいつ見直すかを確認します。
肩の注射は、原因と注射する場所に合わせて薬を選び、痛みや炎症を和らげることを目指します。五十肩と腱板の障害では根拠や役割が異なり、断裂した腱が注射だけで元通りになるとは言えません。糖尿病や服薬、過去の注射歴を伝え、期待する効果、副作用、効かない場合の次の対応を確認します。
肩のどこへ、何を目的に注射するのかを確認する
肩の注射には、関節の中や、肩峰下滑液包という腱の周囲の袋などを対象にする方法があります。痛む場所と注射する場所が必ず同じとは限りません。診察から疑う原因を確かめ、薬と部位、目的を合わせて選びます。[1]
痛みを和らげる目的、局所麻酔薬の反応を参考にする目的などがあり、注射の効き方だけで原因を完全に確定できるわけではありません。「肩の注射」という一つの名前で、すべて同じ効果があると考えないことが大切です。
超音波を使って針の位置を確認する方法もあります。必要性は部位や状態、実施する医療者の判断で変わります。超音波を使えばすべての注射が有効・無害になるわけではありません。注射の目的と手順、代わりの方法について説明を受けます。[5]
ステロイド・ヒアルロン酸・PRPの違い
ステロイド
- 対象
- 炎症に伴う痛みを短期に和らげたい場合
- 根拠・役割
- 五十肩の関節内注射では、短期の痛みや機能の改善を支持する比較研究があります。[2]
- 注意・限界
- 効果の持続は人によって違います。血糖の上昇、感染などの注意があり、同じ治療を機械的に繰り返しません。
ヒアルロン酸
- 対象
- 診断と製剤の適応に合う場合
- 根拠・役割
- 日本では、肩関節周囲炎が承認された製剤があります。製剤ごとの電子添文に従って使用します。[6]
- 注意・限界
- 国内の承認があることと、どの肩の病気にも同じ効果があることは別です。断裂した腱がつながると考えることはできません。
PRPなど
- 対象
- 標準的な治療と比較して検討する場合
- 根拠・役割
- PRPは自分の血液から血小板を多く含む成分を取り出す治療です。腱板への注射について研究が続いています。
- 注意・限界
- AAOSの2025年指針では、腱板の腱障害・部分断裂などに一律に行うことを支持していません。修復や長期の改善を保証する説明には注意します。[4]
局所麻酔薬を併用する場合は一時的に痛みが和らぐことがありますが、その間に病変が治ったという意味ではありません。痛みが軽いからと重い物を持ったり、強く肩を動かしたりせず、注射後の過ごし方を確認してください。
五十肩と腱板の障害の研究を分けて考える
五十肩の治療を比べた複数の試験をまとめた研究では、関節内ステロイド注射による短期の改善が示されています。自宅での運動や理学療法を組み合わせることも検討されますが、注射だけで長期の回復が保証されるわけではありません。[2]
一方、GRASP試験では腱板に関連した肩の痛みに対する注射などが比べられ、1年間の主要な評価で注射の長期的な上乗せ効果は示されませんでした。この試験は五十肩や手術を要する全層断裂などを除いており、別の病気へ結果をそのまま広げることはできません。[3]
腱板断裂では、注射の反復や手術との間隔も考慮します。AAOSの指針は反復するステロイド注射と腱の状態への懸念を示していますが、すべての人に共通する安全な回数を断定できる根拠ではありません。過去の注射日と薬の情報を伝え、必要性をその都度見直します。[4]
糖尿病・服薬・手術予定は、注射前に伝える
- 糖尿病と現在の血糖管理、感染症や発熱、注射部位の皮膚症状
- 抗凝固薬・抗血小板薬など、血液を固まりにくくする薬を含む服薬
- 薬や消毒薬でのアレルギー、過去の注射後の体調変化
- 妊娠・授乳の状況、持病、近く予定している手術
- 同じ肩に受けた注射の種類、回数、日付と効果の持続
ステロイドの関節内注射では、一時的に血糖が上がる場合があります。糖尿病のある人は、特に注射後1〜3日ほどの確認方法や、どの値・症状で連絡するかを主治医と相談します。薬を自己判断で増減しないでください。[5]
血液を固まりにくくする薬を飲んでいても、必ず注射ができないわけではありません。出血のリスクや処置内容を医師が確認します。注射のために自己判断で休薬せず、お薬手帳を持参してください。[5]
肩への注射を相談する診察では、「痛みを減らして眠りたい」「運動に取り組めるようにしたい」など、何を改善したいかを先に聞きます。再診では効いたかだけでなく、何日ほど楽だったか、できる動作が増えたかも確かめます。効果が短い、生活が変わらない場合は、回数を増やす前に診断と治療全体を見直します。

注射後の強い腫れ・熱・発熱は連絡する
注射後に一時的な痛みが出ることはありますが、強くなる痛み、熱を持つ腫れ、赤み、発熱があれば感染などを確認する必要があります。次の予約を待たず実施した医療機関へ連絡し、つながらなければ救急へ相談してください。
息苦しさ、顔や喉の腫れ、意識が遠のくなどの症状は119番へ連絡します。注射前に、夜間や休診日の連絡先、どの変化で受診するかを確認しておきます。
一般的な関節内注射後は、少なくとも当日の強い負荷を避けることが勧められます。一方、自己判断で長く固定し続けることは避け、運動や入浴、仕事に戻る時期は処置内容に応じた指示を確認します。[5]
効かなかったときは、回数を増やす前に見直す
再診では、注射後に眠れたか、着替えや仕事が楽になったか、効果がどれくらい続いたかを伝えます。痛みの点数が下がっても、動かしにくさが残るなら別の支援が必要かもしれません。診断、注射の目的、運動の方法を振り返って次の方針を決めます。
ヒアルロン酸も無制限に続ける薬ではありません。例えば参照した製剤の電子添文では、改善が認められない場合は5回を限度として中止する旨が示されています。これはその製剤の記載であり、あらゆる注射に共通する回数ではありません。[6]
保険適用や費用は、薬・処置・診断・自己負担割合によって異なります。自由診療では1回の価格だけでなく、必要とされる回数、検査や追加処置の費用、効果が乏しい場合の中止条件まで確認します。海外の推奨と、日本の承認・保険適用を同じ意味に扱わないことも大切です。
注射以外の選択肢は五十肩の治療、腱板断裂の治療、肩の運動・リハビリで整理しています。注射を受ける場合も見送る場合も、生活で目指すことと見直す時期を決めましょう。
よくある質問
肩の注射で腱板断裂は治りますか?
痛みの軽減を目指すことはありますが、断裂した腱が注射だけで元通りにつながるとは言えません。断裂の状態と生活への影響から、リハビリや手術を含めて検討します。
ステロイド注射は何回まで受けられますか?
全員共通の安全な回数は決められません。薬、注射部位、前回の効果、糖尿病などの持病、腱の状態、手術予定を確認して判断します。効かない場合に回数だけを増やさず治療を見直します。
糖尿病があっても注射を受けられますか?
血糖管理や薬の種類、注射の目的から医師が判断します。ステロイド注射で一時的に血糖が上がることがあるため、注射後の測定方法と連絡する目安を主治医と相談してください。
注射後に痛くなったらどうしますか?
強くなる痛み、赤み、熱を持つ腫れ、発熱は当日中に実施した医療機関へ連絡します。息苦しさや顔・喉の腫れ、意識が遠のくなどの症状は119番へ連絡してください。
参考文献
- 日本整形外科学会.五十肩(肩関節周囲炎).
日本の学会・患者向け資料 - Challoumas D, et al. Comparison of Treatments for Frozen Shoulder: A Systematic Review and Meta-analysis. JAMA Netw Open. 2020. PMID: 33326025.
系統的レビュー・メタ解析 - Hopewell S, et al. Progressive exercise compared with best practice advice, with or without corticosteroid injection, for the treatment of patients with rotator cuff disorders (GRASP): a multicentre, pragmatic, 2 × 2 factorial, randomised controlled trial. Lancet. 2021. PMID: 34265255.
無作為化比較試験 - AAOS. Management of Rotator Cuff Injuries Evidence-Based Clinical Practice Guideline. 2025.
診療ガイドライン - Uson J, et al. EULAR recommendations for intra-articular therapies. Ann Rheum Dis. 2021. PMID: 34035002.
関節内治療の推奨 - PMDA.アルツディスポ関節注25mg 電子添文.2022年10月改訂.
日本の承認情報・電子添文
本記事は一般的な医療情報であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。症状、既往歴、服薬、妊娠などによって適切な対応は異なります。急な強い腫れ・熱感、けが後の腕の脱力は予約を待たず医療機関へ連絡してください。胸痛・息苦しさ・冷や汗を伴う場合は119番へ連絡してください。
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