仕組みと治療選択高周波(RF)の作用・期待できる変化・ダウンタイム・副作用
サーマクールは、皮膚表面を冷却しながらモノポーラRF(高周波)を組織へ伝え、熱による組織収縮とその後のリモデリングを利用する非切開治療です。皮膚の軽度〜中等度のゆるみやしわで検討されますが、余剰皮膚を切除したり、深く下垂した組織を手術のように移動したりする治療ではありません。

最初に押さえる3点
- モノポーラRFで広い範囲を加熱する治療で、狙いは皮膚の質感・しわ・軽度のゆるみの改善です。
- 「一度で必ずリフトアップ」「効果は必ず1年」ではありません。変化の程度・現れる時期・持続は個人差があります。
- 植込み型の電気機器は禁忌です。痛み、赤み、腫れに加え、熱傷、表面不整、知覚変化、色素変化なども説明を受けます。
サーマクールとは?モノポーラRFによる非切開治療
サーマクールは、電極から対極板へ高周波電流を流すモノポーラ方式の機器です。電気抵抗によって組織内に熱を生じさせる一方、皮膚表面は冷却して保護します。FDAのThermage FLX 510(k)資料では、RFを送りながら表皮を伝導冷却し、接触状態と組織インピーダンスを監視してエネルギーを送る構造が示されています[公1]。
- RF(radiofrequency)
- 高周波の電流を組織へ流し、電気抵抗によって熱を生じさせるエネルギーです。レーザーの光やHIFUの超音波とは物理的な仕組みが異なります。
- モノポーラRF
- 治療電極と対極板の間に電流を流す方式です。皮膚表面だけを点で加熱するのではなく、設定と組織条件に応じて比較的広い容積を加熱します。
- 非切開治療
- 皮膚を切除・縫合しない治療です。「侵襲がない」「副作用がない」という意味ではありません。
FDAが示す適応には、眼周囲を含むしわ・しわ様変化の非侵襲的治療などが含まれます。ただし、米国の510(k)クリアランスは、日本で「顔のたるみ改善」を目的として承認されていることと同義ではありません。国内で受ける際は、使用機器の日本での承認・認証状況、未承認なら入手経路と国内承認機器の有無、救済制度の対象外となる可能性まで説明を受けてください。
高周波(RF)は皮膚へどう作用する?
電気抵抗による加熱と表皮冷却
サーマクールFLXは6.78MHzのRFエネルギーを組織へ送り、表皮を冷却しながら選択的な組織凝固を行う設計です[公1]。熱の分布は、出力だけでなく、チップ、接触、インピーダンス、照射の重なり、解剖、組織の水分や厚みなどに左右されます。「真皮の何mmまで」「必ずSMASまで」のように一つの深さで表すのは適切ではありません。
コラーゲンの収縮と時間をかけた再構築
熱によってコラーゲン線維の構造が変化し、短期的な収縮が起こり得ます。その後、創傷治癒反応に伴うコラーゲンの再構築が進むことが機序として考えられています。少人数のヒト組織研究では、施術後のコラーゲン量や線維配列の変化が報告されています[2][3][4]。ただし、組織学的変化がそのまま全員の見た目の改善量を示すわけではありません。
「脂肪を溶かす治療」ではない
主目的は皮膚のしわ・ゆるみへの非切開治療であり、顔の脂肪を狙って均一に減らす治療ではありません。輪郭は皮膚、皮下脂肪、支持靱帯、筋肉、骨格の組み合わせで決まります。頬のボリューム低下が目立つ人では、強い収縮を望むことが適切かも含めて評価します。
サーマクールが向くかを診察で判断する

「たるみ」という言葉には、皮膚のゆるみ、脂肪の下垂・減少、むくみ、筋肉の緊張、骨格変化、しわ、色や質感の変化が混在します。写真だけで施術を決めず、表情を動かした状態、触診、左右差、既往施術、希望する変化を確認します。
検討されやすい状態
- 軽度〜中等度の皮膚のゆるみや細かいしわが主な悩み
- 切開手術ほど大きな変化ではなく、穏やかな引き締めを希望
- 強い皮膚炎、感染、傷、日焼けが治療部位にない
- 変化の程度と時期に個人差があることを理解できる
- 植込み型電気機器などの禁忌に該当しない
別の方法が優先されることがある状態
余剰皮膚が多い、組織の下垂が強い、骨格や脂肪量が主因、特定部位のボリューム不足が主因の場合、RF単独では希望に届かないことがあります。強いリフトを求めるなら手術、局所のボリューム不足なら注入、表情じわなら別の薬剤治療など、悩みの原因に合う方法を比較します。何もしないで経過を見ることも選択肢です。
期待できる変化と限界
2022年の系統的レビューでは、モノポーラ・バイポーラRFによる顔や体の皮膚のゆるみに測定可能な改善が報告されましたが、採用研究は少なく、機器・評価法・部位・治療回数が均一ではありませんでした[1]。中下顔面の軽度〜中等度のゆるみを対象にした小規模試験やアジア人を含む前向き研究でも改善が報告されています[5][7]。
コラーゲンの収縮・再構築により、触感や見た目のハリが変化する可能性があります。
FDA資料ではしわ・眼周囲のしわの非侵襲的治療が適応に含まれます。部位ごとの専用条件が必要です。
軽度のゆるみが改善するとフェイスラインが整って見えることがありますが、脂肪除去や手術と同じ変化ではありません。
施術直後の変化だけで判断せず、数週〜数か月の再構築を見ます。ただし一定の時期を保証できません。
結果は診断、年齢だけでなく、皮膚厚、ゆるみの程度、エネルギー条件、照射範囲、既往施術、評価方法で変わります。写真は光、角度、表情で印象が変わるため、同じ条件で比較します。「1回で誰でも顔が小さくなる」「必ず若返る」といった表現は、研究の限界を反映していません。
施術前から施術後までの流れ
施術前:既往歴・機器・期待値を確認
植込み型電気機器、妊娠・授乳、糖尿病、自己免疫疾患、てんかん、ヘルペス、治療部位のフィラー・永久化粧・タトゥー、最近の施術、薬、ケロイド傾向、知覚低下、皮膚炎や感染を申告します。メーカーはこれらの一部について「研究されていない」としており、禁忌と未検討事項を区別して判断します[9]。
施術中:対極板・接触・冷却を管理
治療部位を清潔にし、必要なマーキング、対極板、カップリングメディア、適切なチップを用いて照射します。機器は接触とインピーダンスを監視し、表皮を冷却しながらRFを送ります。照射数や出力は万人共通ではありません。熱さや痛みは安全情報として伝え、急に強くなる、局所へ集中する、耐え難い場合は直ちに施術者へ知らせます。
施術後:皮膚状態を確認して帰宅
赤み、腫れ、痛み、左右差、皮膚表面の異常を確認します。切開創はありませんが、当日から何をしてよいかは皮膚状態と併用施術で変わります。強い摩擦、熱刺激、日焼けを避け、異常時の連絡方法と受診先を確認します。
サーマクールの痛みは?
冷却・振動があっても痛みはゼロではない
メーカー安全情報では、施術中に最もよく報告される有害反応として治療部位の軽度〜中等度の痛みが挙げられています[9]。FLXには冷却や振動など快適性を支援する機能がありますが、「旧機種より必ず無痛」とは言えません。部位、骨への近さ、出力、照射回数、体調や不安で感覚は変わります。
痛みを隠して我慢することは安全対策になりません。熱感が局所に蓄積する、突然鋭くなる、皮膚が白くなる・黒くなるなどがあれば、その場で止めて確認します。麻酔の要否や方法は施設方針だけでなく、安全なフィードバックを保てるかも含めて医師が判断します。
ダウンタイムと施術後の経過
切開や表皮剥離を目的としないため、切開手術やアブレイティブレーザーより日常生活への影響が小さい場合があります。しかし「ダウンタイムゼロ」ではありません。メーカーは、赤みは通常24時間以内、腫れは通常5日以内に治まる一方、数週間残ることもあると案内しています。これは目安で、全員の経過を保証する数字ではありません[9]。
当日〜数日
赤み、腫れ、熱感、圧痛が出ることがあります。洗顔、化粧、運動、入浴、飲酒の再開時期は、治療部位と皮膚状態、併用施術の有無を確認してください。自己判断で強いマッサージや高温の美容機器を追加しないようにします。
数週〜数か月
皮膚の再構築による変化は時間をかけて評価します。一方、表面の凹凸やしこり、知覚変化は遅れて気づくことがあります。「数か月後だから関係ない」と決めつけず、治療部位の左右差や変化を写真とともに施術施設へ伝えます。

HIFU・糸リフト・注入・手術との違い
| 方法 | 主な仕組み | 検討しやすい悩み | 主な限界・注意 |
|---|---|---|---|
| サーマクール | モノポーラRFで広い容積を加熱 | 皮膚のゆるみ、細かいしわ、ハリ | 強い下垂を物理的に移動・切除しない。熱傷等のリスク |
| HIFU | 集束超音波を焦点に集め熱凝固点を作る | 焦点深度を選んだ引き締め | 神経・熱傷等のリスク。RFとの優劣は悩みと条件次第 |
| 糸リフト | 皮下へ糸を通し組織へ力を加える | 非切開での物理的な牽引を希望 | 感染、凹凸、露出、左右差、持続の個人差 |
| 注入治療 | フィラー等で形や容量を補う | 容量不足や輪郭の局所修正 | 血管閉塞等、薬剤固有のリスク。皮膚収縮とは別 |
| 切開手術 | 余剰皮膚の切除や組織の移動・固定 | 下垂が強く大きな変化を希望 | 傷、麻酔、出血、感染、回復期間が必要 |
HIFUとの比較
HIFUは超音波を焦点へ集める方法、サーマクールは電流による抵抗加熱を利用する方法です。「HIFUはSMAS、RFは真皮」と一行で分けると、機器ごとの焦点深度や熱分布を見落とします。希望する変化、脂肪量、皮膚厚、痛みや既往反応を基に選びます。詳しい比較はサーマクールとHIFUの違い・費用比較でも確認できます。
マイクロニードルRFとの比較
マイクロニードルRFは針を皮膚へ挿入してRFを送るため、毛穴、瘢痕、肌質など別の目的で使われます。針を刺さないサーマクールと、出血、表皮損傷、ダウンタイム、感染リスクが同じではありません。詳しくはマイクロニードルRFの仕組みと効果を参照してください。
併用は自動的に効果を高めるわけではない
HIFU、レーザー、注入、糸などを組み合わせれば必ず満足度が上がるわけではありません。熱、腫れ、炎症、フィラーや糸への影響、評価時期が重なります。併用を勧められたら、各施術の目的、順序、間隔、追加リスク、単独治療や経過観察との差を確認します。
副作用・禁忌・施術前の安全確認
明確な禁忌:植込み型電気機器
メーカーは、心臓ペースメーカー、植込み型除細動器(AICD)、その他の植込み型電気機器がある人への使用を禁忌としています。RFの電磁場や電流が機器へ悪影響を及ぼす可能性があるためです[9]。自己判断せず、機器名・手帳を提示し、主治医と施術医へ確認してください。
メーカーが未検討としている状況
妊娠・授乳中、糖尿病、ループスなどの自己免疫疾患、ヘルペス、てんかん、小児、治療部位のフィラー・永久化粧・タトゥー上などは、メーカーが使用を研究していない状況として挙げています[9]。「禁忌ではないから安全」と考えず、延期や代替を含めて個別に判断します。活動性の皮膚炎、感染、開放創、強い日焼けがある場合も、先に皮膚状態を整えます。
起こり得る有害反応
- 施術中の軽度〜中等度の痛み
- 赤み、白色化、腫れ、じんましん、内出血
- 水疱、熱傷、痂皮、瘢痕
- 皮膚表面の凹凸、不整
- しびれ、ピリピリ感、一時的な麻痺などの知覚変化
- 首を中心としたしこり・結節
- 色素沈着などの色調変化
- 口周囲などの単純ヘルペス再活性化
過去の600件超の後ろ向き解析や臨床研究は安全性を報告していますが、研究条件と現在の機器・実臨床が同じとは限らず、まれな事象を否定できません[6]。施術者の経験だけに頼らず、正規の機器・チップ、適切な保守、接触・冷却・対極板の管理、緊急時対応を確認します。
施術後のセルフケア
刺激と熱を重ねない
赤みや熱感がある間は、こする、強いマッサージ、サウナ、長時間の高温浴、家庭用美容機器などの追加刺激を避けます。冷却の方法や時間は施設の指示に従い、凍傷を起こすような直接の氷冷は避けます。外用薬や化粧品を急に増やさず、刺激が出たら使用を止めて相談します。
保湿と紫外線対策を続ける
皮膚をやさしく洗い、刺激の少ない保湿を行います。日中は帽子、日陰、日焼け止めなどを組み合わせます。施術直後の赤みが引いても、数週間〜数か月は皮膚状態と輪郭の変化を同じ条件の写真で記録し、必要に応じて診察で評価します。
受診・再診の目安と治療前チェック
ゆるみの原因、希望する変化、RF以外の選択肢、機器の承認状況、費用と回数を確認します。
耐え難い痛み、水疱、びらん、皮膚の白色化・黒色化、急に広がる腫れがある場合。
しびれ、動かしにくさ、強い左右差、凹凸・しこり、色調変化が続く・悪化する場合。
同じ照明・角度・表情の写真で変化を確認し、追加治療を急がず結果と副作用を評価します。
厚生労働省は、美容医療では効果の程度に個人差があること、リスク、代替案、費用などを施術前に理解し、医学的に必要のない即日施術を急がないよう求めています[公2]。説明を聞いても不明点が残る、当日限定価格で急かされる、リスクの質問に答えない場合は、その日は契約せず別の医療機関へ相談できます。
よくある質問(FAQ)
サーマクールは1回で必ずリフトアップしますか?
効果はいつ出て、どのくらい続きますか?
サーマクールは痛いですか?麻酔は必要ですか?
サーマクールにダウンタイムはありませんか?
HIFUとサーマクールはどちらが優れていますか?
ペースメーカーがあっても受けられますか?
参考文献
- Rohrich RJ, et al. Minimally Invasive Approach to Skin Tightening of the Face and Body: Systematic Review of Monopolar and Bipolar Radiofrequency Devices. Plast Reconstr Surg. 2022.
- Yokoyama Y, et al. Histologic study of collagen and stem cells after radiofrequency treatment for aging skin. Dermatol Surg. 2014.
- Monopolar radiofrequency treatment for facial laxity: Histometric analysis. J Cosmet Dermatol. 2020.
- El-Domyati M, et al. Radiofrequency facial rejuvenation: evidence-based effect. J Am Acad Dermatol. 2011.
- Tanzi EL, Alster TS. Radiofrequency treatment for middle and lower face laxity. Arch Facial Plast Surg. 2004.
- Weiss RA, et al. Monopolar radiofrequency facial tightening: a retrospective analysis of efficacy and safety in over 600 treatments. J Drugs Dermatol. 2006.
- Efficacy and Safety of Monopolar Radiofrequency for Treatment of Lower Facial Laxity in Asians. Dermatol Ther. 2022.
- Wang Z, et al. Long-Term Efficacy and Safety of a Novel Monopolar Radiofrequency Device for Skin Tightening: A Prospective Randomized Controlled Study. Lasers Surg Med. 2025.
- Solta Medical. Thermage FLX Indications and Important Safety Information.
公的資料・ガイドライン
この記事の監修
丸岩裕磨美容皮膚科医。この記事は一般的な判断材料を提供するもので、サーマクールの適応、照射条件、禁忌、他施術との比較は医師の診察で判断します。

