【脂肪注入(目の下):脱脂+脂肪注入の併用で凹み予防】|脂肪注入(目の下)脱脂+脂肪注入で凹み予防|医師が解説

脂肪注入(目の下)脱脂+脂肪注入で凹み予防|医師が解説
最終更新日: 2026-08-27
📋 この記事のポイント
  • ✓ 目の下の脱脂(脂肪除去)のみを行うと、術後に不自然な「凹み」や「くぼみ」が生じるリスクがあります。
  • ✓ 脱脂と同時に脂肪注入を併用することで、影クマや段差を埋め、滑らかで自然な若返り効果が期待できます。
  • ✓ 微細な脂肪移植技術(MAFT等)を用いることで、定着率を高め、しこりなどの合併症を最小限に抑えられます。
※ 本記事は医療に関する情報提供を目的としています。個別の症状については、かかりつけの医療機関にご相談ください。

目の下の脱脂で生じる「凹み」の原因とは?

目の下のクマやたるみを解消する手段として広く知られる「目の下の切らないクマ取り(経結膜脱脂術)」ですが、実はこの手術単体では、術後に目元が不自然に窪んでしまう、いわゆる「凹み」のトラブルが生じることがあります。脱脂後に平坦になるはずの目元がなぜ凹んでしまうのか、その解剖学的な原因とメカニズムについて詳しく解説します。

眼窩脂肪(がんかしぼう)
眼球を保護するために周囲を囲んでいるクッションのような脂肪組織。加齢とともに眼窩隔膜(がんかかくまく)が緩むことで、前方に押し出されて「目の下のたるみ」や「目袋」を形成します。
ティアトラフ(Tear Trough)
目頭から斜め下方に向かって伸びる溝(涙の通り道にあたる窪み)。靭帯(Orbicuralis Retaining Ligament)によって皮膚と骨が強く結びついているため、加齢によって目立つようになります。

目の下の膨らみをつくる眼窩脂肪の役割

眼窩脂肪は通常、眼窩と呼ばれる頭蓋骨のくぼみの中で、眼球を衝撃から守る重要な役割を果たしています。しかし、加齢によって眼球を支える靭帯(ロックウッド靭帯)が緩むと、眼球がわずかに下垂します。これにより、眼窩の下部にある脂肪が手前に押し出され、目袋と呼ばれるヘルニア状の突出が形成されます。この膨らみは、疲れて見える、あるいは実年齢より老けて見える「影クマ(黒クマ)」の直接的な原因となります。

脱脂のみ(単独治療)で凹みが生じる理由

脱脂術は、この突出した眼窩脂肪をまぶたの裏側(結膜側)から適量除去する手術です。しかし、目の下のたるみは「脂肪の突出(ポジティブスペース)」だけでなく、その下方にある「ティアトラフと呼ばれる溝(ネガティブスペース)」が組み合わさって形成されています。膨らんでいる部分の脂肪を単純に除去するだけでは、その下にある溝や、もともと骨格的に窪んでいる部位(骨の萎縮など)との高低差を埋めることができません。[1]

さらに、脂肪を過剰に取りすぎてしまう「過剰脱脂」が起こると、目の下が骨の形に沿ってげっそりと窪んでしまい、影がかえって強調されたり、小じわが急増したりすることがあります。これが、脱脂単独治療で多くの患者さんが直面する「凹み」や「老け見え」のメカニズムです。

⚠️ 注意点

脱脂後に「シワが増えた」「影が濃くなった」と感じる場合、過剰な脱脂によって皮膚が弛緩し、土台となる脂肪のボリュームが不足している可能性が非常に高いです。脱脂を行う際は、術前に全体のボリュームバランスを予測することが求められます。

外来診療では、「他院で脱脂をしたが、目の下が余計に窪んで老けて見えるようになった」「夕方になると影が濃くなって疲れて見える」と相談される患者さんが増えています。実際の診療現場でも、脱脂単体による不自然な凹みやくぼみは、術前に丁寧なアセスメントを行い、必要に応じて適切なボリューム補強を行うことで未然に防げると考えています。

脂肪注入(目の下)を脱脂と併用するメリット

脱脂術による凹みや小じわの発生を防ぐために最も合理的で効果的な方法が、自身の脂肪を採取して目の下に移植する「脂肪注入(マイクロファット/ナノファット移植)」の併用です。膨らみを取ると同時に、適切な部位にボリュームを補填するメリットについて解説します。

なぜ脂肪を注入するのか?そのメカニズム

突出した眼窩脂肪を除去した後の目の下は、風船の空気が抜けたように皮膚が余り、たるみやシワが生じやすい状態になります。また、目頭側のティアトラフ(溝)は、骨と皮膚が強固に結びついているため、脱脂だけでは平坦になりません。[2]

ここに、細かく処理した自身の純脂肪(自家脂肪)を注入することで、以下のような効果が生まれます。

  • 溝の埋め合わせ: ティアトラフや骨の上の窪みに脂肪を充填し、滑らかなフラットラインを作ります。
  • シワの予防と改善: 皮膚の裏側から適度なハリを与えることで、脱脂後の皮膚のたるみや小じわを予防します。
  • 肌質の改善: 注入する脂肪(特にナノ脂肪)に含まれる幹細胞や成長因子の働きにより、皮膚自体のコラーゲン増生が促され、目の下の色味(青クマや茶クマ)の改善効果も期待できます。[2]

脱脂単体と脱脂+脂肪注入の比較

それぞれの治療法における仕上がりや経過の違いを以下の比較表にまとめました。ご自身の目の下の状態(クマの深さ、骨格、皮膚のたるみ具合)に応じて、どちらが適しているかを検討する指標となります。

項目脱脂単体治療脱脂 + 脂肪注入(併用)
適応となる状態若年層で皮膚のハリがあり、クマの溝(窪み)がほとんどない場合脂肪の膨らみと同時に、深い溝(くぼみ)や皮膚のたるみ、シワがある場合
術後の仕上がり膨らみは平坦になるが、骨格によって目元が窪んで見えることがある目元全体がフラットかつ滑らかになり、ふっくらとした若々しい印象になる
凹み・シワのリスク比較的高い(過剰脱脂や皮膚の弛緩による)極めて低い(注入によるボリューム補填とハリ感の維持)
ダウンタイムの長さ比較的短い(1〜2週間程度)やや長くなる(太もも等の脂肪採取部のケア、目元の腫れが2〜3週間)

実臨床では、脱脂と同時に脂肪注入を併用することで、術後の満足度が飛躍的に向上する患者さんを数多く経験しています。筆者の臨床経験では、治療開始後約3ヶ月ほどで脂肪の定着が落ち着き、目の下の色味や質感も含めた自然なハリ感を実感される方が多いです。「最初から併用しておけばよかった」というお声を術後にいただくことも少なくありません。

目の下の脂肪注入:注入技術と定着率の科学

脂肪注入と一口に言っても、体から吸引した脂肪をそのまま目の下に注入するわけではありません。デリケートな目の下の皮膚は非常に薄いため、注入技術や脂肪の精製方法(コンデンス技術、ナノ化技術)が仕上がりの美しさを大きく左右します。ここでは、定着率(生着率)を高めるための医療技術について詳しく解説します。

マイクロ脂肪移植(MAFT)による微細な注入

移植した脂肪が新しい場所で生き残る(生着する)ためには、周囲の組織から酸素や栄養を供給する新しい血管(新生血管)が速やかに伸びてくる必要があります。脂肪を大きな塊のまま一度に注入してしまうと、中心部まで血液が行き届かず、中の脂肪細胞が壊死して「しこり」や「不均一な凹凸」を形成する原因となります。[3]

これを防ぐために開発されたのが、超微細な単位で細かく脂肪を注入する「マイクロ自家脂肪移植(MAFT: Micro-Autologous Fat Transplantation)」などのアプローチです。[1][2] 粒子を極めて細かく精製した脂肪を、皮下組織、眼輪筋内、骨膜上といった異なる深さの層に「マルチレイヤー(多層構造)」で分散して細かく敷き詰めるように注入します。これにより、周囲の毛細血管と接触する面積が最大化し、定着率が大幅に向上します。

脂肪の生着率を高めるためのアプローチ

採取した脂肪には、古い脂肪細胞や線維質、水分、麻酔薬などが含まれています。これら不純物を遠心分離やろ過フィルターを用いて徹底的に排除し、健康で若い活性度の高い脂肪細胞および幹細胞(ADSCs)を濃縮した「コンデンスリッチファット(CRF)」や、さらに微細化した「ナノファット」を使用することが標準的なアプローチとなっています。[4] 注入された幹細胞は周辺組織の再生を促し、移植した脂肪の定着を強固にサポートします。

日常診療では、「注入した脂肪が凸凹になったり、しこりになったりしないか」とご不安を訴える声を本当によく伺います。この合併症を防ぐため、実際の診療では、一度に大量に注入するのではなく、極めて小さな単位(マイクログラフト)で幾層にも細かく分散して注入する技術を徹底しています。患者さん一人ひとりの皮膚の厚みやたるみの強度を見極め、注入する深さを0.1ミリ単位で微調整することが、美しい仕上がりのために極めて重要なポイントです。

脱脂+脂肪注入の具体的な治療プロセス

実際の施術がどのようなステップで進むのか、事前カウンセリングから手術当日、そして術後の処置までの流れをステップバイステップでご紹介します。一連のフローを把握しておくことで、治療に対する不安を解消することができます。

治療ステップ1:カウンセリングとデザイン

まず、患者さんが直立した状態で(重力がかかった状態で)、目の下の膨らみ(眼窩脂肪の位置)と、凹んでいる部位(ティアトラフや骨格の境界線)を正確に評価します。注入する脂肪をどこから採取するか(通常は脂肪が柔らかく採取しやすい太ももの内側や、下腹部など)を決定し、手術前の詳細なマーキング(デザイン)を行います。

治療ステップ2:脂肪の採取と遠心分離

局所麻酔または静脈麻酔(リラックスした状態で寝ている間に手術が終わる麻酔)をかけた後、極細の吸引管(カニューレ)を用いて脂肪を優しく吸引します。採取した脂肪はただちに遠心分離器や特殊なフィルターシステムにかけられ、血液、水分、死滅した細胞成分などの不純物を厳密に取り除き、微細でクリーンな「濃縮脂肪細胞」へと精製されます。[1]

治療ステップ3:脱脂と脂肪注入の同時施行

続いて、まぶたの裏側の結膜を数ミリ切開し、突出している眼窩脂肪(内側・中央・外側の3つのコンパートメントから適切な比率で)を適量切除(脱脂)します。[4] その後、精製された脂肪を専用の超微細注入器(カニューレ)を用いて、目の下の窪みやゴルゴライン、ティアトラフの領域に多層的に細かく注入していきます。縫合は不要で、まぶたの裏側の傷跡も自然に治癒するため、顔の表面に傷跡が残ることはありません。

診察の場では、オンラインカウンセリングも含めて「太ももやお腹の脂肪吸引は痛いですか?」「どのような器具を使って治療するのですか?」と質問される患者さんも多いです。実際の診療やカウンセリングの現場では、脂肪採取部位の術後の筋肉痛のような痛みやダウンタイムについても事前に丁寧に説明し、無理のない吸引計画を立てる診療フローを重視しています。事前の詳細なシミュレーションこそが、手術の成功と安心感につながります。

術後の経過とダウンタイム中に注意すべきこと

脱脂と脂肪注入の併用治療は、非常に優れた若返り効果をもたらしますが、外科的手術であるためダウンタイム(回復期間)が存在します。術後の標準的な経過と、安全に過ごすためのセルフケア方法について知っておくことが大切です。

ダウンタイムの標準的なスケジュール

一般的に、目元の腫れや内出血のピークは術後2〜3日目です。その後、1〜2週間をかけて徐々に黄色いアザのようになり、消失していきます。また、脂肪を吸引した太ももや腹部には、1〜2週間ほど筋肉痛のような痛みや内出血が生じます。注入した脂肪は、術後3〜4週間ほどかけて一部が体に吸収され、最終的に50〜70%程度がその場所に永続的に生着して安定します。[1][2]

ダウンタイムを快適に過ごすためのケア方法

術後のダウンタイムを短縮し、きれいに仕上げるためには、以下のセルフケアが有効です。

  1. 術後48時間は冷やす: 目元の初期の腫れを最小限に抑えるため、保冷剤などをタオルで包み、断続的に軽く冷やします(直接強く押し当てないよう注意してください)。
  2. 注入部位を絶対にこすらない・マッサージしない: 注入された脂肪細胞は非常にデリケートです。生着が安定する術後1ヶ月間は、強い力で目の下をこすったりマッサージしたりすると、脂肪の吸収が早まったり凸凹になったりする原因になります。
  3. 頭を少し高くして寝る: 術後数日間は、枕をいつもより少し高めに設定して就寝することで、翌朝の目元のむくみや腫れを大幅に軽減させることができます。

臨床経験上、術後の腫れや内出血などのダウンタイムには個人差が大きいと感じています。診察時には、術後1週間から2週間ほどの経過を画像でお見せしながら、どのような経過をたどるかを具体的にイメージしていただけるよう努めています。また、脂肪吸引部位(ドナーエリア)の圧迫固定についても、痛みを和らげ仕上がりを美しくするためのコツを個別にお伝えしています。

目の下の脂肪注入におけるリスクや副作用はある?

美容医療において、メリットだけでなくデメリットや潜在的なリスクを正しく理解することは最も重要です。脱脂+脂肪注入を検討するにあたり、事前に知っておくべき主要な副作用やトラブル対策について整理します。

しこり(オイルシスト)形成のメカニズム

脂肪注入における代表的なリスクの1つが「しこり」です。これは、一度に多量の脂肪を過剰に注入したり、不純物の多い脂肪を注入したりした際に、生着できなかった脂肪組織が体内でカプセル化され、油滴(オイルシスト)を形成することで発生します。[3] 初期は自覚症状がないことが多いですが、触ると硬いしこりを感じたり、目元の皮膚が不自然に盛り上がって見えたりすることがあります。これを防ぐためには、徹底的に不純物を除去する精製プロセスと、極微量ずつの多層注入が不可欠です。[2]

左右差や生着不良への対応

移植した脂肪の生着率には左右でわずかに差が生じることがあり、結果として軽微な左右非対称や、予想以上に脂肪が体内に吸収されてしまい凹みが十分に改善しきらない(生着不良)ケースもあります。こうした場合には、脂肪の定着が完全に落ち着く術後3〜6ヶ月以降に、必要に応じて二次的な微調整(少量の再注入やヒアルロン酸での補正など)を行うことがあります。

臨床現場では、非常に稀ではあるものの、脂肪の生着不良やしこり(オイルシスト)の形成といった合併症についてもしっかりとご説明することが不可欠です。万が一のリスクを防ぐため、術後のフォローアップ外来では、触診による硬さのチェックや、患者さまの継続的な状態確認を徹底しています。術後不安なことがあればいつでも医師に相談できる環境作りが何より大切です。

まとめ

目の下のクマやたるみを根本的に解決するためのアプローチとして、「目の下の切らないクマ取り(脱脂術)」と「脂肪注入」の併用療法は非常に合理的で確立された治療法です。脱脂術によって目袋の突き出た余分な脂肪を取り去りつつ、その下部にあるティアトラフ(溝)やくぼみに対して精製された自身の脂肪を微細かつ多層的に注入することで、滑らかで自然なハリを持った目元を実現します。これにより、脱脂単独治療で起こりやすい「不自然な凹み」や「小じわの急増」といった合併症を効果的に予防することが可能になります。安全で美しい仕上がりを得るためには、高い解剖学的知識と精密な注入技術を持つ専門の医師を選び、事前のカウンセリングを十分に行うことが重要です。

よくある質問(FAQ)

目の下の脂肪注入の効果はどのくらい持続しますか?
注入した脂肪のうち、術後約1〜3ヶ月の期間を経て体に定着(生着)した脂肪細胞は、ヒアルロン酸のように体内に完全に吸収されることはなく、あなた自身の脂肪組織としてその場に永続的に残ります。そのため、効果自体は非常に長期にわたって持続します。ただし、加齢に伴う自然な老化(骨の萎縮や皮膚の弛緩など)は進むため、術後も適切なスキンケアや生活習慣の維持が大切です。
脂肪を注入した部位にしこりができてしまったら、どうすればいいですか?
術後数ヶ月の間にみられる軽度の硬さは、組織の治癒過程における一時的な硬化(拘縮)であることが多く、時間経過とともに徐々に柔らかく馴染んでいきます。しかし、半年以上経っても明らかにコリコリとした硬いしこりが残り、見た目にも目立つ場合は、内部でオイルシスト(油の塊)が形成されている可能性があります。その際は、針で中身の脂肪(オイル)を吸引して排出したり、極めて稀ではありますが切開を伴う除去を行ったりして対処します。自己判断で強く揉みほぐすと組織を傷つける原因になりますので、まずは主治医にご相談ください。
脂肪の代わりにヒアルロン酸注入では代用できませんか?
凹みを一時的に埋める目的であれば、手軽に行えるヒアルロン酸注入も選択肢として有効です。しかし、デリケートな目の下では、ヒアルロン酸が透けて青っぽく見える「チンダル現象」が起こるリスクや、時間経過とともに水分を吸収して不自然に膨らんでしまうことがあります。また、ヒアルロン酸は数ヶ月から1、2年で体内に吸収されるため、長期にわたり効果を維持したい場合、繰り返し注入が必要になります。半永久的な効果を望むのであれば、自身の組織であり拒絶反応のない脂肪注入が優れています。
この記事の監修
👨‍⚕️
新井智博
美容外科医
👨‍⚕️
林一樹
美容外科医