- ✓ 目の下のクマには「黒」「青」「茶」があり、原因によって適切なアプローチが異なる
- ✓ 脱脂法やハムラ法など、解剖学的な骨格や皮膚の弛みに応じた術式の選択が重要である
- ✓ 術後の凹みやしこりなどのトラブルを防ぐには、経験豊富な専門医による正確な診断が不可欠
目の下のクマの種類:黒クマ(影クマ)・茶クマ・青クマの見分け方
目の下のクマとは、下まぶた周辺の皮膚、皮下組織、血管、および脂肪のバランスが崩れることで、目元に暗さや疲れた印象が生じる状態を指します。
このクマは大きく「黒クマ(影クマ)」「茶クマ」「青クマ」の3つのタイプに分類され、それぞれ根本的な原因や治療アプローチが異なります。まずは、自身のクマがどのタイプに当てはまるのかを正確に見極めることが、適切な「目の下のクマ・たるみ取り」治療を選択するための第一歩となります。
あなたのクマは何タイプ?簡単な見分け方は?
鏡を正面に持って顎を引いて上を向いたときに、目の下の暗さが薄くなる、または消える場合は「黒クマ」の可能性が極めて高いと言えます。これは、脂肪の突出によってできた影が、光の当たる角度が変わることで一時的に消えるためです。一方で、引っ張ったり顔の角度を変えたりしても、全く色味が変化しない場合は色素沈着による「茶クマ」、皮膚を優しく下に引っ張ったときに青紫色の血管の色味が強調される、あるいは赤みが透けて見える場合は血行不良による「青クマ」と判断できます。
- 黒クマ(影クマ)
- 加齢による靭帯や眼輪筋の緩み、また遺伝的要因によって「眼窩脂肪(がんかしぼう)」が前方に突出し、その下に影(段差)が生じることで引き起こされる最も一般的なクマです。
- 茶クマ
- 紫外線によるダメージや、目を擦るなどの摩擦刺激によるメラニン色素の沈着、もしくは遅発性両側性太田母斑(ADM)といった色素性疾患が原因で、皮膚自体が茶褐色に変色している状態です。
- 青クマ
- 下まぶたの皮膚が非常に薄いために、皮下の毛細血管や静脈、あるいは眼輪筋(目の周りの筋肉)が青白く透けて見えてしまう状態を指し、睡眠不足や眼精疲労、冷えによる血行不良で悪化します。
| クマの種類 | 主な原因 | 簡易的な見分け方 | 代表的な治療法 |
|---|---|---|---|
| 黒クマ | 眼窩脂肪の突出による影 | 上を向くと影が薄くなる | 脱脂法、ハムラ法、脂肪注入 |
| 茶クマ | メラニン色素沈着・摩擦 | 皮膚を引っ張っても茶色いまま | レーザー治療、ハイドロキノン処方 |
| 青クマ | 皮膚の菲薄化・血行不良 | 皮膚を引っ張ると薄くなる、または赤紫化 | 血行促進、注入療法(PRP・ヒアルロン酸) |
経結膜脱脂法とは:目の下の脂肪除去・手術の流れ・ダウンタイム
経結膜脱脂法(けいけつまくだっしほう)とは、下まぶたの内側(結膜側)をわずかに切開し、老け見えや疲労感の原因となる過剰な眼窩脂肪を適量だけ取り出す、切らない目の下のたるみ取り手術です[2]。
皮膚の表面を一切傷つけることなくアプローチできるため、傷跡が顔の表面に残らず、ダウンタイムも比較的短いことから、若い世代から中高年まで幅広い層に人気のある術式です[3]。
経結膜脱脂法はどのような人に向いている?
実臨床では、「目元のハリを取り戻したいが、仕事を長期間休むことが難しい」「顔の表面にメスを入れることに抵抗がある」という患者さんが非常に多く、この経結膜脱脂法が第一選択肢として相談されます。特に、目の下に「目袋」と呼ばれるポッコリとした膨らみが生じているものの、皮膚自体のたるみや伸びが少ない20代〜40代の方において、最も高い治療効果と満足度が得られやすい傾向にあります。近年は、男性の方の受診も増加傾向にあり、骨格がしっかりしている男性の目元においても、自然な若返り効果が期待できるとして注目を集めています[4]。
一般的な手術の流れと解剖学的考慮
手術は通常、局所麻酔に加えて笑気麻酔や静脈麻酔を併用し、痛みや恐怖心を和らげた状態で開始します。下まぶたを反転させ、結膜側(あっかんべーをしたときに見える赤い部分)に約5〜8mmの微小な切開を加えます。ここから、目の下の3つのエリア(内側・中央・外側)に分かれている「眼窩脂肪コンパートメント」にアクセスし、突出が目立つ脂肪を微調整しながら適量切除します。
眼窩脂肪は、取りすぎると「目の下の窪み(クレーター化)」の原因になります。一方で、取り残しがあると膨らみが改善されません。各コンパートメントからどれだけの脂肪を切除するかの判断は、医師の高度な解剖学的理解と術前デザインの技術に依存します。
気になる術後のダウンタイムと経過について
術後のダウンタイムは個人差がありますが、主な症状としては以下のようなものがあります。
- 腫れ・浮腫(術後2〜3日がピーク。その後1週間程度で徐々に軽快)
- 内出血(黄色〜紫色の斑点が目の周りに出ることがありますが、1〜2週間で完全に消失)
- 軽い疼痛や異物感(痛み止めで十分にコントロール可能なレベルであることがほとんど)
結膜は非常に自己修復能力が高いため、抜糸は不要です。シャワーや洗顔は当日から可能で、アイメイク以外の化粧も翌日から開始できるケースが多いため、週末を利用して手術を受けられる方が非常に多いのも特徴です。
脂肪注入(目の下):脱脂+脂肪注入の併用で凹み予防
脂肪注入(目の下)とは、自身の太ももや腹部、二の腕などから採取した脂肪を専用の遠心分離機で精製し、目の下の窪んだ領域(主にティアトラフと呼ばれる涙溝や、頬の中央部分である中顔面)に微細なカニューレで注入する輪郭形成治療です[1]。
目の下のクマ・たるみ取りにおいて、脂肪を取り除く「脱脂法」のみを行うと、元々の骨格によっては目の下が急激に窪んでしまい、影を悪化させてしまう場合があります。これを防ぐために、脱脂と脂肪注入を同時に行うハイブリッド治療が推奨されるケースが増えています。
なぜ脱脂だけでは不十分な場合があるのか?
日常診療では、「脱脂をするだけで目の下は完全に平らになりますか?」と相談される患者さんが少なくありません。しかし、骨格的に目の下のホロウ(窪み)が深い方や、加齢によって中顔面の脂肪(メーラーファット)が減少している方に脱脂のみを施すと、膨らみは平坦になるものの、その下にあった靭帯(ORL:眼輪筋支持靭帯)の引き込みが目立ち、不自然な段差が強調されてしまいます。臨床経験上、こうした「窪みによる新たな影クマ」を防ぐためには、突出している脂肪を除去する一方で、靭帯によって凹んでいる溝に微細に破砕した脂肪(ナノリッチやマイクロクランチ脂肪など)を細かく多層に渡って注入する複合アプローチが、長期的な美しさを保つ鍵となります。
採取と注入の具体的なプロセス
- 脂肪採取:太ももの内側などから、特殊な細いシリンジで脂肪組織を安全に吸引します。
- 脂肪精製:採取した脂肪を遠心分離し、不要な水分、血球、不純物を排出し、生存力の高い濃縮脂肪(コンデンスリッチ脂肪など)に仕上げます。
- 注入:細い特殊カニューレを用い、皮膚表面から何層にも分けて均一に細かく注入します。多層注入を行うことで脂肪の生着率が飛躍的に高まります。
注入された自己脂肪はヒアルロン酸のように体内に完全に吸収されることはなく、一旦生着(血管が通って定着)すれば、数年間にわたりふっくらとした質感を維持できるという大きなメリットがあります。
ハムラ法・裏ハムラ法:脂肪再配置による目の下のたるみ治療
ハムラ法および裏ハムラ法とは、目の下の目袋(突出した眼窩脂肪)を切除して捨てるのではなく、その下にある骨性の窪み(ティアトラフ・涙溝)へ、脂肪を適切な位置に移動させて固定する「脂肪再配置(orbital fat repositioning)」という高度なアプローチを伴う形成外科的治療法です[2]。
この術式は、脂肪を「捨てる」のではなく「活かす」ことで、目の下の平坦化と膨らみの解消をワンステップで同時に実現し、非常にナチュラルな若返りを実現できる優れた手段として、美容外科領域で確固たる地位を築いています[3]。
ハムラ法と裏ハムラ法のどちらを選ぶべき?
これら2つの最大の違いは「皮膚を切り取るか、切り取らないか」という点にあります。皮膚の伸びやシワ(たるみ)が強く、皮膚そのものをタイトに縮める必要がある場合は、まつ毛の直下を切開する「ハムラ法(表ハムラ法)」が選択されます。一方、皮膚のたるみはそこまで重度ではないが、脂肪の突出と凹みが両方あり、外側に一切傷を残したくない場合は、下まぶたの裏側からアプローチする「裏ハムラ法」が適しています。
外来診療では、特に50代以上の患者さんにおいて、下眼瞼の皮膚の弛みが大きく関与しているため、裏ハムラ法ではなく、弛んだ皮膚も同時にリフトして固定する表ハムラ法をお勧めすることが多いです。これにより、単に脂肪の位置を調整するだけでなく、目元の全般的なシワや余剰皮膚によるたるみを劇的に改善させることが期待できます。
脂肪再配置による長期的な優位性
脱脂+脂肪注入の組み合わせに比べ、ハムラ系術式は「元々自分の目元にある脂肪を血流が通ったまま(茎付きフラップとして)移動させる」ため、脂肪注入のように「どれだけ生着するか」という不確定要素(吸収率の個人差やしこりリスク)がありません。組織の血流を温存したまま再配置するため、術後の仕上がりが非常に安定的であり、長期にわたり持続しやすいという解剖学的なアドバンテージがあります。
目の下のクマ治療の失敗例:凹み・しこり・左右差の修正
目の下のクマ治療の失敗例とは、脱脂のやりすぎによる「過度な窪みやクレーター化」、脂肪注入後の脂肪の生着不良や一箇所への集中注入による「しこり・しこりの目立ち」、または不均一な切除・注入による「不自然な左右差」などを指します。
クマ取り手術は近年非常に一般的なものとなりましたが、眼窩周辺はミリ単位の狂いで表情に大きな変化が出る非常に繊細なエリアであり、安易な診断や不適切な施術によって深刻なトラブルに悩まされるケースが後を絶ちません。
手術後にしこりや凹みができたらどうする?
診察の場では、「他院で3ヶ月前に脱脂をしたが、目の下が抉れたように凹んでしまい影がひどくなった」「脂肪注入をした部位が硬くなり、笑うとポコッと浮き出るしこりになってしまった」と、涙ながらに修正のご相談にお越しになる方が少なくありません。一度凹んでしまった部位に対しては、微細脂肪注入による段差の修復、あるいは精密に調整したヒアルロン酸注入による修正が行われます。一方、生着してしまった「しこり(脂肪の塊)」に関しては、ステロイドの局所注射やケナコルト注射で組織を縮小させるか、それでも改善しない場合は、再度下まぶたを切開して物理的にしこりを切除・削るという高度な修正手術が必要になるケースもあります。
失敗を防ぐために大切なポイント
このような後悔を避けるためには、単に「価格が安いから」「SNSで流行しているから」という理由だけでクリニックや医師を選ばないことが大切です。目の下のクマ・たるみ取りの成功を決定づけるポイントは以下の通りです。
- カウンセリング時に、骨格や皮膚の厚み、脂肪の量を細かく触診・分析しているか
- 「脱脂のみ」で本当に綺麗になるのか、それとも「脂肪注入」や「ハムラ法」が必要なのか、論理的に説明があるか
- 術後に起こりうるリスクやダウンタイム、万が一の修正対応について明確に開示しているか
焦ってすぐに決断せず、セカンドオピニオンを含めた複数のクリニックの意見を聞くことが、安全な治療へとつながります。
まとめ
目の下のクマ・たるみ取り治療は、お顔全体の印象を劇的に明るくし、若々しさを取り戻すことができる極めて有効性の高い治療方法です。しかし、クマのタイプ(黒・茶・青)によって求められる治療は全く異なり、安易に一律の脱脂手術を行うだけでは、かえって凹みや影を悪化させてしまうリスクもあります。経結膜脱脂法、脂肪注入の併用、あるいは脂肪再配置を行うハムラ法(裏ハムラ法)など、それぞれのメリット・デメリットを十分に理解し、ご自身の状態に最も適した術式を信頼できる専門医と共に選択することが、理想の目元を手に入れるための絶対条件と言えます。
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- Julie Woodward, Sue Ellen Cox, Kiyoko Kato et al.. Infraorbital Hollow Rejuvenation: Considerations, Complications, and the Contributions of Midface Volumization.. Aesthetic surgery journal. Open forum. 2023. PMID: 36998744.
- Kasturi Bhattacharjee, Sripurna Ghosh, Shoaib Ugradar et al.. Lower eyelid blepharoplasty: An overview.. Indian journal of ophthalmology. 2021. PMID: 32971612.
- Elad Moisseiev, Anat Loewenstein. [LOWER EYELID BLEPHAROPLASTY].. Harefuah. 2024. PMID: 38734946.
- Vinay Rao, Patrick K Sullivan. Lower Lid Blepharoplasty in Men.. Clinics in plastic surgery. 2022. PMID: 35367031.
