肺がんの治療|手術・放射線・薬物療法と選び方を医師が解説

肺を中心に手術器具・放射線治療装置・点滴薬を配置し肺がん治療の選択肢を表した医療イラスト
Respiratory medicine / Lung cancer treatment

肺がんの治療を病期・組織型・体の状態から選ぶ

治療法の名前から決めず、病期・組織型・分子検査・体の状態をそろえて比較します。

更新日 2026.10.11監修日 2026.10.11
最初病期と組織型を確認
薬物療法遺伝子・PD-L1も確認
支援症状と生活も同時に扱う
結論から

肺がんの治療は、組織型、病期、遺伝子・蛋白検査、肺機能を含む全身状態、本人の希望を合わせて選びます。早期は手術や放射線、局所進行では化学放射線、進行・再発では薬物療法が中心ですが、緩和ケアは病期にかかわらず診断時から併行できます。[1][2]

目的から選ぶ手術・放射線・分子標的薬・免疫療法・抗がん剤・緩和ケアを確認する
01

治療方針は五つの情報をそろえて決めます

第一に小細胞肺がんか非小細胞肺がんか、第二に病期、第三に遺伝子変化やPD-L1などの検査、第四に肺機能・腎機能・持病・日常生活の状態、第五に本人が大切にしたい生活を確認します。病期だけが同じでも、最適な組み合わせは同じとは限りません。[1][2]

標準治療は、現時点で効果と安全性の根拠が最も確かな治療です。選択肢が複数あるときは、治癒を目指すのか、再発を減らすのか、進行を抑えるのか、症状を軽くするのかを分け、予想される利益・副作用・通院負担を比べます。

診察室から

呼吸器内科の診察では、治療名を決める前に、病理結果・病期・分子検査の結果がどこまでそろったかを確認します。結果待ちが治療開始に影響する場合は、待つ理由と、先に進められる準備を患者さんと共有します。

02

今の判断に合う解説を選んでください

局所治療、薬物療法、症状への支援は互いに排他的ではありません。手術の前後に薬物療法を行う、放射線と薬物療法を組み合わせる、治療中から緩和ケアを受けるなど、複数を時期ごとに組み合わせます。

提案された治療がどの目的に当たるか、標準治療か臨床試験か、開始前に必要な検査は何かを確認してください。

03

治療法ごとに届く範囲と副作用の種類が違います

手術

主な対象
主に切除可能な早期非小細胞肺がん
判断材料
病期、位置、呼吸機能、合併症
注意点
肺機能低下、肺炎、空気漏れなど

放射線治療

主な対象
早期の代替、局所進行、症状緩和
判断材料
照射範囲、線量、併用薬
注意点
放射線肺臓炎、食道炎など

分子標的薬

主な対象
対応する遺伝子変化がある場合
判断材料
遺伝子検査、病期、既治療
注意点
皮疹、下痢、肺障害など薬剤別

免疫療法

主な対象
適応条件を満たす進行例など
判断材料
PD-L1、遺伝子、自己免疫疾患
注意点
免疫が臓器を傷つける副作用

細胞障害性抗がん薬

主な対象
周術期・局所進行・進行再発
判断材料
組織型、腎機能、PS、併用治療
注意点
骨髄抑制、吐き気、しびれなど

「強い治療」「新しい治療」という表現だけで比較せず、自分の検査結果に適応があるか、期待できる効果を何で評価するか、中止・変更の条件を具体的にします。[1][3]

肺を中心に手術器具・放射線治療装置・点滴薬を配置し肺がん治療の選択肢を表した医療イラスト
図|肺がん治療は局所治療と全身治療を組み合わせる 説明のための生成イラストです。実際の病変・装置・治療計画を示すものではありません。
04

病期ごとに局所治療と全身治療を組み立てます

切除可能な早期非小細胞肺がんでは手術が中心で、病理病期や遺伝子検査により術前・術後の薬物療法を検討します。手術が難しい早期例では定位放射線治療が候補になります。切除不能の局所進行例では、体の状態に応じて化学放射線療法とその後の薬物療法を検討します。[1][2][4]

遠隔転移を伴う非小細胞肺がんでは、治療可能な遺伝子変化があるかを優先して確認し、分子標的薬、免疫療法、細胞障害性抗がん薬を選びます。小細胞肺がんは病期区分と全身状態に応じ、薬物療法と放射線治療を中心に組み立てます。[3]

画像上の病期と手術後の病理病期が異なることがあります。治療計画は一度で固定せず、検査結果・効果・副作用・本人の生活の変化に合わせて見直します。

05

治療開始前に副作用だけでなく生活上の負担も確認します

手術では呼吸機能と心臓・血栓リスク、放射線では照射範囲と過去の照射、薬物療法では血算、肝腎機能、感染症、自己免疫疾患、服薬・サプリメントを確認します。妊娠・妊孕性、歯科治療、ワクチンの予定も治療前に相談します。

発熱、急な息苦しさ、胸痛、意識の変化、片側の力が入りにくい症状は、次回予約を待たず連絡・救急相談が必要です。免疫療法や分子標的薬では、治療終了後に副作用が出ることもあるため、治療名が分かる資料を携帯します。

通院回数、運転、食事、仕事、介護、費用は治療継続に影響します。がん相談支援センター、薬剤師、看護師、医療ソーシャルワーカーへ治療決定前から相談できます。

06

説明を受けるときは六つの質問を使います

  1. 目的:治癒、再発予防、進行抑制、症状緩和のどれか。
  2. 根拠:自分の病期・組織型・検査結果に合う標準治療か。
  3. 選択肢:行わない場合を含め、代替治療はあるか。
  4. 評価:いつ、画像・症状・血液検査の何で判定するか。
  5. 安全:すぐ連絡する症状と、夜間・休日の窓口はどこか。
  6. 生活:仕事、食事、通院、費用への影響をどう調整するか。

説明を一度で理解できなくても問題ありません。病理報告書、画像CD、治療計画の写しを受け取り、家族の同席やセカンドオピニオンを希望する場合は、治療開始の期限と両立できるかを確認します。

次の診察で具体化すること

治療の説明書には、組織型、病期、遺伝子・蛋白検査の結果、提案された治療の目的を一緒に記録します。「何を治すための治療か」と「何をもって効いたと判断するか」が分かると、次の診察で話し合いやすくなります。

手術後や化学放射線療法後に追加する薬物療法は、病理結果や分子検査によって対象が変わります。たとえば、切除後のEGFR変異陽性非小細胞肺がんではオシメルチニブによる術後補助療法が検討されるため、「手術が終わったら治療は完了」とは限りません。[5]

選択に迷うときは、結論を急ぐより、治療開始に影響しない相談期間がどれくらいあるかを確認します。セカンドオピニオンでは、画像、病理標本・報告書、検査結果、治療提案書があると判断を比較しやすくなります。結果を主治医と再度共有し、本人が納得した方針に戻すことが大切です。

すぐに決められないときは、信頼できる家族や支援者に同席してもらい、医師の説明を「今分かっていること」「未確定で追加検査が必要なこと」「治療前に決めること」に分けてメモします。仕事、通院、家族の支援、費用への不安も治療選択の大切な情報であり、遠慮せず診察中に伝えてください。日常生活で譲れない条件も、同時に書き留めましょう。

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よくある質問

肺がんは手術すれば治りますか?

早期で治癒を目指せる場合がありますが、病期・組織型・病理所見により再発リスクが異なり、手術前後の薬物療法を検討することもあります。

高齢だと治療できませんか?

年齢だけで決めません。肺機能、持病、日常生活の状態、本人の希望を評価し、治療法や強度を調整します。

遺伝子検査の結果が出るまで待つ理由は何ですか?

対応する分子標的薬がある場合、初回治療の選択が変わるためです。待つ期間と先に進める準備を確認してください。

緩和ケアは治療をやめてから受けるものですか?

いいえ。診断時から、がん治療と並行して症状、不安、仕事や費用の困りごとを相談できます。

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参考文献