- ✓ 抗菌薬は細菌感染症、抗真菌薬は真菌感染症に特化した治療薬です。
- ✓ 薬剤耐性菌の発生を防ぐため、適切な診断と薬剤選択、服用方法の厳守が不可欠です。
- ✓ 副作用や薬物相互作用に注意し、医師や薬剤師の指示に従うことが重要です。
抗菌薬の基礎知識とは?

抗菌薬は、細菌感染症の治療に用いられる薬剤の総称です。細菌の増殖を抑えたり、細菌を殺したりすることで、感染症を改善に導きます。
抗菌薬(抗生物質とも呼ばれます)は、微生物が産生する物質や化学合成によって作られる薬で、細菌の増殖を抑制したり、死滅させたりする作用を持つ薬剤です。その作用機序は多岐にわたり、細菌の細胞壁合成阻害、タンパク質合成阻害、核酸合成阻害、葉酸代謝阻害などがあります。これらの作用により、特定の細菌に対して選択的に効果を発揮し、宿主である人体への影響を最小限に抑えるよう設計されています。
抗菌薬の作用機序と種類
抗菌薬は、その化学構造や作用機序によって様々な種類に分類されます。大きく分けて、細菌を殺す作用を持つ「殺菌性抗菌薬」と、細菌の増殖を抑える作用を持つ「静菌性抗菌薬」があります。殺菌性抗菌薬は、細菌の細胞壁を破壊したり、細胞膜の機能を障害したりすることで、細菌を直接死滅させます。一方、静菌性抗菌薬は、細菌のタンパク質合成や核酸合成を阻害することで、増殖を抑制し、最終的には宿主の免疫システムが細菌を排除するのを助けます。
臨床の現場では、患者さんの感染部位、原因菌の種類、重症度、アレルギー歴、腎機能や肝機能などを総合的に評価し、最適な抗菌薬を選択することが非常に重要です。不適切な抗菌薬の使用は、治療効果が得られないだけでなく、薬剤耐性菌の発生を促進するリスクがあるため、慎重な判断が求められます。実臨床では、微生物検査の結果を待たずに経験的治療を開始する場合でも、耐性菌の動向を常に考慮し、広域スペクトルの抗菌薬を安易に使用しないよう心がけています。
- 薬剤耐性菌とは
- 抗菌薬が効かなくなった細菌のことです。抗菌薬の不適切な使用により発生・増加し、治療を困難にする大きな問題となっています。薬剤耐性菌の発生は世界的な公衆衛生上の脅威であり、その対策は喫緊の課題です。
抗菌薬の適切な使用と注意点
抗菌薬は、医師の処方に基づいて正しく使用することが極めて重要です。自己判断での服用中止や、他者への譲渡は避けるべきです。服用期間の短縮や中断は、細菌が完全に排除されずに生き残り、薬剤耐性菌を生み出す原因となる可能性があります。また、抗菌薬はウイルスには効果がありません。風邪の多くはウイルス感染症であるため、抗菌薬を服用しても効果はなく、むしろ副作用のリスクや耐性菌の発生を招くことになります。
特定の抗菌薬は、肥満患者において通常とは異なる薬物動態を示すことが報告されており、適切な投与量を決定するためには個別の調整が必要になる場合があります[2]。診察の中で、患者さんの体格や基礎疾患を考慮した上で、最適な投与計画を立てることを実感しています。
抗菌薬は細菌感染症にのみ有効であり、ウイルス感染症(一般的な風邪など)には効果がありません。不必要な服用は薬剤耐性菌の発生を促進するリスクがあります。
ペニシリン系抗菌薬とは?
ペニシリン系抗菌薬は、β-ラクタム系抗菌薬の一種で、細菌の細胞壁合成を阻害することで殺菌的に作用します。
ペニシリン系抗菌薬は、1928年にアレクサンダー・フレミングによって発見されたペニシリンを起源とする、最も歴史のある抗菌薬の一つです。その作用機序は、細菌の細胞壁の主要な構成成分であるペプチドグリカン合成を阻害することにあります。具体的には、ペニシリン結合タンパク質(PBP)と呼ばれる酵素に結合し、細胞壁の架橋形成を妨げることで、細菌を死滅させます。この作用はヒトの細胞には細胞壁がないため、選択毒性が高く、比較的安全性の高い薬剤とされています。
ペニシリン系の種類と特徴
ペニシリン系抗菌薬は、その構造や抗菌スペクトル(効果のある細菌の種類)によっていくつかのグループに分類されます。
- 天然ペニシリン: ペニシリンG、ペニシリンVなど。主にグラム陽性菌に有効ですが、β-ラクタマーゼ産生菌には効果がありません。
- ペニシリナーゼ抵抗性ペニシリン: メチシリン、オキサシリンなど。黄色ブドウ球菌が産生するペニシリナーゼ(β-ラクタマーゼの一種)によって分解されにくい特徴があります。
- アミノペニシリン: アンピシリン、アモキシシリンなど。天然ペニシリンよりもグラム陰性菌への抗菌スペクトルが拡大しています。β-ラクタマーゼ阻害薬(クラブラン酸など)との合剤も多く、耐性菌への効果を高めています。
- カルボキシペニシリン・ウレイドペニシリン: チカルシリン、ピペラシリンなど。緑膿菌などのグラム陰性桿菌にも有効で、より広範囲な感染症に用いられます。
日常診療では、扁桃炎や中耳炎などでアモキシシリンを処方することが多く、治療を始めて数日ほどで「熱が下がった」「喉の痛みが和らいだ」とおっしゃる方が多いです。特に小児科領域では、その安全性と有効性から第一選択薬となるケースも少なくありません。
ペニシリン系抗菌薬の副作用と注意点
ペニシリン系抗菌薬で最も注意すべき副作用はアレルギー反応です。発疹、蕁麻疹、かゆみなどの比較的軽度なものから、アナフィラキシーショックのような重篤な反応まで様々です。過去にペニシリン系抗菌薬でアレルギー反応を起こしたことがある場合は、必ず医師や薬剤師に伝える必要があります。また、消化器症状(下痢、吐き気など)も比較的多く見られます。
特に、ペニシリンアレルギーの既往がある患者さんには、交差反応(他のβ-ラクタム系抗菌薬でもアレルギー反応を起こす可能性)を考慮し、慎重に薬剤を選択する必要があります。臨床の現場では、患者さんのアレルギー歴を詳細に確認し、代替薬の検討や皮膚テストの実施を検討するケースをよく経験します。
セフェム系抗菌薬とは?
セフェム系抗菌薬は、ペニシリン系と同様にβ-ラクタム系に分類され、細菌の細胞壁合成を阻害することで作用する広範囲抗菌薬です。
セフェム系抗菌薬は、セファロスポリンCという物質を起源とする抗菌薬で、ペニシリン系と同様にβ-ラクタム環を持つため、細菌の細胞壁合成を阻害することで殺菌的に作用します。ペニシリン系よりもβ-ラクタマーゼによる分解を受けにくく、グラム陽性菌からグラム陰性菌まで幅広い細菌に有効であるため、様々な感染症の治療に広く用いられています。
セフェム系の世代と特徴
セフェム系抗菌薬は、その抗菌スペクトルの違いによって第1世代から第5世代に分類され、世代が上がるにつれてグラム陰性菌への効果が強くなる傾向があります。
- 第1世代: セファレキシン、セファゾリンなど。主にグラム陽性菌(ブドウ球菌、レンサ球菌など)に強い抗菌力を持ちます。皮膚・軟部組織感染症などに用いられます。
- 第2世代: セファクロル、セフォチアムなど。第1世代に比べてグラム陰性菌(インフルエンザ菌、大腸菌など)への抗菌力が強化されています。呼吸器感染症や尿路感染症に用いられます。
- 第3世代: セフトリアキソン、セフォタキシムなど。グラム陰性菌への抗菌力がさらに強力になり、髄膜炎や敗血症などの重症感染症にも用いられます[1]。
- 第4世代: セフェピムなど。第3世代よりもさらに広範囲なグラム陰性菌(緑膿菌を含む)に有効で、重症・難治性感染症に用いられます。
- 第5世代: セフタロリンなど。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)にも抗菌力を持ちます。
初診時に「以前ペニシリンでアレルギーが出たことがある」と相談される患者さんも少なくありません。そのような場合でも、セフェム系抗菌薬はペニシリン系と比較してアレルギーの交差反応が低いとされているため、慎重に選択肢として検討することが可能です。ただし、完全にリスクがないわけではないため、患者さんの既往歴を詳しく確認し、適切な判断を下すことが重要です。
セフェム系抗菌薬の副作用と注意点
セフェム系抗菌薬の主な副作用は、消化器症状(下痢、吐き気)、発疹などのアレルギー反応です。ペニシリン系と同様に、アレルギー既往がある場合は注意が必要です。また、一部のセフェム系抗菌薬では、ビタミンK欠乏による出血傾向や、アルコールとの相互作用(ジスルフィラム様作用)が報告されています。肝機能や腎機能に障害がある患者さんでは、薬の代謝や排泄が遅れることで副作用のリスクが高まるため、投与量の調整が必要となる場合があります。
カルバペネム系・モノバクタム系抗菌薬とは?

カルバペネム系抗菌薬は、非常に広範囲な抗菌スペクトルを持つβ-ラクタム系抗菌薬であり、モノバクタム系抗菌薬はグラム陰性菌に特化したβ-ラクタム系抗菌薬です。
これらの抗菌薬は、β-ラクタム環を持つことから、ペニシリン系やセフェム系と同様に細菌の細胞壁合成を阻害することで殺菌的に作用します。しかし、その構造上の特徴から、多くのβ-ラクタマーゼによって分解されにくく、特にカルバペネム系は「最後の砦」とも呼ばれるほど広範囲な抗菌スペクトルを持つことが特徴です。
カルバペネム系の特徴と用途
カルバペネム系抗菌薬(イミペネム、メロペネム、ドリペネムなど)は、グラム陽性菌、グラム陰性菌、嫌気性菌のほとんどに強力な抗菌力を示します。この広範囲な抗菌スペクトルから、多剤耐性菌による重症感染症や、原因菌が特定できない重症敗血症などに用いられることが多いです。特に、ESBL(基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ)産生菌やAmpC β-ラクタマーゼ産生菌など、他のβ-ラクタム系抗菌薬が効きにくい耐性菌に対しても有効性が期待できます。しかし、その強力な効果ゆえに、安易な使用はカルバペネム耐性菌の出現を招く恐れがあるため、使用は厳しく制限され、慎重な検討が必要です。
モノバクタム系の特徴と用途
モノバクタム系抗菌薬(アズトレオナムなど)は、β-ラクタム環が単環構造であるという特徴を持ちます。この構造により、グラム陰性菌に対してのみ強力な抗菌力を示し、グラム陽性菌や嫌気性菌にはほとんど効果がありません。グラム陰性菌に特異的に作用するため、グラム陽性菌への影響が少なく、腸内細菌叢への影響も比較的少ないとされています。また、ペニシリンアレルギーの患者さんにおいても、交差反応が少ないとされており、グラム陰性菌感染症の治療選択肢となることがあります。臨床の現場では、グラム陰性菌が原因と特定された感染症で、他の抗菌薬が使用できない場合の代替薬として選択されるケースを経験します。
| 項目 | カルバペネム系 | モノバクタム系 |
|---|---|---|
| 抗菌スペクトル | 超広範囲(グラム陽性菌、陰性菌、嫌気性菌) | グラム陰性菌のみ |
| 主な用途 | 重症・難治性感染症、多剤耐性菌感染症 | グラム陰性菌感染症(ペニシリンアレルギー患者など) |
| 耐性菌リスク | 高い(カルバペネム耐性菌) | 比較的低い |
副作用と注意点
カルバペネム系抗菌薬の主な副作用には、消化器症状、発疹、肝機能障害、腎機能障害、そして痙攣などの神経系副作用があります。特に、腎機能が低下している患者さんでは、投与量の調整が必須です。モノバクタム系抗菌薬は比較的副作用が少ないとされていますが、消化器症状や発疹などが報告されています。いずれの薬剤も、広範囲に作用するため、腸内細菌叢のバランスを崩し、クロストリジウム・ディフィシル関連下痢症を引き起こすリスクがあるため注意が必要です。
マクロライド系抗菌薬とは?
マクロライド系抗菌薬は、細菌のタンパク質合成を阻害することで静菌的に作用する抗菌薬です。
マクロライド系抗菌薬は、14員環または15員環のマクロラクトン環を持つ化学構造が特徴で、細菌のリボソーム50Sサブユニットに結合し、タンパク質合成を阻害することで細菌の増殖を抑制します。主に静菌的に作用しますが、高濃度では殺菌的に作用することもあります。ペニシリン系やセフェム系にアレルギーがある患者さんの代替薬として用いられることも多いです。
マクロライド系の種類と特徴
マクロライド系抗菌薬には、エリスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシンなどがあります。これらはそれぞれ異なる薬物動態や抗菌スペクトルを持っています。
- エリスロマイシン: 初期のマクロライド系抗菌薬で、グラム陽性菌や一部のグラム陰性菌、非定型病原体(マイコプラズマ、クラミジアなど)に有効です。
- クラリスロマイシン: エリスロマイシンよりも抗菌スペクトルが広く、胃酸に安定で吸収が良いのが特徴です。ヘリコバクター・ピロリ除菌療法にも用いられます。
- アジスロマイシン: 半減期が長く、1日1回の服用で済むことが特徴です。組織移行性が高く、呼吸器感染症や性感染症などに用いられます。
マクロライド系は、特にマイコプラズマやクラミジアといった非定型肺炎の原因菌に有効なため、医療現場ではこれらの感染症が疑われる患者さんによく処方します。アジスロマイシンは服用期間が短く済むため、患者さんの服薬アドヒアランス(指示通りに薬を服用すること)向上にも寄与していると感じています。
マクロライド系抗菌薬の副作用と注意点
マクロライド系抗菌薬の主な副作用は、消化器症状(吐き気、嘔吐、腹痛、下痢)です。特にエリスロマイシンで強く現れる傾向があります。また、QT延長と呼ばれる心電図異常を引き起こす可能性があり、不整脈のリスクを高めることがあります。他の薬剤との薬物相互作用も多いため、併用薬がある場合は必ず医師や薬剤師に伝える必要があります。特に、CYP3A4という酵素で代謝される薬剤(一部の抗不整脈薬、抗凝固薬、免疫抑制剤など)との併用には注意が必要です。
ニューキノロン系(フルオロキノロン)抗菌薬とは?
ニューキノロン系抗菌薬は、細菌のDNA複製に必要な酵素を阻害することで殺菌的に作用する広範囲抗菌薬です。
ニューキノロン系抗菌薬は、細菌のDNAジャイレースとトポイソメラーゼIVという酵素に作用し、DNAの複製、転写、修復を阻害することで細菌を殺菌します。この作用機序はヒトの細胞には存在しないため、選択毒性が高いとされています。グラム陽性菌からグラム陰性菌、非定型病原体まで幅広い細菌に有効であり、経口吸収も良好なため、様々な感染症の治療に用いられます。
ニューキノロン系の種類と特徴
ニューキノロン系抗菌薬には、レボフロキサシン、シプロフロキサシン、ガレノキサシンなどがあります。これらはそれぞれ抗菌スペクトルや薬物動態に違いがあります。
- シプロフロキサシン: グラム陰性菌、特に緑膿菌に強い抗菌力を持ち、尿路感染症や消化器感染症、呼吸器感染症などに用いられます。
- レボフロキサシン: グラム陽性菌、グラム陰性菌、非定型病原体にも有効で、呼吸器感染症、尿路感染症、副鼻腔炎などに広く用いられます。
- ガレノキサシン: 呼吸器系感染症に特化したニューキノロン系抗菌薬で、肺炎球菌などにも高い抗菌力を示します。
実際の診療では、肺炎や複雑性尿路感染症など、幅広い細菌が原因となりうる感染症に対して、ニューキノロン系抗菌薬を検討することがよくあります。特に、経口薬で点滴と同等の効果が期待できるため、外来での治療選択肢として非常に有用であると感じています。
ニューキノロン系抗菌薬の副作用と注意点
ニューキノロン系抗菌薬の主な副作用には、消化器症状、発疹、光線過敏症などがあります。また、腱炎や腱断裂、末梢神経障害、中枢神経系への影響(めまい、不眠、痙攣など)といった重篤な副作用が報告されています。これらの副作用はまれですが、発現した場合は速やかに服用を中止し、医師に相談する必要があります。小児や妊婦への使用は原則として避けるべきとされています。また、マグネシウム、アルミニウム、鉄、カルシウムなどの金属イオンを含む薬剤(制酸剤やミネラルサプリメントなど)と同時に服用すると、吸収が阻害されるため、服用時間をずらすなどの注意が必要です。
テトラサイクリン系・その他の抗菌薬とは?

テトラサイクリン系抗菌薬は、細菌のタンパク質合成を阻害する静菌性抗菌薬であり、その他にも様々な作用機序を持つ抗菌薬が存在します。
抗菌薬は、主要な分類以外にも、特定の細菌や感染症に特化した多様な薬剤が存在します。これらの薬剤は、他の抗菌薬が効かない場合や、特定の病原体に対してより効果的な場合に選択されます。
テトラサイクリン系の特徴と用途
テトラサイクリン系抗菌薬(テトラサイクリン、ミノサイクリン、ドキシサイクリンなど)は、細菌のリボソーム30Sサブユニットに結合し、タンパク質合成を阻害することで静菌的に作用します。広範囲な抗菌スペクトルを持ち、グラム陽性菌、グラム陰性菌、非定型病原体(マイコプラズマ、クラミジア、リケッチアなど)、さらには一部の原虫にも有効です。特にニキビの治療や、性感染症、ライム病、マラリア予防などに用いられることがあります。ミノサイクリンは、歯周病治療にも応用されることがあります。
その他の主要な抗菌薬
- アミノグリコシド系: ゲンタマイシン、アミカシンなど。細菌のリボソーム30Sサブユニットに結合し、タンパク質合成を阻害することで殺菌的に作用します。主にグラム陰性菌に強力な効果を示し、重症感染症に用いられますが、腎毒性や耳毒性に注意が必要です。
- グリコペプチド系: バンコマイシン、テイコプラニンなど。細菌の細胞壁合成を阻害することで殺菌的に作用します。主にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)などのグラム陽性菌に有効で、重症感染症に用いられます。
- リンコマイシン系: クリンダマイシンなど。細菌のリボソーム50Sサブユニットに結合し、タンパク質合成を阻害することで静菌的に作用します。嫌気性菌やグラム陽性菌に有効で、皮膚・軟部組織感染症や婦人科感染症などに用いられます。
- サルファ剤・ST合剤: スルファメトキサゾール・トリメトプリム合剤(ST合剤)など。細菌の葉酸合成経路を阻害することで静菌的に作用します。尿路感染症やニューモシスチス肺炎などに用いられます。
日々の診療では、特に難治性の皮膚感染症や、他の抗菌薬で効果が見られない場合に、これらの特殊な抗菌薬を検討することがあります。薬剤選択の際には、原因菌の感受性(薬が効くかどうか)を検査で確認することが非常に重要なポイントになります。
副作用と注意点
テトラサイクリン系抗菌薬は、歯の着色(特に小児)、骨の発育阻害、光線過敏症などの副作用が知られています。そのため、妊婦や8歳未満の小児には原則として投与されません。また、牛乳や乳製品、制酸剤などと同時に服用すると吸収が阻害されるため、服用時間をずらす必要があります。その他の抗菌薬もそれぞれ特有の副作用があり、アミノグリコシド系では腎障害や聴力障害、グリコペプチド系では腎障害や「レッドマン症候群」と呼ばれる急速な点滴による副作用、リンコマイシン系では偽膜性大腸炎などが報告されています。これらの薬剤を使用する際には、患者さんの状態を慎重にモニタリングし、副作用の早期発見に努めることが重要です。
抗真菌薬とは?
抗真菌薬は、真菌(カビ)によって引き起こされる感染症、すなわち真菌症の治療に用いられる薬剤の総称です。
真菌は、細菌やウイルスとは異なる微生物であり、その細胞構造や代謝経路も大きく異なります。そのため、抗菌薬は真菌には効果がなく、真菌症の治療には真菌に特異的に作用する抗真菌薬が必要となります。真菌症は、皮膚や爪の表面に起こる表在性真菌症(水虫、カンジダ症など)から、臓器に感染する深在性真菌症(クリプトコッカス症、アスペルギルス症など)まで多岐にわたります。
抗真菌薬の作用機序と種類
抗真菌薬は、真菌の細胞膜の主要な構成成分であるエルゴステロールの合成を阻害したり、細胞壁の合成を阻害したりすることで、真菌の増殖を抑えたり、死滅させたりします。主な抗真菌薬の種類は以下の通りです。
- アゾール系: フルコナゾール、イトラコナゾール、ボリコナゾールなど。エルゴステロール合成を阻害することで真菌の増殖を抑えます。経口薬、注射薬、外用薬があり、広範囲な真菌症に用いられます。
- ポリエン系: アムホテリシンB、ナイスタチンなど。真菌の細胞膜に直接結合し、膜の透過性を変化させることで真菌を殺します。重症の深在性真菌症に用いられるアムホテリシンBは、腎毒性などの副作用に注意が必要です。
- エキノキャンディン系: カスポファンギン、ミカファンギンなど。真菌の細胞壁の主要成分であるβ-(1,3)-D-グルカンの合成を阻害します。主にカンジダ症やアスペルギルス症などの重症真菌症に用いられます。
- アリルアミン系: テルビナフィンなど。エルゴステロール合成経路の初期段階を阻害します。主に皮膚真菌症や爪白癬の治療に用いられます。
- その他: 5-フルオロシトシンなど。真菌の核酸合成を阻害します。
外来診療では、爪白癬の患者さんが多くいらっしゃいます。外用薬で効果が見られない場合や、爪の奥深くまで感染が及んでいる場合には、テルビナフィンなどの経口抗真菌薬を検討します。治療を始めて数ヶ月ほどで「爪の色がきれいになってきた」「厚みが減った」とおっしゃる方が多いですが、完治には根気強い服用が必要となることを丁寧に説明しています。
抗真菌薬の副作用と注意点
抗真菌薬の副作用は薬剤の種類によって異なりますが、一般的に肝機能障害、消化器症状(吐き気、下痢)、発疹などが報告されています。特にアゾール系抗真菌薬は、多くの薬物と相互作用を起こす可能性があり、併用薬がある場合は注意が必要です。アムホテリシンBは腎毒性が高いため、投与中は腎機能の厳重なモニタリングが不可欠です[1]。また、真菌感染症は治療期間が長くなる傾向があり、指示された期間、正しく服用を続けることが重要です。新しい抗真菌薬の開発も進められており、より安全で効果的な治療選択肢が増えることが期待されています[4]。一部のスパイスには抗菌・抗真菌作用を持つものもあると報告されていますが、医療用医薬品の代替とはなりません[3]。
まとめ
抗菌薬と抗真菌薬は、それぞれ細菌感染症と真菌感染症に対して用いられる重要な薬剤です。抗菌薬にはペニシリン系、セフェム系、カルバペネム系、マクロライド系、ニューキノロン系、テトラサイクリン系など多様な種類があり、それぞれ異なる作用機序と抗菌スペクトルを持っています。抗真菌薬もアゾール系、ポリエン系、エキノキャンディン系などがあり、真菌の細胞構造に特異的に作用します。これらの薬剤は、適切な診断のもと、種類、投与量、投与期間を厳守して使用することが極めて重要です。薬剤耐性菌の出現を防ぎ、患者さんの安全を確保するためにも、医師や薬剤師の指示に従い、正しく服用することが求められます。
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- ジフルカン(フルコナゾール)添付文書(JAPIC)
- イトラコナゾール(イトラコナゾール)添付文書(JAPIC)
- ブイフェンド(ボリコナゾール)添付文書(JAPIC)
- アモキシシリン(アモキシシリン)添付文書(JAPIC)
- ピペラシリンNa(ピペラシリン)添付文書(JAPIC)
- エリスロマイシン(エリスロマイシン)添付文書(JAPIC)
- クラリシッド(クラリスロマイシン)添付文書(JAPIC)
- アジマイシン(アジスロマイシン)添付文書(JAPIC)
- ゲンタシン(ゲンタマイシン)添付文書(JAPIC)
- クラビット(レボフロキサシン)添付文書(JAPIC)
- シプロキサン(シプロフロキサシン)添付文書(JAPIC)
- ジェニナック(ガレノキサシン)添付文書(JAPIC)
- ペリオクリン(ミノサイクリン)添付文書(JAPIC)
- ベザトール(モニタリン)添付文書(JAPIC)

