抗菌薬と抗真菌薬の違い・種類・使い方|副作用と耐性を医師が解説

抗菌薬・抗真菌薬 完全ガイド

抗菌薬と抗真菌薬は、どちらも感染症に使われる薬ですが、標的となる微生物が異なります。抗菌薬は主に細菌、抗真菌薬は真菌を対象とし、一般的な風邪の原因となるウイルスにはどちらも効きません。感染部位、重症度、検査結果、腎臓・肝臓の機能、併用薬を確認し、必要な薬を必要な量と期間で使うことが重要です。

呼吸困難、意識の変化、顔・唇・舌の腫れ、急速に広がる発疹、血圧低下を疑う冷汗やぐったり感がある場合

重いアレルギー反応や感染症の悪化などの可能性があります。服薬を続けて様子を見るのではなく、救急要請を含め直ちに医療機関へ連絡してください。

抗菌薬と抗真菌薬の違いを医師に相談する患者
感染部位、重症度、検査結果、持病や併用薬を共有して治療薬を選びます。
抗菌薬主に細菌を対象とし、細胞壁・蛋白合成・核酸合成などを阻害
抗真菌薬真菌の細胞膜や細胞壁などを標的とし、部位で剤形も変わる
共通の原則診断、培養・感受性、臓器機能、相互作用を踏まえて再評価

抗菌薬と抗真菌薬は何が違う?

結論

抗菌薬は主に細菌、抗真菌薬はカンジダ、白癬菌、アスペルギルスなどの真菌を対象にします。効く相手と作用点が異なるため、症状が似ていても互いに代用できません。まず感染症かどうか、次に原因微生物と感染部位を確認して選びます。

抗菌薬:細菌の増殖や生存に必要な仕組みを狙う

抗菌薬は、細菌の細胞壁を作れなくする、蛋白質を作るリボソームの働きを阻害する、DNAの複製や葉酸代謝を妨げるなど、薬効群ごとに異なる仕組みで作用します。同じ「抗菌薬」でも有効な細菌の範囲、感染部位へ届きやすいか、内服か点滴か、排泄経路、副作用が異なります。

抗真菌薬:人の細胞と異なる真菌の構造を狙う

真菌は細菌より人の細胞に近い真核生物です。抗真菌薬は、真菌の細胞膜に含まれるエルゴステロールの合成・機能、細胞壁のβ-D-グルカン合成、核酸合成などを標的にします。皮膚や膣などの表在性真菌症と、血液・肺・中枢神経などの深在性真菌症では、必要な診断と治療が大きく異なります。

ウイルスには効かない

インフルエンザ、新型コロナウイルス感染症、一般的な風邪など、ウイルスが原因の感染症には抗菌薬も抗真菌薬も直接は効きません。ウイルス感染後に細菌感染症を合併することはありますが、鼻水の色や咳の長さだけで抗菌薬が必要とは判断できません。呼吸状態、発熱の経過、診察所見、必要な検査を合わせて評価します。

感染症治療薬はどう選ぶ?

薬の名前から先に決めるのではなく、感染部位、重症度、原因微生物の可能性、患者側の条件を順に確認します。治療開始時は原因が確定していないこともあり、その場合は起こりやすい微生物を想定して経験的治療を始め、培養や臨床経過が分かり次第、薬を狭める、変更する、終了する判断をします。

1.感染部位と重症度

肺炎、尿路感染症、皮膚軟部組織感染症、髄膜炎などでは、原因微生物の分布も薬の組織移行性も異なります。血圧低下、呼吸不全、意識障害などがあれば、培養採取と治療を急ぐ必要があります。軽症の外来感染症と、敗血症を疑う状態を同じ処方で扱うことはできません。

2.原因微生物と感受性

喀痰、尿、血液、膿、皮膚・爪の検体などを用いて、顕微鏡検査、培養、抗原検査、遺伝子検査などを検討します。培養で微生物が検出されても、汚染や保菌で治療不要なことがあります。感染している部位から採れた検体か、症状や炎症所見と一致するかを確認します。

3.患者側の条件

年齢、体重、腎機能、肝機能、妊娠・授乳、免疫抑制、アレルギー歴、けいれんや不整脈の既往、他の薬との相互作用を確認します。腎臓から排泄される薬では用量・間隔の調整が必要なことがあり、肝代謝酵素へ強く影響する抗真菌薬では併用薬の変更や血中濃度の確認が必要になる場合があります。

4.投与経路と治療期間

重症、吸収不良、嘔吐、意識障害などでは点滴が必要な場合があります。一方、全身状態が安定し、飲み薬で十分な濃度を得られるなら内服へ切り替えられることがあります。治療期間は感染部位、原因微生物、外科的処置の成否、免疫状態、治療反応により決めます。

抗菌薬の主な種類と特徴

薬効群主な作用使われる場面の例主な注意点
βラクタム系
ペニシリン・セフェムなど
細菌の細胞壁合成を阻害呼吸器、尿路、皮膚など多様。薬ごとに抗菌範囲が異なるアレルギー、下痢、腎機能による調整。一律の交差反応ではない
マクロライド系蛋白合成を阻害非定型病原体を含む一部の呼吸器感染症など消化器症状、QT延長、肝機能、薬物相互作用
テトラサイクリン系蛋白合成を阻害一部の呼吸器・皮膚感染症、リケッチア感染症など食道障害、光線過敏、金属含有薬との相互作用、妊娠・小児
フルオロキノロン系DNA複製に関わる酵素を阻害尿路、呼吸器など。製品で適応が異なる腱障害、神経症状、QT延長、血糖変動、大動脈疾患など
アミノグリコシド系蛋白合成を阻害重いグラム陰性菌感染症などで併用される場合腎障害、聴覚・平衡機能障害。血中濃度管理が必要なことがある
グリコペプチド系細胞壁合成を阻害MRSAなど耐性グラム陽性菌感染症腎機能、点滴関連反応、血中濃度に基づく投与設計
ST合剤葉酸代謝を段階的に阻害一部の尿路・皮膚感染症、ニューモシスチス肺炎など発疹、血球減少、腎機能、カリウム上昇、相互作用
メトロニダゾール嫌気性菌などの核酸を障害嫌気性菌感染症、原虫症など中枢神経症状、肝機能、飲酒や併用薬への注意

この表は薬効群の全体像です。例えば同じセフェム系でも、世代や製品により有効な細菌、緑膿菌への活性、髄液移行性、内服・注射の別が異なります。「広域だから強い」「新しいから優れている」とは限りません。想定する細菌に十分に効き、不要な微生物への影響が少ない薬を選ぶことが基本です。

抗真菌薬の主な種類と特徴

薬効群主な作用主な位置づけ主な注意点
アゾール系エルゴステロール合成を阻害カンジダ、アスペルギルス、皮膚・爪真菌症など。製品で範囲が異なる肝障害、QTへの影響、CYPを介する多くの相互作用、吸収条件
キャンディン系真菌の細胞壁β-D-グルカン合成を阻害侵襲性カンジダ症など。点滴で使用肝機能、点滴関連反応。中枢神経や尿路への移行を考慮
ポリエン系細胞膜のエルゴステロールへ結合重い深在性真菌症など。外用・内服・点滴で薬が異なる点滴薬では腎障害、電解質異常、投与時反応など
アリルアミン系エルゴステロール合成の別段階を阻害白癬・爪白癬など肝機能、味覚障害、皮膚症状、相互作用
フルシトシン真菌の核酸合成を阻害一部の深在性真菌症で他剤と併用骨髄抑制、肝障害、腎機能に応じた調整と血中濃度

皮膚・爪の真菌症

足白癬では外用薬が中心になることが多い一方、爪白癬、頭部白癬、広範囲・難治例などでは内服薬を検討します。爪の濁りや足のかゆみがすべて真菌症とは限らないため、顕微鏡検査などで診断を確認します。外用薬は症状がある部分だけでなく、医師・薬剤師から示された範囲と期間を守って塗ります。

深在性真菌症

血液、肺、中枢神経などへ及ぶ真菌症は、免疫抑制、血液疾患、移植、集中治療、カテーテルなどと関連し、迅速な診断と全身治療が必要です。原因真菌と感染部位により第一選択薬が異なり、薬の変更だけでなく、感染したカテーテルの抜去や膿瘍の処置が必要な場合があります。

検査結果と経過で治療を再評価する

感染症治療後の症状と検査結果を医療者と確認する患者
治療開始後は症状、培養・感受性、臓器機能、副作用を再評価します。

治療前の検体採取

重症感染症や血流感染を疑う場合は、可能なら抗微生物薬の開始前に適切な検体を採取します。ただし、敗血症などで治療を遅らせる危険がある場合は、検査手配と初期治療を並行します。すでに薬を使っている場合も、使用薬、開始日、最終服用時刻を伝えます。

培養・感受性の読み方

感受性検査の「S」「I」「R」などは、規定された投与法と感染部位を前提にした解釈です。検査室で効きやすい結果でも、感染部位へ薬が届かない、膿瘍や異物が残る、服用できないといった条件があれば治療に失敗する可能性があります。反対に、検出された微生物が保菌であれば治療しない選択があります。

48〜72時間前後の見直し

発熱、呼吸・循環、痛み、局所所見、炎症反応、培養結果、腎機能・肝機能、副作用を確認します。原因が絞れたら抗菌範囲を狭める、点滴から内服へ切り替える、投与量を調整する、感染症ではないと分かれば中止することを検討します。改善しない場合は、耐性菌だけでなく、診断の違い、膿瘍、閉塞、異物、薬の吸収不良なども再評価します。

飲み方・塗り方・点滴の注意

処方された感染症治療薬の飲み方と注意点を確認する患者
製品名、1回量、間隔、食事との関係、飲み忘れ時の対応を確認します。

用量と間隔を守る

薬の効果は「1日何回」だけでなく、血中濃度が有効域にある時間、最高濃度、総曝露量などと関係します。まとめ飲みや間隔の大きなずれは、効果低下や副作用につながる可能性があります。飲み忘れ時の対応は薬と次の服用までの時間で異なるため、2回分を一度に飲まず、処方時の説明や薬剤師の指示を確認します。

食事・サプリメントとの関係

一部の薬は空腹時・食後で吸収が変わります。制酸薬、鉄・カルシウム・マグネシウムを含む薬やサプリメントと時間をあける必要がある抗菌薬もあります。グレープフルーツ、アルコールなどへの注意が必要な薬もあるため、市販薬とサプリを含む一覧を医師・薬剤師へ伝えます。

余った薬を保存・共有しない

同じ咳、発熱、皮膚症状でも原因は同じとは限りません。余った抗菌薬・抗真菌薬を次回に使うと、必要な検査が遅れ、用量不足、期限切れ、保存不良、相互作用などの問題が起こり得ます。家族や知人への譲渡も避けます。不要な薬の処分方法は、交付を受けた薬局などへ相談します。

主な副作用と薬物相互作用

アレルギー反応

発疹、じんましん、かゆみなどから、アナフィラキシー、重症薬疹まで幅があります。過去の薬剤名、症状、投与から発症までの時間、治療内容を伝えます。「抗菌薬で具合が悪くなった」という情報だけでは、アレルギー、通常の副作用、感染症そのものの症状を区別できないため、分かる範囲で具体化します。

消化器症状と抗菌薬関連下痢

悪心、腹痛、軟便、下痢は複数の薬で起こり得ます。抗菌薬は腸内細菌叢へ影響し、Clostridioides difficile感染症の契機になることがあります。頻回の水様便、血便、発熱、強い腹痛、脱水がある場合は早めに連絡します。止瀉薬を自己判断で使わず、最近数か月の抗菌薬使用や入院歴も伝えます。

肝臓・腎臓・血球への影響

薬によって肝障害、腎障害、血球減少、電解質異常が起こることがあります。長期治療、点滴治療、臓器機能が低下している場合は、血液検査や血中濃度測定を行うことがあります。黄疸、濃い尿、尿量減少、むくみ、強い倦怠感、出血しやすいなどの変化を見逃さないことが重要です。

薬効群に特徴的な注意

フルオロキノロン系では腱の痛み・腫れ、しびれや神経症状、精神神経症状、血糖変動など、アミノグリコシド系では腎機能と聴覚・平衡機能、グリコペプチド系では腎機能・点滴反応・血中濃度などを確認します。アゾール系抗真菌薬は肝代謝酵素やQT間隔へ影響するものがあり、抗凝固薬、免疫抑制薬、抗不整脈薬など多くの薬と相互作用する可能性があります。

自己判断で他の薬を止めない

相互作用が疑われても、抗凝固薬、抗てんかん薬、免疫抑制薬などを急に中止すると別の危険があります。処方医と薬剤師が、代替薬、用量調整、服用間隔、検査の必要性を判断します。

薬剤耐性(AMR)と適正使用

薬剤耐性とは、微生物に対して本来効くはずの抗微生物薬が効きにくくなることです。不必要な使用、広すぎる抗菌範囲、過不足のある用量、必要以上に長い投与などは耐性菌を選択する要因になります。一方、必要な感染症に治療を行わないことも危険です。「抗菌薬を使わない」こと自体が目的ではなく、診断と重症度に合った治療を適切なタイミングで行うことが重要です。

患者ができること

  • ウイルス性の風邪に抗菌薬を求めず、必要性の説明を聞く
  • 製品名、用量、期間、飲み忘れ時の対応を確認する
  • 余った薬を後日使ったり、他人へ渡したりしない
  • 改善しない・副作用がある場合は、自己変更せず処方元へ連絡する
  • 手洗い、咳エチケット、予防接種などで感染そのものを減らす

医療側の再評価

培養採取、地域の耐性状況、抗菌薬使用歴、入院・施設利用歴などを確認し、開始後は原因微生物と治療反応に応じて狭域化や中止を検討します。厚生労働省の「抗微生物薬適正使用の手引き」は外来編・入院編などを通じ、抗菌薬が必要な場面と不要な場面、患者への説明、評価の考え方を示しています。

妊娠・小児・高齢者・臓器機能低下での注意

妊娠・授乳

妊娠週数、感染症の重症度、母体と胎児への感染の影響、薬の安全性を比較します。妊娠の可能性がある場合も事前に伝えます。授乳中は、母乳への移行、乳児の月齢や健康状態を確認します。感染症を放置する危険もあるため、インターネット情報だけで薬を中止しないでください。

小児

体重や年齢で用量が変わり、剤形の選択も重要です。一部の薬は歯・骨、関節、血液などへの影響から年齢による注意がありますが、重い感染症では利益が上回る場合があります。大人用の残薬を分けたり、きょうだいの薬を流用したりしないでください。

高齢者と腎・肝機能低下

血清クレアチニン値が正常範囲でも、筋肉量が少ない高齢者では腎機能を過大評価することがあります。脱水、多剤併用、嚥下機能、認知機能、介助状況も確認します。肝機能低下では代謝される薬の曝露量が増えることがあり、検査値と症状を継続的に確認します。

免疫抑制状態

抗がん薬、移植後の免疫抑制薬、長期ステロイド、好中球減少、進行したHIV感染症などでは、一般的な感染症とは原因微生物と進行速度が異なる場合があります。発熱が目立たなくても重症化することがあり、予防投与を含む専門的な計画が必要です。

服用中に医療機関へ連絡する目安

症状・状況考える問題対応
呼吸困難、顔・唇・舌の腫れ、意識の変化、急速な全身発疹アナフィラキシー、重症薬疹など救急要請を含め直ちに受診
血圧低下を疑うぐったり感、呼吸が速い、尿が少ない、意識が悪い敗血症、感染症の悪化、脱水など直ちに医療機関へ連絡・受診
頻回の水様便、血便、発熱、強い腹痛重い抗菌薬関連下痢、C. difficile感染症など早急に処方元へ連絡
黄疸、濃い尿、尿量減少、強い倦怠感、むくみ肝障害、腎障害など当日中を目安に相談
腱の痛み・腫れ、しびれ、動悸、失神、聴こえにくさ薬効群に特徴的な重い副作用など運動や運転を避け早めに相談
予定どおり使っても悪化、発熱が続く、新しい症状耐性、感染源の残存、診断の違いなど自己増量せず再診

診察で伝えるチェックリスト

  • 薬の製品名、1回量、回数、開始日、最後に使った時刻
  • 症状が始まった時刻と変化、体温、呼吸、食事・水分、尿量
  • 発疹、下痢、嘔吐、腱の痛み、しびれ、動悸などの副作用
  • 過去の抗菌薬・抗真菌薬アレルギーと、そのときの具体的な症状
  • 腎臓・肝臓・心臓の病気、妊娠・授乳、免疫を抑える治療
  • 他院の処方、市販薬、サプリメント、個人輸入品

よくある質問(FAQ)

抗菌薬は風邪にも効きますか?
一般的な風邪の多くはウイルスが原因で、細菌を対象とする抗菌薬は効きません。ただし、症状だけで原因を決められない場合や、細菌感染症を合併している場合もあります。高熱が続く、呼吸が苦しい、意識状態が悪いなどの症状があれば診察を受けてください。
症状が良くなったら抗菌薬や抗真菌薬を中止できますか?
自己判断では中止しません。必要な治療期間は感染部位、原因微生物、重症度、薬、免疫状態、治療反応で異なります。早期中止が再燃につながる場合がある一方、不要に長く続けることも副作用や耐性の問題になります。処方時の指示に従い、変更は医師・薬剤師へ相談してください。
以前余った抗菌薬を同じ症状に使ってもよいですか?
使わないでください。似た症状でも原因や重症度が同じとは限らず、薬の種類、用量、使用期限、保存状態が適切とは限りません。診断が遅れたり、副作用や薬剤耐性の原因になったりする可能性があります。他人へ渡すことも避け、残薬の処分は薬局などへ相談してください。
抗菌薬で下痢が出たらどうすればよいですか?
軽い軟便だけでなく、頻回の水様便、血便、発熱、強い腹痛、脱水がある場合は早めに処方元へ連絡してください。抗菌薬関連下痢やClostridioides difficile感染症などの評価が必要なことがあります。市販の下痢止めを自己判断で追加せず、使用薬と症状の経過を伝えてください。
抗真菌薬は水虫ならどの薬でも同じですか?
同じではありません。足白癬、爪白癬、カンジダ症などで原因・感染部位・必要な治療期間が異なり、外用薬と内服薬の選択も変わります。湿疹など真菌症に似た病気もあるため、治りにくい場合や爪・頭部・広い範囲の症状では顕微鏡検査や培養などを含め診断を確認します。

参考文献・公的資料