- ✓ W-PRPは白血球を含むPRPであり、組織修復を促進する成長因子や抗炎症作用を持つサイトカインを豊富に含みます。
- ✓ 通常PRP(LP-PRP)との主な違いは白血球の含有量であり、W-PRPはより強力な炎症反応と細胞増殖を促す可能性があります。
- ✓ 変形性膝関節症や腱障害など、様々な運動器疾患への応用が期待されていますが、適応は慎重に検討する必要があります。
W-PRP(白血球含有PRP)は、自己の血液から抽出される多血小板血漿(PRP)の一種で、特に白血球を多く含む製剤です。この治療法は、組織の修復と再生を促進する目的で、整形外科領域を中心に注目を集めています。ここでは、W-PRPの基本的な特性、通常PRPとの違い、そしてその効果について、専門医の視点から詳しく解説します。
W-PRP(白血球含有PRP)とは何か?

W-PRP(Leukocyte-Rich Platelet-Rich Plasma)は、患者さん自身の血液から遠心分離によって作製される、血小板と白血球を高濃度に含む血漿のことです。この製剤には、組織の修復や細胞の増殖を促す様々な成長因子や、炎症反応を調整するサイトカインが豊富に含まれています。
PRP療法は、自己の血液成分を利用するため、アレルギー反応や感染症のリスクが低いという特徴があります。W-PRPは、特に慢性的な炎症を伴う疾患や、組織の再生能力を高めたい場合にその効果が期待されています。実臨床では、変形性関節症の患者さんから「膝の痛みがなかなか引かない」「手術は避けたい」といった相談を受けることが多く、W-PRPはそうした選択肢の一つとして検討されることがあります。
- PRP(多血小板血漿)
- 患者さん自身の血液から血小板を濃縮して作られる血漿製剤。血小板に含まれる成長因子が組織の修復・再生を促進すると考えられています。
- 成長因子
- 細胞の増殖、分化、組織修復などを促進する生理活性物質の総称。血小板や白血球に多く含まれます。
- サイトカイン
- 細胞間の情報伝達を担うタンパク質の一種。免疫反応や炎症の調節など、様々な生理作用に関与します。
通常PRP(LP-PRP)とW-PRPの主な違いとは?
PRPは、その製法によって白血球の含有量が異なります。通常PRPと呼ばれるものは、白血球をほとんど含まない「LP-PRP(Leukocyte-Poor Platelet-Rich Plasma)」を指すことが多いです。一方、W-PRPは、白血球を意図的に多く含むように調整されたPRPです。
この白血球の有無が、両者の作用機序や臨床効果に違いをもたらすと考えられています。白血球、特に好中球やマクロファージは、炎症反応の初期段階で重要な役割を果たし、サイトカインや酵素を放出して組織修復のシグナルを送ります。また、リンパ球も免疫応答に関与し、長期的な組織再生に影響を与える可能性があります。
| 項目 | W-PRP(白血球含有PRP) | 通常PRP(LP-PRP) |
|---|---|---|
| 白血球含有量 | 高濃度に含む | ほとんど含まない |
| 血小板含有量 | 高濃度 | 高濃度 |
| 作用機序 | 成長因子に加え、白血球由来のサイトカインや酵素が炎症・免疫反応を調整し、組織再生を促進 | 主に血小板由来の成長因子が組織修復・再生を促進 |
| 期待される効果 | より強力な組織修復、抗炎症作用、抗菌作用など | 組織修復、疼痛緩和 |
| 注射後の反応 | 一時的な炎症反応や疼痛がLP-PRPより強く出ることがある | 比較的軽度な炎症反応 |
W-PRPはどのような効果が期待できるのか?

W-PRPは、その成分特性から多岐にわたる効果が期待されています。主な効果としては、組織修復の促進、抗炎症作用、そして抗菌作用が挙げられます。
組織修復・再生の促進
W-PRPに含まれる血小板由来の成長因子(PDGF, TGF-β, VEGFなど)は、細胞の増殖やコラーゲン合成を促進し、損傷した組織の修復をサポートします。さらに、白血球が放出するサイトカインや酵素も、組織の再構築に必要な細胞を動員し、再生プロセスを活性化させると考えられています。特に腱や靭帯、軟骨といった組織は、一度損傷すると自然治癒が難しい場合が多く、W-PRPによる治療はこれらの組織の再生を促す可能性を秘めています[4]。
抗炎症作用と疼痛緩和
白血球は炎症反応の主役である一方で、炎症を収束させるための抗炎症性サイトカインも産生します。W-PRPに含まれるこれらの成分が、患部の慢性的な炎症を抑え、痛みを軽減する効果が期待されています。変形性膝関節症の患者さんを対象とした研究では、W-PRPがLP-PRPと同等の安全性と有効性を示す可能性が報告されています[2]。ただし、白血球が多すぎると、注射後に一時的に強い炎症反応や痛みを引き起こす可能性も指摘されており、このバランスが重要となります。
抗菌作用
白血球、特に好中球は、体内に侵入した細菌や異物を排除する役割を担っています。W-PRPを患部に注入することで、白血球の持つ抗菌作用が働き、感染リスクの低減に寄与する可能性も示唆されています。これは、特に開放創や感染のリスクがある状況において、補助的な効果として期待できるかもしれません。
臨床現場では、慢性的な腱炎や関節症で、痛みが強く日常生活に支障をきたしている患者さんに対して、W-PRPを検討することがあります。筆者の臨床経験では、治療開始から数週間から数ヶ月で、痛みの軽減や可動域の改善を実感される方が多い印象です。ただし、効果の現れ方には個人差が大きく、全ての患者さんに同様の効果が期待できるわけではありません。
W-PRPの効果は、疾患の種類、重症度、患者さんの状態によって大きく異なります。また、製剤の作製方法や注入部位、回数なども効果に影響を与える可能性があります。治療を検討する際は、専門医と十分に相談し、ご自身の状態に合った治療法を選択することが重要です。
どのような疾患にW-PRPは有効か?
W-PRPは、その組織修復促進作用や抗炎症作用から、様々な運動器疾患への応用が研究されています。特に、変形性関節症や腱・靭帯損傷、脊椎疾患などでの有効性が期待されています。
変形性関節症
変形性膝関節症は、関節軟骨の摩耗により痛みや機能障害が生じる疾患です。W-PRPは、軟骨細胞の保護や再生を促し、炎症を抑制することで、症状の改善に寄与する可能性があります。複数の研究で、変形性膝関節症に対するW-PRPの有効性が報告されており、LP-PRPと比較して同等またはそれ以上の効果を示す可能性が示唆されています[3]。日常診療では、「階段の昇り降りがつらい」「正座ができない」といった訴えで受診される変形性膝関節症の患者さんが多く、W-PRPは手術以外の選択肢として注目されています。
腱・靭帯損傷
アキレス腱炎、テニス肘(上腕骨外側上顆炎)、ゴルフ肘(上腕骨内側上顆炎)、膝蓋腱炎などの慢性的な腱・靭帯損傷に対しても、W-PRPは有効性が期待されています。これらの疾患は、微細な損傷と修復不全が繰り返されることで慢性化することが多く、W-PRPが組織の修復プロセスを活性化し、痛みの軽減や機能改善をもたらすと考えられています[4]。臨床現場では、スポーツ選手や肉体労働に従事する方々から「痛みが長引き、練習や仕事に集中できない」という相談をよく受けます。W-PRPは、こうした難治性の腱・靭帯損傷に対する新たな治療選択肢として期待されています。
脊椎疾患
頚椎や腰椎の椎間関節性疼痛など、脊椎の変性疾患に伴う痛みに対してもW-PRPの応用が試みられています。椎間関節の炎症や変性に対して、W-PRPを注入することで、炎症の抑制や組織の修復を促し、痛みの緩和が期待されます。最近の研究では、頚椎椎間関節性疼痛に対するW-PRPの有効性が示唆されています[1]。日々の診療では、「首や腰の痛みが慢性化して、日常生活に支障が出ている」と訴える患者さんが少なくありません。W-PRPは、これらの患者さんのQOL(生活の質)向上に貢献する可能性があります。
W-PRP治療の一般的な流れと注意点

W-PRP治療は、患者さん自身の血液を使用する自己血治療であり、一般的には以下の流れで実施されます。実際の診療では、患者さんの状態や疾患の種類に応じて、詳細な手順が異なる場合があります。
1. 診察と診断
まず、医師が患者さんの症状、病歴、身体所見などを詳しく確認し、適切な診断を行います。画像検査(X線、MRI、超音波など)を用いて、病変の部位や程度を評価し、W-PRP治療の適応があるかどうかを慎重に判断します。この段階で、患者さんにはW-PRP治療のメリット、デメリット、期待される効果、費用、他の治療選択肢などについて十分に説明し、同意を得ます。診察の場では、「本当に効果があるのか?」「副作用はないのか?」と質問される患者さんも多いです。私自身の臨床経験から、患者さんの不安を解消するために、エビデンスに基づいた丁寧な説明を心がけています。
2. 採血とPRP作製
治療が決定したら、患者さんから必要な量の血液を採取します。採取された血液は、専用のキットを用いて遠心分離機にかけられ、血小板と白血球が高濃度に含まれるW-PRPが作製されます。この作製プロセスは、厳格な衛生管理の下で行われます。
3. 患部への注入
作製されたW-PRPは、超音波ガイドや透視装置などを用いて、正確に患部へ注入されます。これにより、目的の組織に直接成長因子やサイトカインを届けることができます。注入時の痛みは、局所麻酔を使用することで軽減されます。実際の診療では、注入部位や患者さんの痛みの感じ方に応じて、麻酔の量や方法を調整します。
4. 治療後の経過観察とリハビリテーション
W-PRP注入後は、安静期間を設けることが推奨される場合があります。その後、症状の改善度合いに応じて、段階的にリハビリテーションを開始します。定期的な診察で、治療効果や副作用の有無を確認し、必要に応じて追加の治療やリハビリテーションの調整を行います。臨床経験上、治療効果を最大限に引き出すためには、注入後の適切な運動療法や生活指導が非常に重要になります。フォローアップでは、痛みの程度、可動域の変化、日常生活での困りごとなどを詳細に確認し、患者さんの回復をサポートします。
W-PRP治療は、自己の血液を使用するため比較的安全性が高いとされていますが、注射部位の痛み、腫れ、内出血などの一時的な副作用が生じることがあります。また、稀に感染症のリスクもゼロではありません。これらのリスクについても、治療前に医師から十分な説明を受けることが重要です。
W-PRPとLP-PRP、どちらを選ぶべきか?
W-PRPとLP-PRPのどちらを選択するかは、治療対象となる疾患の種類や病態、そして医師の判断によって異なります。それぞれのPRP製剤には、異なる特性と期待される効果があるため、一概にどちらが優れているとは言えません。
一般的に、W-PRPは、より強力な炎症反応の調整や組織再生の促進が期待される場合に選択される傾向があります。例えば、慢性的な炎症が強く関与する変形性関節症や、難治性の腱・靭帯損傷などです。白血球が放出するサイトカインが、組織修復の初期段階で重要な役割を果たすと考えられています[4]。
一方、LP-PRPは、白血球による炎症反応を抑えたい場合や、注射後の痛みを最小限に抑えたい場合に選択されることがあります。特に、急性期の炎症が強い場合や、白血球が組織に与える影響が懸念される場合には、LP-PRPが適している可能性もあります。
しかし、近年の研究では、変形性膝関節症に対するW-PRPとLP-PRPの安全性と有効性に大きな違いはないとする報告も出ています[2]。また、頚椎椎間関節性疼痛においては、W-PRPが有効である可能性も示唆されています[1]。
最終的な選択は、患者さんの病態、症状、活動レベル、そして過去の治療歴などを総合的に考慮し、専門医と十分に相談した上で決定することが肝要です。日々の診療では、患者さんのライフスタイルや治療への期待を詳しく伺い、最適な治療法を一緒に検討するようにしています。例えば、「痛みを早く改善したいが、注射後の強い痛みは避けたい」という患者さんにはLP-PRPを、「多少の痛みがあっても、より強力な再生効果を期待したい」という患者さんにはW-PRPを提案するなど、個別のニーズに応じたアプローチが重要です。
まとめ
W-PRP(白血球含有PRP)は、自己の血液から作製される、血小板と白血球を高濃度に含む血漿製剤です。通常PRP(LP-PRP)との最大の違いは白血球の含有量であり、W-PRPは成長因子に加え、白血球由来のサイトカインや酵素が組織修復、抗炎症、抗菌作用に寄与すると考えられています。
変形性関節症、腱・靭帯損傷、脊椎疾患など、様々な運動器疾患への応用が期待されており、特に慢性的な炎症や組織の再生不全を伴う病態に対して有効性が示唆されています。治療は、診察、採血・PRP作製、患部への注入、経過観察とリハビリテーションという流れで行われます。
W-PRPとLP-PRPの選択は、疾患の種類や病態、患者さんのニーズによって異なり、専門医との十分な相談が不可欠です。治療効果には個人差があるため、ご自身の症状や期待する効果について医師とよく話し合い、最適な治療法を見つけることが重要です。
よくある質問(FAQ)
- David J Allison, Eldon Loh, Robert Burnham et al.. Leukocyte poor platelet rich plasma vs leukocyte rich platelet rich plasma as a treatment for cervical facetogenic pain: A pooled analysis.. Interventional pain medicine. 2025. PMID: 40124672. DOI: 10.1016/j.inpm.2025.100566
- Iacopo Romandini, Angelo Boffa, Alessandro Di Martino et al.. Leukocytes Do Not Influence the Safety and Efficacy of Platelet-Rich Plasma Injections for the Treatment of Knee Osteoarthritis: A Double-Blind Randomized Controlled Trial.. The American journal of sports medicine. 2024. PMID: 39394763. DOI: 10.1177/03635465241283500
- Alessandro Di Martino, Angelo Boffa, Luca Andriolo et al.. Leukocyte-Rich versus Leukocyte-Poor Platelet-Rich Plasma for the Treatment of Knee Osteoarthritis: A Double-Blind Randomized Trial.. The American journal of sports medicine. 2022. PMID: 35103547. DOI: 10.1177/03635465211064303
- Keng-Yi Lin, Poyu Chen, Alvin Chao-Yu Chen et al.. Leukocyte-Rich Platelet-Rich Plasma Has Better Stimulating Effects on Tenocyte Proliferation Compared With Leukocyte-Poor Platelet-Rich Plasma.. Orthopaedic journal of sports medicine. 2022. PMID: 35309233. DOI: 10.1177/23259671221084706

