大動脈弁閉鎖不全症とは|症状・検査・治療と手術時期を解説

大動脈弁が閉じ切らず大動脈から左心室へ血液が逆流する状態を示す医療イラスト
循環器内科|大動脈弁閉鎖不全症

大動脈弁閉鎖不全症の症状・検査・治療

症状がなくても心臓が広がることがあるため、心エコーの変化と手術の時期を追います。

最終更新 2026.09.15医学レビュー 2026.09.15
区別する急性と慢性を区別
定期確認心エコー変化を確認
時期を逃さない手術時期を検討
結論から

大動脈弁閉鎖不全症は、閉じるべき大動脈弁に隙間ができ、全身へ送り出した血液の一部が左心室へ戻る病気です。急な強い息苦しさ、胸・背中の痛み、血圧低下、意識変化は急性の重い逆流や大動脈疾患の可能性があり119番を考えます。慢性では症状が乏しくても定期心エコーが必要です。

このページで分かること
  • 急性と慢性はどう違う?
  • 症状がなくても検査する?
  • 手術はいつ考える?
最初に知っておきたい言葉
閉鎖不全/逆流
弁が閉じ切らず、血液が戻ることです。
左心室
全身へ血液を送り出す心臓の部屋です。
駆出率(LVEF)
左心室が一回の収縮で送り出す割合を表す指標です。
大動脈基部
大動脈弁のすぐ先にある大動脈の根元部分です。
01

弁の異常と大動脈の拡大で、血液が左心室へ戻る

心臓が拡張する時期に大動脈弁が閉じ切らず、大動脈から左心室へ血液が戻ります。長く続くと左心室は多くの血液を扱うため広がり、やがて収縮する力が落ちることがあります。

弁そのものの異常
二尖弁、加齢性変化、感染性心内膜炎、外傷など。
大動脈側の異常
大動脈基部や上行大動脈が広がり、弁が合わなくなる状態。
急性
感染、急性大動脈解離などで短時間に強い逆流が起こる状態。
慢性
時間をかけて心臓が適応し、症状が遅れて出る状態。

原因によって弁だけを治すか、大動脈も同時に治すかが変わります。[1][2][3]

大動脈弁が閉じ切らず大動脈から左心室へ血液が逆流する状態を示す医療イラスト
図|大動脈弁閉鎖不全症では、閉じ切らない弁から血液が戻る 慢性では心臓が徐々に広がることがあり、症状がなくても定期評価が必要です。
02

急な息苦しさ、胸・背中の痛み、意識変化では119番を考える

急性の重い逆流や大動脈疾患を疑う状態

急に始まった強い息苦しさ、横になれない呼吸困難、胸または背中の激痛、冷汗、顔色不良、血圧低下、失神・意識変化がある場合です。自分で運転しないでください。

急性大動脈弁閉鎖不全症は、心臓が急な血液量の増加に対応できず、急性心不全やショックを起こすことがあります。感染性心内膜炎では発熱、悪寒、強いだるさを伴う場合があります。緊急の心エコーと原因検索が必要です。[1][2]

03

慢性では、動悸・息切れ・疲れやすさが徐々に現れる

慢性の逆流では、長い間症状がないことがあります。進行すると、心臓が強く打つ感じ、横になると心拍を強く感じる、運動時の息切れ、疲れやすさ、胸部不快感、むくみなどが出ます。

脈の感じ

横になったときの強い拍動や動悸が増えたか。

運動耐容能

歩行・階段の速度、休む回数が変わったか。

呼吸

横になると苦しい、夜中に息苦しくて起きるか。

体液貯留

足のむくみ、短期間の体重増加がないか。

症状が出る前から左心室が広がることがあるため、「苦しくないから検査不要」ではありません。[1][4]

04

心エコーで逆流量だけでなく、左心室と大動脈を測る

心エコーでは、逆流する血液の幅や量、血流パターンを複数の方法で評価します。同時に左心室の大きさと駆出率、大動脈基部・上行大動脈、他の弁を確認します。測定値が一致しない場合は、心臓MRIやCTを追加することがあります。[1][2][4]

逆流の重症度
一つの色の広がりだけでなく、複数の指標を組み合わせます。
左心室の大きさ
血液量の負担で拡大していないかを、体格も考えて評価します。
左心室の働き
駆出率が一見正常でも、慢性ARでは低下が始まっている場合があります。
大動脈の太さ
弁の原因や手術範囲に関わるため、基部と上行大動脈を測ります。
診察室から

日々の循環器内科診療では、「動悸がありますか」だけでなく、前回の心エコーと左心室の大きさを並べ、歩行や階段での変化を確認します。慢性の逆流は体が慣れて症状が遅れるためです。ただし一回の測定差だけで手術を決めず、画質と経時変化を確認します。

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薬で弁の隙間は治らないため、心臓が弱る前に手術時期を考える

血圧や心不全症状を管理する薬を使う場合はありますが、弁の隙間そのものを薬で閉じることはできません。重症で症状がある、左心室の働きが低下した、左心室が一定以上に拡大した、別の心臓・大動脈手術が必要といった場合に外科治療を検討します。[1][2][3]

弁置換術
弁を生体弁または機械弁へ置き換えます。
弁形成術
弁の形と施設経験により、自分の弁を修復できる場合があります。
大動脈手術
基部・上行大動脈の拡大が原因なら、弁と大動脈を同時に治す場合があります。
経カテーテル治療
純粋なARではASのTAVIと同じように全員へ行える治療ではなく、適応と機器を専門チームで確認します。
無症状での早期手術は、まだ一律の答えではありません新しいメタ解析は早期手術の利益を示唆しますが、主に観察研究で対象と手術時期が異なります。ガイドラインの心機能・心臓サイズ・大動脈径と、専門施設の評価を優先します。[5][6]
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無症状でも定期検査を続け、新しい症状で予定を前倒しする

診察と心エコーの間隔は、逆流の重症度、左心室の大きさ・働き、大動脈径、進行速度で決まります。血圧を管理し、歯や皮膚の感染を放置せず、運動の強さは重症度と大動脈径に応じて相談します。[1][2]

慢性ARの手術時期は、複数の測定値と変化の速さで判断します。海外の一つの基準やインターネット上の数字を自己適用せず、前回値との比較を担当医に確認してください。

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よくある質問

大動脈弁閉鎖不全症と大動脈弁逆流症は同じですか?

ほぼ同じ状態を指す名称です。弁が閉じ切らず、大動脈から左心室へ血液が戻ります。

症状がなくても手術が必要ですか?

必要になる場合があります。逆流が重く、左心室の働きが低下した、心臓や大動脈が広がった場合などに検討します。

薬だけで治りますか?

薬で血圧や心不全症状を管理することはありますが、弁の隙間そのものを元に戻す治療ではありません。

運動してもよいですか?

重症度、左心室の状態、大動脈径で安全な強さが変わります。新しい息切れや胸痛があれば中止し、担当医へ確認してください。

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参考文献

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