- ✓ 頬骨削り(骨切り)は、口内ともみあげの切開からアプローチし、三次元的に骨を内方へ移動させる手術です。
- ✓ 主なリスクとして、術後の皮膚のたるみ、一時的な感覚のしびれ、骨の固定不全による左右差などが挙げられます。
- ✓ 3Dシミュレーションやガイドの活用、骨膜の適切な処理により、合併症のリスクを抑えた精密な治療が期待できます。
頬骨削り(頬骨弓骨切り)の術式・ダウンタイム
頬骨削り(頬骨弓骨切り)の術式・ダウンタイムとは、顔の横幅や前方の突出を改善するために頬骨の一部を切り取り、内側に移動させて固定する外科手術と、その後に生じる回復期間(ダウンタイム)の一連の過程を指します。
顔の輪郭を決定づける頬骨は、前方への突出を作る「頬骨体部(おうこつたいぶ)」と、横方向の張り出しを作る「頬骨弓部(おうこつきゅうぶ)」の2つの部位に分かれています。この両方の突出をバランスよく、かつ安全に減じるために考案されたのが、現代の主要な術式である頬骨削り(頬骨体部骨切りおよび頬骨弓骨切り)です[2]。骨を単に削るだけでは大きな変化を得ることが難しいため、現在では「骨切り(骨を離断し移動させること)」を併用するのが標準的となっています。
頬骨削りの主な術式とアプローチ方法とは?
頬骨の張り出しを劇的に改善するためには、口の中(口腔内切開)ともみあげ(耳前部切開)の2箇所からアプローチする術式が広く採用されています。これにより、顔の表面に目立つ傷跡を残すことなく骨に到達できます。
具体的な手術手順は以下の通りです。
- 全身麻酔をかけ、口腔内の粘膜ともみあげの毛際をそれぞれ約1.5〜2cm切開します。
- 骨膜(骨を覆う薄い膜)を剥離し、頬骨体部と頬骨弓部を露出させます。
- 頬骨体部に対してL字型に骨切りを行い、同時に頬骨弓の後端部(もみあげ側)を切り離します[3]。
- 切り出した頬骨のブロックを、三次元的に内方(内側かつやや後上方)へスライドさせます。
- 移動させた骨を、チタン製または吸収性のミニプレートとスクリュー(ネジ)を用いて強固に固定します[3]。
- 剥離した組織を元の位置に戻し、傷口を微細な縫合糸で閉鎖します。
特に、L字型骨切り(L-osteotomy)は中顔面の突出を滑らかにする上で非常に有用な手法であり、咬筋の牽引力による骨の転位(ズレ)を防ぐために、プレートによる強固な固定が必須となります[3]。術式の詳細は、個々の骨格構造や患者様の希望するデザインに合わせて微調整されます。
| アプローチ方法 | 口腔内切開 | もみあげ切開(耳前部) |
|---|---|---|
| アプローチする部位 | 頬骨体部(前方〜側方の突出部) | 頬骨弓(横方向の張り出し) |
| 傷跡の目立ちやすさ | 口内のため、外からは全く見えない | 髪の毛の中やシワに隠れるため極めて目立たない |
| 主な役割 | 体部の骨切り、および骨片の固定 | 弓部後端の骨切り、および内方スライド |
ダウンタイムの経過と過ごし方のコツは?
頬骨削りは、骨という深い階層に介入する手術であるため、それ相応のダウンタイム(回復期間)が必要となります。一般的なダウンタイムの経過は以下のようになります。
- 術後1〜3日目(腫れのピーク): 顔全体が大きく腫れ、内出血が下方に落ちて首元などに黄色や紫色のあざとなって現れることがあります。この時期は頭を高くして休み、患部を穏やかに冷やすことが推奨されます。
- 術後1週間(抜糸): 口腔内やおもに外側の抜糸を行います。この頃には強い腫れが引き始め、マスクを着用すれば外出可能なレベルに回復することが多いです。
- 術後1ヶ月: 大きな腫れの8割程度が消失します。まだ多少のむくみ感や、硬さ(拘縮)が残りますが、メイクや日常生活において支障を感じることはほとんどなくなります。
- 術後3〜6ヶ月: 細かいむくみや組織の硬さが徐々に取れ、輪郭が完全に引き締まって完成形となります。
実際の診療では、術後3日目の腫れのピーク時に強い不安を募らせてご連絡をいただく患者さまも少なくありません。私たちは、あらかじめ詳細な腫れの経過を術前カウンセリングで共有し、術後もオンラインや対面による丁寧なフォローアップ体制を構築することで、患者さまがダウンタイムを安心して乗り越えられるよう努めています。術後の過ごし方として、術後2週間程度は硬い食べ物を避け、おかゆやゼリーなどの柔らかい食事を心がけることが、骨の初期固定を維持するために非常に重要です。
頬骨削りのリスク:たるみ・しびれ・左右差
頬骨削りのリスク:たるみ・しびれ・左右差とは、骨切り手術によって土台となる骨の体積が減少すること、あるいは手術操作が周囲の組織に及ぼす影響によって生じる可能性がある代表的な合併症や偶発症のことです。
この手術は大きな変化をもたらす一方で、顔面の解剖学的構造を深く理解し、慎重に行わなければ深刻な後遺症を招く恐れがあります。骨を小さくするということは、それまで骨に支えられていた皮膚や脂肪、筋肉といった「軟部組織」の土台が小さくなることを意味するため、適切な予測と対処が必要不可欠です。
術後のたるみはなぜ起こるのか?
頬骨削りの後に「顔がたるんだ」「老けて見えるようになった」という訴えは、本手術において最も注意すべきリスクの一つです。たるみが生じる原因は、おもに以下の3つの要素に集約されます。
- 骨のボリューム低下: 骨が内側に引っ込むことで、上に乗っている軟部組織(皮膚や脂肪)が余り、重力に従って下垂します。
- 支持靭帯(リガメント)の剥離: 手術の際、骨に付着している支持靭帯を過度に剥離すると、軟部組織を支える力が失われ、たるみが顕著になります。
- 患者側の素因: もともと皮膚の弾力性が低い方や、高齢の方、皮下脂肪が多い方は、骨切り後の皮膚の引き締まり(タイトニング)が追いつかず、たるみが出やすくなります[4]。
外来診療では、「骨は引っ込んだものの、ほうれい線やマリオネットラインが深くなった気がする」とご相談される患者さまが非常に増えています。実臨床では、単に「骨を限界まで削る」という判断を避けることが重要です。骨膜の剥離範囲を最小限に留め、必要に応じて骨切り時に軟部組織を上方へ引き上げて再固定する技術が用いられます。また、年齢や皮膚の弛緩度を事前に厳しく評価し、術後に Hifu(ハイフ)などの照射治療を計画する、あるいは顕著なたるみが予想される場合は、骨切り手術とフェイスリフト手術を同時に、もしくは段階的に行う計画を立てるなどの診療フローを提案しています[4]。
神経損傷によるしびれのリスクとは?
頬骨の周囲には、顔の感覚や運動を司る重要な神経が走っています。特に注意すべきは「眼窩下神経(がんかかしんけい)」と「顔面神経頬骨枝(がんめんしんけいきょうこつし)」です。
眼窩下神経は、頬骨体部の非常に近い位置にある「眼窩下孔」という穴から出ており、頬、小鼻、上唇の感覚を担当しています。骨を切り取るラインがこの神経の出口に近すぎる場合、または手術操作中に神経が過度に牽引された場合、術後に頬や上唇のしびれ、感覚鈍麻が生じることがあります。多くの場合、これらは一時的な神経のむくみによるもので、術後3〜6ヶ月をかけて徐々に回復しますが、極めて稀に永続的な感覚障害として残る可能性が否定できません。
一方、顔面神経の頬骨枝は、額や眉、目元の表情筋を動かす神経です。もみあげ付近の剥離を行う際に、この神経を損傷すると、一時的に「目が閉じにくい」「額にシワが寄せられない」といった顔面神経麻痺の症状が現れることがあります。これを防ぐためには、解剖学的に安全な階層(深側頭筋膜下など)を忠実に剥離していく精密な手術操作が要求されます。
術後の左右差を防ぐアプローチは?
人間の顔はもともと非対称(アシンメトリー)ですが、手術によってその左右差が強調されたり、あるいは骨の移動量が左右で均一でなかったりすることによって、術後に新たな左右差が生じるリスクがあります。骨のズレや固定不足による不安定さが原因となることもあります。
左右非対称の改善には、事前の3次元的な解析が不可欠です。近年では、患者様のCTデータをもとに、術後の骨の移動量を精密に設計する「3Dサージカルガイド(シミュレーションガイド)」を用いた手術手法が導入されており、これにより術中の骨切りラインや骨の移動精度をmm単位で制御することが可能となっています[1]。骨の非対称性に対して、シミュレーションに基づいた正確なアプローチを行うことが、満足度の高い結果を得るための重要な鍵となります[1]。
頬骨削りを行った後は、骨が完全に癒合(再結合)するまでに約3〜6ヶ月かかります。この期間中に顔を強くぶつけたり、頬杖をついたりする強い外力を加えると、プレートで固定されていても骨がズレてしまい、深刻な左右差や変形の原因となるため、絶対に避けてください。
頬骨削りの基本理解:定義と骨格のメカニズム
頬骨削りの基本理解:定義と骨格のメカニズムとは、美容外科領域において中顔面の突出を改善するための骨切り手術を行う上で、基礎となる頬骨の解剖学的構造や、骨を動かすことで顔貌が変化する原理のことです。
顔の輪郭を大きく左右する頬骨(Zygomatic bone)は、顔面骨格の中心的な役割を果たしています。頬骨の形状は、遺伝的な要因や人種的な特徴が強く反映される部位であり、その構造を正確に理解することが適切なアプローチを選択するための第一歩となります。
頬骨の解剖学的構造と分類
頬骨は、一見すると一つの塊のように見えますが、顔面の他の骨(側頭骨、上顎骨、額骨)と複雑に連結しており、大きく分けて「体部」と「弓部」の2つに大別されます。
- 頬骨体部(Malar body)
- 目の下から頬の外側にかけて位置する、平たくて厚みのある骨の部分です。この部分が前方に突出していると、顔全体が前に強く張り出した印象(男性的、あるいは活動的な印象)を与えます。
- 頬骨弓(Zygomatic arch)
- 頬骨体部から耳側に向けてアーチ状に伸びる、細い架け橋のような骨の部分です。この部位が横方向に張り出していると、顔の横幅が広く見え、こめかみや頬のコケが目立つことで、顔立ちがゴツゴツとした、実年齢より老けた印象になりやすくなります。
- 骨切り(Osteotomy)
- 骨に切れ目を入れ、完全に離断させる手術操作のことです。頬骨削りにおいては、体部と弓部の両端を切ることで、骨片を自由に移動(内方・後方へ転位)できるようにします。
東洋人と西洋人の顔貌の違い
東洋人(アジア人)の頭蓋骨は、西洋人に比べて短頭型(前後径が短く、横幅が広い)であり、さらに頬骨体部が前方へ、頬骨弓部が横方向へ強く張り出している傾向があります。これに対し、西洋人は長頭型(前後径が長く、横幅が狭い)で、中顔面が立体的に前に突き出ており、頬骨が横に目立つことは少ないです。
そのため、東洋人における顔の広がりを改善するためには、単に骨の表面をシェービングする(削る)だけでは不十分であり、横幅を劇的に縮小できる「頬骨弓の骨切り・内方移動」をメインとしたアプローチが必要とされる傾向にあります[2]。骨の厚み自体は数ミリ程度しかないため、安全に削れる量には限界があり、骨を移動させることこそが、骨格のメカニズムに基づいた最も合理的な輪郭形成の手法となります。
頬骨削りの効果・メリットと期待できる結果
頬骨削りの効果・メリットと期待できる結果とは、突出した骨を内方へ移動・縮小させることで得られる小顔効果や、ゴツゴツとした顔の輪郭を滑らかにし、洗練された印象に整える術後の美容的成果のことです。
骨という最も深い土台を変化させるため、ヒアルロン酸注入や糸リフトといった一時的な施術とは一線を画す、大きな変化が期待できます。その効果は基本的に半永久的であり、お顔立ちのコンプレックスを根本から解消することを目的としています。
どのような変化や小顔効果が期待できる?
頬骨削りによって得られる具体的なメリットや期待できる変化は、以下の通りです。
- 中顔面の横幅縮小(小顔効果): 頬骨弓を内側にスライドさせることで、顔の横幅が劇的にタイトになり、頭身のバランスが向上します。
- 輪郭のゴツゴツ感・凹凸の解消: こめかみや頬のコケ(ひょうたん型の輪郭)が目立たなくなり、緩やかで美しいフェイスラインが生まれます。
- 柔らかく女性らしい印象の獲得: 張り出した頬骨がもたらす「険しい」「男性的」「きつい」といった印象が緩和され、温和で若々しい印象になります。
- 横顔、斜め顔の美しさ向上: 頬の突出がなだらかになることで、光の当たり方が均一になり、写真映えやメイク映えが向上します。
臨床経験上、術後3〜6ヶ月の定期検診において、患者さまから「笑ったときの頬の引っかかりや不自然な盛り上がりがなくなり、写真に写るのが本当に楽しくなりました」と笑顔でご報告いただく機会が多々あります。治療効果を最大限に高め、期待通りの結果を導き出すためには、やはり事前のシミュレーションが重要な役割を果たします[1]。フォローアップ時の確認項目として、咬合のチェックや口の開けやすさ(開口障害がないか)に加え、笑った際のお顔のダイナミックな動き(筋肉の動きを阻害していないか)などを細かく観察し、仕上がりの完成度を追求しています。
また、若年層の患者さまだけでなく、中高年の患者さまに対して骨切りを行うケースでも、最新の術式を適切に応用し、必要に応じたフェイスリフト(軟部組織の引き上げ)を同時または後日施すことによって、たるみの発生を予防しながら、非常に自然で洗練された若返り効果(アンチエイジング)を両立させることが報告されています[4]。骨格そのものを整えることは、一生ものの自信に繋がることが多く、術後の生活の質の向上において大きな役割を担っています。
まとめ
頬骨削り(骨切り)は、顔の横幅や前方の強い突出を根本から改善し、なだらかで上品なフェイスラインを手に入れるための、有効性の高い骨切り手術です。口の中やもみあげの傷からアプローチするため傷跡が残りにくく、3Dシミュレーションや安全性の高いL字骨切り術の発展により、合併症のリスクを抑えつつ、再現性の高い結果が期待できるようになっています。
しかしながら、顔面の解剖は非常に複雑であり、術後のたるみ、神経損傷による一時的なしびれ、骨の不完全な癒合といったリスクも確かに存在します。これらのリスクを抑えるためには、骨格に合わせた適切な骨切りデザイン、正確な固定、そして何より患者さまの皮膚の状態や年齢をふまえた丁寧な術前評価と術後管理が必要です。輪郭について一人で悩み続ける前に、実績のある専門医によるカウンセリングを受け、ご自身に最適な治療選択肢を検討してみてください。
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- Sang-Hoon Kang, Hye-Jin Tak, Hak-Jin Kim et al. Reduction malarplasty using a simulated surgical guide for asymmetric/prominent zygoma. Head & face medicine. 2022. PMID: 35351162.
- S M Baek, Y D Chung, S S Kim. Reduction malarplasty. Plastic and reconstructive surgery. 1991. PMID: 2052661.
- Jae Jin Kim, Eun Young Lee, Hyun Seok et al. An improved technique for zygoma reduction malarplasty. Journal of cranio-maxillo-facial surgery : official publication of the European Association for Cranio-Maxillo-Facial Surgery. 2018. PMID: 29519577.
- Chong Zou, Jia-Qi Wang, Jian-Feng Liu et al. Reduction Malarplasty With Face-Lift for Older Asians With Prominent Zygoma. Annals of plastic surgery. 2017. PMID: 26207549.
