子どものことばの発達
「まだ話さない」が心配
話すことばだけでなく、聞いて分かること、身ぶり、伝えようとする気持ちも大切な手掛かりです。心配をひとりで抱えず、今の様子から相談できます。
ことばの発達には個人差がありますが、話す数だけでなく、聞こえ、簡単なことばの理解、指さしなどの身ぶりを合わせて見ます。1歳半ごろに意味のあることばがない、2歳ごろに二つのことばをつなげないなど、気がかりがあれば相談しましょう。以前使っていたことばが減った場合は、次の健診まで待たず小児科へ連絡してください。[2][4]
「まだできない」と「できなくなった」を分ける
月齢の目安だけで救急受診が必要になるわけではありません。今の体調と変化の速さを確認します。
意識がはっきりしない、けいれんが続く、呼吸が苦しい、急に手足を動かせないときは119番など救急対応を優先します。
使っていた言葉が出なくなった、座る・歩く力が落ちた、普段のやり取りが明らかに減ったら、健診まで待たず小児科へ連絡します。
今は元気でも、目安に届かない、左右差が強い、聞こえや生活に気がかりがあれば相談を予約しましょう。「様子を見る」場合も次の確認日を決めます。
相談の際は母子健康手帳、できることと気になることのメモ、無理なく撮れた普段の動画を持参します。記録のために受診を遅らせません。
声のやり取りから、意味のあることばへ
| 段階 | どんな様子? | 見方のポイント |
|---|---|---|
| 喃語(なんご) | 「ばばば」などの音を繰り返して楽しむ | 9か月ごろの観察例。声の種類や呼びかけへの反応も見る |
| 初語 | 決まった人や物を意味して、同じ音を使う | 1歳ごろからの観察例。はっきり発音できるかだけで数えない |
| ことばが増える | 知っている物を声や身ぶりで伝える | 1歳半ごろは発語だけでなく、簡単な指示の理解も見る |
| 二語文 | 「ママ、きて」など、意味のある二つのことばをつなぐ | 2歳ごろの相談の目安。丸暗記の歌とは分けて様子を聞く |
表は米国CDCの観察項目などを参考にした案内です。喃語から初語、二語文へ進む時期には幅があり、誕生日だけで病気と決めません。観察用のチェックリストは診断検査ではありません。[2][7]
「ワンワン」のような幼児語でも、いつも犬を指して使っていれば、意味を持って使うことばの例になります。口まねができることと、相手に伝えるために使えることも、分けて伝えると役立ちます。
話すことばが少ないときに、見たい三つのこと
名前や生活音への反応はどうか。新生児の検査が問題なくても、現在の聞こえが気になるなら相談します。
普段の場面で「くつを持ってきて」などが伝わるか。身ぶりを添えた場合と、声だけの場合の違いも見ます。
欲しい物を見せる、指さす、手を伸ばすなど、その子なりの方法で伝えているか。
遊び、食事、睡眠、園での様子。家と園で違う場合は、両方の情報を伝えます。
「言葉が少ない」と感じたときは、実際に使うことばを数個と、その場面を教えてください。「言って」と頼むときではなく、欲しい物があるときや、好きな遊びの途中でどう伝えているかを一緒に確かめたいと考えています。
声に反応しない理由は、聞こえだけとは限りません。遊びに集中している、周囲が騒がしいなど状況にも左右されます。家庭で大きな音を出して何度も試すのではなく、気になった場面を医療者に伝えましょう。新生児検査後に聞こえが変化することもあります。[5]
教え込むより、伝えたいことに応じる

子どもが車を見たら「車だね」、何かを渡してくれたら「ありがとう」と、今の関心に短いことばを添えます。答えを急がせず少し待ち、声でも身ぶりでも伝えてきたら受け止めます。絵本は最後まで読む課題ではなく、一緒に楽しむ道具として使えます。
子どもの「くるま」に「赤い車だね」と少し足す。間違いのたびに言い直しを求めません。
大人だけが話し続けず、表情や声が返ってくる間を作ります。
食事、着替え、散歩など、続けやすい場面を選びます。特別な教材を買うことが条件ではありません。
毎回うまく関われなくても自分を責めないでください。負担が大きいときは、支援の方法も相談しましょう。
保護者が関わり方を学ぶ支援のメタ解析では、子どものことば・コミュニケーションへの効果が示されています。ただし対象や支援の内容はさまざまで、家庭の声かけだけで必ず改善する、育て方が遅れの原因だという意味ではありません。3歳までの親子支援を扱った別のメタ解析でも効果とばらつきが報告されており、必要な支援は一人ひとりに合わせます。[3][8]
相談は小児科・保健師から。聞こえも確認します
日本では1歳6か月児健診や3歳児健診が相談の機会になります。ただし心配が続くときは次の健診まで待たず、小児科や自治体の保健センターへ連絡して構いません。[1]
必要に応じて耳鼻咽喉科での聴力評価、発達の専門外来、言語聴覚士などにつなぎます。ことばの少なさだけで自閉スペクトラム症などの病名を決めず、理解ややり取り、全体の発達を確認します。相談や支援の開始に、必ず診断名が必要とは限りません。[6]
「男の子だから」「そのうち話す」で相談を先延ばしにしない
年齢の目安に加え、聞こえへの不安、簡単なことばが伝わりにくい、身ぶりも少ない、使っていたことばが減ったなどは、具体的に伝えたいポイントです。[4]
様子を見る場合も、次に確認する日を決める
診察で経過を見ることになったら、いつ再診するか、何を記録するか、どんな変化なら予定を早めるかを確認しましょう。毎日ことばの数をテストするより、生活の中で増えた伝え方や困る場面を短く残すと役立ちます。
早産で生まれた場合は、出生週数と出産予定日も伝えます。家庭で使う言語、園で使う言語が異なる場合も、その両方での理解や表現を伝えてください。家族が話しやすい言語をやめるなどの変更を自己判断で行う前に、評価を受けましょう。
指さしや一緒に遊ぶ様子も確認するよくある質問
1歳で話さないと異常ですか?
初めて意味のあることばが出る時期には幅があります。発語だけでなく、聞こえ、身ぶり、理解も見ます。心配な点は1歳でも相談でき、使っていたことばが減った場合は早めの連絡が必要です。
2歳で二語文がありません。3歳まで待ちますか?
3歳まで一律に待つ必要はありません。小児科や保健師へ相談し、聞こえ・理解・やり取りも合わせて確認しましょう。
「言ってごらん」と繰り返した方がよいですか?
繰り返し答えを求めるより、子どもの興味に短いことばを添え、声や身ぶりでの返事を待ちます。楽しめるやり取りを大切にしてください。
受診すると、すぐ発達障害と診断されますか?
相談は、困っていることと必要な支援を整理する場です。ことばが少ないだけで診断を決めることはなく、聞こえや全体の発達を確認します。
参考文献
- こども家庭庁:乳幼児健診に関する取組み。国内の健診・相談の仕組み。
- CDC:Developmental Milestones. 4・6・9・12・18・24か月の観察項目(2026年確認)。米国の目安であり診断基準ではない。
- Roberts MY, et al. Association of Parent Training With Child Language Development: A Systematic Review and Meta-analysis. JAMA Pediatr. 2019;173:671–680. PMID: 31107508.
- NICE CG128:Autism spectrum disorder in under 19s. Recommendations 1.4.2–1.4.3(言語・社会性・運動技能の退行と紹介)。英国の診療指針。
- NIDCD:Your Baby’s Hearing Screening and Next Steps. 新生児検査後も聞こえの変化に注意する。
- NIDCD:Speech and Language Developmental Milestones. ことばと聞こえの評価。
- Zubler JM, et al. Evidence-Informed Milestones for Developmental Surveillance Tools. Pediatrics. 2022;149:e2021052138. PMID: 35132439(発達観察項目の作成根拠)。
- Jeong J, et al. Parenting interventions to promote early child development in the first three years of life: A global systematic review and meta-analysis. PLoS Med. 2021;18:e1003602. PMID: 33970913.
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