- ✓ ほうれい線のヒアルロン酸注入は、しわの改善に即効性が期待できる治療法です。
- ✓ 効果の持続期間は製品や個人差がありますが、一般的に6ヶ月から1年程度とされています。
- ✓ 内出血や腫れなどの一般的な副作用のほか、稀に血管閉塞などの重篤なリスクも存在します。
ほうれい線のヒアルロン酸注入とは?そのメカニズム

ほうれい線のヒアルロン酸注入とは、加齢や表情筋の動きによって生じる鼻唇溝(ほうれい線)の凹みに、ヒアルロン酸製剤を注入することで、皮膚の内側からボリュームを補い、しわを目立たなくする美容医療の一つです。この治療は、メスを使わない非外科的な方法でありながら、比較的短時間で効果が期待できるため、多くの方に選ばれています。
ヒアルロン酸は、もともと人間の体内、特に皮膚や関節などに存在するムコ多糖類の一種で、高い保水力を持つことで知られています。皮膚においては、真皮の主要な構成成分の一つとして、肌のハリや潤いを保つ役割を担っています。加齢とともに体内のヒアルロン酸は減少するため、皮膚の弾力性が失われ、しわやたるみが生じやすくなります。
ほうれい線へのヒアルロン酸注入では、合成されたヒアルロン酸製剤を直接皮膚の真皮層や皮下組織に注入します。注入されたヒアルロン酸は、その保水力によって周囲の水分を引き寄せ、ボリュームを増やすことで、凹んだほうれい線を内側から持ち上げ、目立たなくする効果をもたらします。また、ヒアルロン酸は体内で徐々に分解・吸収されるため、効果は永続的ではなく、一定期間で再注入が必要となります。
実臨床では、ほうれい線が気になり始めた30代後半から50代の患者さんが多く見られます。特に、口元のたるみやしわが目立ち始め、「疲れて見える」「老けて見える」といったお悩みを抱えて受診される方が少なくありません。ヒアルロン酸注入は、こうしたお悩みに比較的早く対応できる選択肢として、日常診療でよく提案しています。
- 鼻唇溝(ほうれい線)
- 鼻の横から口角にかけて伸びる溝状のしわのこと。加齢による皮膚のたるみや皮下脂肪の減少、表情筋の癖などが原因で深くなる。
ほうれい線へのヒアルロン酸注入で期待できる効果とは?
ほうれい線へのヒアルロン酸注入は、主にしわの改善と若々しい印象の回復に効果が期待できます。具体的な効果は以下の通りです。
しわの改善とボリュームアップ
ヒアルロン酸をほうれい線の凹んだ部分に注入することで、皮膚の内側からボリュームが補われ、しわが浅くなります。これにより、ほうれい線が目立たなくなり、全体的に顔の印象が若返ることが期待できます。注入直後から効果を実感できる即効性も、この治療法の大きな特徴の一つです。
複数の研究でも、ヒアルロン酸注入が鼻唇溝の改善に有効であることが示されています。例えば、あるメタアナリシスでは、ヒアルロン酸が鼻唇溝の修正において安全性と有効性を持つことが報告されています[1]。また、リドカイン含有ヒアルロン酸フィラーに関する多施設共同研究では、鼻唇溝の治療における有効性と安全性が確認されています[4]。
肌のハリ・潤いの向上
注入されたヒアルロン酸は、その高い保水力によって周囲の水分を保持します。これにより、注入部位だけでなく、周辺の肌のハリや潤いも向上する可能性があります。肌のキメが整い、より健康的な印象になることも期待できるでしょう。
自然な仕上がり
経験豊富な医師が適切な量と深さに注入することで、非常に自然な仕上がりが期待できます。顔全体のバランスを考慮しながら注入することで、不自然な膨らみではなく、本来の若々しい状態に近づけることを目指します。筆者の臨床経験では、治療開始後1ヶ月ほどで、注入部位が周囲の組織と馴染み、より自然な仕上がりを実感される方が多いです。
また、ヒアルロン酸注入は、単独で行われるだけでなく、ボツリヌス毒素製剤(ボトックス)など他の治療と併用されることもあります。例えば、鼻唇溝のしわに対してヒアルロン酸とボツリヌス毒素製剤を併用することで、より効果的な改善が期待できるという報告もあります[3]。日常診療では、患者さんのしわのタイプや深さ、表情筋の動きなどを総合的に評価し、最適な治療プランを提案しています。
ほうれい線のヒアルロン酸注入の効果持続期間はどれくらい?

ほうれい線へのヒアルロン酸注入の効果持続期間は、使用するヒアルロン酸製剤の種類、注入量、注入部位、そして個人の体質や代謝速度によって異なります。一般的には、6ヶ月から1年程度効果が持続するとされています。
持続期間に影響する要因
- ヒアルロン酸製剤の種類: ヒアルロン酸製剤には、粒子が細かく柔らかいものから、粒子が大きく硬いものまで様々な種類があります。一般的に、架橋(かきょう)の度合いが高い、つまり分子同士が強く結合している製剤ほど、体内で分解されにくく、持続期間が長くなる傾向があります。ほうれい線には、ある程度の硬さがあり、形を維持しやすい製剤が選ばれることが多いです[5]。
- 注入部位と深さ: ほうれい線は表情筋の動きが活発な部位であるため、他の部位に比べてヒアルロン酸の分解が早まる可能性があります。また、注入する深さも持続期間に影響を与えることがあります。
- 個人の代謝: 個人の代謝速度や生活習慣(喫煙、飲酒、紫外線曝露など)も、ヒアルロン酸の分解速度に影響を与えることがあります。代謝が活発な方や、喫煙習慣のある方は、比較的早く効果が薄れる可能性があります。
多くの患者さんが「どれくらい持つの?」と質問されますが、筆者の臨床経験上、持続期間には個人差が大きいと感じています。初めての注入で6ヶ月程度で効果が薄れる方もいれば、1年以上効果を維持される方もいらっしゃいます。定期的に注入を繰り返すことで、より長期的な改善を維持することも可能です。
効果が薄れてきたと感じた場合は、追加注入を検討することになります。追加注入のタイミングは、完全に効果がなくなる前に行うことで、常に良好な状態を保ちやすくなります。医師と相談し、ご自身の状態に合わせた最適なタイミングで治療計画を立てることが重要です。
| 項目 | 柔らかいヒアルロン酸製剤 | 硬いヒアルロン酸製剤 |
|---|---|---|
| 主な用途 | 小じわ、涙袋、唇など | ほうれい線、鼻、顎、深いしわなど |
| 架橋の度合い | 低い | 高い |
| 持続期間 | 比較的短い(数ヶ月〜半年程度) | 比較的長い(半年〜1年半程度) |
| 仕上がりの質感 | 自然で柔らかい | しっかりとしたボリューム感 |
ほうれい線のヒアルロン酸注入に伴うリスクと副作用
ほうれい線のヒアルロン酸注入は比較的安全な治療法とされていますが、医療行為である以上、リスクや副作用が全くないわけではありません。治療を受ける前に、起こりうる可能性のあるリスクを十分に理解しておくことが重要です。
一般的な副作用
- 内出血: 注入時に細い血管が傷つくことで、内出血が生じることがあります。通常は数日から1週間程度で自然に吸収され、メイクで隠せる程度であることがほとんどです。
- 腫れ・赤み: 注入部位に一時的な腫れや赤みが生じることがあります。これも数日程度で落ち着くことが一般的です。
- 痛み: 注入時にチクッとした痛みを感じることがありますが、麻酔クリームや局所麻酔を使用することで軽減できます。最近では、リドカインという麻酔薬が配合されたヒアルロン酸製剤も多く、痛みの軽減に役立っています[4]。
- 硬結・しこり: 稀に注入部位が硬くなったり、しこりのように感じられたりすることがあります。時間とともに馴染むことが多いですが、気になる場合は医師に相談が必要です。
稀に起こりうる重篤なリスク
- アレルギー反応: ごく稀に、ヒアルロン酸製剤に対するアレルギー反応(発疹、かゆみ、腫れなど)が生じることがあります。
- 感染: 注入部位から細菌が侵入し、感染症を引き起こす可能性があります。清潔な環境下での施術と、術後の適切なケアが重要です。
- 血管閉塞・皮膚壊死: 最も重篤なリスクとして、ヒアルロン酸が誤って血管内に注入され、血流を妨げることで血管閉塞や皮膚壊死を引き起こす可能性があります。これは非常に稀な合併症ですが、失明や皮膚の損傷につながることもあります。
臨床現場では、血管閉塞のリスクを最小限に抑えるため、解剖学的な知識に基づいた正確な注入技術が非常に重要なポイントになります。特に、顔面には多くの血管が走行しているため、注入部位や深さ、針の選択、そして注入速度に細心の注意を払っています。万が一、血管閉塞の兆候が見られた場合には、ヒアルロン酸を分解する薬剤(ヒアルロニダーゼ)を速やかに注入することで、症状の悪化を防ぐことができます。
ヒアルロン酸注入は手軽な施術に見えますが、上記のようなリスクも存在します。施術を受ける際は、必ず経験豊富な医師を選び、事前のカウンセリングでリスクについて十分に説明を受けるようにしましょう。
ヒアルロン酸注入後の注意点とアフターケア

ヒアルロン酸注入の効果を最大限に引き出し、合併症のリスクを軽減するためには、施術後の適切な注意点とアフターケアが非常に重要です。
施術直後の過ごし方
- 冷却: 注入直後は、腫れや内出血を抑えるために、患部を優しく冷却することが推奨されます。
- メイク: 注入部位を清潔に保つため、当日のメイクは避けるか、軽めにすることをおすすめします。翌日からは通常通りメイクが可能です。
- 飲酒・激しい運動: 注入後24時間程度は、血行が良くなるような飲酒や激しい運動は避けるようにしてください。これらは内出血や腫れを悪化させる可能性があります。
- マッサージ: 注入部位を強くマッサージしたり、触ったりすることは避けてください。ヒアルロン酸が移動したり、形が崩れたりする可能性があります。
- 入浴・サウナ: 施術当日の長時間の入浴やサウナも、血行を促進し、腫れや内出血を悪化させる可能性があるため、シャワー程度に留めるのが望ましいです。
長期的なアフターケア
- 保湿ケア: 注入部位だけでなく、顔全体の保湿ケアをしっかり行うことで、肌の健康状態を保ち、ヒアルロン酸の効果を長持ちさせることにも繋がります。
- 紫外線対策: 紫外線は肌の老化を促進し、ヒアルロン酸の分解を早める可能性もあるため、日焼け止めなどでしっかりと紫外線対策を行いましょう。
- 定期的な診察: 注入後に何か異常を感じた場合や、効果の持続期間について相談したい場合は、遠慮なく施術を受けた医師に相談してください。
日々の診療では、「いつからメイクしていいですか?」「お風呂に入っても大丈夫ですか?」といった質問をされる患者さんも多いです。これらの疑問に対しては、個々の状態に合わせて具体的なアドバイスをしています。特に、注入後の数日間は、過度な刺激を避けることが、良好な結果を得るための鍵となります。
炭酸ガス療法とヒアルロン酸を併用することで、鼻唇溝の美容的修正に効果が期待できるという研究もあります[2]。このように、ヒアルロン酸注入は単独の治療に留まらず、様々なアプローチと組み合わせることで、より高い効果を目指すことも可能です。ほうれい線の治療法
まとめ
ほうれい線のヒアルロン酸注入は、加齢によるしわやたるみを改善し、若々しい印象を取り戻すための有効な美容医療の一つです。体内に存在するヒアルロン酸を注入することで、しわを内側から持ち上げ、ボリュームアップ効果や肌のハリ・潤いの向上が期待できます。効果の持続期間は製剤の種類や個人差によりますが、一般的に6ヶ月から1年程度とされています。内出血や腫れといった一般的な副作用のほか、稀に血管閉塞などの重篤なリスクも存在するため、経験豊富な医師による施術と適切なアフターケアが不可欠です。治療を検討する際は、メリットとデメリットを十分に理解し、医師とよく相談してご自身の状態に合った最適な治療計画を立てることが重要です。
よくある質問(FAQ)
- Xiaolu Huang, Yimin Liang, Qingfeng Li. Safety and efficacy of hyaluronic acid for the correction of nasolabial folds: a meta-analysis.. European journal of dermatology : EJD. 2014. PMID: 24200955. DOI: 10.1684/ejd.2013.2151
- Giuseppe Nisi, Roberto Cuomo, Cesare Brandi et al.. Carbon dioxide therapy and hyaluronic acid for cosmetic correction of the nasolabial folds.. Journal of cosmetic dermatology. 2017. PMID: 26786710. DOI: 10.1111/jocd.12213
- Joel L Cohen, Arthur Swift, Nowell Solish et al.. OnabotulinumtoxinA and Hyaluronic Acid in Facial Wrinkles and Folds: A Prospective, Open-Label Comparison.. Aesthetic surgery journal. 2020. PMID: 29762642. DOI: 10.1093/asj/sjy116
- Won Joon Choi, Seung Won Han, Jung Eun Kim et al.. The Efficacy and Safety of Lidocaine-Containing Hyaluronic Acid Dermal Filler for Treatment of Nasolabial Folds: A Multicenter, Randomized Clinical Study.. Aesthetic plastic surgery. 2016. PMID: 26493557. DOI: 10.1007/s00266-015-0571-z
- ヒアルロン酸 添付文書 – PMDA(医薬品医療機器総合機構)

